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まおうのくせになまいきだ(応用編)

---もし皇帝陛下が君たちがどう考えてもおかしいコトと、理解できないコトを発言しても、絶対に否定も肯定もしてはいけにゃいにゃ。ソレは皇帝陛下が全ての悪夢を現実化できる力を持っているからにゃ。その力が一度揮われれば誰も幸せになれないにゃ。---


魔王城総務部実務課主任、エルム女子の訓示。



今日は朝から曇天模様だ。

雨が降る気配は無い。

少なくとも日中は降らないであろう。

朝の日課のきな粉入りミルクを飲んだ後、ストレッチ、筋トレ&ランニング(亜音速)を行い。

シャワーを浴びて。玉座に着く。

本日の予定を聞き、奏上と決済を行う。

官僚体制が整ってきたので、細かいことは全て任せっぱなしだ。

たわいの無い話もでる。

「天気予報はないのか?」

「む?天気は神の決めるコト、誰も決定できないのじゃ。」

ずいぶんとお腹の大きくなった魔王が答える。

魔王は両手で自分の腹を包む姿勢を崩さない、ウェストのゆるい赤いイブニングドレスでマタニティウェアの替わりをしている。

その立ち姿は聖母像のようだ。

婦女子を立たせるのは外聞が悪いので、もちろん椅子を用意したが、魔王自身が固辞した。

「では、天気予報を…。」

「雨と風は神の決めることですにゃ。」

「いや、天気と降水量は気圧と温度&湿度を計測して天気図を作れば降雨予測が出来る。」

「マテ!ソレは神の領域!!我々が立ち入るコトは…。」

「あばばばばば!!ナニも聞こえにゃいにゃ!!皇帝陛下がお腹を空かせているにゃ!!すぐにお菓子とお茶を持ってくるにゃ!!」

身重な体のネコミミ女中が強化剤を補給した08号の様な加速で走り去った。



麦茶と名状し難いWILLOの様なお菓子が出てきた。

豪華な二階建てトレーに乗った状態だ。

ネコミミ女中が優雅にお茶とお菓子を切り分け皆に配る。

小分けされた、小皿を受け取ると、楊枝で切って食べる、ねっとりとした食感と甘いがニッキの様なハーブで清涼感がある。

大麦粉に樹液を煮詰めたシロップ、ハーブを少し加え、練って、蒸したモノだ。

WILLOと言うより生せんべいに近い。

「う↑っわ~↓、お↑い↓しいわ~。」

シハル嬢がうれしそうに答える。

魔王が一口食べて、虚空で拳を振っている。(>ヮ<)ノシ

ネコミミ女中のエルムは無表情に細かく長く切った菓子を一つずつゆっくり細かく咀嚼している。(・ω・)カリカリカリ

駄菓子菓子、スカートから覗く尻尾の揺れから察するに、かなりのご機嫌モードだ。

リリンとジズはこの場に居ないが、そのうち来るであろう。菓子は未だある。

ああ、何の話だったか?

皆の幸せそうな顔にどうでも良くなった。

連隊本部付けで気象観測小隊を編成しておこう。


憩いのひと時も終わると、ネコミミ女中が下がった。

「わたし甘いもん食べれて、もう幸せですわ~。」

「うむ、エガシラよ、まさか木から砂糖が取れるとは思わなかったぞ。」

「む、効率が悪いから、あまりお勧めしないのだ、麦芽を使った方が簡単で大量生産できる。」

「あれ、甘くないでな~。」

「む?あれは味がイマイチだ。」

どうやらご婦人方は甘味に飢えている様子だ。

南方から少数だが黒砂糖が入って来ている様なので。砂糖の存在は知っていたようだ。

しかし、金と同じ価値のようだった、手っ取り早くカエデの様な葉の木の樹液を採取して、手当たり次第に煮詰めて作らせた。

一部、うまく行ったが、出来た物は少数だった。

ソレを試食した女性陣のキレっぷりは凄かった。

”む!!コレを大量生産せよ!!”とか”すぐにワタシの金を持って行くにゃ!!この植物を植えまくるにゃ!!”、”エガシラ様我侭を聞いてな!国のおじい様に作り方をお願いするで!何でもするで!どんなことでもイヤがらへんで!!”

