平凡な秘境
朝。ここに来てから三回目だ。
そして今日は初の秘境探検。
この前買った装備を付ける。
そしてヒュンタも腰に下げる。
軽いのう。
昨日買ったその他もろもろをカバンに詰めて肩にかける。
「メクル、準備出来た?」
まるで自分は準備完了だよとでも言っているようだが、タールは今起きたようだ。
「うん。ほとんど大丈夫。タールは早く準備してよ」
そうタールを急かそうと見てみると……何と言うことでしょう。
タールは代行者の証、紺色のマント身に付け、強固そうな鎧みたいなものを下に着ている。背中には剣を背負っている。
腰には小さめなバッグをつけている。かかとのあまり高くないブーツがカタタッという音を立てる。
そしてタールは一言。
「完了」
速い。速すぎる。代行者タール。
こんなのを見たらどこかの伝統の速着替え氏も裸足で逃げ出すよ。
「ん? なにボーッとしてるの?」
「えっと、速すぎないか?」
タールは微妙な表情をして言った。
「代行者になるには早く行動するのは最低条件なんだよ」
「これは訓練で何万回もやったから、余裕なんだよ」
物理法則完全無視だと思うけど、もう見なかったことにしよう。
「朝飯でも食べようか」
「そうだね。ちゃんとエネルギー補給しなくちゃ」
荷物の最終確認を済ませ、食堂へ向かう。
今日の朝食はプップルパンと卵スープだ。
プップルは別名甘りんごだそうだ。
さっさと食べて、いや、タールは既にプップルパンを卵スープで流し込むという暴挙に出ていた。
作ってくれた人への誠意ってものが欠落しているよ。
少しタールを睨みながら宿を出る。
森林の洞窟はアルミナ村を西から出てすぐにあるらしい。
「西って風俗街の場所じゃん」
とは言ったが、迂回すると余計な時間がかかるので突っ切る。
「本当に風俗街ですねえ」
僕は改めて驚いた。
そんな暇は全くないのだが、看板を眺めながら通り過ぎる。
前来た時は暗くて見えなかったもんでね。
「そうだね。結構店が多い」
「っと、出口が見えてきた」
「よし」
僕らはアルミナ村の風俗街から出た。
「ここから少し歩くけど、注意して。魔物とかが出てくる」
タールはより一層緊張感を高めるように言った。
「わかってる」
そう言うと少しドキドキしてくる。
死にませんように。
「っ」
僕が下をむいている時に魔物が来たらしい。
しかしそれに気づき顔を上げた時には死体と飛び散った血のみしかなかった。
いつの間に剣を抜いたんだ?
「ちゃんと前見てね」
タールは剣に付いた血を振り払った。
「ごめん。気をつける」
注意すべしだ。
「熱エネルギー操作」
死体に手を掲げエネルギー操作をして燃やす。
燃やしながらも辺りを気にするようにする。
「そっか、死体は燃やすべきだね」
タールは黒焦げになった死体を足でつついて言った。
僕も一応ヒュンタ抜いておくか。
2014年11月30日 0:45:10 の変更内容にコンフリクトがあります:
朝。ここに来てから三回目だ。
そして今日は初の秘境探検。
この前買った装備を付ける。
そしてヒュンタも腰に下げる。
軽いのう。
昨日買ったその他もろもろをカバンに詰めて肩にかける。
「メクル、準備出来た?」
まるで自分は準備完了だよとでも言っているようだが、タールは今起きたようだ。
「うん。ほとんど大丈夫。タールは早く準備してよ」
そうタールを急かそうと見てみると……何と言うことでしょう。
タールは代行者の証、紺色のマント身に付け、強固そうな鎧みたいなものを下に着ている。背中には剣を背負っている。
腰には小さめなバッグをつけている。かかとのあまり高くないブーツがカタタッという音を立てる。
そしてタールは一言。
「完了」
速い。速すぎる。代行者タール。
こんなのを見たらどこかの伝統の速着替え氏も裸足で逃げ出すよ。
「ん? なにボーッとしてるの?」
「えっと、速すぎないか?」
タールは微妙な表情をして言った。
「代行者になるには早く行動するのは最低条件なんだよ」
「これは訓練で何万回もやったから、余裕なんだよ」
物理法則完全無視だと思うけど、もう見なかったことにしよう。
