分隊
「よろしくお願いします。部隊長になりました。ザクスです。ローレム村出身の一村人です。平民です。
なぜか特権兵になり、部隊長をしなければならなくなりました。また、僕が部隊にいない場合はビアンセン副長の命令が最優先らしいので要注意です。これから森に入って、作戦に必要な材料の収集をします」
とザクスは自己紹介と部隊の行動方針を説明した。
内容は、ザクスの命令に従い、森の中に入り、罠を作り、移動し、罠を作り、移動し、必要な材料を収穫・採取する。そして、作業途中でもザクスが移動指示を出した場合はすぐにその場を離れる。ザクスの周り、からあまり離れないことが注意点とされる。そして、森にはそこそこ強力な魔物がいるので警戒することと、すぐに戦闘に入るための心構えだけはするように伝えられた。
そして、罠の作り方を数種類教えてから、森に向かって移動した。
移動中は一番先頭をザクスが移動し、あまり離れないように時々振り返った時に注意した。ただ、野営地からまっすぐ最短距離で森に移動したわけではなく、左の方に少々ずれた所から森に入った。部隊の者達は少し疑問を抱えながら、ザクスの行先についていった。そして、罠を設置、移動、罠を設置、移動、採取、移動、罠設置、採取、移動…帰りには罠にかかっている魔物を殺して、回収。罠を設置しなおす。移動、魔物の回収と、大した戦闘はなく、森を抜けて、かなりの材料を確保し、帰還した。
次の日も同じことを繰り返した。罠の設置中に移動したことも何度もあった、魔物の回収中に放棄して移動したこともあった。しかし、部隊は魔物と戦闘することも、罠にかかっていない魔物に遭遇することもなかった。
3日目にザクスは司令と参謀に自分の部隊に被害が出る許可を得てから、野営地の部隊に合流した。
「今日は部隊を分けて行動します。ビアンセン副長に大体の部隊を預けます。この部隊に来るまでに森に入って魔物と戦ったことがある人とない人に分かれてください。ない人はビアンセン副長の前に。森で魔物と戦ったことがある人は私の前に」
この特務部隊は兵長一人につき20人の兵が付き従っていた。ザクスを含め65名の部隊になっている。そのうち過去に森で魔物との戦闘経験がある人は…5人だけだった。
「では、次に、僕は臆病者です。戦闘することはすごく怖いです。それに森の魔物は怖いです。魔物との戦闘も怖いので、遭遇したくありません。戦わなくて済むなら、途中で作業も止めても仕方がないと思っています。それは人との戦いの戦争でも同じだと思っています。今日も逃げ回って作業したい人は私の前に集まってください。別に逃げ回らなくてもいいのではないかと疑問もしくは、戦ってもいい、戦いたいという人はビアンセン副長の前に集まってください」
と説明を受けたうえで、ザクスの前にいた人数は4人だった。先ほどの5人のうち3人はザクスの前にいなかった。その代り、別の人が2人ザクスの前に来た。
「では、僕のほうはこちらの4名と私の5名で作業をします。ビアンセン副長は部隊を指揮して、昨日と同じ材料を確保してください。緊急対策道具として、この袋をお渡しします。魔物に追い詰められて部隊が壊滅すると感じた時にこの袋の中身をばらまいてください。その時死んでいない人はかろうじて助かると思います。あくまでも、この部隊の役割は明日までに作戦の材料を回収することですので。よろしくお願いします」
とザクスは4人を連れて、別行動を始めた。野営地を出て行ったが、やはりまっすぐ最短距離で森にはいかず、今日は右のほうの隅まで行ってから森に入ったことを残されたビアンセン副長率いる60名の部隊は確認し、それから最短距離で、森に向かった。
「あの隊長は何なんだよ。自分で臆病者だとか言っていたし、森の魔物が怖いとか言ってたし」
「そうそう、なんであんなのが特権兵で、隊長なんだ?只のザコじゃん」
「ザコ!ザクス隊長の名前略称でもザコ、名前が状態をそのまま表してる。笑える」
「戦争や人と戦うのも怖いんだって、何のためにここで隊長やっているんだか」
「俺ら選ばれてこの部隊に来たんだぜ、なのに、逃げてばっかり、昨日、一昨日と。森って大したことないじゃん。それに捕まえて殺した魔物も大したことなかったし」
と森に入るまで油断しきっていた。隊列は組んではいたが、雑談をしながら移動していた。そしてビアンセン副長も同様に思っていた。
「俺もやっと選ばれた。副長だが、指揮権が与えられると書かれた指示命令書を受けているのだ、逃げてばかりや、規則性のない移動をして…あいつは何で、どうやって功績を得たというんだ。腕っぷしが自慢の俺が、戦闘もしないなんて。あの隊長のどこに凄さがあるんだろうな。特権も含めて譲ってほしいくらいだ」
などと、つぶやいて、ビアンセン副長の部隊も森に入っていった。