いや、鳥取では生産できないであろう。

砂糖大根ビーツがあれば何とかなるかもしれない。

麦芽で糖化した水あめはどうやら知っていたらしく。

エグ味があり非常に不評だった。栄養価ではコチラのほうが上なんだが…。


そんな事があったと思いだしていていたらネコミミ女中が戻ってきた。

「皇帝陛下、ニンゲン族の挑戦者が来ていますにゃ、お会いになりますかにゃ?」

「挑戦者とは何者だ?」

「魔王は何時でも挑戦を望む者と戦い、負ければその地位を明け渡すか、その者の願いを聞き届けねばならないのじゃ。エガシラよお主はそうやって魔王になり皇帝になったのだ。」

苦々しい口調で告げる魔王。

「そうか?、あの時はちゃんと服をくれと言っていたんだが…。」

「え?」

驚く魔王。

しまった。あの時、”ギャルのパンツをくれ。(ブーメラン)”と言っていれば魔王しなくてもよかったのかもしれない。

「服を渡せば大人しく帰ったのか…?」

「あの時は…。服屋を探してさ迷っていたのだ…。」

「そういえば言ってたにゃ…。皇帝陛下はブレにゃいにゃ。」

「そんなもののためにわらわの全てを奪ったのか…。」ouz

「過去を後悔してもしかたにゃいにゃ。今は、挑戦者の脅威をどうやって排除するかが重要だにゃ。」

「うむ、今まで挑戦者は来なかった…。いや、他の魔王が居たか。」

「皇帝陛下に楯突く者などこの帝国にはドコにも居ませんにゃ。」

「そうやで、そんなめいわくもんおらへんね。」

「しかし、困ったな。俺は荒事は苦手だ。」

玉座正面の大きな門を眺める。扉には”キャッチボール禁止”の大きな張り紙がある。

以前、壁うちで一人キャッチボールしようとしたところ城壁が耐えられなかったので、城内外でのキャッチボールは禁止になってしまった。

「皇帝陛下、こんなところで冗談を言っても誰も信じませんにゃ。」

「俺は武器も持っていない。」

「必要なのですかにゃ?素手でドラゴンをほうふって来ましたにゃ?」

いかん、外堀が埋められた、ココで俺が虫も殺せない花ときんにくを愛する男だといって信じてくれるだろうか?

「無益な殺生は嫌いなのだ。」

「もちろん、知っておりますにゃ、皇帝陛下の友愛の精神は下々の誰もが知っていますにゃ。陛下が本気を出せば、帝国領の全てを焦土と無人の荒野と化するのも造作も無いことは全ての者が理解していますにゃ。」

いろいろ誤解がある様子だ。

少し考える。玉座の縁に肘をつき、拳で頬を支え深いため息を付く。

「…。」

「エガシラよ、何とか穏便に挑戦者を退けないか?なんなら力を貸すぞ?もちろん腹の子に負担にならない限りだ。童とお主の子じゃ、無事に生みたい。」

魔王を見る、そうだ、俺はもう父親なのだ、守るべき物が在るのに何を迷う必要があるのだ?

「心配するな。魔王、どうしたら被害を少なく出来るか思案していただけだ。」

「お城が無くなるとイロイロ困るにゃ。」

「うむ、解かった。その挑戦者というものに会おう。」

「了解しましたにゃ。準備が整い次第、正面の扉から入場しますにゃ~。」





扉の蝶番がきしみながらゆっくりと開く、かなり重たい扉なのだろう。

以前、木端微塵にしてしまったので新調したはずなのだが。

その時、改良しようとか思わなかったのだろうか?

扉が開ききると若い男女数人がゆっくり進んできた。

もちろん知った顔もある、ほほう、随分とたくましくなった、男の顔をしている。

「よくきたな、後輩たち。まずは歓迎しよう。」

玉座より立ち上がり、マントを翻した。

「そ、そんな、先輩!死んだはずです!!」

「ゆういち、まって!姿形だけ似せた、幻かもしれない。」

「勇者殿!!ほらワナでした!」

「魔法使い、鑑定を!」

「くっ、魔力密度が高い魔法障壁で走査も鑑定も使えません。」

驚く、後輩たち、そういえば勇者すると言っていたな。

なるほど、挑戦者は後輩か、それなら話は早い。

「何を驚く必要が有るのか?後輩たちよ。用件を聞こうではないか?」

「魔王を討伐しに来ました。あなたが魔王なのですか!!」

「いや、違うぞ?」

「「「「え?」」」わな。」

「魔王はそちらにいる。」

玉座の脇に立つ赤いドレスの妊婦をしめす。

「では!先輩は?」

大きく息を吸い込み答える。

もちろん、サイドチェストのポージングだ。

「俺は神聖エガシラ帝国、皇帝エガシラだ!」

「え、エガシラ帝国?」

「うそ、帝国ってトートリの?」

「王女陛下、勇者殿、これはわなです。」

「コウテイノワナ?」

ほほう、皆驚いているな。俺も知らなかったが国名が”エガシラ帝国”だったがドラゴンを倒したコロ、一部の者から”大エガシラ帝国グレート・インペリアル・エガシラ”とか”神聖帝国”とか言い始めたので。

呼称を”神聖エガシラ帝国”に統一したのだ。

ほら”グレート・エガシラ”だと昭和のリングネームっぽいじゃないか。はずかしだろ?

