マガミ伯爵の交渉
話はザクスの処刑日前日に戻る。
依頼を終えて王都に戻ってきた後、話を聞いた真神真也は王宮で国王と話をしていた。
「国王、どうして、ザクスは王宮の牢屋にいるのでしょうか?依頼で王都を離れていた20日の間に王宮で何があったのでしょうか?」
王はどこから話したものかと考え一息ついてから口を開く。
「ふむ、ザクスが王宮に来るようになった理由は聞いているか?」
王に尋ねられた真神は王宮を訪れる前に聞いてきた話を王に述べる。
「えぇ、聞いています。僕が依頼で出かけてそんなに立たないうちに貴族のナーレット公爵一派が画策してザクスの元部下の希望を歪めてザクスに命令したのですよね。ザクスが懇意にしていた奴隷商の主人に圧力かけて。問題行動としてすぐに王宮に呼んだと。本来は問題でも何でもないと思われますが。僕の生まれた国では問題ですが、この国では普通の行いじゃないですか」
「一般的には少し違うとわしは聞いているがな」
「購入した奴隷と持ち込んだ奴隷の扱いの違いですか?」
「うむ、そうだ」
この国では奴隷と主人は主従関係を結べば奴隷側に法律的にも一般的に知られる行動としても主人は奴隷に何しても構わないとされ、心無い主人からは使い捨ての道具扱いは知られていることである。しかし、そこに購入した奴隷と持ち込んだ奴隷では周りの目と人の心が干渉する。購入した奴隷について周りは知らないので、契約魔法で制限が駆けられ思考や心をいじっても主人も周りも大して気にしていない。奴隷の元の性格や行動等を知らないため制限がかかった奴隷をその人となりとして受け入れる。なので、主人に逆らわないように主人を守るために契約魔法で縛るのが一般常識として知られている。違和感や忌避を感じるのは契約魔法をかけられる奴隷の前の状態を知っているものだけだからである。しかし、持ち込んだ奴隷に対して主従関係をかけるとなると少し違ってくる。主人と奴隷の主従関係を結ぶ前の関係や奴隷の元の性格や力等を知っているものが身近にいる場合がある。持ち込んだ奴隷と主人との生活が長かったり、深かったりすればよほどのことがない限りは主従契約の時、契約魔法は使わない。周りの目や心が変わってしまった奴隷と接する事に不快感や同情、忌避を覚えるようになるからである。
公爵達はザクスがその忌避されるほうの行動をとるように手配し行動させた。
それにより軍の重要な部隊に不和を持ち込んだ。そして不和を問題行動として目をつけるようにした。しかし、ザクスは不和を部隊に持ち込まないように、彼女たちを部隊に連れて行かなかった。しかし、事実を噂として部隊に居た数人を使い流したことで部隊に忌避と不和を発生させた。
真神はそれはまあいいとして、話をつづけた。
「ザクスが呼ばれてきたのはいいです。そこからどんなことが起きたのですか?」
「うむ、ナーレット公爵が褒賞として貴族にするように言ってきたのでわしはあの一派の影響をはねのける方法を考えたのだがかなり裏目に出てしまった。わしのところに来る前に公爵から尋問されておったようだな」
「まず追い込んでから王のところに来させたと。国王はどんな褒賞を準備したのですか?」
「うむ、貴族の叙爵では、奴らの影響をはねのけられないと思ったから、王族にしようとした」
真神は王の考えから少し驚きを感じたが冷静に尋ねる。
「どのようにして、でしょうか?」
「わしの娘を娶らせようとしたのだがな、ぬしが依頼で王都を離れるより前に娘が一度王宮に来て話してな、ザクス、やつはすごい、特権兵で隊長としての働きに尊敬できる素晴らしい男性だと褒めておったから喜んで受け入れると思ったのだがな」
「それが、裏目にと」
