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ザコの僕には無理だと思うのですが  作者: 柚穐
1章 少年期
18/583

不明

レクスはザクスに助けを求めてから、毎日、警備のお手伝いをしていた。誰かが帰ってきたらすぐに気が付けるように、兄ちゃんやお姉が、帰ってきたら、すぐ迎え入れられるように。


しかし、1日が過ぎ、2日が過ぎ、3日が過ぎた。レクスはだんだん、もう帰ってこないのかなと思い始めた。でも大きな鳥の魔物がそんな近くにはいないだろうと警備兵のオジサン達は言っているので、まだ我慢する必要があるのかなと思った。10歳のレクスにとっては待つことはすごく難しい。3日間待つこともすごく長く感じたと話したら、まだまだ待たないといけないと諭された。


5日たってもまだ帰ってこない。心配する気持ちと焦る気持ちが強すぎで涙が出そうになって1日を過ごした。


6日目、レクスは今日もダメなのかなと感じながら、村の戦闘訓練をこなし、警備のお手伝いを始めた。しばらくすると、壁の上の人たちが騒いでいた。レクスは、何事かと思い。壁の上に上り、森の方を見た。すると、数十人の人が草原を歩いているのが見えた。


レクスは気が付いた。


「帰ってきた!!攫われた人が帰ってきたんだよ!!」


と喜びながら、村に知らせて、迎える準備をした。


------------------------------------------------------------------


カレンは兄のザクスに一つのお願いをされた。ザクスは、森では先頭を歩いていたのに草原では最後尾を歩くと言い、カレンも隣を歩いていた。しかしお願いというのが、


「僕が『走れ』と合図をしたら、集団の先頭まで、『走れ』と皆に伝えながら走り、そのまま先頭を走って、村に入ってほしい」


という内容だった。カレンは


「お兄のお願いはちゃんと果たすよ」


と引き受けた。それでも兄のザクスといれば、走ることはないと思っていた。


しかし、草原に出ればすぐにローレムの村の壁が見えたが、かなり遠かった。それをただ、まっすぐに歩くだけだった。森のように見通しが悪いわけではないので、あちらこちらに魔物がいる事に気が付いた。こちらを睨んでいるようにも感じ、生きた心地がしない。


あそこの魔物、こちらを見ているのではないか?

別の所の魔物はすぐに襲ってくるのではないか?

草原の背の高い草の中に魔物が潜んでいるのではないか?

等、森を歩くより、危険だと感じた。


その説明は昨晩の『森の魔女』の小屋で兄から散々聞かされたが、聞いて想像するのと、実際に肌で感じてみるのとでは全然違った。


かなりの時間草原を歩いているように感じた。それなりに村に近づき、あと少しで村の人に声が届きそうな距離にまで近づいたと思えた。しかし緊張感はすごい、手に汗をかき、緊張による震えや、喉の渇きなどがハンパではない。


そこで、カレンが横を見上げると兄のザクスは平然と歩いている。怯えているように見えないし、魔物に襲われて死ぬなんて考えたり感じたりしていないように見えた。


「やっぱり、お兄、すごい」


カレンの口からぽろっと言葉が零れた。零れた言葉から、安心が生まれ、油断が生まれた。もう少しで草原を抜け村に着けるのではないか。あと少し……


しかし、その兄から突然の号令が発せられた。


「走れ!!魔物に見つかった!!カレン頼んだぞ!!」


カレンは驚いたが、お願いは果たす。そう決めていたので、すぐに走り出す。


「みんな、走って!魔物が来る!走って!走って!」


それで、みんな走り出した。視界の端で、魔物が近づいてきていることに気が付いた。誰かが間に合わないのではないか。そう思った時に突然、噴煙のようなものが横で起き、魔物の向きが後方に変わった。


「走って!」


慌てたり、振り向いたりして足を止めてはいけないと思い、声をかけながら走る。みんな必死になっている。あと少し、あと少し。もう少しでつく。村の入り口の門が開く。飛び込める。


