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水戸黄門と博多モーモー娘

作者: 浜崎汪(はまさきめーる)

 テレビでおなじみの水戸黄門。このドラマの主人公水戸光圀公、通称黄門様の持つ印籠には実は不思議な力があり、未来へと通じる扉を開くことができるのであった。黄門様ご一行はその力を使い、20世紀の博多へと旅するのであった。  ちょうどそのころ、20世紀の博多に住む、漫画家法世ほうせいの家に二人の娘が居候していた。お夏とお冬である。二人の娘は夢を追いかけ日々励んでいる。お夏は女優、お冬が部屋で歌の練習をし、お夏は川原でオーディションに向けて芝居の練習をしていた。 お夏は恋人の裏切りになく女の役を演じ、すっかり役になりきっていた。  そこへ、黄門様ご一行がたどり着いたのであった。 「これこれ、お嬢さん、どうしてないているんだね。私は水戸の隠居だが何か力になりますよ。」  突然のことで、お夏は驚いたが、この変な格好をしたお爺さんが自分の芝居を見て本当に泣いているのだと察した。そして、 「ご心配ありがとうございます。実は、私は博多座のオーディションを受けるために芝居の稽古をしていたのでございます。」  その言葉に黄門様は感動し、 「さようですか、稽古といえども手を抜かず、真に迫る演技をするそなたの心構えあっぱれです。褒美にこの金貨を差し上げましょう。」  黄門様は、お夏に金貨十枚と黄門様の持つ印籠と色違いの、桃色印籠を渡し、言いました。 「お夏、今までどおりに稽古に励めばそなたの夢は必ず叶えられる。しかし、世の中にはそのようなひたむきな心につけこんで悪いことをするやからもいる。万が一困ったときには、桃色の印籠の紐を引き抜きなさい。私たちが助けに来ます。」  お夏は家に帰り、この不思議な出来事をお冬や法世に話したが腑に落ちない様子である。そして、お夏自身も信じられないのである。  ただ、漫画家といえども、名もない法世は食うや食わずの身でありながら、お夏とお冬二人の娘を養っていたので、この金貨はとてもありがたかった。  次の日もまた、お夏は川原で芝居の稽古をしていた。  そこへ、一人の男が来て、 「お嬢さん、お嬢さんの声はとても澄んで美しい。どうか、私の事務所の歌手になって欲しい。私はこういうものです。」 とお夏に名刺を渡した。  モリタ芸能プロダクション 「えっ、モリタプロって、美空すずめや、都ふゆみが出たところですよね!?私は歌手を目指してはいませんが、私には歌手を目指している友達がいます。連れて来るので、ちょっと待ってもらえますか?」 と言いお冬を連れてきたのであった。 「おじさん、お待たせしました。友達のお冬です。」 お夏はお冬を男に紹介した。 「歌手を志望しています。よろしくお願いします。」 お冬が深々と頭を下げると男は 「こちらこそよろしく。これから博多港の近くで担当の者と会うので来ていただけますか?」 と言う。お冬は、 「はい、もちろんです。」 と言った。そして、お夏のほうを見て、 「これで私の夢が叶うかもしれない。お夏、ありがとう。」 と言い、お冬は男と一緒に川原をあとにした。お夏はとても嬉しかった。親友のお冬の歌手への道が開けたのだから。  

だが、そこには大きな落とし穴があった。  かの男、実は若い娘を誘拐し、海外で売る犯罪組織の一員だったのである。  そのことをお夏が知ったのは、川原を通るおばさんたちの話し声からだった。 「この辺にもマフィアがいるんだって。歌手になりませんかと言って、ニセの名刺を出して女の子を誘拐して、外国で売るんだって。」 「怖いわねえ。私たちの娘にも気をつけさせましょう。」 もしかして・・・お夏はおばさんに尋ねた。 「あの、マフィアって・・・」 おばさんは驚いたように言った。 「あら、知らないの?今朝からテレビでずっと放送されているわよ。もう30人の年頃の女の子が行方不明で博多港にいるんじゃないかって。あなたも気をつけないと。」  お冬が危ない。  お夏は走り出した。  博多港に着いたお夏が見たのは、男に羽交い絞めにされ、今にも船に乗せられんとするお冬の姿である。    その男の横腹を、  お夏の足の一撃!!  ひるむ男から逃げたお冬とお夏はひしと抱き合った。  「お冬」  「お夏」  ほっとしたのは束の間。船の中から15人の男が出てきたのであった。男たちは、二人を取り囲んだ。お夏、お冬、危ない。  そのとき、お夏の胸のポケットに黄門様からもらった印籠が見えたのである。  お夏はポケットから印籠を取り出し、印籠の紐を思いっきり引っ張った。  すると、ものすごい突風とともに、黄門様一行が現れたのだ。黄門様は助さん格さんの助太刀により、15人の男をあっという間に倒した。  ところが、船の中には、あと15人の男と30人の女の子がいて、男たちは女の子の乗った船を出航させようとしていた。  そこへ、警官たちが到着する。 「少女誘拐ならびに出入国違反、現行犯で逮捕する。」  警官たちは次々に船に飛び乗り、船の中で乱闘が起こった。中からは女の子たちの悲鳴が聞こえる。  そこへ、黄門様が整然と立ち、助さんの声がする。 「えー、静まれー、静まれー。こちらに御座すお方をどなたと心得る。さきの天下の副将軍水戸光圀公にあらせられるぞ。」 すると、印籠からまばゆい光が出てきたのである。 ・・・この光は、悪事を行うもののみ捕らえることができる。光を浴びた悪者たちは、みるみる力をなくし、警官たちに捕らえられた。  船の中の30人の女の子とお夏とお冬は無事保護された。  この一部始終は、テレビで放送され、お夏、お冬そして30人の女の子の夢実現のきっかけになったのである。  お夏はハリウッドにスカウトされ、女優への道が開けていった。お冬は30人の女の子とともにグループを作り、テレビ出演が決まった。グループの名前は、博多モーモー娘。水戸黄門の「もん」にちなんだ名前である。お夏とお冬は夢実現への一歩を踏み出した。  そして、黄門様との別れのときが来た。  希望に満ちた二人は、黄門様と握手を交わした。 「黄門様、ありがとうございました。」 と言う二人に、黄門様は語る。 「そなたたちの夢を追いかける姿は、私の心を動かした。人の真剣な姿は、かたくなな人の心をも動かすことができる。夢を追うことは、人を成長させるし、強くする。夢あってこそ、苦しいことに耐え、辛いことも乗り越えることができる。  しかし、夢を追いかけると時には危険なこともある。そして、たやすいことではない。だからこそ、夢を追うそなたたちの存在は貴重なのだ。  私の夢は、人びとの一人ひとりが生きていて良かったと思える世の中を作ることだ。そなたたちもまた私の夢の一部だ。  私が思うに、人間は夢を見ずして道を開くことはできない。夢あっての道だ。そなたたちは困難にもめげず夢に向かって努力を続けた。これからも人びとに夢を見ることの大切さを教えて欲しい。」 黄門様は、そう言うと20世紀の博多の町をあとにしたのである。

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