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040:キュレーターと聞くとレイジ・フジタという名が思い浮かぶ

 次のフラグ回収のため、再びクラスタの街に戻るコトになったわけだが……。


「そんじゃ今から飛ぶから全員集合~」


 俺の掛け声に合わせて皆が集まったのを確認し、システムコンソールを起動した俺は、例の新コマンドを実行してみた。


teleport cluster


 その瞬間、景色が一瞬暗転し……



<北の街 クラスタ>



 街の裏路地にポンッと皆が出現した。


「へぇ、ル○ラみたいに空をビューンと行かずに一瞬でワープする感じなんだな」


『空飛んでるの見られたら大騒ぎになるだろうからねぇ。神様と一緒に世界を移動するときはいつもこんな感じだったなぁ』


「となると、神様がこの機能を使って移動してるか、もしくはこの機能が神様の移動手段を模倣してるのかもなー」


 そんなコトを話しながら、今回の目的にとなる「クラスタ中央美術館」にやってきた。



<クラスタ中央美術館>



「この世界にも美術館があるんだなー」


 関心する俺を見てリーリアが微笑む。


「お父様が長い年月をかけて計画したと聞いてます。本当はスタックの街に建てたかったらしいのですが、土地の問題や、他の地域から来られる人の利便性を考えてこの街に建てたそうです」


 確かに大陸の最南端の街に美術館があっても困るだろうしな。

 クラスタの街も立地的に最良とは言い難いけども、ここ以外には領地内に大きい街は無さそうだし、その辺は仕方ないのだろう。


「ここにある"女神の涙"という絵画を救うコトが今回のフラグ回収条件らしい」


「あっ、私その絵を見たことありますっ。でも、雨漏りで破損して修復中だったはずです」


 美術館作品が雨漏りで破損って……。

 まあ、この世界には空調すら無いわけだし、美術品を守るための設備が貧弱なのは仕方ないのか。

 そしてリーリアが窓口の方に話しかけながら紋章を見せて領主代行の身分であることを説明し、女神の涙を見てみたいむねを伝えた。


「こちらの五人と一匹を……」


「あの、申し訳ございませんが、リーリア様のご希望でもペット同伴はちょっと……」


『に゛ゃーんっ!?』


 クローがガクリとうなだれる。

 まあ、こればかりは仕方ないだろう。

 中身がどうであれ、見た目は単なる猫なのだから。


『まあ、クローひとりで留守番させるのは可哀想だし、一緒に街でぶらぶらしようぜ』


『にゃあああーーー……』


 エアリオの誘いに、泣きながらクローが飛びついていった。


「エアリオさん、優しいですね~」


 リーリアが微笑んでいるけど……。


「んで、本当のところは?」


『……こんな堅苦しいところはしょうに合いません。外で遊んできて良いですか?』


『に゛ゃーん……』


 とても正直でよろしい。



◇◇



「すげえな……」


 関係者専用フロアに修復中の美術品が並んでいるのだが、その中でも一際存在感を放つ絵画、それが「女神の涙」だった。

 リーリアに聞いていた通り、雨に当たった下部が酷く損傷しており、修復が必要な状況なのは間違いなさそうだ。


「原画は念写によって描かれており、その上から顔料を塗布して仕上げをしてあります」


 キュレーターの男性が語る説明に、不可思議な単語があった。


「念写って何?」


「火属性スキルで、紙や木板などにイメージした絵を焼き付ける手法ですね。頭に描いた通りに仕上がるので、主に教本などを作る際に用いられるのですが、ここまで複雑な絵画を念写で焼き付けてしまうのですから、作者のグローラ氏の想像力や表現力は見事としか言いようがありません」


 見事と言うか……ねぇ。

 俺はアンジュと顔を見合わせた。


 この「女神の涙」という絵画は、女神様が何かにすがるように涙を流しながら手を伸ばす……というとても意味深な姿なのだが、俺たちの目の前に描かれたそれは、間違いなく「この世界の女神ラフィートそのもの」だった。


『タケルはコレどう思う……?』


「コレの作者は間違いなくラフィートに出会ってるんだろうな。俺も一度会ったきりだけど、こんな特徴的な格好を見間違えるわけがないよ。偶然にしては髪色、髪型、服装まで全て一致するのはおかしいしな」


『私も、時々あの方が天界で歩いてるトコを見てたけど、この絵はほとんど特徴が一致してるね……』


 ほとんど?


