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死霊のはらわた(合挽き)

(´・ω・`)君はいきのびることができるか?

交代の部隊が来て、簡単な打ち合わせが終わり、本日の職務が終了する。

夕日が眩しいなか駐屯地へ戻る。

中隊宿舎の横に併設されている食堂では、もう既に長い列が始まっていた。

人が居ない配給カウンターに行くと兵站部の兵が直に出てきた。

「キンカー軍曹、今日はご帰宅ですね。パンとチーズはこちらです。ワインも入ってます。気を付けてお持ち帰りください。」

「ワイン?」

自分の兵員番号と名前の入った配給袋を受け取りながら、受領の木片に傷をつける。

「今日は、特別配給が出て皆にエールが出たんです。」

「ふん。それは良いな。」

どうりで食堂が騒がしいはずだ。

周りを見渡すと、宿舎で生活する兵が配膳と共にジョッキを受け取っている。

席についていっきに飲む者、ちびちび味わって飲む者、さまざまだ。


明日は休日で、今日は家に帰るので食事配給では無く食材配給にした。

家では妻がシチューを作って帰りを待っているはずだ。

それにワインが付くのか。豪勢になるな。ワインを飲んで喜ぶ妻の顔を想像する。

駐屯地内は基本、酒は禁止だが、薬や、増強食として渡される時がある、それは命令で飲まなければいけない物だが。

特別配給は、軍の奢りである。タダ酒だ、皆うれしいはずが無い。

但し、理由が無ければ出ない。嫌な話で無ければ、幸いだ。


カウンターを離れ、混雑する食堂を歩く、連隊長直属小隊の昔の同僚がジョッキを煽っていたので、声をかけ、挨拶代わりにそれとなく聞いてみた。

「景気が良いが、何か在ったのか?」

オレの顔を見るとカンの良い昔の同僚は小声で耳打ちした。

「速報だから、詳細は不明だが、どうやら、北方の戦争が片付いたらしい。連隊長は移動命令が出るのでは?と疑心暗鬼だ。そのため、せっかく溜めた物資の一分を放出して身軽になることになった。」

