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029:空想科学の世界でなければ絶対に実現しない物語

『イベント発生が承認されました。無関係の天界関係者は直ちに避難してください。間もなく未曾有みぞうの豪雨になります』


 システムコンソールから、恋愛成就の泉で聞こえた自立自爆カウントダウンと同じ声でアナウンスが流れてきた。

 凄いぞバージョン2.0! なんだかハイテクな感じだ!

 ……って今はそれどころじゃないな。


 さっきまでカンカン照りだった空は真っ黒な雲に覆われ、小雨が降り始めた。

 そんな中、ウチのパーティメンバーたちは外で頑張っている。


『唸れ天地よ! ダークスタブ!!』


 エアリオが全力で大剣を空に突き上げると、黒い衝撃波が雲に大穴を空けた!

 ……が、すぐ元に戻ってしまった。


『この街を覆い尽くす雲を全部吹き飛ばすのは、どう考えても無理ですわね……』


 メリーザが呆然と空を眺めている。


「実はレンさんが凄い技を……」


「私は、近接格闘しか出来ないので、空をどうこうするような力は無いのです。申し訳ありません……」


「い、いえっ、そんなことっ!」


 リーリアとレンもお手上げ状態だ。

 となると……


「クソ天使め、スクリプト2.0を使って解決しろってコトなんだろうけど、このお膳立てっぷりは逆にムカつくぜっ!」


『私も、次に会った時は全力でヤツをビンタしてやるっ!!』


 いきり立ちながらフラグ回収クエストの出題を待つ。


 待つ!


 ……待つ!



◇◇



「出題が来ないっ!」


 さっきから雨の勢いは増すばかりなのだけど、一向にいつもの16進数の羅列が表示されない。


『もしかして、自力で雨を止ませろってコトなんじゃ……』


 アンジュが呟いた瞬間……


『にゃああああっ!?』


 研究所の入り口からクローの叫び声が聞こえてきた。

 慌てて駆け寄ると、既に床下浸水が始まっていた。


 さっきまで外で暴れていたエアリオは全身びしょ濡れに。

 他の皆は……とっくに避難して居間で身体を拭いていた。


「くっそ! カウントダウンの表示やアナウンスが無いだけで、実質は時間制限ありじゃねーか!」


 すぐにシステムコンソールを開き、スクリプト・リファレンス2.0を確認する。

 バージョンアップ履歴の仕様変更は……


「captureに名称指定が実装。setの移動方向指定に東西南北が追加。行ったことがある場所に飛べる新コマンドteleport……うおぉぉぉっ! ル○ラきたぁっ! ……って今はそれどころじゃねえええぇっ!」


 必死にスクリプトの新コマンドを全てチェック!

 その結果っ!



「天候操作コマンドが無い……」



『えええっ!?』


 俺の嘆きを聞いたアンジュがスクリプト・リファレンスを穴が空くほどチェック!!


『うぅ、どこにも無いよぅ……』


 ガクリとうなだれる俺とアンジュの前に、トコトコとクローが歩いてやって、俺の肩に飛び乗った。


『冷静に考えてごらん。対象物の名称を指定して移動出来るようになったのだろう?』


 そう言いながら空を見上げるクロー。

 ……なるほどね。


「スクリプト射程距離の問題は……って、どうせ同じコト考えてんだろ? しかも実行役は俺で」


『御名答~。君は、か弱い女の子にそんな無茶をさせるような情けない男じゃにゃいだろう?』


「うっせぇ、どこにか弱い女の子が居るんだよ」


 俺の皮肉に、クローは笑った。


『?????』


 アンジュはまだよく分かっていないようだ。


「そんじゃ、作戦内容を説明するぞ」



◇◇



『ホントにこれ、上手く行くのぉっ!?』


 俺の背中に縛られたアンジュが土砂降りの中、大声で呼びかけてくる。


「知らねー! 失敗したら次の手を考えるんだよっ!」


 俺とアンジュはずぶ濡れになりながら、屋敷の軒下でテーブルの天板をガリガリやっているクローの方を見た。


『こちらは準備完了にゃりよ! いつでも出発合図をしてくれにゃっ!』


 俺も自分の目の前にシステムコンソールを表示し、スクリプトエディタに暫定のコードを入力して待機した。


「そんじゃ、覚悟は出来たかい?」


『もうどうにでもしてくれよぅ! さっさとやっちまえー!』


 俺が合図を送ると、クローはテーブルに刻んだスクリプトを発動させた。



capture target.

movetype fly.

set top 5000 step.

(対象を掴み、飛行方式で、上昇5000ステップ)



 その瞬間、俺とアンジュは上空に打ち上げられた。

 思ったよりも勢いが強く、引き離されそうになるまいとアンジュが必死に力を込めている。


 そして数分後、雨雲の上に飛び出した俺たちの周りには青空が広がった!

 周りを見渡すと……



「あそこだっ!」


 俺の目線の先、ずっと遠くに海が見えた!

 どのくらいの距離があるのかは全然分からないけど、勘で適当に数値を決める。

 方角は……たぶん北西っ!!



capture name rain-cloud.

movetype fly.

set northeast 99999 step.

(雨雲を対象に、飛行方式で、北東へ99999ステップ移動)



「ファイナルフュージョン、プログラムドライブ!!」


 グーで思いっきりシステムコンソールの映像を叩くと同時に、猛烈な勢いで直下の雨雲が移動し始めた。

 ちなみにBD-BOX買いました!


 これで雲が晴れて、めでたしめでたしっ。

 あとは、アンジュに羽ばたいてもらって、ゆっくりと着陸~……





 ……というのが「当初の予定」だった。


 しかし、雲を動かす際に発生する「空気の流れ」という物理法則の影響は無視出来なかったらしい。


 つまり、街を覆い尽くす程の雨雲を一撃で吹き飛ばす規模の強風……というか超大型台風に、俺とアンジュは吹き飛ばされた。

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