031:ダークエルフのお姉さんに興奮する人にはビンタしますよ
『フラグNo.19を回収しました!』
「またか……」
次の目的地となる「迷いの森」を目指している俺たちだったが、ここ連日、何もしていなくてもシステムコンソールからフラグ回収アナウンスが聞こえてくる。
フラグ回収履歴を確認すると……
Flag No.18 砂漠に花を咲かせましょう CLEAR
Flag No.19 マンイーターを退治せよ! CLEAR
Flag No.27 日照りの島に雨を降らせよう CLEAR
Flag No.30 風のイタズラで運命の出会いを演出 CLEAR
Flag No.31 運命の出会いによって恋愛成就 CLEAR
たぶん、俺がスクリプトでぶっ飛ばした雨雲が海を超え、遠くの大陸で大暴れしたのだろう。
砂漠に花の種なんて蒔いた覚えは無いのだけれど、確か転生前の世界で「砂漠に雨が降って広大な花畑になった!」みたいな話を聞いたことがあるので、恐らくそのパターンだと思う。
No.30と31に関しては全く意味が分からない……強風で帽子が飛ばされて、それを拾ってあげたところから出会いが始まった~的な恋愛イベントか何かだろうか?
一度も姿を見ることなく洗い流されたマンイーターに至っては、哀れ過ぎて言葉にならない。
「すごいな、砂漠の一件でフラグを一気に8つ回収とかチートにも程があるわ」
『No.30と31ってどう考えても私が活躍するはずだったイベントだよぅ……。でもこれ、本当に大丈夫なのかなぁ。不正扱いになって二度と帰れないとか言われたらどうしよう、うぅ……』
アンジュが不安そうな顔でシステムコンソールを眺めている。
「その時は俺らが温かく迎えてやるさ。僕たち、ずっと友達だよねっ?」
無言で首を絞められた。
「……ま、まあ、今はフラグ回収の手間が省けてラッキー! くらいに思っておこうじゃないか。落ち込んでも仕方ないしな」
そう言いながらアンジュの頭をポンポンっとしておいた。
そんなやり取りをしているのだけど……
『……』
エアリオが珍しく、ぼーっとしていた。
いつもなら俺がアンジュに構っていると、嫉妬して『デェヤアァァ!』とか言いながら飛び込んでくるはずなんだけどな。
「どうした?」
俺が問いかけても無反応。
メリーザが顔の前で手を振っても反応しない。
『魔王様の呼びかけを無視とは良い度胸ですわね。コッソリと死の宣告をかけてやろうかしら……』
おいおいっ。
物騒なことを言うメリーザのこめかみをグリグリしていると……
「どーーーんっ! ぎゅーーーーっ!!」
『ななななななんだーーーっ!?』
いきなりリーリアがエアリオにジャンピングアタック&ハグ。
そして、ちょっと怒り顔でデコピンした。
『あうっ』
「ひとりで悩まないのっ!」
『うー……』
少し涙目のエアリオに対して、今度は優しく微笑みかけた。
「大丈夫。あなたの大好きな魔王様が居るんだから、心配することなんて何もないでしょ?」
エアリオはこちらをチラッと見てから、コクリと頷いた。
◇◇
それからしばらく歩いていると、木々が生い茂るエリアに入った。
システムコンソールで地名を確認すると……
<迷いの森>
「お、目的地に入ったな。フラグ回収条件は迷子捜しっぽいけど、そもそも俺たちが迷わないように気をつけないとな」
『その時は私が空から周りを見渡せば良いし、どうにもならなくなったらteleportコマンドで適当な街に戻っちゃえば良いんじゃない?』
「なるほどなー」
よくよく考えると、このメンツなら大抵の問題は能力だけで押し切れちゃうんだよなぁ。
そもそも魔物も絶対襲ってこないしな……。
心配するコトなんて何も~
ビィィィンッ!
顔の横にあった樹の幹に、一本の棒が生えていた。
樹木に突き刺さったそれを抜いて手に取ってみると……
「……矢?」
『侵入者めっ! この森に何の用だっ!!』
頭上から聞こえた声の方向へ向くと、そこには褐色肌で耳がツンツン尖ったおねーさんがいた。
「ダークエルフ!?」
俺が驚きの声を上げると、おねーさんは首を傾げた。
『なんだ、ここがダークエルフの村だと知ってて来たんじゃないのか? ……って、おやっ?』
今度はおねーさんが驚いている。
目線の先は……エアリオだ。
『………』
だけどエアリオは無言のまま目を逸らした。
ここしばらくぼーっとしてたのはこれが原因か……。
『ふーむ、知らない顔だな……。まあ良いさ、同胞連れを無碍にしてはダークエルフ族の名が廃る。我らの村に来ると良いだろう』
そう言うと、おねーさんは木から飛び降りてエアリオの前に着地した。
肌はエアリオと同じ褐色肌だけど、髪色は薄い紫で瞳も青い。
エアリオが銀髪と紅い瞳だから、同じダークエルフでも印象がずいぶん違うな。
『私の名前はエール。貴女を歓迎する』
エアリオは無言のまま、握手を求めたエールの手をそっと取った。





