夢…/私…
真っ暗な世界、先が見えない世界で、俺は目を覚ました。
ここは……どこだ……?
何も見えない世界で、辺りを見回していると、すぐ近くに小さな、小さな蒼い光の粒子が見えた。
これ……何だ……?
………ヒロト
光は俺の名前を呼ぶ。
その透き通った声は、とても懐かしく感じられた。
君は……蒼華 ……?
………ウン、ヤットオハナシガデキルネ
(うん、やっとお話が出来るね♪)
蒼華の声は、嬉しそうに弾んでいる。
ここがどこだかわかるかい……?
………ココハ、キミノユメダヨ
(ここは、君の夢だよ)
夢……?
なら、どうして君はここにいるの……?
思いついた質問を尋ねると、蒼華は嬉しそうに俺の回りを飛び回り応える。
………ワタシガキミヲエランダカラ
(私が君を選んだから)
そして、一層輝きを増しながら言葉を繋げる。
………ヤットキミニトドイタ
(やっと君に届いた)
………コレデイツデモイッショ二イラレル
(これでいつでも一緒にいられる)
その言葉を聞いて、更なる疑問を投げ掛ける。
どうして、俺を選んだんだ……?
俺は取り柄なんか何もないぞ……
自分で言っていて、悲しくなったが、それは事実だと思っている。
だが、俺の卑屈な発言を聞いて、蒼華は少し困っているように感じた。
………キミハジブンヲシラナイダケダヨ
(君は自分を知らないだけだよ)
そんな蒼華の慰めのような言葉を聞いて、なぜかわからないが、少しだけ申し訳なく感じた。
ごめん……
………アヤマラナイデ
(謝らないで)
優しく諭してくれる蒼華に、ありがとうと言い、別の質問をする。
もう1つ教えて……
君は何……?
俺の問いにしばらく沈黙していた蒼華は、一言で答えてくれた。
………ワタシハカギダヨ
(私は鍵だよ)
………セカイヲコワスカギ
(世界を壊す鍵)
蒼華の言葉は、とても悲しそうだった。
それってどういう……
詳しく聞こうと、蒼華に話しかけた直後、頭上から光が降り注いだ。
………ゴメンネ、ジカンミタイ
(ごめんね、時間みたい)
………コタエガシリタケレバ、ハヤクワタシヲ
(答えが知りたければ、早く私を)
不意に、蒼華の声が途切れた。
疑問を抱えたまま、俺の意識は現実へと戻る。
▼▼▼
今私は、茜ちゃんと一緒に、県立病院のある隣の街へと向かっていた。
「こっちであってるかな?」
「多分、あってると思うよ」
私の問いに茜ちゃんは素っ気なく答えてくれた。
もうずっとこんな重い空気のままである。
それは当然だ。
だって、1週間前に私達は、あんなものを見てしまったのだから…。
保健室の先生が私達を隣の村の公民館へ避難させた後、あの男の子達を迎えに行くため、学校へ戻ると言い出した 。
その際、何かあった時のためにと、携帯番号を交換しあった。
それから1、2時間後に先生から連絡があった。
『向井さん、今すぐそこから離れなさい!』
先生の声はとても緊迫していて、思わず体がびくついてしまった。
「な、なぜですか?」
私は震える声で聞き返す。
『化け物がそちらへ向かっているの』
今度こそ私は、恐怖で震えだしてしまった。
『落ち着いて、向井さん。そこへ集まっている人達をすぐに川沿いに移動させて下さい』
何も言えなくなっている私に、先生は更に続けて言う。
『化け物は水に弱いから、川は渡れないの。だから、化け物に襲われたら、川の中に逃げ込むか、反対側へ急いで渡って』
半ば泣き出しながら私は、先生に問いかける。
「先生は来てくれないんですか?」
『今、久我君と一緒に川沿いを通りながら、そちらへ向かっているわ。あなたなら大丈夫だから、落ち着いて素早く行動して』
あれ、もう一人の男の子は…?
先生の言葉に私は疑問を感じながらも、はいと応えて電話を切り、今の話を茜ちゃんに伝えた。
すると茜ちゃんは、避難している人達に、今すぐ川へ移動するように話している。
だが、誰も彼女の言葉を信じてくれない。
それどころか、こんな時に不謹慎だ、せっかくここへ置いてやっているのにふざけるなと、私達二人を追い出した。
「……行こ」
茜ちゃんは、悲しそうに一言そう言って歩き出す。
いつも明るい茜ちゃんがこんな風に悲しんでいるのを見て、私も悲しくなった。
茜ちゃんの後ろを歩きながら、川へ向かっていると、先生と久我君がこちらへ走って来た。
「向井さん、小林さん、よかった、二人とも無事ね」
先生は荒い息を整えながら、私達の無事を確認し、笑顔をこぼした。
「避難していた他の人達は一緒じゃないの?」
先生の問いに、茜ちゃんがさっきのことを説明した。
一通り聞いた先生は、茜ちゃんを抱きしめる。
「ごめんなさい、嫌な役回りをさせてしまって」
その言葉を聞いた茜ちゃんは、先生の肩に額をあて、嗚咽を漏らしながら泣き出した。
その姿に、私は申し訳無さを感じた。
本当なら、私があの人達に事情を説明するべきだったのに…
嫌なこと全部茜ちゃんに押し付けて、私、最低…
自己嫌悪に囚われ、目を伏せる。
そんな姿を見て、先生は私にもごめんなさいねと謝ってきた。
その謝罪に、余計自分が嫌になった。
「先生、俺がもう一度そこへ行って説明してきます」
「……駄目よ、貴方を行かせるわけには……いえ、私も一緒に行くわ」
私が自分を蔑んでいる間に、先生と久我君で話が決まる。
数時間前に別れるまでの明るさが、今の久我君にはなかった。
先生もどことなく元気がなく、私は違和感を覚えた。
その違和感の原因を、私は聞くことができなかった。
いや、わかってはいたと思うけれど、それを認める事が怖かった。
「あなた達は川の近くで、茂みに隠れていて。
万が一泥の塊が近づいて来るのが見えたら、必ず川へ入りなさい。
1時間しても連絡がなければ、川沿いに下って隣の街まで向かって」
先生と離れることに不安を感じ、私は頷くことができなかった。
そんな私の両肩に手をのせ、「わかりました」と茜ちゃんが返事を返した。
「じゃぁ、行って来るわね」
そう言って、先生と久我君は公民館へと向かった。
使命感に突き動かされている久我君の背中は、とても悲しそうだった。
それが、私の見た久我君の最後の姿だった…。
ご無沙汰です、道楽者です。
数日更新できずに申し訳ありません、深くお詫びいたします<(_ _;)>
ということで、短い話ですが、今回は2話連投です。
できる限り楽しんでやって下さい。
誤字・脱字などございましたら、ご報告下さい。
では、また!
(次は早めに投稿できるよう努力いたします(^^;))




