ハーレムを、作りたい 1
割とご都合主義の展開有り
話の前後がつながっていない可能性有り
つまらない可能性有り
5月に入り、ゴールデンウィークも過ぎ去ったある日のこと。
校舎の隅にある『発明科学部』の部室で、俺は机に片肘を突きながらなんとなく呟いた。
「モテたい……モテモテハーレムを作って勝ち組になりたい……」
そんな願望丸出しの、切なる願いを、ほぼ無意識といっていいほどなんとなく呟いていた。
モテたい。モテない人は誰しも一度はそんなことを思ったことがあるだろう。……なに、別に思ったことがあるからといって恥ずかしがる必要はない。
人は、動物は、植物は、この世に生を享けたモノは、皆子孫を残そうとする。それは俺たちが生まれてきた意味であり、先祖から俺たち、俺たちから子孫へと繰り返し受け継がれていく行為だからだ。
子孫を残すためには、大抵の場合は男と女、オスとメス、雄しべと雌しべ……と、対になる存在、相手が必要だ。中にはそれを己だけで済ましてしまう個体も存在するが、全体的に見ればそれは少数なので気にしないでおく。
で、子孫を残すために必要な相手を欲することは生物として至極当然のこと。だからそれを恥ずかしがる必要はないのだ。
相手がいない人はもっと声を大にして周りにアピールするんだ。「俺はモテたい」と。変な目で見られるかもしれない……というかほとんどは変な目で見られ、変人扱いされて終わるだろう。しかし、もしかして、万が一にでも、限りなくないことだが、その「モテたい」という気持ちに応えてくれる人が、反応してくれる人が居るかも知れない。
「そんなにモテたいんなら、協力してあげるんよ」
俺に、そんな人がいたように。
「……は?」
俺はその突然の提案に、思わず間抜けな声で返してしまう。というか、一瞬何を言われているかわからなかった。
「モテたいんでしょ?」
「あ、ああ」
「だから、協力してあげるんよ」
「……は?」
この人は何を言っているんだろう。そんな目で、俺の向かい側に座っていた女子――制服の上に白衣を羽織り、手入れされていないであろうボサボサの長い髪で顔が隠れてしまっている、この部で一番偉い人――長谷川部長を見る。
「む、何やら心外な視線を感じるんよ」
「気のせいじゃないですかね」
「ならいいんよ」
「……それで、いきなりどうしたんですか?」
「『いきなりどうした』は私の台詞なんよ」
なんと、「この人は何を言っているんだろうと」思ったのは部長もだったというのか。……あれ、なんか俺言ったっけ?
「俺なんかしましたっけ」
「突然、なんの前触れもなく、いきなり『モテたい』とか言い出したん」
「……そういえば言いましたね」
「まさか、忘れてた……んの?」
「まあ……」
特に意識した発言じゃなかったからな。だからこそ、部長の「協力する」がなんのことかわからな――ああ、なるほど。自分の発言を思い出して、やっと状況が理解できた。
「わかりましたよ、部長」
「またいきなりどうしたん」
「部長がさっき言ってた『協力』とは、俺のモテたい発言に対してだったんですね!」
「最初からそう言ってるんよ」
額に手を当て、呆れているような部長とは対照的に、俺はちょっとした謎が解けてすっきりとした気分だった。
……が、ここでまた別の謎が生まれる。
「部長はモテたいといった俺に協力……つまり、俺がモテるお手伝いとかをしてくれるってことでいいんですか?」
「それでいいんよ」
「それって、具体的にどうするんですか?」
部長は『協力する』と言った。それには「アドバイスをする」という意味も込められているのだろうが、それだけなら『アドバイスをする』と言ったはず。そうではなく『協力する』と言ったということは、そこには別の意味も込められている可能性が高い。
モテるためのお手伝い。それはなんとも嬉しい申し出だ。しかし、相手は部長。発明科学部というイマイチ存在理由が分かっていないおかしな部の長をやっている人……まあ、今この部の総部員数は俺と部長の2名だけだから、俺より上の長谷川先輩が部長をやっているだけなんだが……そんな人がする「協力」、きっとまともなものじゃない。
あ、俺もこんな部に所属してるけど、部長とは違ってまともな人間だから。俺、古田宏太は彼女いない歴=年齢のバリバリ童貞でちょっとエロい妄想なんかもしちゃう、至って普通の男子高校生だから。
「具体的に……そうだ、いいのがあったんよ」
部長はそう言うと部屋の隅に行き、そこに山積みになっていたダンボールの中の一つ、『勝手に触ると危ないんよBOX No.26』と書かれたダンボールを漁り始めた。
発明科学部、という名称からも察することができるかもしれないが、この部屋には発明品が大量に保管されている。……保管? まあ、保管でいいな。ダンボールに押し込まれて雑な管理だけど。
そしてその発明品を発明した人こそ部長だ。俺は発明なんてできないからな。じゃあなんでこんな部活に所属してるんだよというツッコミがあるかもしれないがそれは……それは、まあ、また機会があったら話すとしよう。というわけで、この部屋にある発明品は全て部長が作ったものだ。
