新世界より(強制)
(´・ω・`)
あれから一年たったのだ。
そう思い知ったのは、晴れやかに、門を潜る新入生たちの表情を見たときからだ。
かつては俺も期待と不安を胸に、この門を潜ったのだ。
最早、思い出す事もできないほど昔のような気がする。
それほど、高校と大学では価値観がちがうのだ。
高校とは比べられないほどの自由、そして成人としての責任。
ただ、自由と開放感だけを感じている新入生共に、現実を教えるべき先行者となった、俺の責任は非常に重い。
この日の為に予てからの、特別メニューと減量、そして、日焼けサロンの代償と剃りあげられたこの頭。
腕には自己の存在を主張する上腕二頭筋。
豊満な大胸筋。
そして全てを表す腹直筋のシックスパック&外腹斜筋の谷間。
大腿四頭筋はソレゾレを分ける谷を作っている。
フロントばかりではない。
バックの盾の様な僧帽筋&広背筋
バルク(筋量)カット(脂肪がとれて筋肉が良く見える)プロポーション、全てにおいて完璧だ。
そして流れるようなポージング。
全てを魅了する笑顔。
毎日、全身鏡を前にあらゆる角度から計算しつくした動作。
ポージング練習により各部の稼動は最早、反射動作の域だ。
剃りあげられた頭。そしてムラの無い小麦色の肌。
その鋼の凶器を覆うOIL。
そう!テカテカ(オイル)が俺の装甲だ!!
俺の名前を言ってみろ!!マッチョマンだ!!
全てがパーフェクトだ!!
しかし、その凶器は安いパーティーグッツの黒マントと、百均の角帽の下に隠されている。
そう、我が刀身のごとき肉体は鞘に収まり最早、居合い刀のごとく切っ先を向けるだけだ。
さあ、誰をヤル?
一歩踏み出す俺の足取りは、すり足、ナンバ。
一分の隙も無い、まるで、畳の上で主審の”ハジメ”の合図が掛った様だ。
ほう?
あの、カッポー。あの男、ナカナカの者だ。
あの筋肉。
鍛えれば、かなりの者になるであろう。
ハンドボール?いや、バスケットか?
女子の方も、バトミントン?いや、テニスだろうか?
良い、大腿四頭筋を持っている。
ターゲットをロックすると、あくまで自然な動作でカッポーの前に移動。
男が明らかに警戒した素振りを見せるが畳み掛ける。
全ての鞘を脱ぎ捨て男女の進行方向をふさぐ。
「君たち!!ボティビルサークルに入らないか?」
右の上腕二頭筋を誇示して拳を顔に、肩膝を地面に着き、笑顔で最後で唯一の装甲。ラメ色極彩色ブーメランパンツに挿んだ勧誘ビラを示す。
全てが完璧完全だ!!
シュミレートどうりのタイミングとポージングだ。
男子が呆然とチラシを受け取ったのを見届けると。
流れる様にダブルバイセップス・バックへと移行。
スパシーバ!!
背中の筋肉群の凹凸を強調して個別に脈動させる。
サイコーだ!!まるで俺はスポットライトを受け舞台でソロを踊る白鳥だ!
その時は恍惚として俺は気が付かなかったが。
足元の地面に魔方陣が現れ、光り。
その光りが消えた。
その日、大学から三人の学生が失踪した。
(´・ω・`)