悪魔のいけにえ(土下座)
(´・ω・`)…。
おれ、コレが掲載される頃、歯医者にいくんだ。
すったもんだの挙句。
魔王領とイ・ベリコ領を併合して”帝国”として建国を宣言。
その後、国名がいつの間にか”エガシラ帝国”になった。
二つの国が併合したので重複している部門を再編成して、配置転換のために再教育が必要な人員をわりだす。
うまくいかなかった制度を見直し、うまくいっている制度の理由と問題点を洗い出す。
場当たり対応では対応しきれない問題も出てきた。
中、長期的な目標を立てる必要があるが、必要な資料がないので調査が必要だ。
調査の為の人員教育から始めなければならない。
まず、測量、地図をつくる。
土木の基本である。
地質、工事計画の作成に必須である。
幸い武装解除したブタ兵が大量にいるので殆ど工兵に編入した師団規模の工兵大隊がいっぱいできたが、開墾や治水、農地改良に街道整備に奔走して土木で国に貢献してもらおう。
再教育のついでに資料の調査作成も丸投げで。一石二鳥。
どちらにしても掛るメシ代は一緒だ。
しかし、経済問題は門外漢だからさっぱり分からん。
今は、経済規模が小さいから問題にならないが、そのうちに問題になるだろう。
「銀行屋でもこないかな。」
そう呟くと、玉座の後ろに立つ魔王がビクッと動いた。淫行屋じゃないぞ?
最近、魔王は鎧や倉庫と、それに類する単語に過剰に反応するようになった。
おかしい、あんなに喜んでいたのに。
「皇帝陛下たいへんですにゃ!!」
ネコミミ女中のエルムが飛び込んでくる。
エルムが声を荒立てる時は大概”たいへん”か”へんたい”しか叫ばない。
「どうした、新たな魔王でも出たか?」
「すごいですにゃ!皇帝陛下、そのとうりですにゃ!!悪魔魔王が宣戦布告してきましたにゃ!!」
どれだけ魔王が居るのだ?
「そうか!悪魔魔王と言う名は、魔と魔で被っているが統合できないのか?」
「悪魔族の魔王ですにゃ。」
「悪魔族と言うのは知らない奴らだ、どんな奴らだ?」
「悪魔族は帝国領と北の国境に接するにゃ、竜山脈の麓の台地に生活する一族で外見の特徴はヒト族とあまり変わらないにゃ、背中にコウモリ羽があるのが特徴にゃ。」
なにっ、悪魔っぽいな。
「羽が有るのか…。飛べるのか?」
「魔法を使えば飛べるらしいにゃ、でも、足で歩いたほうが早くて楽って。昔、悪魔族の商人が言ってたにゃ。」
「悪魔族の商人?」
「悪魔族は台地で狭く、あまり産業が無いから行商や商人で生活してる者が多いにゃ。」
「そうか、なるほど。」
国境紛争を無くす為にと。国境線の宣言を行ったが、他国の勢力範囲から外れているため、諸外国から異論は出なかった。
国境検問所の建設と入国証発行と税金の徴収、違法な商品の取締を厳しくしてから外国商人に不満が出ていると報告があったのだ。
「悪魔族は守銭奴が多くて何でも”契約書!契約書!”とうるさいにゃ、いつも悪巧みしているから気をつけるにゃ。ヒト族より華奢で力が弱い者しか居ないにゃ。弱いのに戦争吹っかけてくるなんて絶対に何か企んでるにゃ。」
エルムが随分と興奮して毛を逆立てている。悪魔族に何か怨みでも有るのか?壷でも買わされたのだろうか?
