決戦!!(過去問題集)
ついにぼくたちはまた、魔王城に来た。
城壁の上には旗がたなびいている。
以前、来た時はこんな物無かった。
「間違いない。魔王が居る。」
みんな無言で頷いた。
お姫さまも、みゆきちゃんも真剣だ。
何時もクールな女騎士さんは変わらないが魔法使いちゃんは緊張しているようだ。
魔法使いちゃんの視線の先の城、禍々しい魔王の波動のせいだろうか?
城全体が恐ろしい物に見える。
大丈夫だ弱気になるな、全てのフラグは立ててきたんだ。
みんな言葉は交わさない。
目で合図を送ってやるべきコトをやっている。
すごい一体感だ。
負けるはずが無い。
魔物に遭遇せず、門の前まで来た。
かつてはこの門が開かず引き返した。
見上げる門は以前と何も変わらないハズだ。
ただ、どんよりとした空のせいで、以前見たときより重厚で邪悪なモノに見える。
「いくよ。」
「はい、勇者さま、どこまでもご一緒しますわ。」
「勇者殿!準備は万端です!」
「大丈夫、勇者さま。何時でも支援魔法が使えます。」
「ちょっと待って!!ゆういち!」
みんな、ずっこけかけた。
みゆきちゃんが門の横にあるモノを指を指している。
「ゆういち、こんな所に張り紙が!」
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御用の方は呼び鈴を
押して下さい。
↓
(´・ω・`)
押す
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門の横の壁に、なにか、見ているとイラッとする押し釦がある。
「え?みんな、まえ来た時こんなの無かったよね?」
「ゆういち、押してみる?」
「お待ちください!勇者殿!みゆきさま!!罠かもしれません。」
「え?でも…。」
女騎士さんがみゆきちゃんを止める、しかし、みゆきちゃんは押したそうだ。
みゆきちゃん、突起物や食品サンプルは絶対指で押して確認する派のヒトだからすごい押したそうだ。
いつもファミレスの呼び出し釦を率先して押す位だ。
いや、押してみないとわからないでしょ、いえ!押してはいけません何が起こるかわかりません!!お~す~の~!
ああ、女騎士さんがみゆきちゃんを羽交い絞めにしている。
それを見守るぼくとお姫さま。
「お姫さまどうしよう?」
「ええっ、伝説では門をノックしたら開いたので押してみてもよいのかもしれま「~♪~」ん?」「ん?」
いきなり話を振ったお姫さまの声を遮って、ファ○マの入店音が鳴り響いた。
見ると、魔法使いちゃんがガッツリ呼び鈴を指で押している。 (のヮの)つω;`)
みんな不意打ちを喰らったので、呆然と釦を押したままの魔法使いちゃんを見ている。
「勇者さまどうかしましたか?」
「ちょっと!!魔法使い!!わたしが押すって言ってたじゃない!」
「いや、押してはならないと!」
焦っている女騎士さんに羽交い絞めにされたまま器用に地団駄を踏むみゆきちゃん。
不思議そうに答える魔法使いちゃん。
「え?でも?門が開きますよ?」
低い音が響いて門が開いた。
女騎士さんはみゆきちゃんを開放すると剣を抜いて門と対峙する。
「くっ魔物が!!罠が!!」
「わたしが押すって言ってたじゃない!」
「皆!!注意して下さい!勇者さま!!戦いの用意を!!」
お姫さまの声でフォーメーションを組む、しかし何も出てこない。
剣を構えるが、風の流れる音だけがむなしく響く。
恐る恐る中を覗くと、お城の玄関ホールで、中央にモニュメントの様な石版がある。結構大きい。
「あれ、なんだろ?ゆういち、モ○リスかしら?触ってみるべきかしら。」(ウズウズ)
「アレは喪の栗鼠ですか?喪の栗鼠とはなんですか?」
「いや、待ってください、みゆきさま!!今度はホントに罠かもしれません。」
「お姫さま、コレは何ですか?」
「いえ、こんなモノは伝説にはありませんでした。」
お姫さまに尋ねるが困惑した様子だ。
「勇者さまあの喪の栗鼠、何か魔力のはどうが感じられます。」
魔法使いちゃんの声でみんな警戒してゆっくり前進する。
緊張の一瞬だ、後ろでは何時でも魔法が発動できるように呪文を唱えて初めている。…つぎはぜったいわたしが押すんだから…。
剣の間合い後半歩という所で石版が光りだした。
『ようこそ魔王城へ、ご希望の部署におつなぎいたします。音声ガイダンスにしたがって操作をして下さい。なお、通話品質向上のため会話は記録されておりますのでご了承ください。』
ぼく「は?」
お姫さま「な?」
女騎士さん「わな!!」
みゆきちゃん「スイッチ無いの?」
魔法使いちゃん「つんつん。」(のヮの)つω;`)
石版は明滅を繰り返しながら答えた。
『陳情の方は、イチを。各種申請の方はニを、法務及び抗議の方はサンを…。』
「あ、あの。魔王に挑戦しに来た勇者なんですが!」
『操作が違います。 ようこそ魔王城へ、ご希望の部署におつなぎいたします。音声ガイダンスにしたがって操作をして下さい。なお、通話品質向上のため…。』