「朝飯でも食べようか」
「そうだね。ちゃんとエネルギー補給しなくちゃ」
荷物の最終確認を済ませ、食堂へ向かう。
今日の朝食はプップルパンと卵スープだ。
プップルは別名甘りんごだそうだ。
さっさと食べて、いや、タールは既にプップルパンを卵スープで流し込むという暴挙に出ていた。
少しタールを睨みながら宿を出る。
森林の洞窟はアルミナ村を西から出てすぐにあるらしい。
「西って風俗街の場所じゃん」
とは言ったが、迂回すると余計な時間がかかるので突っ切る。
「本当に風俗街ですねえ」
僕は改めて驚いた。
そんな暇は全くないのだが、看板を眺めながら通り過ぎる。
前来た時は暗くて見えなかったもんでね。
「そうだね。結構店が多い」
「っと、出口が見えてきた」
「よし」
僕らはアルミナ村の風俗街から出た。
「ここから少し歩くけど、注意してね。魔物とかが出てくる」
タールはより一層緊張感を高めるように言った。
「わかってる」
僕だって一応冒険者ですから。
でもタールにそう言われると少し不安になるな。死にませんように。
「っ」
僕がよそ見をしていた時に魔物が来たらしい。
不味いと思って、防御しようとした時にはタールが剣を振る音が聞こえた。
いつの間に剣を抜いたんだ?
「ちゃんと周り見てね」
タールは剣に付いた血を振り払った。
魔物は一撃で死んでいた。
「ごめん。気をつける」
僕は冒険者なのに警戒を怠ってしまった。
「熱エネルギー操作」
タールがこちらを見ていたので目をそらすように死体に手を掲げ、エネルギー操作をして燃やす。
「そっか、死体は燃やすべきだね」
タールは黒焦げになった死体を足でつついて言った。
僕も一応ヒュンタ抜いておくか。
もう油断するものか。
タールはまた後ろを気にしている。
それから三十分ほど歩くと森が見えてきた。
「さあ、ここからは秘境だから気をつけてね」
タールは後ろを振り向いて言う。
「よし! 頑張ろう!」
ルーズリーさんたちとも約束したし、少女も気になる。
絶対この秘境踏破してやる!
〜タール視点〜
「ここから少し歩くけど、注意してね。魔物とかが出てくる」
アルミナ村からでた。
ここからはいつ殺されてもおかしくないのだ。
警戒はし過ぎても損にはなるまい。
「わかってる」
メクルが返事を返す。
そう言えばメクルは冒険者だったか。
なら、俺が守ってやる必要もないかな。
でも警戒するなら剣は抜いておこうよ。
そう考えながらメクルの方を振り返ると、メクルは後ろに迫る魔物に気づいてない。
え! 今言ったばかりなのに!
一呼吸でメクルに向かいながら剣を抜く。
そして相手を一太刀で仕留める。
これも何万回も訓練してきたことだ。
冒険者なのに警戒を怠るなんて……
本気で叱ろうとは思ったが、やめた。
木の陰に人影が見えた気がしたからだ。
少しメクルを睨みながら注意する。
メクルには少し恐怖を覚えてもらわなくては。
「ちゃんと周り見てね」
メクルはばつの悪そうな顔をして俺から目をそらした。
そんなに怖い顔したかな。
「熱エネルギー操作」
そしてエネルギー操作で魔物の死体を燃やす。
「そっか、死体は燃やすべきだね」
俺は炭になった死体を足で弄りながら言った。
弄っているとメクルはやっとヒュンタに手をかけた。
まだばつの悪そうな顔をしていたが、警戒心はより強くなったように感じる。
国家代行者の俺が言うのだから確実に警戒心を強めている。
後ろを見るとまた人影が見える。
誰かにつけられてるな。
付きまとい方はとってもお上手だ。
三十分ほど歩くと森が見えてきた。
後ろを気にしているのがメクルにはバレてしまっているようだが別にいいや。
洞窟に森があるという変な構図を期待していたが、普通に森の中の洞窟と言った形らしい。
僕はまた後ろを向いて言う。
「さあ、ここからは秘境だから気を付けてね」
「よし! 頑張ろう!」
メクルもなんだか元気が戻ってきている。
つけてる人達も悪い奴ではなさそうだし、放っておくか。
まあ、多少の殺気は感じるけど。
〜メクル視点〜
本日は秘境についてのリポートをお送りいたします。
リポーターのメクルさん!
