有効利用
牽制軍による大敗でアルムレイエット王国軍は約4000の兵を失った。
軍の戦略会議が再び開かれた。当然のごとく、ザクスも呼び出された。フィアッツ参謀はザクスに尋ねた。
「ザクス殿は先日の撤退時に特殊な薬を使用したとお聞きしましたが何を使用したのですか。質問に答えてもらうことはできますか?」
「え、あ、はい。先日の森で使用した薬のことでしょうか?あれは、魔物除けの薬です。魔物が嫌う匂いと毒が混ざった薬です」
「その薬を使用して、部隊を守って、帰還したのですね」
「そうです。森は昔から僕にとってはそんなに怖い所ではないので、100名くらいなら僕一人が準備した薬で十分だと思って使用しました」
「ザクス殿はそのような薬を何種類くらい所持していらっしゃるのですか?」
「何種類?ですか。持ち歩いているのは10種類くらいです。この野営地には材料などもあるので、30~40種類くらいの薬は作ることはできるかと思いますよ」
「なるほど、紙と筆をお渡しするので、作れそうな薬の種類と効果を記載して、私に提出してもらってもよいですか?」
「わかりました。いつまでに提出すればよいですか」
「これから、2刻以内でどうですか?できそうですか?」
「2刻ですか。たぶんできると思います」
「なら今からザクス殿はその作業に移ってください。お願いします。記録係、紙と筆をザクス殿にお貸ししてください」
「わかりました。失礼します」
と、ザクスはフィアッツ子爵に作業を言い渡され、軍略会議の席を外した。そして、残った者たちの前で、フィアッツ子爵は続けた。
「やはり、ザクス殿は特権持ちとされるだけありますね。撤退を言い渡されてから、彼の隊は死者0ですよ。他の隊は撤退戦でもたくさん死者が出ましたのに。それに、彼の身体能力は低くても感覚や生成できる物、持っている物が普通じゃない気がします」
「でも、その普通じゃないものを他の人は使えるのでしょうか?」
「それを彼が提出する資料から選び出すのですよ」
ザクスは資料作成作業を終え、この野営地で作れるであろう薬、所持している薬の一覧を提出しに、司令部に訪れた。そこにはゲンベルツェン司令とフィアッツ参謀のみが居た。会議はすでに終わっていたようである。そして、資料を渡すと、
「ふむ、これは!?これを作れるのですか?材料を調達で増産可能というのも本当ですか?」
「できると思います。調達は難しいですが、作ること自体は難しくないので。その材料は……」
とザクスはいくつかの質問に答えた。すると、司令が
「ザクス特権兵、明朝もう一度ここに来るように。その時に追って、命令を下す」
「ザクス殿に4~5日の間、非常に頑張ってもらう必要がありそうです」
「はい……わかりました。明朝また訪れます。失礼します」
とザクスは司令部から出て行った。
「司令、やはり、特権兵は選ばれるだけの理由があるという事ですね」
「うむ、予想以上の隠しだねを持っていたな。これは有効活用させてもらおう」
明朝、ザクスに指示が下った。日が昇ってから、数種類の薬の調合の仕方を今日新たに編成される調合部隊に教える事。そして明日から3日の間、こちらも新たに編成される特務部隊の部隊長として、森に入り、参謀より指示された薬の材料を調達する命が下りた。




