惨状
ザクスは3日目の作戦行動を5人で行っていた。いつも通り、問題なく、昨日の罠の場所に行き、魔物を殺し、人数の関係から、捕まっている魔物から、最低限の材料のみを採取して、罠を外して、焼いてしまう。そして、再度罠を設置し、移動する。
材料の採取は問題なく行えたが、森に入って3刻ぐらい経った所で、魔物回避のための迂回で森の入り口近くを移動していた所、知っている臭いを嗅ぎ取る。ほかの4人は臭いにたまらず、鼻と口を押えた。
ザクスは
「これから許可するまで、会話、声を出すことを禁止します。少し急いで移動します。僕についてくるように」
と短く指示を出し、急ぎ、風上に移動した。すると数人が死んで倒れていた。そして、手や足の切れ端や、血がいろんなところに飛んでいるのを見つけた。それを見たザクスは急ぎ指示を出す。
「ここで一時待機」
他の4人は口鼻を抑えた状態で頷き、立ち止まってその場に待機した。ザクスはさらに周りを見回したところ、魔物もそこそこ死んでおり、材料となる部分の回収ができていない状態で放置されていた。そして気が付く、ここ、この場所で、ビアンセン副長の部隊は危機的状況に陥り、渡していた薬を使用した事実に。
渡していた薬は、魔物が嫌う薬と痛み止めの薬と感覚・思考が一部マヒする麻薬が含まれていた。麻痺していることに気が付かない上、一つのことに意識が向けられやすく誰かの言われたとおりに行動する催眠効果もあるものだった。ビアンセン副長には危機的状況に陥った時に使用するように指示していたので、
誰かが無謀な叫び声を発していなければ、撤退するだろうという予想をしたうえで渡していた。
それが使用され、死体のみが、転がっていることから、野営地に戻ったものとは考えられるが、状況がわからないので、野営地に戻ることにした。
「一度、野営地に戻ります。ついてくるように」
ザクスは薬の内容を知っていたので、あまり多く命令を出さなかった。野営地に戻る手前で、4人の会話禁止の命令を取り消してから、野営地の入り口を通り抜けた。
野営地があわただしい。何か大変な状況らしい。想定されることから、救護テントに向かうとひどい惨状がみられた。体の部位を一部失っているものに上級の回復魔法師が、詠唱を繰り返し、他の者が薬をつけたり、包帯を巻いたり…50名近くの部下がそこで治療されていたのである。
僕は部下を放置して、壊滅させてしまった!?それに、部下をこんなにした責任って、もしかして死刑!?死にたくない!?どうすればいい!?どうすればいい!?
と悩んだ結果、持っていた効きのいい薬を救護班のまとめ役に渡して、司令部へと急いだ。報告が上がっているはずなので、すぐに何か命令が下ると思った。
そして、司令部へ入ると、司令と参謀と副長がその場にいた。副長はザクスの顔を見るとすごく申し訳なさそうな泣きそうな、不甲斐なさそうな複雑な表情をしていた。
それに比べ、司令と参謀はかなり、上機嫌というか、ご満悦というか、『よくやった』的な表情をザクスに向けたので逆にザクスはそれらの表情に対して、理解不能の表情を浮かべるしかなかった。
「ゲンベルツェン司令、フィアッツ参謀、ザクス特務兵ただいま戻りました。申し訳ありません。準備していただいた特務部隊を壊滅させてしまったようです。この失態はいかよ……」
「よい、想定通りだから」
「えっ」
と指令に返答されて、変な声を上げて呆然としてしまったザクスは顔を上げた。




