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エネルギーのへんか  作者: ぱぴぽ
第一章 アルミナ村編
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はじまりの子

「見えた!アルミナ村!!」


遠くにうっすら街のようなものが見える。

そこから僕は全速力で走った。


ん?あれはアルミナ村であっているのかな?


少し考えたが、いや、本当に考えましたよ?気にすることもないと減速しなかった。


ようやくアルミナ村に到達する。


文字が傾いた看板は無くなっている文字すらあり、英語読めない……くないよ!WELCOME のていをなしていない。


だが、それ自体が村の状況を代弁しているのだろうか。


道は物乞いに溢れ、市場に活気はない。


いや、市場と言っていいのだろうか。建物らしい建物はない。


聞こえるのは盗人の駆け足とそれを捕まえんとする店主たち怒声だけだ。


うわあ、噂には聞いていたが……本当に荒廃って言葉しか合わない村だ。

あ、無法地帯ってのも合うな。


崩れかけた家の近くにあった瓦礫に腰掛け、水筒に口をつける。


荒廃してるとはいってもなぜ瓦礫がこんなに……


「ここがアルミナ村か」


僕はため息をつきながら呟く。


王都で集めた情報メモに目を落とす。


もちろん全てひらがなさ!


ここはアルミナ村、昔は採掘場としてまあまあ有名だったらしい。


ふうん。銀とか金とか取れたわけではないのかな。うん。とれてたならここまで荒廃しないだろ。


しかし戦争の際に資源を使い切ってしまったようだ。


そのうえ、働き手の男たちが次々と軍に持ってかれてしまったという。


確かに働けそうな人がいないからこうなるのか。女が鉱山で働くのは苦であろう。


男たちが帰ってきたと思ったらここが戦場になった。


つまり戦争に村の力を吸い取られたという表現が適切な哀れな村といったところだろう。


しかも戦場になったのか。ならばこの瓦礫だらけも納得。



「ノリで出てきちゃったけどこりゃ、初めての旅には向かないっていうか、上級者でもモノ盗まれるって、ほんと」


へらへらしながら言うが全く笑えない。


盗もうとしています。と言わんばかりの視線がこちらに集中している。


盗んだりしたら容赦しないんだからね!



気にしつつも宿を探して歩く。


つーか宿なんか有るのかな……一晩でどっか別のところいこう。


しばらくウロウロしていると物乞いの一人があ!と言いかなり大きめな瓦礫を手に取った。


するとそれまでだらだらとしていた物乞いたちが一斉に石を投げる。


よく見ると先ほどの盗人と店主もそのへんの石を拾って投げている。


何があったんだ?


誰もが同じ方を向き瓦礫や石を投げている。


そちらに目をやると6,7歳の傷だらけの水色の髪の女の子に石が当てられている光景が見えた。


傷だらけなところから見ていつもあてられているのだろう。


弱い者いじめ、ダメ、ゼッタイ。反射的に止めに入る。


「風エネルギー、操作」


手に風を集めるようイメージしてそれを瓦礫たちにぶつける。エネルギー操作と言われる技を使い、元の投げた主に帰るようにする。


瓦礫たちが投げた主に当たって砕ける。


ごめんね。瓦礫たちには何も罪はない。


制裁を加えてやったぜ。


いでえ!何するんだ、余所もんめが粋がりやがって!と文句が聞こえるが無視。


カッコつけてくるりと後ろを振り向く。


「大丈夫?お嬢さん?」


怯えられないように優しくといかける。

紳士ですから。


「あ、ありがとうございます!」

と、顔を赤く染め走って行ってしまった。なんか光ったか?


赤く染めたってのは僕の妄想なのだか。

実際はながい水色の髪に隠れて見えなかった。


髪の毛長すぎだ!こんちきしょー!


