025:そろそろ「ハッキングはどうした?」と突っ込まれそうな頃ですね
「我が名はレン! 人々を苦しめる闇の眷属よ! 我が正義の拳の塵になるが良いっ!」
……誰???
リーリアもクローも右前足を左右に振って『知らないにゃー』みたいな顔をしている。
『こういう空気読めない正義バカが出てくると、興醒めだよねぇ』
「天使のくせに人間を襲う作戦を発案した上にそのセリフとか、オマエもう完全に悪役だよね」
レンと名乗る女の子がいきなり乱入してきて作戦続行が難しくなったのでエアリオとメリーザに中断の合図を送ったものの、二人は一瞬こちらをチラリと見て『ごめんなさいっ!』的なジェスチャーをしてから、すぐにレンに向かって大剣と大鎌を構えた。
「それはデモンズブレードとデスサイズ!? どうしてあなた達が、我が友の武器を持っているのですかっ!」
……ん?
今、何か不思議なコトを言ったような?
『お前こそ、ナンバー2だったくせに何が正義の拳だよ』
『ふっふっふ、裏切り者には死を……』
「くっ、私は……正義に生きると決めたのです!」
むむむ、何となく状況が見えてきたぞ。
どうやらレンは三人目の魔王四天王で、一悶着あって正義に目覚めたものの、そのまま封印されちゃった~…みたいなパターンかな。
んで、エアリオとメリーザは『今の状況が面白くて悪ノリしてるだけ』だと思う。
俺がさっさと割り込んで止めれば良いのだけど、エアリオのダークプリズンで束縛されたままの通行人が多数いる中で、飛び込んだ瞬間に三人から『魔王様!』とか呼ばれようものなら後々問題になりそうだ。
……などと考えてたら、有無を言わさずレンが先制攻撃を仕掛けた!
「ハァッ!!!」
女神像を一撃で破壊し、宙に浮いたままのエアリオに正拳突きを放つ!
エアリオは拳を回避しつつ残骸になった女神像を蹴って高く飛び上がり、少し離れた場所に着地したものの、そのまま胸を押さえながらうずくまった。
『いってええ! なんかちょっと速く動いただけで、おっぱいがバチーンッてなったよ! 巨乳ってこんなに動きづらいのっ!? やっぱ私、小さいままで良いわっ!』
「ふざけないでくださいっ!!」
逆上したレンが更に追撃を繰り返す。
ドカーンッ! 広場のベンチが壊れた。
ズドーンッ! 噴水の吹き出し口が壊れた。
ボカーンッ! 二体目の女神像が倒れた。
なんだか被害が大変なことになってきたな……。
そんな中、俺の隣に居たリーリアがわなわなと震えながら立ち上がり、無言のまま広場に突き進んで行く。
「卑怯者! こうなれば必殺奥義、カムイ……へぶっ!!」
『フハハハハ! そんな攻撃、我には……きゃんっ!!』
レンとエアリオの頭に、リーリアのゲンコツが落ちた。
「貴女達! 周りを見なさいっ!!」
キョロキョロと二人が見渡すと、そこには残骸だらけの中央広場の惨状があった。
「正義とか悪とか、そんなコトはどうでも良いんですっ! 周りの人たちに迷惑をかけちゃダメでしょ! めっ!!」
『「は、はひぃっ!!」』
本気で怒るリーリアに怯える二人。
「分かったらすぐに片付けるっ!!!」
『「はいっ!!」』
ふと気づくと、俺の横にはコッソリと帰ってきたメリーザが居た。
『お察しと思いますが……』
「四天王ってこんな変な奴らばっかりなのか……?」
『私はそこにカウントしないで頂きたいのですけどね』
俺とメリーザは溜め息を吐いた。
広場では今も、鬼の形相でエアリオとレンに片付けをさせるリーリアの姿があった。
◇◇
「ふーむ……」
『ハズレだったねぇ……』
俺とアンジュの視線の先にはひとつのメッセージ。
No.08 スタックの街を救え! NOT CLEAR
「まあ、これでクリアになるわけが無いよなぁ」
『うぐぅ』
しかも中央広場が破壊されただけでは留まらず……
「私が、街で暴れた魔物を怒りの鉄拳一発で沈めたと噂になってますぅぅぅ……うわーーーーーーんっ!!」
リーリアお嬢様は、武闘派として更に名声が上がってしまったらしく、さらに民との距離が遠ざかってしまったようだ。
可哀想に……。
まあ、おかげで四天王三人目に出会えたわけだし、決して今回の一件が無駄だったわけではないのだけどね。
だけど、当のレンはというと……
「申し訳ありませんでした……」
リーリアに土下座していた。
「あのっ、そのっ。そ、そこまでしなくてもっ! 修繕費をお支払い頂ければ、それで構わないので……」
「うぅぅ……一文無しでして。死をもって償うしか……」
「あわわわっ! し、死ぬのはダメですよっ!」
ワタワタするリーリアを見ていると面白いのだけど、話が進まないのは困りものだな。
それを見かねたエアリオとメリーザがずずいっと出てきた。
『広場を破壊したコトよりも、正義を名乗る方が問題だと思うよ?』
『壊した備品の修繕代は弁償できても、魔王様を裏切った重罪は万死に値しますわ』
おーい、余計ややこしくしないでくれー。
他の二人から冷たい目で見られて、さらにレンがシュンとなってしまった。
「まあ、何があったかは知らないけど、お前は人間の味方なんだよな?」
「あ、はい! 実は魔王……あ、タケル様ではない方の魔王の目的が、実は世界征服ではなく、この世界を滅ぼしてからリソースを別の世界へ盗むのが狙いだという事実を突き止めまして。勇者と共に魔王に立ち向かったものの、私は魔王に封印されてしまったのです」
「なんかサラっと凄いコト言ってるけど、皆これ知ってた?」
エアリオとメリーザは首をブンブン振る。
「数ヶ月前に目覚めた時は全然知らない国に居まして……。途方に暮れていたところ、そこで出会ったとても優しい方々に助けて頂いたのです。共同生活で資金が稼げたので、船でこちらの大陸に渡ってきて、先ほど皆とバッタリ会えた~…というわけですね」
「なんかこの子だけ、やたらスケールのデカい冒険してね?」
唖然としている俺の横で勝手にシステムコンソールを操作していたアンジュが『あっ!』と声を上げた。
『これ、ちょっと見てよっ!!!』
凄い慌てようでパーティステータス表示画面を見せてきた。
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NAME:Len
TYPE:Human
HP:2132 SP:341
STR:150 AGI:400 VIT:1 INT:1 DEX:99 LUK:1
GOLD:0
ITEM
日本刀
旅人の服
革の靴
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「ツッコミどころが多すぎるわっ!!」
『このヒトなんなのーっ!?』
困惑する俺たちを見てキョトンとするレン。
とりあえず俺は、レンの腰元にある刀を指差した。
「さっき素手で戦ってたけど、その腰に差している刀は……?」
「あ、コレですか? 父の形見なのです。今の力で無理に振るうと折れちゃいそうなので単なる飾りですけど」
日本刀が「父の形見」だと?
『私からも質問なのだけど。……君はどこの国の生まれだい?』
恐る恐る質問するアンジュに対し、レンはあっけらかんと答えた。
「聞いたこと無いと思いますけど、日本という国です」