川向こうのヒト族に建国宣言を送ったが返答は無い。
他国と共同で攻めて来る可能性も有るが、行商人として入り込んでいるのであれば、情報も筒抜けだ、不満分子を煽ったクーデターも考えられる。
不満分子か…。魔王の顔を見る。親の仇のような目はしていない。今は死んだ魚の様な目だ。
再編成中の帝国軍には即時戦闘できる軍団は少ない。
「うむ、帝国軍に即時防衛体制を発令、各連隊は国境および重要拠点の防衛を行え、一部の部隊を抽出して戦闘団を編成、悪魔軍団に対応する。憲兵隊に連絡、皇帝の名に置いて、国内の不審者の拘束、取調べを行え。」
帝国軍憲兵隊は初期のころ、ウシ兵とブタ兵の喧嘩が頻発したため軍内部に警察組織を編成してできた、兵士の取締を行う部隊だ。
今は拡大して広域警察能力もある、各、町や村には自警団が以前からあるが、自治体組織は緊急時、憲兵隊の指示要請に従わなければならない旨、皇帝の名に置いて通達済みである。
問題は、予算だ。頭が痛くなる…。
国内の防衛体制を整え軍団を率いて国境まで来たが、いつまでたっても悪魔軍団は国境を越えてこない。
偵察部隊の報告では悪魔軍団は台地の外に出て集結しているらしい。
空が飛べるのだから、向うが有利なのに進撃してこない。
「動きませんにゃ、喧嘩吹っかけて置いて攻めてこないなんてヤル気、在るのか聞きたいにゃ~。」
「偵察隊からの情報では悪魔軍団主力は以前の場所から全く移動せず。敵別働隊を捜索していますが、未だ発見できません。」
軍団長のホルス将軍からの報告だ。
始めはあんなに慌しかった司令部内は状況変更なしの連続でダレた雰囲気が蔓延し始めている。
いかんな何か手をうたねば。
「将軍、こちらから仕掛けたとして罠があると思うか?」
「悪魔軍は今まで、まともに他の魔軍と戦闘を行ったことがありません、悪魔軍が勝った戦闘は殆どが罠や謀略でした、十分考えられます。」
「かと言ってこのまま動かない訳にも行かない。」
「皇帝陛下、罠と分かって進撃するのは愚かです。」
「いかん!このままでは、補給の問題が表面化するだろう。将軍、兵士の士気の問題もある。」
「補給は順調に届いてますにゃ。」
「帝国の経済が持たない、国庫の心配もしなければならない。」
「そんな問題は、前の魔王は気合でなんとかしたにゃ~。」
気合では何ともならない問題なんだにゃ。
将軍は深刻な顔になった。
たぶん昔、その気合の為に随分苦労したのだろう。
「将軍、威力偵察はできるか?」
「威力偵察ですか?」
「悪魔軍が何を考えているか分からんが、長い待機生活で士気が下がっている。敵が動いたら戦闘に入るし、動かなければ、動物を狩って、出発地点に戻って。夜は焼肉パーティーだ。」
「良いですね、進攻なら補給の問題が在りますが、何かあっても出発地点へ戻るだけなら問題ないです。」
「よし明日の日の出と共に、国境線を越え動物を狩りながら進攻、昼になったら撤退する。」
「了解しました。各自で水、食料を持たせて、撤退合図で最悪、小隊単位で脱出できるように編成しておきます。」
「よし、ついでだから小隊単位のポイント制で狩りの成果を発表しよう。」
「それは良いですね。皆ヤル気が出ます。」
将軍と笑顔で軍議を終える。司令部内は俄然忙しくなるが、皆楽しそうだ。
「戦争はピクニックじゃないにゃ~。」
翌明朝、晴天で雲も少なく絶好の狩り日和になった。前日に各小隊にポイント得点表が渡されて。皆、武器の手入れ、装備も完璧、睡眠も十分。
ルールは日の出からひたすら前進して狩り。
正午の撤退合図の魔法弾が上がったら狩猟成果を担いで撤退。
緊急撤退合図の場合、その場で狩猟成果を放棄して急いで撤退。
集合合図の場合は各小隊が合流して悪魔軍団と戦闘開始である。
帰着した小隊順に持って帰った獲物をポイント集計。
集計結果が出るまで焼肉パーティー。(ここ重要)
前進する帝国軍、ウシ兵、ブタ兵、混成小隊も多いが今は問題なく機能している。
だが、皇帝直属エガシラ小隊では問題が発生し始めていた。
「くっ、食べるところが無い!!」
始めに小石を木に止まっている鳥に向かって投げたら、外れ、鳥が木っ端微塵になった。周りの樹木ごと。なにを言ってry…。
「皇帝陛下、デッドボールの魔法は止めてくださいにゃ、他の動物が逃げますにゃ。」
いや、当たってないぞ、当らないと塁に進め無いんだ。
「主審が居ないから判断できないがアレはデッドボールではない。」
「そうなんですかにゃ?魔法の分類は難しいですにゃ?」
首をひねるネコミミ女中、弓と矢筒を装備している。
ピクニックじゃない言っておきながら、楽しむ気マンマンである。
「子供の頃はよくとったにゃ~。」
「のこり時間はどれぐらいだ?。」
「あと一時間切ってますにゃ。」
俺は焦ってきた、もうすぐ正午だ、ネコミミ女中でさえ、弓で3匹も鳥を取っている、途中出会った小隊は鹿の様な生物を2匹担いでいた。
他の小隊は着々とポイントを貯めているようだ。
できれば、大物を、いや、せめて、面目が立つほどの成果で良いのだが。
伝令兵が走りこんできた。
「将軍!!悪魔軍に動きがありました!!散会して空から森の中に発煙弾を投げ込んでます。」
「此方の被害は?」
「いえ、最も前進した小隊の報告では未到達地域に打ち込んでいるとの報告です。」
「煙に巻くつもりか?まあ良い、そろそろ時間だ、皇帝陛下、早めですが正午の合図を出してよろしいでしょうか?。」
「皇帝陛下!!ドラゴンが飛んできましたにゃ!!レッドドラゴンですにゃ!!山から下りてきましたにゃ~!」
驚く小隊面々。
「なんと!悪魔軍め!!コレが狙いか!!皇帝陛下ここは我々に任せて御戻り下さい。」
「大物キター!!」
空を飛ぶドラゴンを見て、テンションの上がった俺は走り出し、足元の拳大の石を掴みドラゴンめがけて投擲する。
木々をなぎ倒し進む石はドラゴンに命中せず!カスリもしなかった。
トラゴンが此方を見た。目が合う。さあこい!!ポイントの足しにしてやる!!
