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エネルギーのへんか  作者: ぱぴぽ
第一章 アルミナ村編
8/13

ハプニング続出!?

「グリーンドラゴン!」


四人の声が揃う。


こういう事に疎い僕ですら揃う。


緑龍。国が作ったこいつらには関わらない方が身のためだよランキング十位。


「国制保身のための強者順列十位の緑龍か。抹殺命令があったかもしれない」


タールはこんな時なのに訂正をしてくれる。


そんなタールも顔をこわばらせて剣に手をかけている。


「強順十位かよ。逃げれるか?」


ルーズリーが震えている声でミッシェルに分かり切っていることを尋ねる。


ミッシェルは無視して緑龍を凝視する。


僕なりに声を当ててみると、そんなの、見たらわかる。いちいち聞くな。かな?


「万事休すだ」


ルーズリーは剣の切っ先を下げる。


緑龍と呼んではいるが、緑の龍では無く、普通に人型で、緑髪の青年だ。


言いたくないが、イケメンだ。


しかもこの森に居るってのに防御する気がない装備。黒いコートのしたはただのTシャツだろう。


魔竜族らしい。


あれ? 龍ちゃうの?


「そこのスカーフ、龍ってドラゴンじゃないの? って顔で見んな」


キッと睨まれる。


心読める感じの手合いかな?


体を縮こまらせながらどうでもいいことを考える。


「緑龍……緑龍!」


ミッシェルが何かを思い出したかのように駆け寄る。


「危ないぞ、近寄るな!」


ルーズリーが止めようとするがするりと抜け走っていく。


「特攻隊?」


あのタールですら呆れ顔。


緑龍も腰に下げてある剣かなんかに手をかけながらミッシェルを見る。


「お前、ミッシェルか?」


「そう。ミッシェル」


コクコク頷いて、緑龍に抱きつく。


ルーズリーは光の速さで言う。


「ミッシェルちゃん、知り合いなのかなー?」


また無視される。


悲しきルーズリー。


「お! やっぱしミッシェルか! どうだ、魔法の練習捗ってるか?」


緑龍はミッシェルの頭をガシガシ撫でている。


僕とタールとルーズリーさんは置いてかれているよ。


タールはボケーっとして、ルーズリーさんは放心状態で地面にお絵かき。僕は微笑ましく感じていた。


「で、そいつらは何者だ?」


再び僕らを見て嫌な殺気を出す。


「私の、仲間」


「はーん、しかし、トラップなどそんな手前には置いてないはずなんだが、まあいい。引っかかったろ?」


緑龍は何故かニヤニヤしながら僕に近寄ってきた。


あまりの威圧感に萎縮してしまう。


「はい、引っかかったです」


「引っかかったです、か。お前面白いな。良いぞ。お前の面白さとミッシェルの可愛さに免じて、ここから出る術を教えてやろう」


「とても言いづらいんですけど、貴方の後ろの穴みたいなところ通れば出れるのでは?」


タールが尋ねる。


緑龍はタールを三秒ほど睨む。


「はん、そう言う事か。良いだろう、彼女の部屋の近くに飛ばしてやる」


心読めるやつですね。


「後ろの穴は何なんだ?」


ようやく放心状態から復活したルーズリーは普通に尋ねる。


「この穴を越えると次の魔物の部屋へ出るだけだが?転移魔法のようなしかけだが……」


緑龍は穴の中に手を入れ、しかめっ面で取り出す。


その手は僅か一瞬で、血まみれになっていた。


「強順十位の俺でもこのざまだ」


「ここはザコ秘境って聞いていたのに……」


ルーズリーは緑龍の血だらけになっている手をまじまじと見つめた。


「彼女が来てから魔力の流れがおかしくなったんだよ」


ルーズリーは彼女って誰?と言うが、みんな無視している。


僕も無視をするか。


緑龍は手を治癒を施して笑う。


「よってここはザコ秘境なんかじゃない」


「じゃあ、あのハイビードルも?」


僕は恐る恐る聞く。


「あ、あいつは少しは強くなってるかもな」


引き攣った笑みでございますこと。


緑龍はわたわたと手を振る。


「まま、とりあえずでよう。ここ出ていけ」


「そうだね。緑龍の言うこと、さっさとやろう」


ミッシェルもようやく緑龍から離れる。


「出る術を教えてやろうってのは嘘だ。ここから出してやる」


そう言って緑龍は足で地面に線を書きはじめた。


ルーズリーが描いた絵は潰された。


「あー!」


ルーズリーが叫ぶがもう遅い。


「魔法陣?」


ミッシェルが緑龍に尋ねる。


「そうだ。転移魔法陣だ」


「ねぇ、なんで緑龍、こんな所にいるの?」


どうでもいいことを聞いている。


僕らには関係ないだろ!


