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ザコの僕には無理だと思うのですが  作者: 柚穐
1章 少年期
21/583

死亡フラグ

ザクス達15歳の徴兵召集を受けた者達が村を出る7日前に


「アニタが3日も家に帰らない」


と近所で騒ぎになった。


その次の日の夕方の少し前に久しぶりにカレンに話しかけられた。

なんかすごく必死だった。


「お兄!アニタ姉が見つからないの!お兄も探してよ!…」


「カレン、なんで僕に言う?お前なら、他に頼める人ならいっぱい居るだろう」


「お兄以外は一通り頼んだの。昨日中に…なのに今日見つからなかったの。もう4日目…」


「村の外に出たとかじゃないのか?それなら絶望的だぞ。そんなの僕でも見つけられない」


「多分、村の外には出ていない。でも、村の人が誰も知らない所にいるんだと思う。お兄だったらそういう所いっぱい知ってると思った。アニタ姉はお兄を待ってる気がする」


「なんで僕を待つんだよ」


「でも……………」


カレンは僕に探しに行かせたいらしく、引き下がらない。なので、僕が折れた。


「わかった。探しに行くよ」


「お願い。アニタ姉の話を聞いてあげて」


ザクスはゆっくり家を出た。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


「ここに居たんだ……」


ザクスはあっさりアニタを見つけた。空は赤く焼け夕日がよく見える場所だった。村の外れの人が滅多に近寄らない場所でその場所の中でも更に見つけにくい場所に魔物の毛皮にくるまって座っていた。景色に溶け込み、近くに寄らなければ人が居ると判断できない。ザクスが時々身を隠す時に使っている場所で、アニタにだけ小さいときに教えたことのある場所だった。ザクスはここに保存食もおいて10日位は隠れられる場所にしていた。


「やっぱり、勝手に食べて…」


ザクスはアニタの少し離れた横に腰を下ろした。


「いつまでここに居るつもりだ?」


沈黙が訪れた。夕日が沈みきるまで二人の間に会話はなかった。


「私は疫病神で死神なんだって……」


「そうなんだ」


ザクスは相槌を打った。


「私、居たらだめなのかな?怪鳥に攫われた時に帰ってこなければよかったのかな」


「…………………………」


次の問いにはザクスは返事や相槌をしなかった。アニタは話を続けた。


「なんか、全部がどうでもよくなってきた。ザッ君が11歳の時、みんなの前で荒れた時はこんな気持ちだったのかな?」


「たぶん違うと思う」


「そっか、違うんだ」


「うん。違う」


「なら、ザッ君は今の私の気持ちはわからないし、あの時のザッ君の気持ちも私はわからないのかな」


「そうだな」


「誰に助けてもらえばいいのかな。こんな気持ち一人ではどうしようもない」


「助けられる人はたくさんいると思うよ」


「ザッ君なら私を助けられる?」


「それは無理じゃないかな」


「……………………ザッ君では無理なんだ」


「無理だな」


「ザッ君に助けてもらいたかったな」


「僕は何日かしたら徴兵で村から居なくなるし、その徴兵先で僕が死んだらアニタは今度こそ死ぬか、村を離れないといけなくなる。それに、僕が帰ってきたとしても僕のローレム村で過ごす夢の中にアニタは居ない」


「そっか、ザッ君の夢に私は居ないんだ。ねぇ、私じゃだめなの?ザッ君の隣に居られないの?居たらだめなの?どうして?」


「僕がローレム村で過ごす場合はダメだ。そう僕が決めてしまっているから。変更するつもりもない。だから責任はとれない」


「そうなんだ、ザッ君はそう決めちゃってるんだ。ねぇ、徴兵にいった後でザッ君がローレム村で過ごせなくなった場合は私が隣にいることは出来るのかな」


「わからないし、そんな未来はないと思うよ」


「わからないんだ」


「そう、わからない」


「でも可能性は残ってるよね」


「さっきも言ったけど、そんな未来はないんじゃないかな」


「ザッ君は自分のことをあまり知らないだけで、すごい人だよ。じゃないと、魔物・疫病事件の時に冒険者のシンヤさん達を連れてくることは出来なかったし、シンヤさん達に訓練を見てもらうこともなかった」


「シンヤさん達を連れてきたのが僕って誰が言ってるの?村の誰もそんなこと信じないし、言ってないはずだけど」


「カレンちゃんとレクス君が言ってたし、なんか納得できるから」


「僕じゃないって…」


「それに怪鳥事件の時だって、ザッ君がしたことはとんでもなくすごいことだってみんな知ってるし。レクス君にお願いされてから2日で山まで、ゲルーの巣までたどり着くなんて特上級の冒険者でも無理だって皆言ってるし、その後で、転移なしでつれて帰ってくるなんて出来ない」


「そんな、大袈裟な」


「大袈裟じゃない。私も一緒に、山や森、草原を歩いたんだよ。そのすごさを体で感じたんだよ………ザッ君はすごいんだよ」


「僕は雑魚だよ。ザコのザクス。アニタには剣でも魔法でも勝てない。走っても追いつけないし」


「ザッ君はザコじゃない。ザッ君の才能はそんなところで判断できないし、剣や魔法じゃないんだよ」


「まあ、いいけどさ、そんなこと今は僕の事じゃなくて、アニタのことだろ」


「ねぇ、ザッ君。ザッ君が軍で成功して向こうで住む場所作って、私を迎えに来てよ。そうしたら、私の問題は解決するよ。ね」


「なんか強引だな」


「ザッ君が偉くなって私を迎えに来てくれるって思って待つようにするよ」


「そっか」


「うん。待ってる。それがダメだったら私もなんか色々と諦められると思うし、踏ん切りがつくと思う」


「でもそれって、僕の死亡フラグじゃないの?僕、この戦いが終わったら……とか、同じ事は繰り返される的な感じで、それにアニタは疫病神で、死神なんだろ?3回目として1年以内に僕、死ぬんじゃ」


「それはないよ。だって、ザッ君だし」


「それって、根拠無いなぁ」


と言った後で、ザクスとアニタは見つめ合って微笑み合った。


「じゃあ、帰るか」


「うん、帰ろ。ザッ君に力と希望を貰ったし」


「僕アニタに何もあげてないし」


二人は腰を上げて、アニタはくるまっていた魔物の毛皮を秘密の隠れ家にしまい込み、二人並んで家に帰った。家の前で、カレン達家族や知り合い数人が待っていた。


「やっぱり、お兄が見つけてきた。おかえり、アニタ姉、大丈夫?」


と言ってカレンはアニタに抱き着いた。


「ただいま、カレンちゃんごめんね。もう大丈夫だから」


「良かった。お兄の凄さは今でも変わらないね。お兄はザコじゃない。お兄は特別だよ」


「うん、私もそう思う。ザッ君は特別だって」


アニタとカレンは抱きしめあいながらそういった。


そして、出発の日になって、ザクスは召集状を受けた者達と共にローレム村を出発し、王都に入った。


1章 終わりです。

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ザコの僕には無理だと思うのですが1章~サイドストーリ~
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