036:きのこがりびより!
ダークエルフの村で滞在し始めてから10日が過ぎ、ついに旅立ちの日がきた。
『いつでも帰ってらっしゃいね?』
『ああ、姉さんもエールも元気でなっ!』
俺たちはダークエルフの村を出発し、次の目的地であるガンブルーの街へ向かうため再び迷いの森へ入っていった。
<迷いの森>
「それにしても、200年ぶりの再開だったのにずいぶんあっさりと別れちゃうのな? もっとお涙頂戴みたいな展開をイメージしてたんだけど」
『あはは、今生の別れじゃありませんし、またいつでも帰って来られますから』
そう言うエアリオの顔は嬉しそうだ。
何だか肩の荷が下りたような、スッキリした表情をしている。
「ところで迷いの森を抜けたら、次はどこへ向かうのでしょう?」
俺の横に並んだリーリアがシステムコンソールの地図を覗き込む。
「えーっと、次のフラグ回収条件は、ガンブルーの街でギルドクエスト"キンイロキノコを討伐"って書いてあるな。……キノコを討伐? というかキンイロキノコって何だ???」
リーリアと二人で首を傾げていると、後ろの奴らが騒ぎ始めた。
『はいはいはーい! ギルドクエストは私たちがやりまーす!』
『魔王様たちはごゆっくりと過ごしてくださいませ』
「頑張りますっ!」
理由は分からないけど、魔王四天王の三人組がやたらやる気になっている。
特にエアリオは『これで貢いで……』とかブツブツ言いながら、身体をくねらせてアハーンとか言いながら悶えていて、ちょっとキモい。
「まあ、お前らならドラゴン討伐クエストでもサクサクやっちゃいそうだし、キノコ狩りくらいなら大丈夫だろう。それじゃ、お言葉に甘えるとしますかね」
俺の言葉に、三人組が大喜びではしゃいでいる。
うんうん、可愛らしくてよろしい。
そんなこんなで、システムコンソールのマップ機能のおかげで迷いの森を余裕で突破した俺たちは、そのまま真っ直ぐにガンブルーの街に到着した。
<賭博と冒険者の街 ガンブルー>
「この街、なんだか凄く華やかですね!」
リーリアが驚きながら周りをキョロキョロしている。
「どうやらこの街はカジノの収入で成り立っているみたいだな。とりあえず、ギルドに行ってキンイロキノコの情報を集めてみよう」
俺の言葉に皆が頷き、そのまま街の北東にある木造の建物に向かった。
<冒険者ギルド ガンブルー支部>
「いらっしゃいませぇ~。何かご用でしょうか?」
ギルドにやってきた俺は、早速おねーさんに話しかけ……
「予想はしていたけど、やっぱりいつものおねーさんがいるうううううぅぅ!! ジョ○イさーん!!」
俺の反応を見て、おねーさんが苦笑した。
「南から来た人たちはいつもそういう反応しますね。クラスタとオースに居る二人は私の従姉妹なのですよ」
従姉妹とは思えぬクローンっぷり!
でも、もう次からは驚かないからなっ!!
「改めまして、何かご用でしょうか~?」
「えーっと、キンイロキノコの討伐クエストってのを受けたいんだけど……」
ざわ・・・ ざわ・・・
なんだか某ギャンブル漫画みたいなざわつきが聞こえた気がする。
というかギルドのざわつきは毎回こんなんばっかだな!
「……キンイロキノコ討伐クエストは、当ギルド最難関のミッションとなっております」
おねーさんの言葉に俺たちは顔を見合わせた。
「キノコ狩りですよね?」
「はい、キノコ狩りです」
……うーん。
「じゃあ、コレの次に難関だと思うクエストってどんなのがあります?」
「次ですか……? うーん、南の沼に生息しているポイズンジャイアントワームの駆除ですかね。毒液を浴びると即死なので、かなりの難関ですね」
キノコ狩りが即死攻撃付きクエストより難関んんんんンンンン!?
困惑する俺とは逆に、四天王トリオの目がとても輝いている。
『はいはいはーい! キノコ狩りやりまーす!』
『ふふふ、腕が鳴りますわね……』
「相手にとって不足ありませんっ」
「お前らちゃんと人の話聞いてたかっ!!?」
俺のツッコミにも動じることなく、3バカ……もとい三人はやる気満々に。
ああ、もうだめだー……。
~~
「本当に三人だけで大丈夫か?」
魔王様がもの凄く心配そうに私たちを見ている。
『平気平気っ! しっかりと稼いできますよっ』
「気をつけろよ~! 無理するなよ~! 危ないと思ったらすぐ帰って来いよ~!」
魔王様は、私たちの姿が見えなくなるまで心配そうにブンブンと手を振っていた。
『ああいうところが可愛らしいですわねぇ』
『だなぁ~』
受付のお嬢さんから頂いた地図を見たところ、キンイロキノコの自生する場所は意外と近いらしい。
『移動に何日もかかると言われたら面倒でしたけど、この距離なら日帰り出来るかもしれませんわね』
私が呟くと、二人はウンウンと頷いた。
そんな事を話しながらのんびりと歩いていると……
「ウェッヘッヘッヘ、そこのお嬢ちゃん達、子供だけでどこに行くつもりだい~?」
「「「「グヘヘヘヘ~」」」」
目の前に下品に笑う男が五匹……もとい、五人現れた。
『『「………」』』
「ヘッヘッヘ、恐ろしくて声も出ねえってか~?」
……。
「どうします?」
『コイツらボコっても面白くなさそうだしパスで』
『私も面倒なのでパスします』
私とエアリオが降りたため、レンが行くことになった。
「お嬢ちゃんひとりで五人相手かい? 腰が抜けるかもしれねぇなぁ!」
「ハハハハ!」
下品な事をほざくゴミ共を見て、特に言葉の意味を理解していないレンがトコトコと歩いて近づいて行く。
「まあ、貴方達が相手であれば私一人で十分でしょう」
「ウッハ! お嬢ちゃん、幼く見えてなかなかのヤリ……」
「せいやぁっ!!!」
ブワアアアアァァッ! バシャーンッ!!
レンがその場で空中に正拳突きをすると、その覇気だけで男達が全員吹っ飛んで、近くの川に落ちた。
「なななななっ!?」
「準備運動はこんなもんですかね。では、今から本気で行きますねー?」
「ちょちょちょまあああああっ、アッーーー!!!」
◇◇
『ちっ、たったこれっぽっちかよ……』
エアリオが歩きながら、小銭の入った袋をポンポンとお手玉のように投げて遊んでいる。
『お金で遊ぶのは行儀悪いからやめなさい……』
結局、さっきの盗賊達はあっさりと降参し、有り金を全部置いて逃げていってしまった。
『せめてキノコ狩りくらいは、もうちょっと張り合いがあれば良いんだけどなー』
そんなコトを言いながら、私たちは目的地を目指した。
これから『最難関』の意味を身を持って味わうとも知らずに……