部長は天才発明家と言われ世界でその名を轟かせている『長谷川雪三郎』の孫であり、その才能はバッチリと遺伝したようだ。……ただ、そのじいさんが世界のために発明をするのなら、孫は自分の趣味でガラクタばかり発明する困った人なのだが。そしてたまに俺を実験台にする困った人なのだが。
「あ、あったあった。これなんよ」
部長がお目当てのものを見つけたようで、こちらに戻ってくる。よく考えなくても、やっぱり『協力』という名の実験なんだろうな……。
そう思うと『協力』を断りたくなるけど、部長のいろんな意味で凄い発明品の相手を出来るのは俺しかいないので、もうここは諦めるしかない。別に、今に始まったことじゃないしな。
「これを宏太に授けるんよ」
「……なんですか、これ?」
小さな四角い箱みたいなものを、部長が両手で持ってこちらに差し出している。まるで好きな人にプレゼントを渡す乙女みたいなポーズだけど、その手にあるのはおそらく部長の発明品。……別の意味でドキドキするぜ。
しかし、中には何が入っているんだろう。箱自体が発明品だという可能性もあるけど……箱は普通そうだし、だとしたらやっぱり中身が発明品? 部長が作った発明品であの箱に入りそうなのは……わからん。候補が多すぎる。しかし、俺が見たことのあるあの大きさの発明品でそこまで危険なものはなかったはずだし、そこまで警戒しなくてもいいか。
……はっ! きた、俺の頭に発想の女神様(※)が降りてきたぞ!
※説明しよう! 「発想の女神様」とは、古田宏太が考え事をしている際に時折見せる飛躍的ヒラメキのことである。主にそのヒラメキは欲望方面で力を発揮、順序立てて思考してきた過程を無視し、全く別の結論にいきなりたどり着かせるのだ。正しい結論に辿り着くよりも間違った欲望にたどり着かせる時のほうが多いぞ!
なるほど、なるほどそういうことだったのか。全てが繋がった!
「これは凄いんよ。なんたって――」
「待ってください、部長」
「――今度はなんなんよ」
「わかったんです。部長が、俺に何をしようとしているのか、そして、それがなんなのか……」
「そのやけに気取った話し方……あー、また宏太の妄想病が始まったんね」
「部長がなぜ突然『協力する』だなんて言ったのか……」
「思うだけならまだしも、ついに『モテない』なんて声に出し始めた宏太が可哀想になっただけなんよ」
「まあまあ、恥ずかしいからってごまかさなくていいんですよ」
「別にごまかしてないん――」
「まあまあ。まあまあまあ」
「……この宏太面倒くさいんよ」
「ずばり、部長。あなたは俺のことが好きなんですね?」
「……へ?」
「『モテない』という俺に『協力する』という口実で近づこうとしたんですね」
「な、な、ななななに言ってるん!? 私が宏太のこと、す、好きなんて、そんなわけないんよ!」
「いいえ、俺にはわかるんです……」
俺の考えはこうだ。
モテない、というのはつまり彼女がいないということ。モテたい、というのは彼女募集中ということ。それを声に出した俺に対して、密かに俺に恋心を抱いていた部長はチャンスだと思った。恋人になるなら今しかない、と。しかし、いきなり「恋人になりませんか?」なんて恥ずかしがり屋の乙女が言えるわけがない。そこで部長は「モテたい宏太くんのお手伝いをするふりをして、それとなく宏太くんに想いを伝えよう」と、そう考え『協力する』と言ってきた。
「な、何を言ってるんよ宏太……妄想にも程があるんよ。宏太も宏太の妄想の私もとてもキモいんよ」
「まだ妄想だと言い張る気ですか……いいでしょう、ならば俺の考えを裏付けする、決定的な証拠をお見せしましょう!」
俺はそう言って、部長が手から落としそうになっていた箱を奪い取る。
俺の考えが正しければ、俺の女神様のお導きならば、この中に入っているのは
「素直になれない乙女は意外と大胆だったりするものですよ。こんなものを用意するくらいには、ね」
四角い箱を開けると、そこには小さな金属で出来たリング。赤く光る宝石のようなものが一部分にはめ込まれているそれは、指輪というやつだ。そして、この状況での指輪といえば、ただのアクセサリーではなく、深い意味を持ったもの。
「この『婚約指輪』、これこそが部長が俺のことを好きだという、『協力する』という口実でお近づきになろうとした証拠です!」
まるで犯人を追い詰めたような気分だが、まあ気持ちを偽ってごまかす部長にはこれくらいでいい。これで、犯人は白状……部長も素直に認めるだろう。
「いやいやいや! 確かに指輪だったけど、箱の中身を当てられる妄想病中の宏太の勘は凄いんだけど、別に婚約指輪じゃないんよ!?」
「恥ずかしいからって」
「この宏太本当に面倒くさいんよ。……持ち運びしやすいように指輪型にしたのは間違いだったんよー」
「とりあえず部長が俺とお付き合い……いえ、結婚したいのは分かりました。けれど、まずはお友達からと――」
カチッ、と音がする。なんの音だと確認する前に、俺はそれを理解した。……嫌でも理解する羽目になった。
「あがががががががががががががががががががががが」
「まったく、そろそろ元の宏太に戻るんよ」
「あががががががががっ……」
体が、痺れ、意識が……
「はっ!」
「おかえりなんよ」
「あれ、俺……」
