西の領主
「失礼します。ザクスと申します。ジャガーダメル様が来られるまで僭越ながらお相手をさせていただきます。よろしくお願いします」
ザクスは突然のことで変化と思いながらも相手に挨拶をする。すると相手が返答をする。
「ふむ、珍しい。奴が来るまでいつも一人で待っていたのだが、今日は話し相手が来たというのか。そなたは人間のようだな。奴は人間まで使用人にするようになったか……一般の人間など魔族の国では全く役に立たないというのに」
客人はザクスのことを品定めするため上から下までを嘗め回すように見る。ザクスはその視線に寒気を覚えながら相手を緊張しながら確認する。綺麗なゆったりとした服装を着ている。ザクスが見たことのない前合わせの服で腰に帯そして胸元が少し膨らんでおり、わきから胸元の上を通した紐が胸元で結ばれており、手首の方は少し広くなった長袖になっていた。そこから見える手は白い肌。そして同じく白い首と肩に乗り長く垂れている桃色の髪、視線を上げていくとスッキリした顎筋に深紅の唇。たぶん少しは化粧をしているのだろうと思われる。つぶやくごとに見える上あごのから生えている少し長めの二本の牙。やはり白い肌で綺麗な鼻筋に長く横にとがった耳、目は黒い眼球に金の瞳孔。そして、長いまつげ。と整えられた綺麗な眉毛、最後は額の中央少し上から生える一本の黒い角。かなり、上品で魔族としても上位に位置する方であることがうかがえる。ザクスは唾をのんだ後、会話をするために言葉を探す。
「ぼ、僕はアルムレイエット王国出身で色々ありまして今ここにいます……ここで一番力が弱いので、色々と渡されるものも一番下なのでみすぼらしいかもしれませんがご容赦お願いします」
とザクスは挨拶しながら頭を下げる。聞いた話と観察された内容から見下す視線に変わったまま、さらに観察している。ザクスは顔を上げても相手が口を開かないことを確認したザクスは意を決して口を開く。
「あの、失礼を承知でお伺いしたいのですが、お名前やジャガーダメル様とのご関係などをお聞きしてもよいでしょうか……」
ザクスは思い切って頼みごとをした。
「下っ端風情が……人間のくせに私のことも知らずに私の前に来るなど身の程を知れ」
魔族の女性はジャガーダメルを待つときに人を置かれたことが久しぶりだったので、退屈しのぎと遊びのつもりで話をする気になる。これまでの数十年の間、百何十回とここにきているがいつも一人か連れの者とで数時間から数十日の間この部屋に待たされていた。それがこれまでの普通であった。
普通になっていた所に、ジャガーダメル側の者が彼女の対応を寄越したことは珍しいこととなる。
面白い遊び道具ができたことで楽しく感じ始めている彼女は、無知なザクスのことをからかうつもりで、笑みを作りながら、軽く言葉尻を上げてみる。ただそれだけのつもりであるが、この客間の窓や扉、家具等が震え、ザクスにとってもかなりの威圧になる。
少しひるんだザクスは気分を害したものと思い、両膝をつき、頭を下げる。まだ土下座にはならないがいつでも土下座ができるような状態になる。そして、必死に謝罪する。
「申し訳ありません。無知であることをお許しください。こちらで来客の対応などしたことがなく、何も教えられずにつれてこられたもので……」
「よい。話し相手くらいしてやろう。奴もいつ帰ってくるかわかったものでもないし。それにいつも待たされている。何十年ぶりだわ、この部屋に奴以外を寄越したのは……話し相手を準備するとは私のことを少しは大切に思い始めてくれたという事かのぅ」
と魔族の女性は少し嬉しそうに話をする。ザクスはつま先を立てたままの膝立から、かかとに腰を下ろして変則の正座のような状態で話を聞く。そして、見下ろす形になった彼女は得意げに話を続ける。
「名乗ってやろう。私はドランラーマス魔王国でラドロムの領主をしているプライマス。私のことを敬うといいわ」
短い名乗りなのにザクスの知らない言葉が出てくる。恥はかき捨てということで何でも聞こうと口を開く。
「あの、プライマス様。無知な僕に教えてほしいのですが、ラドロムとはどのようなところでここからはどちらの方にあるのでしょうか」
ザクスは立ち位置を明確にしつつわからないことを尋ねた。すると、載せられやすい性格なのかどんどん話してくれるようだった。
「ラドロムはここより西にありますわ。私の領地で豊かな土地です。私の配下の者達は働き者で大きな町も小さい村もたくさん存在しており、住むところも自然も共に美しいところです。私のお気に入りはラドロムに流れ込むテイロン川の上流の滝がとても癒されるのです。ぜひ見に来てほしいですわ。あとは私の土地では鉱石や宝石の原石が取れて今付けている宝石も私の領地で取れて加工したものです……」
口調が定まらない魔族の女性のプライマスは純粋に自慢を始める。ザクスは聞き手に回り、相槌をうつ。ザクスは思う。ジャガーダメルを1人で待つのは寂しかったんだと理解したがそれと同時にジャガーダメルとプライマスの関係でよく争いがあるということで、ジャガーダメルを待つ間、機嫌を損ねずに対応し続けることができるかをザクスが感じた威圧からの命の危険を引きずり、ザクスは不安を少しずつ募らせていく。