「ミッシェル、もう出よう」


ルーズリーも早く出たいのかミッシェルの手を引く。


「そうだな。俺は彼女にここの守護の為に召喚されたんだ。俺の魔法でも解呪出来なかったもんで、この立場に甘んじている」


緑龍は転移魔法陣に魔力を流しながら語る。


誰得と僕がボソッと言ったら手に短剣が刺さっていました。


僕には魔力の流れとか分からないが、光っているので魔力が流れ込んでいると勝手に思い込んでいるだけだが。


「早く乗れ」


怖いので乗る。


短剣は頂く。


タールは訝しげに目を細めながら乗り、ミッシェルは悲しそうな顔。


ルーズリーは魔法陣を消そうとしたのか地面を蹴ったが、消えなかった。


ルーズリーさんよ。八つ当たりは駄目だ。


「ミッシェルとその他の者よ、俺を彼女の呪縛から放ってくれ」


「その為に僕らを出してくれるって訳ですか」


「そうだな。俺もここから応援しているからな」


転移の光が辺りを包み……最後に手をブンブン振る緑龍が、見えなかった。


何も見なかった。





「緑龍と知り合いってどういう事だ?」


ルーズリーは元の場所に戻ったせいか、いつもの威厳が戻っている。


「魔法、緑龍に教えてもらった」


ミッシェルが答える。


タールはミッシェルに駆け寄る。


「助かりました。ありがとうございます」


しかもペコペコしている。


「う、ただ知り合いだった、だけ」


ミッシェルは顔を赤らめ、ルーズリーに抱きつく。


「うん。うん。ミッシェルは俺より緑龍だよな」


威厳が戻っても、ミッシェルに自分が蔑ろにされるのはこたえるようだ。


タールはルーズリーに向き直り、剣を向ける。


「で、ランドルフ、ミスしたと言うのはどういう意味ですか?」


その発言をしたのはミッシェルだった気がする。


けど、ルーズリーさんは推しメンじゃないから泥を被ってもらうよ。


ルーズリーは抜きっぱなしの剣を構えなおす。


「正直に言うと失敗したのは俺らだ」


「何に失敗した」


タールは敬語ではなくなる。


険悪なムードになってきた。正直僕は逃げたいよ。


ミッシェルが二人の間合いに入って言う。


「二人とも、緑龍の願い、忘れた?」


「ミッシェル、それより大事なことなんだ」


そう言いつつも剣をミッシェルに触れないように、動かす。


「ミッシェルさん。僕は恨まれる理由が知りたいだけです」


タールも剣を動かす。


「はぁ、じゃあ私が転移魔法で、あそこへ送ってあげる。二人とも」


二人がどかした剣を蹴って言う。


ミッシェルの笑顔が怖いよう。


ルーズリーは不満そうに剣をおさめる。


タールはそっぽを向いて剣を鞘に戻す。


「じゃあ、行きましょうか」


僕はようやく口を開く。


顔は強ばっていたろう。


「はいよ」


ルーズリーは気だるそうに返事する。


「行こう!」


ミッシェルはやる気満々だ。


「うーん、なぜメクルが仕切ってるんだよー」


まだまだ不満そうなタールもルーズリーを見て苦笑する。



「あのー……」


艶やかな大人の女の声がする。


ミッシェルのものではない。


「お、ユリーヌか」


ルーズリーはちょいちょいと手を動かす。


「トラップ組仕事しゅーりよー」


だらだらとランドルフが手を揺らす。


「あれ? 何やってるのー?」


この人は……消去法でメルさん?


「ちょ、ランドルフ空気読め!」


ルーズリーはランドルフを殴って沈める。


ランドルフは弁解をしようとしたが沈められる。


「ちょ、誤解だっげふっ」


メルは倒れたランドルフを起こすためにバシバシ叩いている。


タールは再び戦闘態勢に入ろうとしている。


憧れのランドルフさんが沈められてショックだったの?


確かにランドルフファンとしては幻滅するし、怒るだろう。


「ごめんなさいね。村周辺のハイビードル退治の依頼を受けていて。発生源を絶つのが手っ取り早いって。だから転移させてしまおうって魂胆だったの」


リミットブレイドの大人要素が動き出す。


立派だなあ。何かは言うまでもない


ルーズリーは平然としているが、僕には耐性がないんだよ。


タールも少し顔を赤くして目を逸らしてる。


「そ、そうでしたか。疑ってすみません」


「大丈夫よ。それよりあなた達は何かやらなければならないことが有るのでは?」


ユリーヌはルーズリーを見る。


「ああ、そうだな。行くぞ」


「そうですね。ルーズリーさん」


タールがそのあとを追う。


「まってー」


ミッシェルはそんなことを言っているくせに、ブーストかけている。


「ってランドルフさん達は来ないんですか?」


ルーズリー達はだいぶ遠くまで行っているが、残りの二人と一つが足を動かそうとしないので、振り返る。


いつの間にか復活したランドルフは僕の背中を押した。


「ここの少女位ならメクルたちとルーズリーたちが協力すれば余裕だよ」


「それにさ、何かを頼まれたのは君らだろ?」


そう言ってランドルフとユリーヌ、メルは入口の方へと踵を返した。




先行した三人の姿が見えなくなってきたので、走って追いかける。


「あれ、ランドルフたちは?」


僕が走ってくるのに気付いて足を止めたらしいルーズリーさんは辺りを見回している。


「三人は帰りましたよ」


「息切れ、大変だね」


ぜえぜえ言っているが大丈夫。


全力疾走が体に堪えただけだ。


「そんなんじゃ、一流の冒険者になれねーぞ」


ルーズリーは軽快に笑う。


タールもそれに釣られて笑う。


「ははっ、確かに」




本当に緑龍は彼女の近くに飛ばしてくれたようだ。


少し歩いたらミッシェルが反応した。


「いる。ここの辺り、魔力がおかしい」


それからミッシェルは無言で索敵を始める。


「緑龍有能だな」


手の関節を鳴らすタール。


本気モードに入ったようだ。


笑顔だが汗が垂れている。


「ふぅぅ。いっちょブチかますか」


ルーズリーは深呼吸をして気持ちを落ち着けているようだ。


僕は恐怖で震える足にこぶしを叩きつける。


「みつけた!」


彼女の部屋の扉だろうか。


ミッシェルが指し示した辺りの蔦や枝などを退ける。


「ビンゴだ。ふう、準備はいいか?」


緑龍の後ろにあった穴のようなものにそっくりなものがあった。


否応なしに思い出される血だらけの手。


それを頭から振り払う。


「行くぞ。俺がはじめに入る。次にメクル、ミッシェル、タールの順で入ってこい」


穴の中にルーズリーの姿が消えた。


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