飛んで来るドラゴンにさらに石を投げるが当らない。
ドラゴンが口を開け、ムー的な炎がこちらに飛んでくる。
身を伏せ走り、炎を前進して避ける。
背後で大地が燃える、衝撃で服が裂けたが気にせず、ほぼ目の前のドラゴンに向かって石を投げる。
腕の付け根に当った石は腕と羽をもぎ取りドラゴンが大地に落ちた。
駈け寄り、暴れるドラゴンの首に取りつくと三角締めを掛ける。
「にがさんぞ!!ポイントめ!ふん!!」
もがくドラゴンに力を入れるとベキベキと骨の折れる音と共に動かなくなった。
「とったど!!」
倒れたドラゴンの上でマッパで勝利の雄叫びを挙げる。
同時に上がる勝利を祝う、正午の信号弾。
よし!持って帰って焼肉パーティーだ!!
その後、悪魔軍の妨害も受けず。朝の出発地点まで戻った。
エガシラ小隊に更なる問題が発生する。
「なにっ!!ドラゴンはポイント表に載ってないから0点だと!!」
「はい、申し訳ありません、ドラゴンは動物ではないので記載されていません。」
集計官の判定が下る、周りの兵士がドン引きしているのが分かる。
くっ、嵩張るのを苦労して持って帰って来たのに。
思わず集計官にくってかかる。
「コレが動物でなければ何なんだ!!」
「えー、神を滅ぼす者ですかにゃ?」
「なに!?」
「伝説ではドラゴン倒して心臓を食べた者が神を倒したそうですにゃ。」
「なら、喰える動物ではないか!!」
「伝説ですにゃ~、絶対美味しくないですにゃ~、食べたらニンゲン辞めてしまいますにゃ。」
くそっ!!河豚みたいなものか!!
「赤身で脂肪の少ない肉だ、醤油と生姜で甘辛くしたらご飯に絶対合うはずだ!!」
抗議の言葉は審判員には聞入られなかった。
エガシラ0点であったが小隊としては鳥が数匹ぶん、ポイントが有ったので何とか面目は立った。
皆で肉を分け合い交換しあって焼いて食べはじめる。
酒も用意してあるので、皆が猟の成果を楽しく語り始める。
マッパになってしまったので又、ふんどしである。
皇帝陛下席には誰も近寄ってこない。倒したドラゴンを後ろに置き肉を焼き始める。
心臓が食べれると言う情報はあるので、心臓を薄く切って鉄板の上で焼き塩と胡椒で味を付けている。
肉の焼ける臭いが芳しい。かんきつ類の汁も用意したのに…。
うん、うまい、コリコリしている。
少し身の肉を切って焼いてみたが、そんなに悪くない。脂の無い鴨のような肉だ。
他の兵に目を向けると全員、目を伏せる。
「皇帝陛下、鳥の肉持って来ましたにゃ~♪」
ホルス将軍とエルムが皿と肉と杯を持ってきた。
「よし!では肉を分けよう。」
「それは不要ですにゃ。」
「申し訳ございません皇帝陛下、私には未だ幼い妻と子供が…。」
幼い妻と子供とは良く解からないが、二人とも目をそらしている。まあ、要らないと言うなら仕方ない。
「では杯を…。」
二人とも笑顔で向き直る。
「では、乾杯」
「かんぱいにゃ~。」
「皇帝陛下の勝利に。乾杯」
杯を煽る、未成年かも知れないがココは外国、問題はない。
「たのしかったですにゃ~。」
「兵も喜んでおります。」
「うむ、これで暫くは補給に余剰がでるから安心だ。」
「しかし、悪魔軍の罠がドラゴンをけしかけるとは思いませんでした。」
「うーん将軍、悪魔軍の罠は暴いた次はどんな手を打ってくるだろう。」
「こちらから討って出るとは思わないでしょう。早々に何らかの攻撃を仕掛けてくるはずです。」
「今夜あたりとか?」
「悪魔族は空は飛べる様ですが魔法の力を使わなくてはならないため、今日の移動で魔力を消費しすぎています。」
「そうか、今晩あたりに夜襲が有るかと思っていたんだが。」
「まあ、何時もの移動距離に比べれば今日は散歩の様な物です。夜襲を受けても兵の動きに支障ありません。」
よし、では安心だ、肉を食べよう。