頭がボーっとする。それに体が痺れている。まるで電流が走ったあとのような――って実際に走ったっぽいな。
部長の手元には、持つところがゴムでできていて、先には丸い鉄の玉がついた棒状の発明品『バチバチちゃん改』が握られていた。名前からわかるとおり、あれを人に押し当ててスイッチを入れれば電気を流すことができる。喰らえばしばらく体が痺れる程度にはダメージを負うことになるが、一応強さを調節でき、最大でも心臓の弱い方やお子様にさえ使わなければ危なくない発明品であるため、お仕置きの際にもっぱら使われている。
あれを部長が持っている……というか俺の体が痺れていることからも、俺は「お仕置き」されたのだろう。あれが使われた、ということは、俺はどうやらまたやってしまったらしい。
「部長、俺また降りてきてたんですね」
「そうなんよー。また妄想病になってたんよー」
実は俺にはとある病気がある。病気、といっても体に害があるような方の病気ではなく、「中二病」と呼ばれている病気に近い方の病気だ。部長が「妄想病」と名付けたその病気は、何の前触れもなしに突然発症する。
俺はその病気が発症しているときのことはあまり覚えていないが、発症する前に頭の中に何かが流れ込んでくる感じは覚えているので、俺はそれを「発想の悪魔」と呼んでいる……はずなんだが、なぜか「女神」というフレーズがいつも頭の中に残っている。
まあそんなことは置いておいて、俺はこの病気が発症している最中はおかしなことになっているらしい。部長が言うには「面倒臭くて勘の鋭い、頭のいい馬鹿」だと。で、それを止めるためにいつも部長は『バチバチちゃん改』を、嫌だけど仕方なく使ってくれているそうだ。いつもボーっとした頭で見る部長の顔がにやけているのは気のせいだろう、うん。
「いつも迷惑かけてすいません部長」
「いいんよ。……それに、あの宏太も嫌いではないし」
「え、発症中の俺の好感度がそこまで悪くないぞ? 一体何をしてるんだかいよいよ気になってきた」
「そんなことはどうでもいいんよ。さっきは妄想病のせいでできなかったそれの説明をするんよ」
そう言って部長は俺の右手を指さす。いつの間にか握られていた自分の右手を開くとそこには銀色のリングが。
「……指輪?」
「それはただの指輪じゃないんよ。……あ、婚約指輪ではないんよ?」
「わかってますよ。部長もおかしなこといいますね」
「言ったのは宏太なんよ……まあ、気を取り直して。それは私が発明した『揺さぶりくん』なんよ!」
「揺さぶりくんですか」
部長のネーミングセンスはだいたいこんな感じ。どんな発明品なのかなんとなくわかるような、よくわからないような、名前だけじゃイマイチ判断できない。
「これはどんな機能があるんですか?」
「よく聞いてくれたんよ。この『揺さぶりくん』は名前からもわかるように、相手の感情を大きく動かすことが出来るんよ!」
「うん……うん?」
説明を聞いても微妙に分からない。
「えー、つまり、どういうことなんだってばよ」
「宏太は相変わらず理解が遅いんよ」
「すいません」
「そんな宏太のために、いい例えをしてあげるんよ。宏太は、みんなが嫌がることを率先してやる女の子を見て、どう思うん?」
嫌がること……あれか、クラス委員長とか誰もやりたがらないことを自分から立候補してやったり、掃除とかでみんながサボる中、一人残って綺麗にしているとか。現実じゃあまり見ないけど、創作の話じゃよく見る場面だ。
「凄いと思いますね。なかなかできることじゃないですし」
「そういう子に、憧れや尊敬をしたり、素敵だなって好意を抱いたり、そういうことはないん?」
「……ありますね」
俺はよくそういう子を気になったりする。……あ、もちろん創作のキャラクターの話ね。
「でもそのちょっとした『好意』ってそれが恋心まで発展することってなかなかないんよね」
「確かに……ないような気がします」
憧れてああいう人間になりたい、尊敬して見習いたいと思っても、それは自分を変えるきっかけにしか過ぎなくて、それをやっていた人を好きだと思うことはなかなかない。素敵だと思って、その人のことを多少は気にするようになるかもしれないけど、やっぱりその程度でしかなく、それ以上になることはなかなかない。……あ、創作の物語でよくそういうのを見かけるなって話ね。
「そこで、この『揺さぶりくん』の出番なんよ」
「はぁ」
「この『揺さぶりくん』で感情を大きく動かすことで、僅かに抱いたその『好意』を恋心まで発展させることができるんよ!」
「はぁ……え?」
僅かな好意を恋心まで発展させるということは、えーと、それはつまり
「『いいかも』から『いいじゃん』、『いいじゃん』から『好きかも』に、『好きかも』から『好き』に、『好き』から『大好き』に。好意のレベルが段階的に上がっていくとしたら、『揺さぶるくん』を使えば『いいかも』から一瞬で『大好き』に上げることができる。つまりそういうことですか?」
「そういうことなんよ」
「え、ええええええええええええええ!?」
な、なんだそのチート的アイテムは! ギャルゲーで最初の方にありそうな『大丈夫?』と優しく声をかける選択肢を選んだら一気に終盤の恋人ルートに進むようなものじゃないか!