なお。神聖な所の根拠は特に無いので、とりあえず、きんにくを崇めている。男の多すぎる脂肪は邪悪である。(一部を除く)

「そこにいる魔王を降し建国したのだ。」

「先輩!いつの間に?」

「うむ!皆と別れた後すぐだ。」

胸を張って答える。

「え?初日に?」

「魔王を倒したのですか?」

「いったいどうやって?」

むう、いかんな。

魔王を屈服させた件は詳しく聞かれると困る。

玉座に座り片肘を突いて拳を頬に当てる。

「その後、周りの魔王国を屈服させ帝国になったのだ。」


「魔王を倒したのならばなぜ冒険者ギルドに報告しなかったのですか?報告は義務です。」

王女が非難めいた口ぶりで詰問してきた。

「おお、そういえば未だ冒険者ギルドに登録していなかったな。」

思い出した。俺は服を買ったら冒険者ギルドへ向かう予定だったのだ。

「え?」

あきれる王女と女騎士。

「これらは全て俺、個人が行ったコト。そちらの国とは関係が無いことである。」

「そ、そんな…。」

外交問題になるからな。



「では魔王は?」

後輩が質問してきた。ああ、ゴトウ君だったな。ここはひとつ安心させなければ。戦う必要などもう無いのだ。

「ふ、紹介しよう「魔王はエガシラ皇帝陛下のニク奴隷ですにゃ。」わがつま…。」

「「「えっ」」スゴイ」

ニンゲン側の女性陣がドン引きしている。

「いやいや、外聞が悪いことを…。」

「長きに渡り君臨した魔王はあっさりエガシラ皇帝陛下の軍門に下り。隅々を蹂躙されて果、今は女の喜びに目覚めてあひんあひん言ってるにゃ。」

「「「キモッツ」」チイイノ?」

「キモって酷いではないか。」

ダブルバイセップス・フロントで肉体美を強調する、マントの下の薄いシャツでは隠し切れないバルク(筋量)を見せ付ける。

ネコミミ女中が不敵に答える。いや、これ以上、俺の評判を貶めるのは止めて欲しい。

「ふっふっふ、魔王(領)は全ての丘や穴(ダンジョン的な物)は開発され尽して、今や魔王(領)はエガシラ皇帝陛下に逆らうコトはできにゃいにゃ。魔王(領)は皇帝陛下のどんな御命令でも喜びに身をふるわしているにゃ。」

