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読まずに死ねるか 読んで読んで読みまくる

 読まずに死ねるか 読んで読んで読みまくる


 琵琶湖伝という歴史ファンタジーを書きながら、小説への自分の読書経験のなさを感じていた。ここ十年、読んだ小説といえば、乃南アサさんの「凍える牙」など数冊のみ。で、時間を見て集中的に本を読もうと思っていたが、この年末やっとそれが出来、それからいまだに本を読んでいるのだが、更新もしてないのも悪い気がしてきて、この二ヶ月どんな本を読んできたかを書き留めることにした。


 小説の書き方

 どんな本を読むか。まず浮かんだのが、ハウツー物。ネットで検索して研究。そこで検討の結果、古本屋めぐり、及び新刊で買ったのが、

ディーン・R. クーンツ「ベストセラー小説の書き方 」(朝日文庫) 価格756円とアメリカ探偵作家クラブ「ミステリーの書き方 」(講談社文庫) (文庫) 価格650円。ネット検索やアマゾンなどで調べた、この調べるのが楽しい、のだが、とにかく安い。

 特に前者は古本屋で350円で見つけて涙、涙。意外と書き方物は高いのだ。

 クーンツって人はモダンホラー作家のスティーブン・キングと比べられることも多いといわれているようで、Sキングの名前くらいは知っているので、クーンツも偉い人だと思う。クーンツの名を不動の物とした作品は1980年に発表した『ウィスパーズ』というのだそうです。ネットでそう書いてた。で「ベストセラー小説の書き方 」の内容だが、アマゾンの紹介文。

「どんな本が売れるのか?超ベストセラー作家が、自作をはじめ、さまざまな例をひきながら、成功の秘密を説き明かす。何百万もの読者に支持される人気作家ならではの、それ自体が一つのエンターテインメントとなるように計算された好読み物!巻末に読書ガイド「読んで読んで読みまくれ」添付」。ちょとついでに補足すると、物語の組み立て方、アクションの大切さ、人物造型といった点が361ページの半分くらいを占めているので勉強になる。

 また「ミステリーの書き方 」だがなんせアメリカ探偵作家協会ってのが書いたんだから、何か良く分からんが、闇金協会とか中央競馬会とかに比べたらまともな協会ではないかと考え、その協会が「書き方」を教えるならおいしそうと、欲望のままに買った。アマゾンの紹介文。

「アメリカの売れっ子ミステリー作家たち、ジョン・D・マクドナルド、レックス・スタウト、スタンリー・エリン、ロス・マクドナルドらが、自分たちの企業秘密を公開。作家志望者には座右の書。読者には、作り手の手の内がよく分かって謎解きが一段と鋭くなり、ミステリーが十倍面白く、楽しくなる、必読の書」とあった。必読ですよ、買うしかない。

 補足を加えると、アメリカ探偵作家クラブ Mystery Writers of America(MWA)とは1945年に、ミステリーの普及、ミステリー作家の地位向上、利益の保護・推進などを 目的として設立された団体である。現在、アメリカ国内に九つの支部をもち、会員が2600名以上いる世界最大のミステリ団体。エドガー賞はMWAが主催するミステリ賞で、前年度に出版された広義のミステリーの中から、MWAによって任命された会員が選定を行い、作品の質や技巧をも考慮した優れた作品に与えられる。毎年、春に行われるMWAの年次大会で発表。最初は処女長篇賞などであったが、次第に賞が増え、現在は多数の部門賞をもつ名実ともに世界最大のミステリー賞となった。受賞者にはエドガー・アラン・ポー像が与えられることから、MWA賞とか《エドガー賞》と呼ばれる。

 で内容は、ジョン・D・マクドナルド、レックス・スタウト、スタンリー・エリン、ロス・マクドナルドといた人々がそれぞれの担当分野で丁寧に教えてくれる感じ。かなりアメリカでは偉い作家のようで、ただ、一昔前のお偉いさんみたいです。といってもさすがに手練の方々の説明だけに頷くことが多い。目次の一部を書くと、プロットの組み立て(フレドリック・ブラウン)ストーリーの構成法(ポーリン・ブルーム)わたしはアウトラインをつくらない(ヒラリー・ウォー)状況設定からプロットづくりへ(ディナ・ライオン)いつ、どんなふうにして書くかシリーズ物と単発物(ヒラリー・ウォー)てな感じ、良かったです。

 このときアメリカ探偵作家協会というのを知ったのが、大変ヤバイことで、では実際どんな本を読もうかと考えたとき、この協会の受賞作を読もうかと、最初は気楽に思い、どれにしょうかなと思っているうちに、すでに2月も中旬になり申した。本当は日本の売れっ子作家を読むべきだとも思ったのだが。