「うむ、ザクスの奴隷契約の行動で娘も奴に不快感を持つようになっておった。まずそこがあって、あとはザクスに対して威圧的な態度を初対面で取っており、やつはその時の印象から娘に対して女性ではなく敵か恐怖の対象としてとらえていたようだな、そしたら、マガミ、ぬしが謝罪の時にする土下座か、それをわしらにして白状しおった」
「でも、それで投獄ですか」
真神はその話を聞き、ザクスの心の爆弾がどこにあるか推測できず、ここでも爆発したかと昔を思い出しながらため息をつく。すると、王が続けた。
「まぁ、奴がそれを望んでいるように見えたからな。処刑するといった。わしは数日の投獄で反省させ、鞭打ち数回で釈放のつもりでいたのだがな」
真神は王の話が否定で終わったのを気にして問いかける。
「釈放されないのですか?」
「処刑内容にまた、ナーレット公爵一派が割り込んで来よって、死刑の内容に変更しておる。ぬしの力を削ぎたいらしいな」
「僕の力って言われても彼は違うのですが」
真神はナーレット公爵一派の思い違いにため息をつく。
「その処刑はいつでしょうか?」
王は答える。
「明日の昼だ」
「国王、その処刑、僕に引き取らせてもらってもいいですか?」
王は考える姿勢をして口を開く。
「どうしたものか」
「わかりました。一つ王の依頼を聞きます。それで手を打っていただけますでしょうか」
「それでわしの面子は保ったとしようか」
「ありがとうございます。よろしくお願いします」
「わしとマガミ伯爵との仲だからな。この程度のことは都合する」
国王と真神は王に良い友と言わせるだけの関係を築いていた。そして、真神が王宮を出て、軍施設で所要を済ませ一晩を王都で過ごす。朝になると一人の使者が走ってきた。その使者が持ってきた言葉は南部防衛隊からの使者だった。真神は南部防衛隊で度々指揮官をしており、その前線で魔族と直接戦うことも多い。使者が来るのは強い魔族が現れた時か、南部防衛隊の現地のものでは対応できない問題が起きた時である。
「何が起きた?」
「マガミ伯爵、新たな魔族が現れまして、前線を荒らしており、手が付けられない状況です。また、転移魔法を使い、神出鬼没で、対応が後手に回っております。今はファンレンス地方で暴れているようです。」
真神はその話を聞いて、現地に行かなければいけないと感じる。処刑の罰の宣告がある昼までに戻れるのか心配になりながら、ファンレンス地方の上空に転移魔法で飛んだ。
「お前、何者だ?」
真神が転移で飛んだ近くを魔族が飛んでいた。その魔族が突然現れた人間の真神に対して疑問を投げかけた。真神は魔族の質問に答える。
「お前の敵だ」
すると、魔族はにたりと笑い、真神に話しかける。
「倒せるといいな。それよりお前が飛んできた道面白いな。方向的にみると国の中心の方からか。飛んでみたらどんな景色が見れるのだろうな」
魔族は王都の方を見る。真神はその見ているほうを目で追いかけてから魔族の言葉で魔族が自分の転移のルートを使い、王都に飛べる可能性を感じる。
「行かせるわけにはいかない」
真神は剣を抜き、魔法で牽制してから、切りかかる。魔族との戦闘が始める。しばらく戦い、昼に差し掛かっていたが決着がつかなかった。
「つ、強いな」
「面白い。お前のようなものがいるなら先ほどの道でもっと楽しめるな」
と話すと、魔族は真神から距離を取りニヤリと笑った。
「させるか!!」
真神は切りかかるが、それより前に魔族が姿を消した。真神は周りを見渡すが、戦っていた魔族は見当たらない。
「飛ばれたか」
そういうと真神も王都へ転移し魔族を探す事になった。ザクスの処刑が執行される時間が近づいているのだった。
奴隷についての説明はしばらくしたらここからもっと前の方の話のところに移動するかもしれません。