はい、リポーターのメクルです。本日はここ、森林の洞窟に来ております。陰湿な雰囲気が漂っております。さっきから様々なところから魔物の唸り声が聞こえてきて、正直、リポートどころではないです。
怖い。
その一言に尽きますね。
そ、そうですか。リポーターのメクルさんにはこれからもリポートを続けてもらいます。
それでは次の特集です……
「メクルくん大丈夫かなー? 意識あるかな?」
タールは剣を持ってない右手で僕を揺さぶっている。
右利きじゃなかったんだ。
「ああ、大丈夫」
「もう秘境入ったんだからさっきみたいな事はよしてよ?」
「わかってるわかってる」
僕が適当にあしらうとタールはあからさまに呆れたような顔をした。そのあと地獄の底から聞こえるような声で
「死んでも知らないよ」
と言った。
「あ、なんか、ごめんなさい」
たじたじだ。
たじたじだ。
大事なことだから二回言いました。
焦っていると僕の背後でガサガサと言う音。
振り向く。ハイビードルだったろうか。
三匹。
タールが動く気配はしない。
さっき言った通りなのだろう。
殺らないと殺られる。
「熱エネルギー操作!」
ヒュンタに火の属性を付加する。
ハイビードルたちはブンブンと僕の周りを包囲する。
針が飛んでくる。よけるのは間に合わ
剣を両手でもち、片足を軸にして回ってみる。
二匹には当たった。火を付加していたからか、当たった二匹は動かない。
しかし、よけなかったので僕には針が刺さった。
「いでっ」
ラストのハイビードルは体勢を立て直し針を飛ばしている。
「電気エネルギー!」
とにかく電気をたくさん加え、ハイビードルの所では爆発するように調整。
「爆発!」
ハイビードル、爆散。
電気エネルギーは普段使わないので苦手です。
「メクル、本気だったね」
後ろで見ていたタールは針が刺さったっている部分を見ている。
「治癒エネルギー、促進」
僕は針を抜いてからそこに手を当て傷を治す。
「なんで僕だけ攻撃されたんだよ」
「えー、そんなのハイビードル達の気分でしょー」
「ぐぬぬ、納得いかないけど、僕がハイビードルでもタールは襲わないな」
僕が文句あり気な目でタールを見ていると、
「はいはい、進もうね」
押されて行った。
目の前が光った。そして舌打ちが聞こえた気がした。
「っ! ここどこ?」
暗くて見えない。
まさか噂に聞くトラップにかかったのかな。
タールー! タールー!
「トラップだね。モンスターハウス的な?」
タールは平然と答える。
他にも気配を感じる。
魔物かな?
「おい、なんでメクルまで居るの!?」
圧迫感があるなぁ。
「ランドルフ、ミスした」
幼女の声。
あれ? ミッシェルとルーズリーさん?