対峙するニンゲン族の女性陣の目は最早汚物を見るような眼差しだ。「ソンナニズゴイノ…。」いや、魔法少女だけは顔を両手で隠しているが…。指の間からガン見している。

「先輩…。そんな非道を…。」

「い、いや、ほら、始めはムリヤリだったかもしれないが今ではこのとうり。子供もデキて皆、幸せだぞ?」

ゴトウ君の誤解を解く為、魔王の肩に手を回して抱き寄せる。

魔王が笑顔で肩に乗せた手をつねっている。

痛くないのでにこやかにしていると魔王の眉間にシワが出てきた、全力らしいが痛くないのでセーフだ。

「今ではそうでもないが、わらわは、嘗て恥辱に塗れ、何度、自害しようかと考えた…。」

魔王はいとおしそうに、自分の腹をさすりながら答えた。

「そうか。ずいぶん嬉しそうだったぞ?」

笑顔が固まったままの魔王が少しのけぞる予備動作で目からムー的な怪光線を出してきた。

あまり危険では無さそうなのでそのまま受ける。

全身に、まるで、セーターを脱いだ時の様な衝撃を受ける。

だが、鋼のようなきんにくと、OILの装甲の前にはパチパチ君程度の攻撃ではどうと言うことは無い。

「ううっ、わらわの魔王コレダーでも、通用しないのか…。」

そうか、これがコレダーというものか…。コレダーなら首を回してから発射しないと威力が無いだろう。

魔王の腰に手を回して耳元でささやく。

「魔王よ、言いたいことが有るのならば今晩じっくり聞くぞ。」

「いや、止めて。お腹の子に酷いことしないで。」

「大丈夫だ。子には障らぬようにするからな。」

「お馬さんゴッコはイヤー!!」

ガクブルする魔王を尻目に勇者達に答える。

「このように魔王は俺が掌握している。心配は無用である。」


「酷いですね先輩、女のヒトをいぢめるなんて。」

「いや、おまえらだって、魔王倒すって…。」

「ええ、そうでしたけど…。まさかご婦人で妊婦さんだとは思いませんでした。」

「ああ、俺も驚いた。」

服屋の店長だと思ってた。

「魔王のくせに生意気だにゃ。負けて皇帝陛下の温情で生きながらえているのにまだ反抗しているにゃ。」

「あの?そちらのメイドさんは?」

後輩君の質問がエルムに移る。そうだろう漢なら気になるよな。ケモミミメイド。

「魔王城の女中でエルムと言う。我々の身の回りの世話をしてくれている。」

「そうですにゃ、わたしもエガシラ様の子供を授かり幸せですにゃ。」

両手の拳を腰に付け胸を張るネコミミ女中、エプロンの下の張り出した腹を強調する。

「うわ、サイテー。」

ああ、後輩の…。榛名くんだったか?霧島くんだったかな?

おとことはネコミミ女中メイドが目の前で尻尾を振っていれば、その尻尾を掴まなければいけないモノなのだ…。恐らくは理解されないだろうが。

「あの、ホントに誰も無理強いされてないのですか?」

追求する後輩に、一歩前に進んだ。乙π(ダークエルフ)が答える。

「そうやで、みんな、いろいろ事情が有るけど覚悟して皇帝陛下に身をゆだねとるで。陛下はお優しいでイイ加減なモンは酷く言うけど少なくともワタシは後悔しとらん。」

真剣なダークエルフの眼光にたじろぐゴトウ君。

「くっソレでは。サムソン国への侵攻は…。」


脇の扉が開く音がして、リリンとジズが謁見の間に入ってきた。


「こ~ていへいかお待たせしました。」

「あ、あの、遅れて申し訳ありません」(//∇//)