「え?始めから?」
「ゆういち、コレどこにスイッチあるのかしら?」
「勇者殿!絶対罠です。」
「勇者さま魔力による操作かも知れません。魔法使い、お願いします。」
「はい、解かりました。」
「ちょっと待って、魔法使い、わたしが操作するって」
『…ガイダンスメニューに無い場合、案内担当者に御つなぎします。その他、を入力してください。』
「「「「その他!」」です。」わ。」
『ただいま、担当者を呼び出しております。大変込み合っている場合、担当者に御つなぎするまで、お時間を頂く場合があります。ご了承ください。』
「え?操作できた?音声入力なのか?」
「えー、ゆういち、絶対、中に人が居るんだよ。」
「みゆきさま、人が入れるほどの大きさではないですわ。魔法による物ですわ。」
「勇者殿コレはわな。」
「ナカノヒトナドイナイデス。」
『…日光で旨味をギュッと濃縮、新鮮な海の幸をお届けします。トートリ水産加工組合。』
「ゆういち、なにこれ、CM?」
「そうみたいだね、ナカナカでないね。混んでるんだろうか。」
「コマ…?」
「ワナ。」
「う…ま…?」
みんな首をかしげている。
魔王城の前ではあんなにやる気だったのに、みんなテンションが下がっている。
肩すかしばかりだ。そういえばトートリを出てからマトモに戦闘していないな。
『お子さんの体がぐんぐん伸びる健康飲料、悪魔の森の実100パーセン…。担当者に御つなぎします。』
え?今のすごい気になる、手足だけ長くなりそうな商品が。
『かわりましたにゃ、魔王城総務部実務課主任、担当エルムですにゃ。』
「えーっと、すいません、ぼくたちニンゲンの勇者なんですが。魔王はご在宅ですか?」
『ああ、挑戦者の方ですにゃ。魔王さまで挑戦、でよろしいのですかにゃ?レベルに合わせた対戦相手を選べますにゃ?』
「れ?レベル?」
「もう、ゆういち、一番偉い人を出せって言えばいいのよ。こんな所で時間がもったいないわ。」
そんなクレーマーみたいな言い方でいいのだろうか?不安になる。
『おお、すばらしい心意気ですにゃ、では、一番偉いヒトと対戦を組みますにゃ。番号札を持って開いたゲートを進んで下さいにゃ。番号札にかかれた扉の前でおまちくださいにゃ。』
ほらね?と言う顔をするみゆきちゃん。
乾いた音がして木片が出てきた。風呂屋の靴箱の鍵みたいな木片だ”10番”と書いてある。
扉が音をたて開いた。自動ドアなのか?
『番号札を持ってお進み下さい…。番号札を持ってお進み下さい…。』
ながい廊下を進む、両脇には魔法による灯りと、数字の書いてある扉が並んでいる。扉はカギが掛っていて開かない。
なんだろ、洋風なんだけとドコかで見たような…。
「ゆういち、なんだかカラオケBOX見たいね。」
「ソレだ!!ああ、ごめん、なにか引っ掛かってたんだ。」
「空桶ボック?」
首をかしげる魔法使いちゃん。
長い廊下のつきあたりに”10番”と書いてある扉があった。
「この扉か…。」
「ゆういちこの扉開かない。スイッチも無い。」
「勇者さま、扉に準備中と書いてます。」
「勇者殿コレはワナです。」
「この扉、かなり強力な魔法防御です、物理攻撃でも破壊できません。」
魔法使いちゃんが魔力探査と鑑定魔法で警戒している。
これで魔法を使っていない単純なワナ以外は検知できる。
しかし、落とし穴や天井から金たらい、バナナの皮、等の単純なワナには反応しないので注意は必要だ。
「遅いわね…。」
「みゆきちゃん未だ5分も経ってないよ。」
「うーんスイッチもないし…。」
「勇者さま、この扉が開いたら、ついに決戦ですね。国に帰ったら一緒にお父様(国王)に報告しましょう。」
「勇者殿ついにココまで来ました。長かったです、私はこの戦いが終わったら婚活するんです。」
「女王陛下、ワタシお見合します…。アマリキガススミマセン…。」
「そうですね、魔王を倒して幸せを掴みましょう。」
「ゆういち、トットと帰るわよ。」
お姫さまと女騎士さんが明るい声で微妙な脂肪フラグを立てているのでちょっと不安になる。
魔法使いちゃんとみゆきちゃんの声が低い。
「ああ、そうだね。みんなしあわせになろう。」
モノが倒れる大きな音がした。
「魔法使い、なんの音です?」
「ワカリマセン新たな魔法の発動はアリマセン」
「ワナか?」
「ゆういち、アレを見て!!」
みゆきちゃんの指差す先には”準備中”の板が下にスライドして。中に”番号札をセットして下さい”と書いたへこみが出てきた。
「番号札って、コレ? あっ。」
取り出した番号札をみゆきちゃんが奪って。
へこみにセットした。
「やった!スイッチ押せた!!」
「あ、ちょっとみゆきさま!!」
「ワナの発動が!!」
「女王陛下!扉が開きます!!」
得意げな顔のみゆきちゃんにみんなが焦っている。
重そうな10番の扉がゆっくり開き始める。
「みんな!!決戦だ!!フォーメーションを組むんだ!!」
ぼくたちのさいごの戦いはこれからだ。