「なんでここにいるんですか?」
魔物の唸り声が聞こえるよう。
怖いよう。
「心配で付けてきたら、トラップに掛かったよ」
「リミットブレイド? 付けていたのは……」
タールも予想外の出来事だったのか、声がうわずる。
「さすが代行者。付けていたのは気づいておられた」
ルーズリーはくつくつ笑う。
ルーズリーさん。笑ってる暇ないよ。
魔物がルーズリーさんに襲いかかった。気がする。
見えないからな。
剣を振った時のヒュンという音がする。
その一瞬後血の匂い。
やはり魔物はいたのであろう。
「高貴なる光よ、闇を照らせ。光源!」
ミッシェルの詠唱が響く。
まばゆい光が辺りを包み、数秒で視界が戻ってくる。
「片言じゃなかった」
僕はミッシェルの魔法より、詠唱の滑らかさに驚いた。
ん? 今睨まれたな。
「ここはやはり……トラップにかかったのでしょうね」
タールは剣を構えなおす。
「ここは共闘するか?俺はこれくらい造作もないんだけど、いかんせん体力の消耗が激しくてな」
「そうですね。僕もあこがれのリミットブレイドのルーズリーさんとミッシェルた……さんと共闘してみたいですし」
「はん、戯言を。戦力を確かめたいの間違いだろ」
ルーズリーは鼻で笑う。
「なぜか嫌われている……」
軽い感じで重そうなことを話している。
魔物たちも空気を読んでいるようだ。
ごめんな、もう少し待ってくれ。
魔物たちにごめんなさいのウインク。彼らはこちらを睨んだ。
待っている間に僕の知識にあるだけ、ここの魔物を紹介しよう。
僕らに一番近いところで困ったように顔を見合せているカエルっぽい魔物はヴフトフロッシュ。怪力な魔物だが、僕は戦ったことが無い。
その後ろにいるて弓のようなものを持っている魔物はシュパッツだったかな。
一番後ろにいるのは……あそこが出口か。
「もういいです。さっさと蹴散らしましょう」
短剣を魔物へ投げ、走り出す。
「そうだな。ストレスを発散させてもらおう」
奥義かなんかを繰り出すのか、光りだす。
ミッシェルも今までどこに隠れていたか知らないがひょっこり出てきて杖を構え詠唱を始める。
「聖なる雷撃よ、この有象無象を蹴散らす術を与えよ。雷撃」
みずタイプにはでんきタイプですね。分かります。
「い、行くぞ。ヒュンタ」
僕も構えるが、
「メクル!お前はエネルギー操作でミッシェルの援護だ」
ヴフトブロッシュを蹴散らすルーズリーから指示が飛ぶ。
ヴフトブロッシュ達は成す術がないよで、
僕は多少のショックを受けながら剣を鞘に納め指示に従う。
「電気エネルギー操作!」
そこらじゅうの電気を帯びているものから魔物に向けて電流が流れるよう操作する。
緊張のせいか手汗がにじみ出ている。
ほとんどヴフトブロッシュは倒せたようでシュパッツが前へ出てくる。
「うへえ、弓もちかよ」
ルーズリーさんは半歩ほど後ずさりやりづらそうにしている
タールはそれと交代でずいっと前へ出る。
「こういう嫌な手合いには慣れているんで」
飛んでくる矢をヒョンヒョンよけて各個撃破。
「運動エネルギー操作!」
「大いなる風よ、我を荒らせ。風圧」
僕は矢を元の場所へ戻すようにエネルギー操作する。
ミッシェルは矢を二人の間合いの外へと吹き飛ばす。
片言でないミッシェルはかっこいい。
なかなか骨の折れる作業だ。
それが功を奏したのか、ルーズリーもバンバンシュパッツを斬っていく。
「抑気流・奥義、真空刃!」
見えない剣の攻撃。
しかもその後こっちを向いてニコリとピース。
余裕も出てきたらしい。
シュパッツもほとんど居なくなった。
このモンスターハウスは抜けられるな。
タールが前にいるルーズリーに制止をかける。
「! ルーズリーさん」
そしてタールも止まる。
「っ! 厄介だな」
ルーズリーもなにかに気づく。
「これは、でかい」
ミッシェルも口に手を当て上を見上げる。
これは……