ああ、昨晩は遅かったからな、姉妹は微妙にガニ股だ。

リリンはテケテケと少しぎこちない歩きで玉座に進むと。

何時もより深い位置に腰を落として。俺の膝の上にすわった。

ジズは照れくさそうに何時もの玉座より一歩下がった定位置に立った。

リリンが上向きに後ろを振向くと、目線が合った所で微笑んだ。

ただし、口元にエロスの香りがする。

パタパタと足を動かす振動がリリンの大殿筋から俺の大腿四頭筋へと伝わり、かいめんたいに血液が…。

「あの、ぼくは、サムソン王国の勇者ゴトウユウイチと申しますが。貴方は?」

「はい、お父様の悪魔魔王より降伏の証に皇帝陛下のニク奴隷となりました。リリンと姉のジズです。皇帝陛下によって晴れて女にしていただけました。」

「は、はいそうなりました。」

うれしそうに答えるリリンとうれし恥ずかしな表情のジズ。

「ちょっと、待ってください、先輩こんな子供まで!!」

「サンピーダト!!」

声を荒げるゴトウ君と魔法少女。

「いや、成りは子供に見えるが歳は、俺より上だぞ。」「歳の話はするな!!」

リリンがスゴイ表情で睨む。

「いえ、合法ロリとか、成人だからOKとかそんな言い訳はダメです。子供に見えるのがダメなんです。」

「おまえ、そんな国連人権委員会みたいなことを異世界でいってもしかたないだろ。」

「だめです!!刑法と条例が許しても。教育者を目指すボクが許しません!」

剣に手をかけるゴトウ君、それに合わせて。ニンゲンが戦闘態勢をとる。

「君が許さないとしてどうする?」

「先輩!貴方を倒します。」

「俺を倒したとしてどうなる?未亡人と孤児が出来るだけだ、帝国が瓦解すれば分裂した国同士での戦争になる。その戦火はニンゲンの国にも及ぶだろう。」

「ぐっ…。」

「大丈夫です、勇者さまその時はその時です。ふたりでならどんな困難も切り抜けることも出来るはずです。」

たしか、サブ王国のお姫さまでミネバだったかな?箱の奪い合いしそうな名前だったはずだ。

おいおい、国の王族がそんなコト言ってたらいかんだろう。後輩を焚きつけてどうするんだ。

「先輩!!貴方を倒してみんな幸せになるんです。」

ついに後輩が剣を抜いた。

もはや交渉は決裂したのだ。

俺にはもう既に守るべき物がある、夏のあの日のように負けるわけにはいかない。

「そうか、仕方ない。戦おうではないか。」

ゆっくりと玉座から立ち上がる。

リリンやジズ、ネコミミ女中たちはちゃっかり部屋の隅に退避している。

後輩たち、いや、勇者と対峙する。

「どうした、掛って来い。」

ソレを合図にニンゲン共が動いた。

「炎よ!!」

「雷撃!!」

「神よ!この者に力を!!」

「白刃よ!!」

ムー的な怪光線が七色に光りコチラに飛んでくる。

うーん、スターマインかな?

マントを投げ捨てると、身を低くして駆け出す。

空気が重いがすぐに突き破る。

服が粉々になるのが解かる。

ムー的怪光線がOILでテカテカの肌にせまるが。

身をねじりギリギリでかわす。

当たらなければどうと言うことは無い。

ゴトウ君の正面に立ち、目の前でサイドチェストのポーズを決める。もちろんスマイルを忘れない。

「くっ、秘剣!鳥刺し!!」

全身ムー的発光しているゴトウ君が踏み込む、正面から流れるような突きを出す。

剣の先から謎の光の帯が出ている。

ムー的光の帯を避けると。剣を持つ腕が見える、その袖を片手で掴むと相手のつま先前に踏み込み握った袖で腕を押し上げ身を返す。

相手の腰が乗ったのが感覚で解かる。


決まった。


後は流れるように勢いをコントロールして相手が床に叩きつけられる。

剣を落としたゴトウ君は自分の身に何が起きたか未だ理解していないようだ。

袖釣込腰が決まったのだ、綺麗に投げると投げられた側の人は状況を把握出来ないコトがある。

襟を掴んだまま、床に落ちた剣を足で軽く蹴り飛ばす。

これは柔道ではない、一本勝ちはない。

未だ動けないゴトウ君を組伏せる。


「ああっ、勇者殿が屈強な男に組伏せられて!!(ハアハア)」

「ゆういち!逃げて!!」

「ゆうしゃさま~!立って下さい!!」

「アーッ!!」

相手を引き込み足に三角を決め襟を掴んだまま肩固めを行う。

「な!スキルがキャンセルされ…。」

ゴトウ君は正気に戻ったようだが、もう遅い。

ガッチリ決まっている、最早のがれる事はできない。

抵抗するが、身体を揺らして相手の力を殺す。

無意識に脇を絞めて腰を相手に押し付ける。

身体に染み付いた練習の成果は忘れることは無い。

ゆっくり慎重に相手の頚動脈を圧迫する。

徐々に抵抗感がなくなる。

ゴトウ君が剣に伸ばした手、一瞬、指が痙攣して力が抜けたようだ。

こちらもゆっくり力を抜く。


寝技を解き、ゆっくりと立ち上がり。

残った勇者パーティに向き直る。

もちろんオリバーポーズだ!!小麦色の肌にOILのテカテカ。ふんどしの赤い色が映える。(元は魔王のストール、ムー的強靭加工がしてあるらしい。)

両腕を大きく広げて天に上げ拳を作り手首を一番高くする。

脈動する大胸筋とシックスパック!!

当に勝利者にふさわしいポーズだ。

「ゆ、ゆういち!!」

「ああ、勇者さまが!!そんな!!」

「そんな!!勇者殿がウケだなんて!!絶対許せません!!」

「コレガカップリングセンソウカ~!!」

軸継ぎ手カップリングが何故ココで問題になるのか不明だが、モーターとポンプには必須の精密部品だ。

残ったのは女性ばかり、如何に戦時といえど婦女子に暴力を奮うのは日本男児として躊躇われる。

一歩進むと。

パーティの包囲は一歩下がった。

「さあ、どうした、掛って来い。」

「ひっ!!」

「王女様ここは私が引き受けます。一旦お逃げください。」

「ちょっと!!ゆういちを置いて逃げるの?」

「王女殿下、魔法障壁から出たので鑑定が使えました。テキハスゴイデス」



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名前:江頭 三郎

年齢:21

種族:ハイヒューマン(Lv65535)

