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044:しばらくメリーザがメインヒロインになります

 しばらく観光を楽しんだ俺たちは、少し裏路地に入って休憩することにした。


「やっぱ人混みは疲れるなぁ」


『元ヒキコモリには辛そうだねー』


「うっせ」


 そんな会話をしていると、路地の向こうから三人の騎士がやってきた。

 街中に騎士が歩いているなんて、さすが都会だなぁ。

 とか思っていると、騎士の一人がハッとした表情になった。


「いたぞっ!!」


 先頭の男が指差した先は……


『えっ、わたくし……ですの?』


 メリーザが困惑している。

 その横にいたエアリオとレンも不思議そうな顔で首を傾げた。


『スレーブの街で奴隷商のおっさん脅した容疑じゃね?』


「そんなコトでわざわざ騎士が動きますかね?」


 そうこう言っている間に、走ってやってきた騎士がメリーザの腕を掴んだ。


「さあ、早く戻りましょうっ!!」


『は、離してくださいませっ!』


「さあっ!!」


『あ……アストラルダウン!!』


 メリーザのスキルが発動すると同時に、騎士がそのままうつ伏せにバタンと倒れた。


「な、何をなさるのですっ!?」


 残る二人の騎士が焦りの表情で慌てている。


『何をですって!? 貴方達こそ、いきなりやってきて、わたくしの~~……って、ぉ、ぉ、ぉおおおおーー???』


 俺はメリーザの腕を掴み、全員で一目散に逃亡した!



◇◇



「いきなり攻撃するヤツがあるかっ! しかも王直属の騎士相手とか、下手するとお尋ね者だぞっ!?」


『いきなりレディの腕を掴むような輩なのですから、きっと騎士のコスプレをした変態ですわっ!』


 メリーザはちょっと半泣きで俺に正当性を訴えかけてきた。

 ふーむ、困ったなぁ。


「次に会ったらちゃんと事情を聞かないとなぁ。でも、いきなり攻撃するのはナシだからな?」


『うぅー……』


 涙目のメリーザの肩を、エアリオがポンポンと叩く。


『大丈夫! お前が捕まったとしても、代わりに私が魔王様とラブラブするよ☆』


『だまらっしゃああああぁっ!!!』


 怒ったメリーザがエアリオに飛びかかったもののヒョイと回避され、バランスを崩してしまい……


 ドンッ!


「きゃあっ!?」


 通行人にぶつかった!


「おいおい、道のド真ん中で暴れたりするからっ……! すみませんっ、大丈夫ですかっ!?」


 俺が慌てて駆け寄り、床にへたりこんだ女性の手を取り、顔を見ると……あれ?


「メリーザ???」


「はい???」『はい???』


 俺の目の前には白いフードを被ったメリーザと、黒装束姿のメリーザ。

 二人同時に首を傾げてから横を見ると、お互いの目が合った。

 そして互いに指を差して……


『「………わたくしですわっ!?」』


 喋り方までハモった!?



◇◇



「しかし、他人のそら似とは言え、まるでクローンだな」


「『クローン???』」


 俺の言葉に、目の前のそっくりさん二人の言葉が再びハモった。

 髪色だけでなく声色までほぼ同じとは、世の中には不思議な事もあるもんだ。

 それを見たエアリオが興味津々に二人を見比べている。


『それにしても、すげえ似てるなぁ。瞳の色が違うのと……こっちのお嬢さんの方が気品が良い気がする! たぶん性格の善し悪しが顔に出てるんだなっ!』


『その無駄口ばかり叩く口に、大鎌デスサイズを突っ込みますわよ?』


 キレ気味にエアリオの頬に握り拳をギューギュー押しつけるメリーザを見て、女性がハッと反応した。


「もしかして、皆様は冒険者の方々なのでしょうか?」


「まあ、冒険者……かなぁ。今回はお姫様の護衛のためにギルドに雇われてるんだけど」


「っ!?」


 俺の言葉に、女性は俺の手を取って懇願してきた。


「お願いです! 助けてくださいっ!!」


「???」



◇◇



 このメリーザそっくりさんの名前はユリアンナ。

 なんと、この国のお姫様その人なのであるっ!


