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エネルギーのへんか  作者: ぱぴぽ
第一章 アルミナ村編
3/13

昔の記憶

ちょっと時代は遡って7年前。


僕とタールが出会う少し前だっかな。


特別児童保護教育センターという何とも長ったらしい名前の建物に連れてかれた。


その上この情勢に似合わないような立派ななり。


なぜか怖いものに見えてとても不安だった。


お母様の迎えに行くという言葉を信じていたので、不安でも泣いたり八つ当たりしたりはしなかった。


不安を押し殺して生活をしていたが、爆発するのも時間の問題。


ある日僕は一人で勉強をしていた。エネルギー操作のことだったかな。


タールが来るまでは僕は誰ともつるまなかった。


僕は王族なのだからこんな奴らと絡めるかというプライドがあったからね。


「ねえ、メクル」


とある少女が声をかける。


「今勉強してるから黙れよ」


そう答えて黙々と読み続ける。


「エネルギー操作とかくっだらないわっ!」


と吐き捨て少女は去り、仲間を連れてきた。ガタイのいい少年たちだ。


いつもいつもちょっかいを出してきてうざかった。


だからどうした。と言うように睨む。


取り巻きのひとりが前に出てきて


「てめ、舐めてんじゃねーぞ」と言う声が聞こえた時には殴られていた。


いつもどおり無視をした。


それが気に食わなかったのだろう。

ボス格の少年が僕の読んでいた本をとってビリビリに破く。


その瞬間怒りをせき止めていたものが決壊し僕は彼らに向けて全力の風エネルギーをぶつけた。


というのが後から聞いた話で、破くのを見た瞬間からの記憶が飛んでいる。


気付いたら体中が切り傷だらけの少年達が泣いていた。


その後先生に叱られ、彼らの自己治癒エネルギーの促進をやらされた。


もっとも僕のやる気は全くなかったので大して効果はなかったが。


その件の後僕が抱いたので感情は反省ではなく、悔しさだけだった。


僕の本気とはこの程度だったのかと。正直、奴らの死がみれると思っていたからね。


でも、不安は無くなった。


それからは不満は溜め込まずにエネルギー操作の修行で発散するようにした。


その3年後戦争はグラペインの勝利で幕を閉じた。


僕は11歳になっていた。


相変わらず一人でエネルギー操作の分厚い本を読んでいた。


今思えば、なぜあんなに危険な子供だったのにその本を没収しなかったか不思議でならない。


タールは僕の読んでいる本を見て


「君の読んでいる本ってエネルギー操作のものなの?」


と尋ねてきた。


今までエネルギー操作について尋ねたり興味を持ったりする人が居なかったので僕は驚いた。


当時はタールの名前すら知らなかっんだけど。


「え?エネルギー操作知ってるの」


本を閉じてタールを見る。


「う、うん。詳しくは知らないけど俺は錬金術専門なんでね」


「そうかー、錬金術師なのかー。使ってよ!!」


「ふふふ、いいだろう。俺の錬金術見るがいい!」


と言いつつタールは僕の手をひいて外へ連れ出した。


「部屋の中じゃできないの?」


木の棒で地面に色々書きながらタールは答える。


「そうだね。錬成陣を書かないと出来ないんだ。すごい人は頭の中で書くだけで出来るらしいけどね」


「書かなくちゃいけないのは不便だね」


「んー、エネルギー操作よりは面倒かもね。よし、できた」


地面には僕には理解できなそうな陣が書かれていた。


「何を作るの?」


興奮した声で質問する僕に苦笑しながら


「じゃあ簡単にリンゴでも作ってみるね」


陣の真ん中に適当な雑草を抜いてきて置く。


後に聞いたことによると植物からは植物。動物からは動物。というような法則があるらしいが良く分からないな。


「いくよ!」


パリパリと音を立てて中の雑草はリンゴになった。


「すごっすごっ!」


錬金術を見たのは初めてだったのでリンゴをもってぴょんぴょん。


「へへへっ! これくらい朝飯前さ」


タールも得意げに胸を張っている。


「君はエネルギー操作出来るの?それと、汚い手でリンゴ食べたらお腹壊すよ」


リンゴを齧りながら返答する。


「出来るよ?みせてやろうではないか!あと汚くないよ」


齧りかけのリンゴを右手に持ち左手をそれにかざす。


「風エネルギー操作!」


唱えながら左手で辺りの風を増幅させてリンゴを切る。


「どうだ!」


8等分になったリンゴ片手にタールの方をみてドヤ。


「食べやすくなったね」


タールはそのうちの一個をとり食べる。


「みんなーリンゴいるー?」


リンゴをじっと見てからあろうことかそのへんで遊んでいた奴らに声をかけたのだ。


その中にはあの少女もいた。


「ちょ、君頭大丈夫?」


左手でタールの袖を引く。


右手にはリンゴ持っているからね。


「あいつらには声かけない方がいいよ。悪ガキ達だから」


「話さないうちからそんなこと言っちゃダメだよ」


それにね、と。


「彼らだって僕に君とは話さないほうがいいって言っていたんだ。でも君はいいやつじゃないか」


「うーん、たまにはいいか」


しぶしぶ了承する。


本当は嫌だが初めての友となりそうなタールの意見を尊重したかった。


「お? 新入り君とメクルか。りんご、もらうぞ」


とひとり。


「わー!お腹すいてたんだよね。ありがとう新入り君とメクルか」


またひとりとりんごを取って行った。


気づいたら手元のリンゴは無くなっていた。


齧りかけの部分すらないぞ!