職業:皇帝/終末者


HP 2147483647/2147483647

MP  655350/655350


スキル:鋼の肉体+255、ドラゴンバスター+2、

ドラゴンイーター+99、万物の霊長、神殺し+3


----------------------------------------------


「…。魔法使いコレは間違いでは?」

「うそ…。ゆういち死んでないよね?」

「王女様これは勝てません…。」

「マジバケモンデスワー。」(ガクブル)


正面の扉が閉まる。

音に驚いて、勇者達が振り返る。

ネコミミ女中が天井から伸びたロープを引っ張っている。


「ふっふっふっふ、逃がしませんにゃ。」


慄くお姫様。

「ひいいい。」

にやにや笑いながら前に出るネコミミ女中。

「この魔王城、負けた者で生きてお城を出たものは居りませんにゃ。」

剣を構える女騎士。

「くっ、未だ負けた訳では…。」

暗い顔の魔法少女。

「テンイノマホウガツカエマセン…。」


「女が戦に負ければどうなるのかは明白ですにゃ、その覚悟があっての挑戦者ですにゃ。」

ひざまずき命乞いするお姫さま。

「ひいいい、おたすけを!!」

構えた剣の先が震える女騎士。

「この身を汚されるわけには!!くっコロ…。」

杖を抱き身をよじらせる、魔法少女。

「アア、コイモシラヌオトメガコウヤッテチッテイクノデス…。(ハアハア、スゴイアノカラダデ…)」


「もう、泣いても叫んでも、誰も助けにこにゃいにゃ。コレも全て世の定め。女に生まれたコトを呪って受け入れるにゃ。」

不敵な笑みで俺の前に進み勇者たちに向き直るネコミミ女中。

涙を流すお姫さま。

「ひいいい、勇者さま!!お助けを!」

目の色が無くなった女騎士。

「くっ、この身がドレだけ蹂躙されようと心までは…。」

何故か息の荒い魔法少女。

「イツデモバッチコイデス!!」(ハアハア)


「ふっふっふ、コレで皇帝陛下の毒牙にかかる乙女が増えて紙面が面白く…。」(・ω・)☆>(-_-;)バシッ!

暴走するネコミミ女中を、以前、地下倉庫で見つけた道具。スタン・ハリセンで止める。

「いたいですにゃ、皇帝陛下、ココからがイイ所ですにゃ。」

叩かれた後頭部をさする、ネコミミ女中。

この道具はどう見ても大きな白いハリセンにしか見えないが、非常に軽いダメージで相手の異常状態を回復する道具アイテムらしい。

少なくとも取説ではそうだった。

「外聞の悪いコトを言うな。」

「いやいや、読者の要望が、ですにゃ…。」

ぶつぶつ言う女中を尻目に、王女と話す。

「ニンゲンの国の王女よ。皇帝エガシラとして話す。国境線の確定をしたい。」

「くっ、このような状況下で交渉など、屈辱です。」

「もう既に、帝国は大河の中央を国境として防衛線を構築し、実行支配と入植を行っている。ココにニンゲン族の集落および建築物が無いことは調査済みである。ココに帝国は大河の中央に国境石くにざかいいしを設置するものとする。」

「それは承服できません!!」

抗議する王女。

「なぜだ?大河より一番近いニンゲンの集落までは歩いて一日以上だ。」

「大河の向うの森は我がサムソン王国の核心的利益であり潜在的領土です!!」

「ほう?しかし、ニンゲンは誰も居ないぞ?建国宣言を行ったが未だ返答も無い、国境の決定を行う実務者会談の呼びかけにも応じない。」

「我々、ニンゲン族諸国は魔族の国の存在を認めません。」

「ほほう?我が帝国は領民は魔族かもしれないが、俺はニンゲンだぞ?」

サイドトライセプスのポーズで笑顔。

”くっ、あれがニンゲンのはずがありません。”

呟く王女に、悠然と答える。

「外交交渉が出来ないのであれば、神聖エガシラ帝国は貴殿を破壊工作と要人暗殺未遂の罪で処罰し、その首を塩漬けにして宣戦布告文書と共に送り届けるつもりだ。」

「ぐっ!!」

顔色が悪くなる王女、最早ココまでこじれると外交的殴り合いは物理せんそうになってしまう。

わざわざ勇者を召喚してまでゲリラ戦してくる国に正面切った殴り合いは避けたい理由があるのであろう。

「塩漬けか交渉か、この場で選べ。」


王女は苦渋の表情で一言ずつ噛締めるように答えた。

「わかりました、交渉を行います。」


やったね、エガちゃん問題が一つ片付きそうだよ。(片付くまでは大仕事。)



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