「さっき、騎士たちがいきなりメリーザに掴みかかってきたのは……」


「私と間違えて、お城に連れ戻そうとしたのですね……迷惑をかけてしまって、ごめんなさい」


 お姫様はシュンとなってしまった。


『別に気にしておりませんわ。それよりも、お姫様が御披露目を明日に控えておきながら城を脱走したうえ、通りすがりの冒険者に助けを求めるなんて、ただ事じゃ無いですわね。一体何がありまして?』


 いぶかしげに問いかけるメリーザに対し、ユリアンナは俯きながら口を開いた。


「ご存じとは思いますが、わたくしは明日初めて国民の皆様に姿を見せるのですが……怖いのです」


「怖い?」


「かつてこの国を恐怖で支配した悪魔と私の容姿があまりにも似ているのです。それを見た民がどう思うのか不安で……あっ、すみません。貴女にも失礼な話ですよねっ」


『いえ……別に……』


 言葉とは裏腹に、ユリアンナの言葉を聞いたメリーザはとても辛そうな顔をしている。


「その悪魔について詳しく聞かせて頂けますか?」


 正直な話、ここに居る全員聞かなくても薄々想像は付いているのだが、確認のためリーリアが問いかけた。


「数百年前、世界が魔王の恐怖に脅えていた時代の話です。魔王の使い魔が、紫色の髪をなびかせながら数百もの兵を一撃で薙ぎ倒した、呪いで街をひとつ滅ぼしたなど、多くの伝承が残っているのです」


 メリーザの方を見ると、ジェスチャーで首をブンブン振っている。

 表情と口の動きから察するに「そこまでやってない!」のようだ。


「遥か昔の話ですし、既にその伝承を知らぬ者がほとんど……。ですが、一度に多くの民の前に姿を見せるとなると、きっと誰かがその事に気づいてしまいますっ! だから……」


 いっそのこと姿をくらまそう、か……。


「姫が行方不明になるほうが影響デカいと思うけどなぁ」


 俺の意見に、ユリアンナはしゅんとなってしまった。


「クローさんの変装魔法は……?」


『今回だけならしのげるけど、そんな逃げ方しちゃうと、今後どんどん追い込まれていくから得策とは言えないにゃりねぇ~。嘘に嘘を重ねると余計辛くなるにゃー』


「猫が喋ったっ!?」


 リーリアの質問にクローが答えたところ、ユリアンナが無関係なところで驚いてしまった。


「あー、それの説明はまた今度な。変装するなら頭髪を剃ってウィッグ使う手もあるけど、それも根本解決にならないもんなぁ。やっぱ姫様が姿をちゃんと見せて、それで国民に納得してもらうのが一番じゃないかなー?」


 俺の率直な意見を聞いて、再び悲しそうに俯く姫様。

 すると、それまで黙っていたメリーザが口を開いた。


『……わたくしが代役をやりますわ!』


「代役?」


わたくしが姫様の代わりに国民に姿を御披露目します。遠目なら誰も入れ替わったとは気づかないでしょうし、文句言ってくる不届き者は全員返り討ちにしてやりますわっ!』


「おおお、本当ですかっ!!」


 ユリアンナがメリーザの手をひしっと掴む。

 というか、今なにげに返り討ちとか言わなかったか?


『どちらにしても、この姿を悪く言われるのは腹立たしい事に変わりはありませんわ。わたくしにお任せくださいな』


「ありがとうございますっ! 本当にありがとうございますっ!!」


 それ、本当に大丈夫なのか???

 ただ、藁にもすがりたいユリアンナにとってメリーザの提案は最良と判断されたらしく、入れ替わり大作戦を決行することになってしまった。


 一体どうなってしまうのやら……。


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