「あと少しだからみんな急いで走って!」


村の門を抜ける。そして、一緒にいた人たちが次々に村に入ってきた。助かったと思った。


後ろで噴煙がもう一つ上がった。村の門から離れたところに噴煙があった。そして、その噴煙に魔物が突っ込んでいった。そして、気付く。お兄が何かした?お兄しか噴煙を起こせるようなものを持っていないはず、なら、なぜ!?魔物を引き付けているの?魔物と戦っているの?勝てないって言ってた。魔物に気が付かれたらお兄は死ぬって……そういえば、お兄って村で一番走るの遅かった。13歳のお兄は10歳の遅い子と速さはあまり変わらなかったはず。なら、なぜ、一番後ろを歩いていたの!?村の警備隊が村に走ってくる人影がないことを確認し、門を閉める。お兄はどこ!?さっきまで一緒にいたのに。どこにいるの?


「お兄!お兄!お兄はどこ!?誰か知らない?」


私は兄を探した。20人くらいで戻ってきたはず。村に迎えられて人が少し多い。お兄が見当たらない。


「お姉!お帰り!兄ちゃんは?助けに行ったんだよね」


弟のレクスが私を見つけて声をかけてきた。なんか、助かったのにお兄がいないことで安心していいのか不安になっていいのか混乱した。


「レクス、ただいま。お兄が助けに来てくれたんだけど……、さっきまで一緒にいたのに、見当たらないの。レクスもお兄を探して……」


「お姉。わかった、兄ちゃんが村の門の中には入ってきたの見た?」


「わからない」


「さっき2つくらい煙が草原で発生したけど、あれって誰かの魔法?」


「たぶん違う。みんなそんな余裕なかった。お兄が何かしたと思う」


「え?それって2つ目の煙が出てすぐ門が閉まったけど、兄ちゃんがあの煙を出したんだったら、あそこに兄ちゃんいたんじゃないの?さっき、煙に向かって魔物が突っ込んでいったけど」


「レクスも煙に向かって魔物が突っ込んだように見えたんだ」


二人して顔面が蒼白になっていく。


「お兄、大丈夫だよね」


「兄ちゃん……」


------------------------------------------------------------


「あ、危なかった。魔物に殺されるところだった」


背中に引っかき傷が残る。マントを失った。


「いててて、煙と薬でごまかせた……か」


ザクスは一息つきながら村の外を村の門ではなくいつも使う抜け道へと向かい、歩きながら移動する。そして、自分の体の臭いを嗅ぐ。


「やっぱり(くさ)っ!こんなに臭ったら、村で人に会えないじゃん。家にも帰れないし。やっぱり、魔物除けの薬を自分になんかつけるもんじゃないな」


魔物に襲われそうになったので、とっさに、魔物除けの薬を体にかけて、魔物に噛みつかれることを防いだ。しかし、爪は躱せなかったため傷を負った。


魔物除けの薬は非常に強い臭いを残す。草木、土にかければ、数時間で臭いは消えるが、服や動物に、そして、人間にかければ数日は臭いが残る。そのことを踏まえてザクスは呟いた。


「2、3日は隠れるか」


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カレンとレクスは兄を見つけることはできなかった。村の外に出てくれた警備兵の人達によって血が付いて魔物の爪で破かれたマントを手に入れることができた。それでもマントに付いた血の量が少ないため、死んだとは思えない。しかし、昨晩小屋にいた人達の中で、兄だけが村にたどり着かなかった。2人の気分は沈んでいた。カレンはお兄を見捨ててしまったのではないかと思い、レクスは兄ちゃんにしたお願いが初めから間違っていたのではないかと思った。


「お姉、兄ちゃんが助けに行ってくれたんだよね」


「うん。お兄が助けてくれた。たぶん、お兄以外の人では私たちは誰も助からなかった。でも…」


「帰ってこなかったね。兄ちゃん。どこかに遊びに行ったのかな」


「お兄…遊びに行ったんだといいな」


そこで、二人の会話は終わり、自宅への帰り道を歩いた。


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ザコの僕には無理だと思うのですが1章~サイドストーリ~
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