必要だが無くても何とかなる酒の類は、真っ先に放棄される。

もちろん、これ見よがしに廃棄すると兵の士気がさがる。

少し悪い情報だ。また移動かもしれない。

戦友はまじめな顔から、ふぬけ顔に戻って叫んだ。

「皇帝陛下から奢りだ!!」

兵共が歓声を上げる。

「皇帝陛下にカンパーイ!!」「「「カンパーイ」」」」

食堂を出るまえに隣りの小隊のお調子者で有名なウシ新兵が騒ぎ、それに乗って皆歌ったり騒いだりしている。

憲兵伍長が睨むが、未だ憲兵軍曹が何も言わないので今日は無礼講なのであろう。


駐屯地営門で当番兵に兵員札を渡すと、休暇兵扱いになる。

明後日の日没までにこの営門を潜らなければ、脱走兵扱いだ。

なじみの当番兵に挨拶して家路を急ぐ。


日が落ちて、街道を歩く、

この街道は帝国工兵隊が整備したモノだ。

オレは初めブッチ魔王軍の一兵卒であった。

ウシ人の新魔王との戦に負け軍団ごと捕虜になった。

あの、戦いは酷かった。

我が軍の魔法中隊の障壁を易々と新魔王の魔法弾が突き抜け、兵たちが死んでいった。

強力な対魔法鎧を着ているブッチ魔王が魔法弾で一瞬で消え去った。


オレが居た部隊は武装解除された、荒野に連れられてきて穴を掘れと命令された時は。

兵は皆、自分の墓穴を掘る気分だった。


兵たちは、ひたすら、穴を掘り、固め。土を運び、石を運んだ。

野営で毛布に包まって睡眠をとり、固いビスケットで命をつないだ。

その後、何日かするとテントが渡され、駐屯地を作り、資材が届いて、宿舎ができ始めた。

食事も良くなった。


穴は溝になり、空堀になると。部隊は宿舎を解体して移動し、又、一から穴を掘った。


その繰り返しの日々だったが、いきなり終わった。他の部隊と合流し空堀がつながると。

ウシ兵ブタ兵混成魔法小隊が来て土魔法を駆使して堀の強度を高める魔法をかけた。

部隊長から「今日は休み」といきなり言われ。

朝から兵は皆ぼんやりしていた。

「きたぞー!!」の掛け声だ。

空堀に水が流れてきて河になった。

その時、初めて俺たちが掘っていたのは墓穴では無く、運河と水路であることを知った。


それからオレたちの軍団は解散して。バラバラになり。

オレは、新設部隊に配属された。連隊長殿はウシだったが、連隊参謀はブタだった。

ウシ兵ブタ兵その他種族の居る混成工兵連隊で戦争捕虜扱いウォープリズナーのオレ達はいきなり帝国兵になり装備を渡された。


元の殺し会った兵たちがいきなり寝起きと釜の飯を食い始めたので、そりゃあイロイロあった。

だが、オレたちの連隊は、命令に従って、道を作り、橋を作り、堤防を築き、森を切り開き山を削った。各地を移動しながら。

この頃になると、かつての、ウシだのブタだのが関係なくなり。皆が”オレ達!帝国105工兵連隊!!”と肩を抱合い酒を呑み歌った。

それだけ下される命令は過酷なモノで能力が在れば種族は関係ないほど危険な任務ばかりだった。


めまぐるしく移動するオレ達の連隊は、川沿いの国境での防衛施設作りの任務を受ける。

森を切り開き監視所と防衛陣地を構築する。簡単な任務だったが、危険な生物が多かったため。連隊は少なからず損害を出した。

オレは戦友が傷付くのが嫌だった。

今の皇帝の魔法攻撃で目の前の戦友が粉々になるのを見てきた、頭を痛ませ、試行錯誤をして小隊をまとめた。

いつの間にか兵の信頼を得て、伍長、軍曹と、昇進した。

後方の、治安維持で出た村で、仕立て屋の三女としてお針子をしていた妻と出会った。

いろいろ話した。

怒った、泣いた、下らないコトで喜び合った。

決心して婚姻を申し込むと想いの他、簡単に本人から了解を得た。

御父さんは了承されたが、以外にも御母さんからは危険な軍人の嫁は務まらないと反対された。

結局、戦友たちの言葉に助けられ、結婚することができた。

結婚の証が無いので困っているとボヤくと。

ウシ兵の伍長が質の悪い金貨を二枚、探してきて指輪に加工してくれた。

片方がオレの指にはまっている、大成功だと小隊の皆は呑んだ暮れた。


北方がキナ臭くなり俺たちの連隊はいきなり移動命令を受けた。

あわただしく移動して、駐屯地を整備、街道の警備と整備が任務になった。

妻には実家で待ってくれれば良いと言ったが付いていくといってくれた。

駐屯地近くの大きな村に軍人官舎を建て、ソコに入ってもらった。

家族と離れ不安でないのか?たずねると、そんな覚悟はできてます。と言われた。


駐屯地と村の官舎の中間を過ぎた所の丘にある大きな大木。

気にはなっていたが、古い記憶を思い出した。


オレは昔、ココに来た事がある。

部隊の移動中、この木の下で野営したコトが在った。

あの頃はブッチ軍に入隊したばかりの新兵で右も左も解らなかった。

食糧確保に失敗して、この丘の木の木陰で、皆と一緒に空腹と晩秋の寒さに震えて薄い毛布だけで野営したことがあった。

あの時は回りは全て荒野であったが、今では農地と牧草地だ。

時代が変った、等とあの頃のオレに言って信じるだろうか。


思わず笑みがこぼれる。

あの時の明日をも知れない絶望的を味わっていた新兵が、今では、軍曹で帰ると微笑みかける妻と暖かい家あるなんてしんじられるか?


足を止め、数年前は死神の羽音であった風が揺らす大木のざわめきに耳をすます。

しかし、背筋に緊張が走る!官給品の剣に手をかけ叫ぶ。

「誰だ!!」

暗闇から一陣の閃光がみえ、背中に熱い灼熱の痛みが走る、叫びたくなるが体の自由が無くなる。

まるで糸を切られた人形の様に体が動かなくなるが、視界にパンとチーズが入った配給袋が見える、イヤ、オレが大地に倒れているんだ。

体が、動かない、パンを届けなければ、家で妻が待っている。目の前が暗い…。袋に手を伸ばすと近づいた敵がオレに剣を振り下ろすのが見え…。




「憲兵少尉どの!該者の身元が割れました!」

夜勤明けで昼過ぎまで眠れる予定だったが早朝の事件発生で寝入りばなを叩き起こされた。すこぶる機嫌が悪い。

話は、簡単だ、要約すると。

休暇で家に帰る途中の下士官が家に帰らず朝に冷たくなって路上で発見されただけだ。

大問題だ。

さらに問題は、村から日の出と共に出た農夫が第一発見者で、村の自警団に駆け込み、自警団から駐屯地に伝令、野次ウシと野次ブタが現場を踏み倒した後だと言うことが頭痛のタネだ。