「『モテたい』なんて呟く可哀想な宏太に、偉大な発明家からのお助けアイテムなんよ。気に入って貰えたらいいんけど」
「こんなの、気に入らないわけないじゃないですか!」
誰かが部長のことを「ガラクタばかり発明する困った人」とか、そんな部長の「協力」をまともなものじゃないとか思ってたらしいけど、誰だそんな馬鹿なことを考えてた愚か者は。部長は神だよ、モテない男に救いの手を差し伸べてくれる女神さまだよ! モテたい男の最高のサポーターだよ!
「ならよかったん。これで宏太もモテモテになれるよう頑張るといいんよ」
「頑張る、頑張ります!」
これさえあれば、俺も念願のモテモテに! ハーレムルートに!
「では、早速行ってきます!」
「行くって、どこ行くん?」
「決まってるじゃないですか、こんな便利な発明品を持ってるんです。今から校舎に残ってる人たちをハーレムメンバーにするんですよ!」
「妄想病中じゃない宏太も結構キモいんよね」
部長の好感度がめきめき落ちている気がするけど、気にしない。どうせ指輪を使えば簡単に上がるんだしな!
それじゃあ、早速放課後の学校を走り回って女子たちを落としまくってくるとしますか。……って、そういえばこの指輪どうやって使うんだろう。危なくわからないまま部屋から飛び出すところだった。
「部長、この『揺さぶるくん』ってどうやって使えばいいんすか?」
「指にはめればいいんよ。あ、でも気をつけるんよ。その指輪を付けている間は――」
「では、行ってきます!」
部長がまだ何かを行っていた気がしたが、もう我慢ができなかったので俺は部室を飛び出す。
怒ってるかもしれないけど、この指輪さえあれば大丈夫。
さあ、ここから俺のハーレム物語の幕開けだ!
「木葉よ、聞こえますか?」
こ、この声は……ばっちゃ!
「そうです、私は知の泉の女神【ばっちゃ】」
ばっちゃが来たということは、まさか
「はい、ネタを授けにきました」
今回は一体どのようなネタを授けてくれるのですか
「今回は、新しい物語りのネタを授けましょう」
新作……?
「舞台は現代日本。主人公は高校生の少年」
なるほどなるほど
「そしてテーマは『モテモテハーレム』です」
ハーレム物っすか……正直よくあるネタですね
「よくあるというのは、それが求めれているということです」
確かに。それで、どういった内容にすればいいのでしょうか
「任せます」
えっ
「私はテーマを授けに来ただけです。なので詳しい内容は全て任せます」
そ、そんな! 俺正直ハーレム物かける自信ないっすよ!
「大丈夫です。あなたならできます。それでは、いい物語を期待していますよ」
あ、ばっちゃ! ばっちゃあああああああああああああ!
ども、木葉っす
そんな感じで突然ネタが授けられたので、まさかの3作品目っす
3つも同時に連載して大丈夫かって感じですが、大丈夫じゃないです
チョーやばいっす。でも、思い浮かんだネタは形にしないと気がすまない性格なんで、こんな感じになっちまいやした
書いている途中で「何が書きたいんだろうか」と自分でもわからなくなる作品っすが
頑張って書きやすんで読んでくだせぇ
3つ同時なのでペースは遅いっすが、どれも最後まで書ききろうと、一応思ってるんでそこんとこ、よろしく