「どこか間違いあるのか???」


 俺の指摘に対し、アンジュが気まずそうに一点を指差した。


『本物はこんなに大きくないよ』


 おっぱいおっぱい(AA略)



◇◇



 美術館を出る際、作者の所在を知りたいと聞いたところ、グローラ氏は100年以上前に亡くなっているとのことだった。

 ただし、その子孫のローリさんが今もクラスタの北東のデカい屋敷に暮らしているらしく、俺たちはそこに訪ねてみることにした。


『にゃるほど、グローラが描いた絵が目当てだったにゃりね』


「お、クローの知り合いだったのか?」


『お隣さん家の幼なじみでね。よく私の新魔法の実験台にして、危うく逝きかけたり、かと思いきや適当にでっち上げた蘇生魔法が成功して生き返ったりと、波瀾万丈だったにゃりよ』


「鬼かお前は……」


 俺のぼやきに『猫にゃりよ~』と返すクローを後目しりめに、その子孫の住む屋敷のドアをノックした。


「はい、どちら様でしょう~?」


 玄関からメイド服を着た侍女っぽい人が出てきた。

 さすがデカい家!


「あの、こちらにローリさんという方が居られるとお聞きしまして……」


「あ、私ですよ~☆」


「はい?」


「私がローリですけど……」


 どこからどう見ても召使いの姿なのだが。


「どうしてそんな格好を???」


「趣味でーす♪」


 ……深く考えないコトにしよう。



◇◇



「なるほど、美術館に寄贈した絵画の事ですか」


「はい、個人的にとても思い入れがありまして。領主代行としても、歴史的に価値のあるあの絵画の復元に尽力したいと考えております」


 領主代行であるリーリアにそれらしい事情を説明してもらい、作者の子孫であるローリの協力を得ようという作戦だ。


「貴重な絵画を損傷させてしまった事について、領主代行としてお詫び致します……」


「いえいえ、お気になさらずにー。ウチの家でも飾る場所に困ってたくらいなので、全然気にしてませんよ~☆」


 それはそれでどうなのだろう……。


「その損傷箇所なのですが、女神様の足下周りの色が失われており、靴の柄が復元できなくて……。そこで、この屋敷に他の女神様の絵画が無いか見させて頂ければと思いまして」


 だが、リーリアの問いかけに、ローリは残念そうに俯いた。


「実は、過去に美術館からその依頼はありました。キュレーターの方にもお越し頂いて、当家の保有する美術品をほぼ全て確認頂きましたが、それらしき物は見当たらなかったのです……」


「そうですか……」


 リーリアも残念そうに俯く。

 だが少し気になる点があった。


「ほぼ全てということは、全てではない……?」


「はい。一カ所だけまだ確認出来ていない部屋が……」



◇◇



 そしてローリに案内された場所には、すごく見覚えのあるブツがあった。

 それは、古びた木製の扉……。


「恐らくグローラの書斎だと思われるのですが、不思議な力で守られていて扉が開かないのです」


「この街には開かずの扉がふたつあったんだなー」


 俺の言葉に、ローリがハッとなった。


「そういえば、大道芸人の集団が開かずの扉を開けたという噂が……!」


「俺たち、いつの間にか大道芸人になってるの!?」


 いや、確かにほぼ全員おかしい格好してるし、その気持ちは分からなくも無いのだが。


「じゃあ、開かずの扉から出てきたと噂の喋るにゃんこさんもっ!?」


 そういや、扉から出てくる時にクローは「やあ!」とか喋ってたな。


『にゃにゃー、にゃ~?』


 しらばっくれても、その挙動はいくらなんでも怪しすぎるぞクロー……。


「わぁい! 喋るにゃんこさん~☆ ギューーーーー!!」


『ぎゃああああああーー』


 ローリに捕まって抱き締められるクローは置いといて、俺たちは扉の解析を始めた。


「せーのっ、そぉいっ!!」


 キィィィィィンッ!


 俺が扉を殴ると、目の前に虹色のシールドが展開された。


「やっぱりクローの時と同じか」


『ノックで出題しないのかな?』


 アンジュがコンコンッと叩いた。

 それはトイレノックなのだけどなぁ……と思ったその時、システムコンソールが自動で立ち上がってきた。


『フラグNo.01から12まで回収されている事を確認しました』



『問題 下記法則から導き出せる解を求めよ』

[54:EDFFF7 = TASK]

[92:BCF018FBB2F019 = ???]

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