「該者は工兵のキンカー先任軍曹、既婚者で村の官舎に細君と住んでます。夫婦仲は良く近所の話では熱々の新婚さんです。ご近所との仲も良いです。連隊の移動と共に引っ越してきたばかり。上官の評価は良く。部下の評価は寡黙で信頼できる下士官の様です。」

「つまり、怨恨の線は無いのか?」

「前日の足取りは、駐屯地補給所で配給袋を受け取り、営門検査で、剣と配給袋を装備していた事を当番兵が確認しています。」

予備憲兵が、張った非常線の中に入り。毛布で隠された該者を検分する。

「ひどいな、」

「背中から長めの刃物を使って、一太刀で重症、その後、倒れた該者を背中から首部脊椎に止めです。防衛痕はありませんが、金品、官給武器、配給袋は見つかっていません。」

「防衛痕は無いのに指に損傷があるな。」

「ああ、それは出血の度合いから言って、心停止の後の傷のようです。」

「ふん、軍歴は?」

「軍歴は長いです、元ブッチ魔王軍所属、一等兵、魔王会戦で捕虜になり、999再教育軍団、解散後、帝国陸軍新設時に編入、最終、帝国軍1052工兵小隊、先任軍曹です。」

「歴戦の兵隊だな。」

「はい、普通の物取では返り討ちにあうはずです。」


「ぶっひいいいいいいいいい!!」

非常線を掻い潜って若いブタ人の女性が毛布の下の仏にすがって泣く。

憲兵の誰も止めなかった。

「あー少尉殿、キンカー夫人です。」

今まで何度も見てきたが嫌な光景だ。

「夫人から、情報が得られるか?」

オレはウシ人だから、ブタ人の伍長に頼むつもりだったが。

表情から嫌そうだ、誰でも、最愛の人を無くしたばかりの御婦人を尋問するのはイヤだろう。

「いや、俺では無理です…。」

泣く子も黙る帝国陸軍憲兵隊でも婦人の涙には弱い。

「少尉殿、チョットこちらに来て下さい!!」

離れた茂みから、憲兵軍曹が声をかける。

向かうと、軍曹が、折畳モノサシを地面に置いてメモ帳にスケッチをしていた。

「何かあったか?」

かなり真剣に黒炭筆を動かしている。

「不自然な足跡が茂みにあります。」

軍曹が示した地面を見る。

「ウシブタにしては足跡が小さいな。」

「はい、ニンゲン族のブーツが最低三人分です、うち一つは鋲入りブーツで彼等の軍用ブーツに良く似てます。」

茂みから、該者の現場を望む。

「くそ!!奇襲には絶好の位置だ。」

「はい、おそらく、ここで潜んで通り過ぎたところを襲ったんだと思います。」

「ここらに人族は住んでいるのか?」

「悪魔族、人族、妖精族は監視対象になっています、本部で洗い直しを頼みましたが、近隣の該当者は昨晩の居場所は判明しています。」

これで、顔見知りの犯行でないのは確実で、幸いで在ったが。仕事的には面倒なコトになった。

「物取りならもう既に移動しているだろうが。少数集団の人族の浸透攻撃部隊なら未だ獲物を探してウロウロしているだろう。」

「こんな、領内奥深くまで、浸透攻撃ですか?連隊司令部には情報を伝えますか。」

憲兵本部への連絡はもちろんだが、流れの夜盗ならもう既に、連隊の担当区域の外に出ているだろう。

「連隊司令部に伝えて、師団に情報を上げてもらおう。未だ、流れの夜盗の線も消えてない、各村の自警団にそれと無く警告を出しておけ。」

憲兵伍長が走ってきた。

「少尉殿、取られていたものが判明しました、財布、官給武器、配給袋、中身は連隊パン二つ、チーズ一塊、軍用ワイン小、怪我回復ポーション小二つ、あと、金の指輪一つ」

「金の指輪?」

おおよそ軍曹には似つかわしくない物だ。

憲兵伍長がいらだっているのか怒っているの良く解からない口調で説明した。

「ああ、古い低質金貨で作った結婚指輪で、ペアリングだったそうです、夫人が片割れを持っていました、スケッチはコレです。」

頑張ってキンカー夫人から話を聞いたらしい。

伍長は、結婚指輪まで奪った犯人にかなり腹を立てている様子だ。

スケッチを見る限りかなり特徴的な指輪で名前入りだ、同じ物は婦人以外持って居ないだろう。

「よし、このスケッチを何枚か作って、各村の道具屋に見せろ、ひょっとしたら金に換えるかもしれない。行商人にも見せてやれ。何か思い出すかもしれない。」