宴が進むとそろそろ結果発表の時間というころに、伝令兵がやってきた。
「将軍!悪魔軍より軍使がやってきました。」
「良し会おう。陛下、失礼いたします。」
「ああ、待て俺も会おう、ココに連れて来い。」
「皇帝陛下、万が一の場合があります。」
「大丈夫だ、将軍、兵も居る。」
衛兵に囲まれ悪魔族が十数人やってきた、非武装の様だ。
「ようこそ帝国軍陣地へ、私は皇帝のエガシラだ。無礼講の宴の最中なのでこのような姿で申し訳ない。」
死んだ新鮮なドラゴンの前でふんどし一丁で胸をはる。
もちろん鉄板の上で心臓を焼きながらである。焦げるとイカンからな。
十数人の悪魔はその場で全員地面にひれ伏した。
「「はは~!!」」
おう、時代劇みたい。先頭の男が頭も上げずに喋りだした。
「私は悪魔族の魔王ベルゼーと申します。」
「ほう。敵の大将がワザワザ何の用だ?ココで勝負するのか?」
うん。チョット鉄板の火力が強いな。
「滅相もございません、悪魔国は帝国に降伏いたします。」
「早いな。」
ダメだ、すぐ焦げる。
「命ばかりはお助けを、皇帝陛下へ忠誠を誓います、寛大なお慈悲を。」
「未だ他の手があるのでは無いのか?」
とりあえず鉄板の端に肉を移動しよう、火力下げる方法は無いのか?
「皇帝陛下が前線へ出た時点で、帝国内の不満分子を扇動する手筈でしたが全て捕縛されました。ドラゴンを嗾ける作戦も徒労に終わりました。」
「それだけか?」
おかしい、炭が無い、どうやって加熱してるんだこの鉄板、IHか?ムー的IH機能なのか?
「短期決戦を目標にした悪魔国は最早、戦時体制を維持する国力はありません。悪魔軍も明日以降、数日も戦えず、玉砕するでしょう。」
「だめだ、肉が焦げる。」
「は?」
「あ、ゲフンゲフン、いや、信用できん」
この鉄板どうやってニク焼いてるのだ?
「む、娘を差し出します!!私めには二人、娘がおります!。」
「人質か?」
「いえ、側室にでもご寵愛いただければ光栄です。」
俺、結婚してたっけ?ネコミミ女中のほうを見ると一歩進んで鉄板に手をかざしムー的な光を出した。おお、温度が下がった。
「我が国の魔王は皇帝陛下のメス奴隷にまでおとされたにゃ。今では皇帝の膝の上で飼われているにゃ。」
爆弾発言を言うネコミミ女中、将軍も兵士も皆、頷いて肯定している。
「が、外聞のわ「それでもかまいません!」るいことを…。」
悪魔族の軍使の中の一人の金髪幼女が叫んだ。
「リリン、未だ待ちなさい。」
「おとー様、大丈夫です、私はどんなに恥辱に塗れようと、どんなに辛い責を受けようと耐えて見せます。おねー様と一緒に!!」
「え、あ?あたしも、あたしはべつに「大丈夫です!!おねー様といっしょならどんな辛いコトも乗り切っていけます。はい、できますね!!」
黒髪のショートの女子があたふたしている。
「おとー様!!コレが今生の別れになろうとも。悪魔族の皆の為に、この身をささげます。」
「リリン!ジズ!すまない!私が不甲斐無いばかりに、二人をこんな辛い目に。」「え?あたしも?」
泣きながら父と抱合う二人の姉妹。
良く解からんうちに無条件降伏を受け入れ、悪魔王国を帝国に編入した。
翌日、魔王ベルゼーと共に国境を越えて悪魔国を占領する。
悪魔軍は大人しく武装解除に応じていた。
悪魔領の都市を行進する帝国軍。
進駐時に悪魔族の兵も市民も不安げだが安堵の表情だったのが印象的だった。
「宣戦布告したのに相手が攻めて来るなど、都合の良いコトは無いだろう?」
「え?普通そうですにゃ?」
うんうんと頷く兵。疲れた様に話す将軍。
「はい、先代魔王は戦と聞けば真っ先にお城を飛びだして突撃しました。」
「いや、戦争は準備が一番だろ?」
「それが、エライ人にはわからんのですよ。」
ホルス将軍のタメ息には人生の重みがあった。
(´・ω・#)…。