そんなことはさておき何か事情があるのかな、と考える。


この辺で事情を聞くと復讐されかねないので、別の路地へ移動する。


移動しても光景は大して変わらない。


その辺の人に聞いてみよー。どうせ適当に国をぶらぶらする旅だし。僕は割と暇人だ。


「迫害されている水色の髪の少女を知りませんか?」


それだけ言うと普通の人は言いたがらず道路の人たちは一斉に悪口らしきものを叫び散らした。


「え、し、知りません」


人のいい人はこう言い、


「あいつのせいで俺らは!~」


人の悪い人はこう言った。


~はその人なりの悪口の羅列だ。


一通り聞き終えてまた瓦礫の上で水筒を逆さにして振っていると顔を隠したマント男が近づいてきた。


紺のマント……見たことがあるような。


僕は怪しい風貌なので一応警戒した。


なんでも警戒するに越したことはないけど、引っかかるなあ。マント。


警戒している僕のことを気にもせず男は逆に僕に尋ねてきた。


「貴方はエネジニアですか?」


なんだ?こいつ。顔を隠して……まずその隠す布を取るのが先決だろう。


少し低い沸点に届きかけるが、落ち着かせる。


なぜならこんな場所でエネジニアを知っている人に出会うという珍しい事に驚いたからだ。


エネジニアとは動かす者、破壊する者という二つ名もある。

さきほど少女を守るために使ったエネルギー操作というものがある程度つかえる人間のことをさす。


そうか、あの騒動を見ていたのだろうね。僕のイケイケ具合に感動したのだろうが、男とは……僕は女の人の方がいいんだ!


一人で納得し、答える。


「そうだよ、僕はエネジニアさ」


そして間髪入れずに質問し返す。


「彼女は一体何をしたっていうんだ」


あの騒動を見ていたなら知っているかもしれないと思っての質問だ。


すると彼は顔を隠していた布をとって少し困った顔をした。


その素顔を見て僕はさっきより驚く。


「ええっ! タール!?」


「久しぶりだねメクル、俺はね、その子を捕まえるって任務でここに来たんだ。いや、国で保護するって感じかな?メクルが見たとおりあの子は迫害を受けているから」


彼は僕の唯一の親友のトイフェル・ブルタール、通称タールだ。


王子である僕より美貌なもので金に近い黄土色のクルクルの髪の毛を指にまいているのを見た日にゃ女子たちは卒倒だよ。


と、そんなことはどうでも良くて。


「お、おい!タールじゃないか。なんで顔なんか隠してるんだよ?」


動揺しながらも問い詰める。

動揺しても仕方が無いと思う。


「あはは、ごめんね?本当にメクルか分からなかったからさ。任務上顔割れしたら困るんだ」


納得だ。この紺のマントは国家代行者の証なのだ。


昔タールに教えてもらったのだった。このマントをしている人は国家代行者だから近寄らない方がいいよって。


その紺のマントの隙間から見える腕などは昔より屈強になっている。ような気がする。


しかしからっとした笑顔、それは昔と変わらない。やっぱりタールだ。久しぶりに会えて嬉しい。


僕がほわわーんと笑みを浮かべていると


「そういえば、なんでメクルもあの子のこと気にかけていたの?」


タールは、唐突に尋ねてきた。


「えーと、お節介したくなった…のかな」


返答に困ったが何かやましい事をしていた訳でも無いので考えながら答える。


僕は何もしてませんからね?


タールもあの子のこと探してるのだろうかと思い、提案した。


「タールもあの子のこと探してるんだろ?だったら一緒に探さないか?」


2人で探せば効率もいいだろうし、あの子も…あれ?男二人で来た方が怖いだろうか。


ふむ、よく考えると何も悪いことした心当たりがないのに知らない男2人に追われるのか。

僕だったら逃げるか。


考えながらブツブツ言っていると、


「いいよ。一緒に探そう。抜け駆けは無しだよ」


いたずらそうな笑みを返してきた。持つべきものは親友だな、と僕は彼の肩を叩いた。


タールは鞄から書類を取り出すと何か言い出した。


「あの子はこのアルミナ村の忌子ってやつらしい。名前はパークス・メリーヌっていうらしい」


パークス・メリーヌ…あれ、聞いたことあったような?知り合いではないぞ。と一蹴した。


「忌子ってなに?」

僕はまず最も気になることを聞く。


「うーん、この子の右手には赤い宝石のようなものがうまっているらしい。こんな風に体のどこかに宝石のようなものをもった人間がこの国の村一つに付き一人いるらしいんだ。その子達は差別の対象になりやすいから、国から保護するように言われたんだ」


差別か…どこでもありそうだがなぜこの場合だけ保護なんて言い出したのだろう。

あの王さまがそんな良い政策を行うはずがない。怪しいな。


怪しい、怪しいぞ!


にしてもさっき光ったように見えたのはその宝石みたいなやつか。ふむ。


「差別なんて……これ以上あの子がつらい思いをしないように保護してあげよう」


僕は疑いの気持ちを出さないように努めて言った。


バレて王にちくられたらたまったもんじゃない。


そんな僕の葛藤など気にもかけずに、

「そうだね、がんばろー」


のんびりとした口調で同意しながら微笑む。


こんな笑顔があれば……いや、僕だって王子さまー特権でモテモテだぁ!




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