「はい。わかりました。」

力強く返事をして走っていく伍長、まあ、ヤル気が在るのは良い事だ。


現場の片付けをして、軍曹の埋葬が終わると。

自警団との連絡員をのこして、一旦、駐屯地へ戻った。昼すぎだ、食堂がしまってしまう。

駐屯地の営門では、二十人ぐらいの男たちが当番兵と押し問答をしている。

当番兵らが男たちを抑えてる間に入門する。

帰還の手続きをする時、当番兵に尋ねる。なにかあったのか?

「昼前に、連隊長から非常呼集が出て本部前に整列、連隊長自ら装具点検をしました。一部の小隊はもう既に出撃済みです。」

驚いた、えらいことになっている。

「門の前にいた連中は?」

「開拓団の世話役や、村の自警団の連中です。陳情ですよ、村に兵を出して欲しいとか、武器を貸して欲しいとか、です。」


急いで連隊憲兵詰め所に戻ると、既に三名程しか残っていなかった。

「ああ、少尉殿、良かった。キンカー軍曹の件で憲兵本部から矢の様な催促です。”早急に報告書を提出せよ”だそうです。」

「速報で暫定情報を送っただろう、えらい騒ぎだが、連隊内は、どうなってるんだ?」

「国境周りを荒らし回っていたニンゲン族の小隊がこの地域に出たらしいです。暫定情報を送ったら、師団本部が緊急警戒情報を出して。村も開拓団も大騒ぎです。」

「なに?キンカー軍曹はニンゲン族の軍に襲われたのか?」

「少なくとも師団本部はそう考えているようです。国境警備の連中が取り逃がした、と言うわけではなく、ウワサでは追跡班が撃退された様です。」

国境警備でも追跡班は魔法使いを含む混成部隊で戦闘特化したエリート小隊たちだ。

話を終えると別の兵が用件を伝えてきた。師団本部と連隊本部から内容は同じく、”早く報告書を出せ”


「やれやれ、大人気で、飯も喰えないな。」

「手伝います。」

「あの、これから食堂まで行って何か食べるモノを持ってきます。」

「ああたのむ、」


書類を作成してスケッチを写してソレを他の者が複写して、五部作った。

皆で読み合わせしながら誤字脱字を修正していると来客があった。


「帝国憲兵本部特殊警備部スイ=シンメンタール憲兵中佐です。」

ウシ人の苗字付きの貴族様だ。ブラウンとホワイトの二色で高貴な短い毛並みが良い家の出だと物語っている。

おいおいホントにすごい人気だ、こんな偉い人まで来ちゃったよ。

「昨晩起こった、殺人事件について確認したいことがあり来ました。ご遺体を確認したかったのですが埋葬された後だと聞いてこちらにきました。」

現場まで行ったのか。流石だな。

「今、未だ報告書は作成中です。暫定情報はもう既に御覧になられましたか?」

「そちらは見ました、ぜひ検分した方と会ってお話を聞きたくお伺いしました。」

「そうですか…。コレが作成中の報告書ですが、未だ一部未完成です。インクも乾いてないかもしれませんのでお手を汚さぬよう。」

詰め所閲覧用の報告書を見せる。表紙から読み始める中佐。厳しい目で読んでいる。

「よくできた報告書です。なるほど、解かりやすい。」

「報告書では襲撃者は三人以上と書いてますが。監視役や、二手に分かれて潜んでいた場合もっと多いと思います。」

「いえ、それは無いと思います。この、足跡のスケッチと所見はかなり鋭いですね。」

「うちの部下は優秀ですから。」

一応、誉めてくれたので、乗っておく。そういえば憲兵軍曹の実家は猟師だったな。

「中佐殿、なぜ、数人と限定を?」

キンカー軍曹の遺体所見スケッチを睨んだまま、こちらを見た。

「ああ、すいません。キンカー軍曹は後ろから一太刀で倒れた所で一突き。」

「はい、おかげで凶器の長さと幅が大体判断できます。曲刃、片刃の切っ先付きロングソード、珍しい形です。」

「フム、ありがとうございます。この報告書は頂いてもよろしいですか?」

「申し訳ございません。今回何故か方々から報告書の請求が来ており複製が間に合いません。憲兵本部にも一部送る予定ですのでそちらの方でおねがいします。」

「わかりました、残念です。いや、だが、良く解かりました。コレなら大体、特定ができます。」

なに?犯人を知っているのか?