 傑作を探せ

 海外ミステリ総合データベース「ミスダス」 作家の読書道 週刊文春ミステリー などのサイトで研究。

「鳴門秘帖」吉川英治1923年刊。

「他国者は容易に近づけない、密国阿波に潜入した幕府隠密・甲賀の宗家、世阿弥が消息を絶って10年。家名の断絶を目前にして、悲嘆にくれる娘のお千絵を見かねて、法月弦之丞が阿波渡海をはかった。だが夜魔昼魔、お十夜孫兵衛、見返りお綱が二人の邪魔に入る」日本冒険小説の祖といってもよいと思う。キャラも含めて斬新です。まさに歴史ファンタジー。これは是非読みたかった。

「甲賀忍法帖」山田風太郎1959年刊。

 甲賀卍谷と伊賀鍔隠れに潜む各一族の決戦を風太郎の繊細綿密なる文章が妖美すら交えて描くが、時折みせる詩情豊かな文は風太郎の作家とての資質の豊かさを感じさせる。個人的には蛍火のファン。6回目の再読。

 上記の二作は日本の冒険小説で歴史的作品と勝手に考えてます。


 深夜プラス1/ギャビン・ライアル ハヤカワ・ミステリ文庫

 1965年に発表されたギャビン・ライアルのアクション小説の名作にして古典とどこのサイトでも高評価。各所に張られたさりげない伏線、洒落た会話や意外な真相など、様々な魅力を兼ね備えた傑作としていまでも読みつがれている。ドライバーとガンマン、大富豪とその秘書という全く知らなかった人間同士が出会い警察や見えない敵の攻撃をかわしながら、互いの存在を分かち合う仲となるがといったアマゾンの紹介文。

 この作品は最優秀英国作品賞受賞作品である。どの本を読んでも、冒険小説にあるがちな戦争やスパイとの関連が希薄なロードアクション一本で押し通した古典的傑作と全ての本で激賞されていた。まさに目的地に向かいひたすら道を急ぎ、これで終わりまで大丈夫かと思ったが、様々に設置された舞台が機能して、あっというまに読ませてくれた。確かに傑作でした。主役はドライバーのケインだが、用心棒役で同乗するロヴェルがいい味だしていた。

 

 アメリカ探偵作家協会MWA賞最優秀長編小説賞の中から、読むべき作品を探した。

 悪党パーカー/人狩り (ハヤカワ・ミステリ文庫) リチャード・スターク (著), 小鷹 信光訳 価格609円

「ベストセラー小説の書き方」巻末の読書案内でほめていた作家の作品の一つ。とにかく簡潔な文体で、最初から詐欺はするし、死んだ女を切り裂くわと何ぢゃこいつは、でも悪党パーカーだからこんなもんかと思っているうちに、物語はどんどん進む。展開の速さで読ませる手法も悪くない。250ページしかないのも気にいった。まさにハードボイルド。読み終わって、1962年の作品だったことに驚いた。悪党パーカーは20作以上のシリーズでいまだに書かれているようです。スタークはドナルド・E・ウェストレイクという作家の別名だそうで、スターク名の作品ではMWA賞最優秀長編小説賞は受賞していませんが、ウェストレイク名での受賞歴はあります。


 惜別の賦 (創元推理文庫) ロバート ゴダード (著), (原著), 越前 敏弥 (翻訳)価格861円1999年 MWA賞/最優秀長篇賞 候補。

 このゴダートさんもネットでけっこう名前がでてくるので、調べたら候補作品があり読んでみた。推理小説ですが、登場人物が多数出てきて一見混乱しそうなのですが、越前さんという翻訳家がうまいのかスラスラ読んでゆけます。エッ、アッそうか、でも、なるほど、えーとこの人は、うそだろ、さらに背負い投げかよって感じでした。面白かった。かなり綿密なプロットを作り、一文一文に細かい配慮を見せながら一生懸命書いたのね、と分かるところがスタークのように俺は努力のあとは見せないからねというのと対照的で、どちらも作者の個性で勉強になりました。ただ惜別の賦でも500ページ一巻で、処女作で評判のよい「千尋ちいろの闇」以下彼のは上下二巻が多く、努力しちゃうからを1000ページも読むのはつらいのではとも思いました。千尋ちいろの闇」もこのあと読みましたが、結論というか小説の方向性がこっちに読めてきて、また歴史上の大事件ともいえず途中で読むのを放棄しました。ヒマがあったらねです。

