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第二話「岩手の夜を走れ」

  第二話「岩手の夜を走れ」

「あなたは私の自由を束縛してうれしいの。私は私の一日

を送りたいの」

 携帯で俺が電話したら、開口一番がこれである。

 桃ちゃんの話を聞いた。

 桃ちゃんの携帯にはいまだに昔のお客からの電話やメー

ルがあり、安売り王のレジの仕事が終わり、帰宅したあと

は、昔の方々の応対に追われ、自分の時間がここ数日まっ

たく持てず、アイドル並みの忙しさで、趣味のエアロビに

も行けず、このままだと体重が五十五キロを超えて、おな

かプヨプヨでカエル女になってしまう、それでもいいのメ

タボン、ということだった。

 まぁ桃ちゃんは、近畿圏、特に滋賀県と京都府の「もて

ない君」のアイドルだ。

 だから、携帯の多さは仕方ないが、自ら「アイドル並み

の忙しさ」とのたまう37歳の女性はそういないだろう。

「私がカエル女になっても良いの」と言われても、スティ

ーブン・キングの小説でもあるまいし、バカなことをと思

うが、カエルに人間がなるのはやはり、正常なことではな

いし、正常でないことはいけないことだから、「桃ちゃん

が、カエルになったらメタボン悲しい」くらいの反応で、

桃ちゃんの「ノリ」に合わせるしかない。

 恐らく桃ちゃんは、仕事場でも過剰に笑顔を振りまきな

がらレジを打ち、疲れた体で帰ってきたら近畿中の「もて

ない君」の悩みに無料で答えてやっているのだ。そして自

分の自由のなさに気づき、万難を排してルネサンスでのエ

アロビ教室に突撃することを決意し、己の一日を完結させ

ようとしているのだ。

 桃ちゃんは今から自由を求め、スポーツウェアを愛用の

アディダスの緑のスポーツバックに入れて、夜の街に飛び

出していくのだが、己の自由を貫徹させるために、有名ホ

テルにこもっていた人もいるのだから世の中は様々だ。


 テレビをつければ、小沢さんのことばかりのこの頃。

 自由とは自分の思い通りにすること、外的束縛からの解

放だが、カリメロ福田首相からの大連立の申し入れを政策

実現の好機と捉え、喜んで民主党に帰ったら、みんなから

総スカンをくらい、何だこいつらは、私はいままでこの大

金持ちの宇宙人の鳩ちゃんと人の悪口言わせたら日本一の

KAN君のために、どれくらいの努力をしたと思っている

のか。私は、「一兵卒として民主党のためにがんばる」と

まで言い、やっとこのだらしないやつらが威張った顔が出

来るくらいに、参議院選挙で圧勝させたのだ。

 はっきりいって私は、この数年「アイドル並みの忙しさ」

で過ごしたのだ。

 それもこれも民主党の手で国民の生活をよりよいものし

したいという「思い」からだ。

 ここまで来て、何で私の「思い通り」にみんなは動かな

い。たとえ全国民から、腕白だだっこ親父、といわれても

良い。己の自由を貫徹するために、民主党の代表をやめて

やる、有名ホテルにこもってやる。民主党のやつらがみん

なで「ごめんちゃい」するまで、日本一のだだっこ親父に

なってやる。

 かくて小沢さんはホテルにこもり、桃ちゃんは夜の街を

愛車トヨタパブリカで疾走するのだが、小沢さんと桃ちゃ

んのどちらが、真の自由か。

 自由とは社会的責任や義務も伴う。要は社会的存在とし

ての人間は他者に迷惑をかけない範囲での自由を享受する

しかないわけだ。桃ちゃんは私人であり、桃ちゃんが今日、

近畿中のもてない君を無視しても、桃ちゃんに勝手に連絡

してきた人々に答える義務はない。

 でも小沢さんは公人である。

 十一月四日の日曜の午後4時からNHKを右往左往させ、

辞意表明をして、朝日と日経以外の報道機関に噛み付き、

自分の党を、こんな政党が衆議院選挙で勝てるかよと大放

言。七日にみんなが「帰ってちょ、帰ってちょ」といいだ

したので、「ごめんちゃい」会見をして、珍騒動は終わり

となる。ここまでやったら、これは自由な行為の範疇のは

ずもなく、単なるわがまま。そこまで言うかよ、小沢さん、

である。

 当然、小沢さんは桃ちゃんの爪の垢でもせんじて飲めと

なるのだが、以上は常識論。

 岩手県生れの小沢さんは、どうも暇なことが嫌いで、波

風を立たせるのが大好きな人のようで、昔から政界の破壊

屋とか言われていたが、政界の騒音おじさんなことは確か。

小選挙区比例代表並立制という五回読んだら舌噛んで死ぬ

のではないかという長ったらしい選挙制度を作った張本人

でもある。

 俺がしつこく書いている琵琶湖伝でいえば本多忠勝みた

いな人で、民主党の前の自由党の党首の時は、ある選挙で、

町を歩いていると殴られ、何とか起き上がって歩き出すと

違う人からまた殴られと言うシーンを延々と続け、最後に

「私は打たれ強いんです」と自虐面白CMを作って、自由

党の票を大幅に伸ばしたことがある。なにか目立つことを

しないと気がすまない人なのだ。見方を変えると、常に注

目されないと不安になる繊細な神経の人かもしれない。

 面白いといえば面白い人で、現代日本においては絶滅危

惧種に指定されてもよいのではないか。なにか人間くさい

感じがあって、だからメディアも小沢代表ではなく、「小

沢さん」と親しみをこめて言っている気がする。裏では悪

いこともやってそうで、悪代官の役とか似合うだろうが、

それも含めて「小沢さん」なのだ。


 ところで、桃ちゃんに「今からエアロビなら何時ごろに

電話したらいいの」と言うと、「メタボン、私は自由に一

日を過ごしたいの。さっき言ったでしょ。あなたは、私を

鉄の鎖につなぎたいの。今日は誰の電話もとらないから。

携帯の電源も切るよ」とのことだった。

「鉄鎖につなげられるなんて大げさだよ。SMかよ、団鬼

六かよ。まさかフランス革命かよ。君はルソーか啓蒙思想

家か、ジャコバン派か、それとも女性の自立を描いたイプ

センの「人形の家」の主人公ノラか」と切り返したときに

は、もう電源は切れていた。

                       第二話終了


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