「あの、犯人を知っているのですか?」

「犯人…。ああ、そうですね、いやいや申し訳ない。憲兵隊は捜査権と、逮捕権があるんでした。」

何を憲兵の基本の基本、一番に叩き込まれるコトだ。本当に憲兵中佐なのか?

不審な目を感じ取ったのか。申し訳無さそうに答えた。


「犯人…。と言うべきか、キンカー軍曹を殺害したのは、勇者です。」


意外な発言に驚いて口を開けてしまった。反芻中なら中身を出してしまっただろう。

続けて話す中佐の声には羨望がにじんでいた。


「キンカー軍曹は戦って死んだのです。」






焚き火をぼんやりと眺めると今までのコトを思い出した。

みゆきちゃんと大学の門の前で待ち合わせて、一緒に門を潜った。

先輩たちが思い思いの奇抜な形でサークル勧誘をしていた。”お祭りみたいだね”と言ったら”そうね、毎日こうなのかしら。”と微笑み返した。


すぐにサークルに誘われた。

マッチョな男がいきなり前に現れてボディビル部に誘われた。びっくりしたが。ああ、こうゆうのも在りなんだ。とあの時は何となく納得した。

そしたらいきなり目がくらんで、異世界のお城の地下室に居た。

お姫さまが”魔王が攻めてきたので助けてくれ”といった。

小説みたいだった。

みゆきちゃんは腕にしがみついていたが事情がわかると楽しんでいるようだった。

ぼくは不安だった。

マッチョの先輩の言動は凄く心強かった。

先輩が居れば何とかなると思ったが。

ステータスで一緒に戦えないと言われた。

次の日、お姫様から、マッチョ先輩の反応が消えたと、恐らく死んだと言われた。

間違いじゃないかと言ったが石版は割れたぐらいでは反応が消えないといった。

怖かった、先輩でも死んでしまうんだと思った。

後で思えば、先輩の言葉は高校の時の柔道部の大山君の様な人だった。

くだらないことを笑ってくれた。怒ってくれた。凄く頼りになるヤツだった。


みゆきちゃんとお姫様と女騎士と魔法使いの子で一緒に旅に出た。

色んな魔物と戦った。

初めは怖かったが段々慣れた。強くなった。

ついに、河を渡って、魔王の居る国に入った。

魔物は強かったが、すぐに追い越した。


魔物より、宿に泊まれないのが辛かった。

風呂に入りたい。牛丼が食べたい。チャーハンが恋しい。暖かい布団でグッスリ眠りたい。


マッチョ先輩は一人でこんな所で死んで親御さんはどう思うんだろう。


「勇者さま~、お食事の用意が整いましたよ~♪」

「ちょっと、ミネルバ、あたしが作ってるって言ってるでしょ!」

「早い者勝ちですわ~♪あ、ら、よっと。」

「ぎゃー、熱い!!」

「何するのよ、えい。」

ひらり

「あーら?マンドレイクかしら?危ないわね~(笑)」

「ふん、」

「勇者さま~。きゃー鍋が割れた!!やったわね。」


喧嘩しそうになる二人を止める。ああ、助かったと言う安堵が大きい。

「まあ、二人とも喧嘩しないで。丁度、大きいパンとチーズが在るからみんなで分けよう。ワインも在るし。」

「ゆういち、この女がシチューを!!」

「ああ、仕方が無いよ勿体無いけど。未だ干し肉があるから炙ってサンドイッチにしよう。騒ぐと敵が来ちゃうよ。」

「勇者殿、良いアイデアですね。流石です。」

「大丈夫、勇者さま。私の隠蔽の魔法はそう簡単に破られないです。」


大地に転がる二つの異臭を放つ鍋を鑑定する。


割れた鍋(毒)

鍋(微弱毒、麻痺)



ぼくは何で料理もできないのに一人暮らし、しようなんて思ったんだろう。


(´・ω・`)君たちは、ハーブ嫁とアレンジ嫁どっちが好きだ?

(´;ω;`)ブワッ


(´・ω・`)なお、エガシラの石版は初日に木っ端微塵になっています。

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