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004:優しいハーフエルフのお嬢様の登場回

 早速、街の外に出た俺たちはモンスターを発見!

 角の生えたプリティなウサギさんだ。


 街の人と同じようにシステムコンソールのステータスモニタのターゲットに指定すると『ホーンラビット』という名前だということが分かった。


「角ウサギでホーンラビット……安直だなぁ」


『まあ覚えやすくで良いじゃない』


 俺とアンジュが二人で会話していても、目の前の ホーンラビットはこちらを気にすることなくピョンピョンしている。


「全く襲ってこないんだけど?」


『ホーンラビットは繁殖力が強すぎて駆除されてるだけで、別に人を襲ったりしないみたい。肉が食用に使えて、角が装飾品に使えるから、初心者冒険者に人気……って、このシステムコンソール、ヘルプ機能がスゴイねっ』


 俺の横で空中の映像をタッチしながら騒ぐアンジュを後目しりめに、俺はホーンラビットと対面した。


「よしっ! 初陣じゃ!!」


『キュッ?』


 ホーンラビットは首を傾げながら様子を伺っている。


「我がSTR999の力、受けてみよっ!!」


『キュッ……?』


 俺が拳を振り上げようとすると、足下に寄ってきてクンクンしてきたので、何となく抱き上げたところ、ウサギさんと目が合った。


『キュ~?』


 そして俺は崩れ落ちた。


『タケルっ! どうしたのっ!!?』


 慌てて駆け寄ってきたアンジュの目に映ったのは……泣きながらウサギさんを撫でる俺の姿だった。



◇◇



 俺たちは再び大きなお屋敷の近くにまで戻った。


(ステータス)の持ち腐れとはまさにこのコトだね』


 ホーンラビットを抱っこしたまま歩く俺を見て、アンジュが苦言を漏らす。


「だって、この近辺に出現するモンスターはホーンラビットばかりじゃないかっ! キュッて鳴き声、つぶらな瞳、何この可愛い生き物!!」


『はいはい、分かったから。その子をちゃっちゃとお店に連れて行こう?』


「……やだ」


『は?』


「この子、飼っちゃダメかな?」


『かな? じゃないわあああぁっ!! このクソニートがっ!!!』


「だ、誰がクソニートだっ!!」


『どうでもいいから、そいつを私によこせぇ!!』


 アンジュがウサギさんを奪い取ろうと襲いかかってきたため、俺は慌ててウサギさんを逃がした。


『あああああぁぁ!!! 大事な収入源をっ!!』


「うっせぇ! あの子を売り渡すくらいなら別の方法で稼いでやるわ!!」


 しばらく言い合いを続けていると、お屋敷の中から人が出てきてトトトッと小走りで近づいて来た。


「そこの旅のお方、喧嘩は駄目ですよっ。一体、何事ですか!」


 俺たちに声をかけてくれたのは、若いお嬢さんだった。

 身なりもすごく良いし、デカいお屋敷から出てきたのだから、とても身分の高い人なのだろう。


「えーっと……」


 ホーンラビットが可愛すぎて狩れない……って、そんなコト言えるかぁっ!!


「妹がお腹を空かせてしまって。お金も無くて、このままでは行き倒れになりそうで……」

『え゛っ!?』


 アンジュが『私に責任を押しつけんなや!』と言いたそうな顔で睨んでくるけど、今は我慢だ!


「そうでしたか! でしたら私の屋敷にお越しくださいな」


『「えっ!?」』


 今度は俺とアンジュが一緒に驚きの声を上げた。

 行き倒れの人をいきなり屋敷に上げるとか、それってどうなの?


『あの……恐縮なのですが、いきなり行き倒れの人を屋敷に上げるのはどうかと。弱ったふりをした強盗かもしれませんし……』


 俺の思っているコトをアンジュに代弁されてしまった。

 でも、余計なコト言うんじゃねぇっ!


「あら、ご心配頂かなくても大丈夫ですよ。わたくし、こう見えても武芸をたしなんでおりますので。それに立場上、人を見る目はあると自負しております。お二人が悪人とは思えません」


 そう言いながら可愛らしい笑顔を向けてくるお嬢様。

 あまりに眩しすぎて、このままニフラムで消え去ってしまいそうだ。


「ところで、失礼ですが武芸とはどのような?」


「お父様がとても厳しい方でして。悪い虫が寄らぬように! と幼き頃から護身術を始め戦闘スキルなども学んでおります。盗賊程度であれば2~3人相手でも負けませんよ」


 すごく爽やかに豪快なコトを言ってくれた。

 異世界の女、こええ……。


「そういえばお互い名乗ってなかったな。俺はタケル、そんでもって、こっちのちんちくりんのヤツがアンジュだ」


『誰がちんちくりんだよぅ!』


「あっ、わたくしの名前はリーリアと申します。今は、この街とその周辺地域を管理しております」


 街と周辺地域を管理って……まさか!


「領主様っ!?」


 俺が驚いてそう呼ぶと、少し寂しそうな顔をした。


「いいえ、単に両親の代理ですし、わたくしは何も偉くありません。リーリアと名前で呼んで頂ければ幸いです」


 なるほど、年頃のお嬢さんは色々お悩みのようだ。


「最近はあまりお客様が来ることも無くて……。独りで昼食を取るのが寂しいなぁと思っていたところ、妹さん?が泣きながらおんぶされて歩いていたり、お二人が口論する姿が見えたりで、少し気になっていたのです」


 うーん、全部見られてたのか……。

 少し恥ずかしいな。


「でも本当に良いんですかね? 俺たちホントにお金持ってないんで……」


「お気になさらないでください。私は一緒にお食事して話が出来るだけで、とても満足ですから。その御礼ということで……」


 そう言いながら大きな帽子を取ると、桃色がかった長い金髪の隙間から、ちょっとだけ尖った耳が見えた。

 あれ? 人間……じゃない???


『タケル、あんまり女性をジロジロ見るのは行儀悪いよ?』


「うっ!」


 アンジュに注意されてしまった……。

 俺、そんなにジロジロ見てたかなぁ。


「ふふふ、私の容姿の事を仰ってるのでしょう?」


 リーリアはそう言いながら、右手の人差し指で自分の耳をちょんちょんと触った。


「ああ、エルフっぽいなー……っと」


「ん~、半分だけ正解です。お父様が人間で、お母様がエルフなのです」


 半分……つまり、ハーフエルフということか。


 異世界モノのセオリーとしてハーフエルフは劣等種で、迫害の対象で、その話になると場が暗くなるのが常だったりするわけで。

 触れちゃいけないトコに触れちゃったかなぁ……。


「生まれも種族も全く違う二人が奇跡的な確率で出逢って結ばれるなんて、ステキですよねぇ~~~~。はぁ~~」


 あれ???

 俺が不思議そうな顔をしていると、リーリアもキョトンとしてしまった。


「あれ? ステキじゃないですかね?」


「いや! すごくロマンチックだと思うよっ! ただ、色々と苦労したんじゃないかなーって思って……」


「確かに、お母様の実家に行くのは片道2日くらいかかりますし、帰省が大変ですね」


 うーん、この世界は特にエルフと人間のイザコザみたいなのは無いのかな?


「でも、ロマンチックと言って頂けて嬉しいです。私も両親のように運命的な出会いをしてみたいですねぇ」


 そう言いながら、リーリアは夢見る少女のような表情でうっとりしている。

 初対面だけど、俺はこのお嬢様が「可愛らしいなぁ」と思った。



「ずっと立ち話も何ですし、それではこちらへお越しくださいませ」



 俺たちはリーリアの案内で屋敷へ入っていった。

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