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エネルギーのへんか  作者: ぱぴぽ
第一章 アルミナ村編
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炎の烏の亭

「タール君よ、でももう時間が遅いですよ」


空はもうだいぶ暗くなり星が瞬いている。


「そうだねえ、もうそろそろこの辺も盗人なんかがうろつき始めるのかな」


タールは辺りを注意深く見渡した。


「うーん、仕方ないな。こんなに暗いと俺でも見つけるのは難しいからね」


「というと?」


「ふふっ、宿でも取るか」


といい、光がぽつぽつと見える方へ歩いていく。


しかし流石国家代行者だ。背中にも隙が全くない。




宿が立ち並ぶ場所へ出る。


街が荒れているのに何軒か宿がある。


「こんなに荒れていても旅人とか居るのかね?」


「いるんだろうね。元々は東へ行く時の中継点だったから」


「ふーん。東かぁ」


「剣士の街が有るからね」


「ああ、そういうことか!」


タールはある宿の前で立ち止まった。


烏の亭?鳥の亭?


ああ、からすか。



他の所と違い、外側が丁寧に管理されているようだ。ツタなどが生えてないし、ヒビ割れもない。


「ここにする?」


「俺の記憶だとここがこの街で一番設備が良かった気がする」


扉に手をかけ押す。



ちりんちりんと高めのベルの音が鳴る。


うん。中もなかなかイケてる。


洒落ではないよ。


食堂の様な所が結構広く、テーブルや椅子も洒落ている。


「おお! いいねぇ」


といい思い出す。


やばい、ここ結構高いかも。


財布を確認する。


うーん金貨1、銀貨3、銅貨10か。


こりゃまたギルドでクエスト地獄かもなー。


「あっれー? 金欠なのかな? メクル君!」


タールはニヤニヤしながら財布を指差す。


「う、大丈夫だ」


「ハハっ、冗談だよ。俺がここを選んだんだから払うのが義務ってもんだよ。それに経費で落ちるからね」


なんだか申し訳ないが、ここは甘えさせてもらおう。


「うん、申しわけないけど甘えさせてもらうよ」


「ふふふ、いいだろう」


金銭袋を振って笑った。



タールは店員のいるカウンターまで行き


「今日から3日くらいで2人。食事付きでおねがいします」


金貨を4枚くらい置いて頼んだ。


「あ、足りなかったら後から払いますんで。余ったらチップということで」


「分かりました。ではこちらへどうぞ」


店員はカウンターから出て、部屋へ案内した。


タール君マジイケメンですよ!


っていうか払いすぎでしょ。







部屋はかなり広かった。


ベッドが3個あり、テーブルや調理台まである。


お!


「寝たい……」


僕はフカフカそうなベッドを見た途端になりふり構わずベッドへ飛び込み呟く。


「え、いや、お風呂とか夕食はいいの?」


「は! ご飯!」


ここの食べ物もなかなか気になる。


って、食べ物なんてあるのかな……


気になる。


眠気が吹き飛んだぜ!


「よし、食べに行こう」


「そう来ると思ったよ」


そう言いながら、部屋を後にする。




食堂なうです。


割と人がごった返しています。


こんな町にも人がいるんだな。


うんうん。


今晩の料理は何なのか気になりますがタールさんも料理長らしき人も秘密と言って取り合ってくれません。


つーかタールさんよ、なぜ君は知っているんだ?


「え? 来たことあるからに決まってるでしょ」


あ、そうでございますかって、


「心読んだ!」


「いや読んでないよ。顔に書いてあるからね」


「うう」


うーん、ポーカーフェイスをこころがけていたのになあ。


ん?いい香りが……してきたぞ!


「お待たせしました。イエローボアとクタリア草のステーキ、緑辛子入りコーンスープ、酢りんごの甘漬けです」


「酢りんご?」


「酢りんごとは甘りんごを長期保存に向くよう酢漬けにしたものです」


料理長はにこやかに説明する。


ことり、ことりと料理を並べていく。



「へー」


「ねえメクル。食べないの?」


「あ、もう食べていいの?いただきまーす!」


フォークを手に取り、ナイフを手に取る。


ナイフで肉を切る。


イエローボアって豚だっけ?


横を見るとタールは手を付けていない。


「食べないの?」


タールはフォークで肉をつつきながら笑った。


「いや、俺は食べたことあるからさ、感想を聞きたいなってね」


ふーん、んじゃお言葉に甘えて食べましょうか!!


ぷすっとさして、もぐもぐ。


え、ちょっと待って。


「辛いいいいぃぃ!」


口から火を吹くレベルだよ。吹かないけどね。


ヒリヒリする舌や喉のためにスープをがぶ飲み。


「ってこっちも辛っ!」


「タール!水頂戴!!」


ひーひー言いながら水を要求する。


「ふふふっ。予想通りの反応で嬉しいね。はい、水」


水の入ったコップを手渡してくる。


「水は辛くないよな」


僕は震えながら尋ねた。


もう二度とこの料理はごめんだ。


「大丈夫だよ。怯えすぎだ。それにこの料理はこう食べるんだよ」


戦う前のようにナイフを構え丁度いいサイズに肉を切る。


そして、謎のソースをかける。  


とろとろ。


「ほら、食べてごらん」


ふふんと言わんばかりの顔でソースの付いた肉の刺さったフォークを差し出してくる。


「男にあーんされてもうれしくないぞ」


と言いつつ頂く。


「ほっ! 辛くない。後味がピリッとしているけどいいね!」


つい子供のようにはしゃいでしまう。


我ながら単純だ。


「ソースのなんかの成分が辛さを緩和させるって言ってたよ」


後ろを見てみるが料理長はいなかった。


と思ったら他のテーブルで話してる。


「まあいいや。さっさと食べて明日位備えないと」


でもここで何か戦争に関する情報が入ってくるとは思わんがね。


いや、僕はあの女の子を何とかしてあげることが第一だ。


その理由についても興味があるしね。



「そういえば、なんでここの町あんなに荒れているのに割と豪華なものがあるんだ?」


僕は肉をフォークに刺してから尋ねた。


「たぶんだけど、この辺のギルドに収穫依頼とか採集依頼でも出してるんだと思うよ」


タールは食べ終わったのかナプキンで口を拭いている。


そうか、こんなところにもギルドはあるのか。


ギルドとは、討伐依頼、捜索依頼、採集依頼、収穫依頼、救援依頼のおもに五つの種類の依頼を張り出している所だ。


確かにここに来るまでにかなりの魔物にあったしそういうことなのだろう。


「ほー、そういうことか」


それからさっさと残りの肉とスープを片付け、デザートを平らげた。


僕はデザートを流し込んでいる時にタールが物欲しそうな眼で見ていたことは知らない。


知らない。




「ふぅ食べた食べた」


長めのブーツをその辺に投げ出し足をぶらぶらさせているタール君。


お靴はちゃんと揃えましょうね。


誰かが靴の乱れは心の乱れとか言ってましたよ。


「うう、もう眠いんだが」


布団に潜る。最近は野宿ばっかりだったから柔らかな布団は僕を眠りへ誘う。


「もう寝ちゃうのか。まあ明日もあの子を探さなくちゃだしね。うん、おやすみ」


人におやすみと言ってもらうのは久々だったので少し恥ずかしいが、明日も早そうだしさっさと寝てしまおう。


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