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ザコの僕には無理だと思うのですが  作者: 柚穐
2章 新兵
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ガス抜き

ザクスが王都ストライベンに来て100日以上が過ぎた。


その中でザクスは訓練・座学・薬作成と調達で多少忙しい日々を過ごしていた。部隊での訓練の中で、ゲーレスム兵長から、軍内で度々行われる催し物が5日後にあることが知らされた。


「5日後って、もっと前もって教えてくれてもいいのに」


とザクスは小声でつぶやいたが、ゲーレスム兵長はその言葉を聞き逃さず、


「この催し物は、昨日夕方、決まったからな、前もっても何もない。早めに教えたほうだと思うぞ」


と答えた。それを聞いたザクスを含む部隊の者達は呆けに取られた顔で、兵長を見た。この軍は大丈夫かと思ったが、声には出さなかった。そして、ザクスは


「催しでは何をするのですか?」


「俺ら、兵長や指揮官、司令官が手配した酒や飯を食べて食べて食べる」


といった兵長の回答に部隊の一人がその催し物に似た経験があるのか、彼が知る知識から催しの名称を言い換えた。


「なるほど。社交パーティーのようなものですね。食事がいろいろ出て、部隊を超えて軍のいろいろな人と会話ができるのですか」


ザクスはその話から想像し、村で行った祭りをイメージし、尋ねた。


「準備された食事以外に僕らが何か食べ物を準備して披露することは可能ですか?」


その発言に部隊の者の一部は余計な手間を増やすなという視線を送ったが、


「かまわんぞ。腕に自信があるなら何か食べ物を出しても誰も文句は言うまい。ただ、十分に準備はするつもりだから、無理に作る必要はないぞ」


「わかりました。ありがとうございます」


とザクスは話を切った。そして、度々行われるが、決まるのは突然だということを理解し、料理には王都で手に入るもの、飲食店で出る食べ物が調達されると理解した。そして、軍での日常に皆が戻った。


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その催しの日の夕方になり、軍の各新部隊や、戦地が転属になるために一時帰還した先輩部隊が催しの場に集まった。かなりの人数がいた。そして、人数に見合った量の食料も準備されていた。ザクスは食べられる魔物のいくつかを事前に提供してあったので、その魔物の料理も並んでいるのだろうと思った。


食事前に、食料提供者、出資者、調理者の名前があげられ、そこには徴兵訓練中の者達もいろいろと準備したということで、協力者として名前を挙げられていた。同じくザクスも名を紹介された。そして、飲んで楽しむように司会の者が音頭を取った。それによって、催しが始まった。


ザクスが場を見回すと食事にいそしむ者、会話を楽しむ者、酒を飲みまくる者、そして、食料や酒を出したり、空になった皿や樽を片づける給仕の者がいた。


しばらく、ザクスは食事をしたが、周りに誰も寄ってこなかったので、ひとまず、その場を離れ、自分の部屋に戻って事前に準備したものを取りに行った。


ザクスは大きな魔物や鳥や小動物をその日のうちに丸焼き調理していた。そして、調理したものを部屋から運び出し、催し会場に運んだ。ザクスが大量の食料を追加持参したことで、皆の視線はザクスに集中した。視線が集中したことで、ザクスはわずかに笑みを返し、


「事前に食料を渡してあり、調理してもらったものはすでに並んではいますが、僕のほうからも料理を追加で提供させてもらいます。見た通りの丸焼き料理ばかりですが、これらの肉が気になる人は召し上がってください。」


と紹介して魔物や鳥や小動物の肉を切り分けていった。魔物の肉は大きかったので、皆が驚いたが、それでも、気になるらしく、何人かが勇敢にその肉を食べるとかなりおいしいと、表現し、皆に伝わったので、ハイペースで魔物の肉は食べられていき、かなり早くなくなった。鳥や小動物は給仕の者が肉の切り分けを申し出てくれたので、そちらの肉も取りやすく並べられた。それにより、軍の皆に満足してもらうことができた。そして、提供した肉がほぼなくなったので、ザクスは出ている料理をもう一皿分取り、催しの場の隅に移動し、食べようとしたところで、数人の男性の集団に取り囲まれた。


「ザクス君、先ほどの肉はおいしかった。提供に感謝する」

「おいしかった。ありがとう」


などと謝礼を言ってから去っていった。それを遠巻きに見ていた者達もちらほらやってきては感謝していった。


「ザコ君、僕たちも食べさせてもらった。あの丸焼きはザコ君が焼いたのか?」


「そうですよ。大きいのは王都の外の森に棲む魔物で、そこそこおいしい肉が取れるので今日焼きました。食べていただけて良かったですよ。同じ部隊に所属していますし、戦闘訓練では足を引っ張ってばかりなので、おいしく食べてもらえていれば僕のほうも満足できます。いつもごめんなさい」


と同じ部隊の者が感想を言いに近寄ってきたので頭を下げた。


「いや、謝られる必要もないし迷惑とも感じていない。説明で先に言われていたからな。言われたときは皮肉か無理な謙遜かと思っていたので、戦闘訓練で実際見た時は驚いたが、逆に同じ部隊の者達は皆、皮肉や謙遜ではなく真実だったと知ったので、そこからはある程度想定範囲だと思っている。皆そうだ。問題にならない範囲で収まっているし、集団行動訓練では注意をザコ君は一切受けていない。俺は結構注意されているから、注意を受けない方法を教えてほしいくらいだ。だから、迷惑はこうむっていないよ。あと、肉はおいしかった」


と説明し、感想を述べて、去っていった。同じように、男女関係なく感想や感謝を述べて去っていくものは多かった。兵長には事前に解散はあるのか尋ねてあり、自由解散ということがわかっていた為、話しかけられる回数が多かったので時間はかかったがザクスは手に持っていた皿を食べて空にすると食事には満足したので催しの場を離れた。


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