 ちなみに「千尋ちいろの闇」は古本屋で買ったので、損害を最小限にとどめました。MWAからはあと4冊読んだのですが、悪口書いても仕方ないので。


 幻の女 (ハヤカワ・ミステリ文庫ウイリアム・アイリッシュ (著), 稲葉 明雄訳。価格840円 452ページ。

 この作品はどこのベスト10でも3位以内に入ってる作品で、読むしかないと思って読みました。1942年の作品で日本なら昭和17年。太平洋戦争真っ盛りの時代にアメリカではこんな素晴らしい作品が発表されていたとは。どうせ主人公は助かるんだろう、と思いながらもグイグイ引き付けられていくプロットの巧みさとリリシズムに溢れた表現に参りました。MWAでは49年に最優秀短編賞を受賞していて、短編の名手でもあったようですが、その短編の技術が遺憾なく発揮されています。MWAは45年に設立されたので42年のこの作品は無関係ですが、もしMWAがもっと早く設立されていたら、最優秀長編賞を受賞していたか悪くて候補にはなっていたのではと考えさせるくらいの面白さでした。こんなのも読まずに小説を書いていた自分が恥ずかしい。


グリーン家殺人事件 (創元推理文庫 ヴァン・ダイン (著), 井上 勇 (翻訳)価格714円。ホームズやポワロは知っていましたが、ファイロ・ヴァンスという名探偵は知らなかった。すごいです。アマゾンの紹介「ニューヨークのどまんなかにとり残された前世紀の古邸グリーン家で、二人の娘が射たれるという惨劇がもちあがった。この事件をかわきりに、一家のみな殺しを企てる姿なき殺人者が跳梁する。神のごときファイロ・ヴァンス探偵にも、さすがに焦慮の色が加わった。一ダースにのぼる著者の作品中でも、一、二を争うといわれる超A級の名作」。宣伝に偽りなし。この作品を読んだら推理小説の評価基準が高くなって、ほとんどのが、もう一歩かなと思うかも。1928年の作品。


 魔道士の掟〈1〉探求者の誓い―「真実の剣」シリーズ第1部 ハヤカワ文庫 テリー グッドカインド (著), 佐田 千織 (翻訳) 以下魔道士の掟〈5〉白く輝く剣までの全5巻で第一部の終了。

 ゲームやってて登場した魔道士を題名にしたこの本は何だと1と2を読んでたのだがやっと全部読めました。アマゾンの紹介。〈1〉探求者の誓い「父を惨殺された森の案内人リチャードは、悲しみに打ちひしがれていた。犯人の手がかりを求めて森をさまよううちに、魔法の国との“境”近くで偶然ひとりの女性の命を救う。彼女の名はカーラン。遠い昔に姿を消した偉大な魔道士を見つけるため、魔法の国からきたという。彼女とともに魔道士を探す途上、リチャードは父を殺した邪悪な魔王の恐るべき陰謀と、自らが持つ大いなる力を知った!新感覚ファンタジイ巨篇、堂々開幕」

〈5〉白く輝く剣「悪の魔王ダークン・ラールの野望を打ち砕くため、長く苦しい旅を続けてきた探求者リチャード。ついに求めていた“箱”を手に入れるが、喜びもつかの間、敵の罠にはまり、捕らえられてしまう。一方、そのことを知ったカーラン、ゼッド、チェイスの3人は、救出のためラールのもとへと向かう。敵の攻撃をかいくぐりながら、ようやくラールの宮殿にたどり着いた彼らが目にしたものとは!?第一部、感動と衝撃のフィナーレ」といったもので、世界設定や背景を丁寧に作った上での、恋と冒険と剣と魔法に個性的な人物を絡めて、しかし展開そのものはそう複雑ではなく、エンターテイメント性が強い面白い作品です。

 もっというと去年本屋で立ち読みしたとき、他のファンタジーより、波長が合いそうと思ったので1を買ったのですが、まさか第一部だけで5巻もあったとは。でもやっと読破できました。


 まだまだ年末から今日までの読んだ小説はあるのですが、きりがないので、これくらいにします。集めてまだ読んでないのも15冊ありますが。読んで読んで読むしかないと思っています。

WEB本の雑誌というサイトに「私の読書術」というコーナーがあり、作家の方々の読書経験が連載されてます。やはりみなさんものすごく本を読んでます。その中でも特に本マニアと思ったのが桜庭 一樹さんという方で、


どれくらいのペースで読まれているんでしょう。

桜庭 : 私は規則正しい生活をしていて。昼前に起きて夕方まで書いて、その後出かけて、帰ってきてから1、2冊読んで寝るんです。一定量書いて一定量読んで一日が終わる、という感じです。

作家になる前となった後では、読書スタイルは変わりましたか。

桜庭 : 前は娯楽で読んでいたけれど、今はどうしてこういう風に書いたのかな、と考えるようになりました。ここの一行は後から直して入れたのかな、とか。自分も後から入れたときは、そこだけ浮いていないか気になるので。当たっているか分からないけれど、いろいろ考えながら読んでいますね。


 といったお話を読ませてもらうと、読まずに死ねるか 読んで読んで読みまくるという思いがさらに強く心の奥底の基盤の部分から噴出してきています。


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