僕は周りを見渡す。


「みんな悪い人ではなさそうだなぁ。あと君はメクルって言うの?」


みんな悪い人ではなさそう。確かに根は悪くないがふざけが過ぎるんだ。


しかし誰が齧りかけの所を……


「おーい」


王族を適当に扱うなんて礼儀がなってないにもほどがあるんだ。


「君はメクル君かな?」


「は!ごめん。僕はメタリクルって言うんだ」


焦りながら返事を返す。


齧りかけは諦めよう。


「そうなんだ。俺はブルタールって言うけどタールって呼んでね」


「うん、うん!」


僕はあの頃自分でも気づかなかったが寂しかったのだろう。


初めての友だちと言うものは僕が考えていたより良いものだった。




タールのお陰で他の皆とのわだかまりも減った。


しかし、そのタールにも自分が王族だということは伏せておいた。


信用はしているけど、万が一他人に聞かれたら困るからな。





ある日僕はある噂を聞いた。


それは戦争を終わらせたある1人の少年の活躍のことだ。


その少年は僕よりいくつか年上なだけで単独で敵の本拠地を落としたらしい。


僕はとても興味を持った。


どんな方法で、どれくらいで、何故かということが気になったのだ。


決してその話で好感を持ったわけではなかったが、会ってみたかった。


その話をタールにも教えてあげような。


「ねえタール!僕らくらいの年で戦争で活躍した人がいるらしいんだよー」


ふふんと鼻を鳴らしながら言った。


タールは戸惑っているのかチラチラと時計を見ながら


「え?そ、そうなんだ。活躍ねぇ」


といつもより長い時間黙って、ため息をついた。


「メクル、それは僕のことだ。隠すようなことでもないか」


過去を顧みるように言った。


よく見たら手が震えている。しかも僕の目を見ようとしていない。


このことはタールにとってのトラウマなのかもしれない。


悪いことを聞いてしまったやつだな。


いや、でもタール君の独白なのかな?


「ごめん、変な話題降っちゃったかな」


頭をポリポリ掻きながら謝る。


すると、彼は


「メクルが謝る必要はないよ。自分のやったことだし、後悔はしてないしね」


少し顔を歪めているような気がする。


しかしすぐ元に戻り


「辛いのは俺だけでいいんだよ。メクルまでそんな顔しないでよ」


タールは僕をポンポンと叩きある紙を目の前に突き出した。


僕はその紙の色を見て驚いた。


青色。


国家代行者の推薦だ。

王城で時々見かけたもの。


「国家代行者……? タール国家代行者になるの!?」


「そう。あの戦闘の功績と国家代行者になれる歳になったから推薦状が届いたんだ」


国家、代行者…それは反逆者や不穏分子を消していく仕事のことだ。


つまり、タールはこれからも人を殺し続けると言っているのだ。





僕は何も言えなかった。


今思えばあの時言っておけば何か変わったかもしれない。


やめてよとか言っても無駄だったのは明白なんだよ。


ならば、僕もタールと違う方で反逆戦争に関わろうか。


この国の王子なのだから。





数ヶ月後のある日と朝、僕とタールは門の前に立った。



「俺は国家代行者の試験を受けに王城へ」


タールはこのまえ買ったという短剣を腰に差して、冒険用の服装になっている。


この施設は王都にあるとはいえども郊外なので多少は魔物が出るらしい。


戻る気はさらさら無いようだ。


「なんでメクルまで外へ行く準備してるの?」


タールは僕を訝しげに見ている。


もちろん、僕だって目的があるからさ。


「エネジニアになりたいんだ」


「えー、メクルはもうだいぶ上手いじゃないか」


「うーん。ここにあるエネジニアの本は読み切ったんだ。だから行き詰まりをかんじてたんだ」


「そういうものなのかな?」


「そういうものだ。だから師匠でも欲しいなってね」


というのは建前で本当は旅をして戦争の理由、なぜここまでしなくてはいけなくなったのかをアナトリア人に聞くのが目的だ。


そして、妹、お母様の消息も……


タールは驚いた顔をした。


「師匠か、なら」


親友に嘘をつくのは気が引けるが致し方ない。


だって国家代行者志望者にそんな反逆的なこと言えないしな。


本当のことがわかったら正直になるよ、だから今はごめん。


と心の中で謝る。


でも国民に嘘をついている国を、ほっておくことはできない。


僕は知っている。


知っているが分からない。


戦争の原因はアナトリア人の声の無視だけでないことを。



だから言った。


「じゃあ、行こうか!」


僕たちは自分の道に向けて施設の門を踏み出したのだ。

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