俺は…
「奴らが来たぞーーーーーッッッ!!!」
全身に緊張が走る。
その声を聞き、新聞を捨てて病院へと走り出す。
途中で一緒に作業していた人達に追い付いた。
「奴らって、泥のことですか!?
それって、どっから来たんですか!?」
「当たり前だろ!
前と同じ川の上流にある山の方からだ!
結構近い、無駄口叩いてないで走れ!
でないと、死ぬぞ!!」
その人の言葉に、今度は恐怖が湧き出る。
………イヤだ!
一弥が死んだ、先生が死んだ、おっさんが死んだ…。
今度は隣にいるおっちゃんかもしれない、病院の看護婦さんかもしれない、子供達かもしれない、……自分かもしれない。
そんな思考に埋め尽くされて、止まりそうになる足を無理矢理動かす。
病院に到着した俺達は、すぐさま地下へと駆け込み、シェルター内へと入る。
間に合った…
俺は、緊張が溶け力の入らない足を折り、膝をついた時のことだった。
「私の娘を見ませんでしたかッ!?」
一人の女性が悲痛な声で俺に問いかけてきた。
それは、お昼にあった、女の子のお母さんだった。
「娘とはぐれてしまったんです!
娘を、娘を見ませんでしたかッ!?」
「す、すみません。見ていません」
俺がそれだけを言うと、お母さんはすぐに別の人に聞いて回る。
こんなときに小さな子が一人でいるなんて…
お母さんの問いに、誰も見ていないと答える。
それを聞き、お母さんはシェルターを飛び出そうとする。
「落ち着いて下さい、お母さん!
外はもう危険です!
それに、誰かに連れられ、他のシェルターに避難しているかもしれません!」
「いや、いやよ!あの子を失ったら、もう私は…ッ!」
お母さんの本当に悲痛な叫び声を聞いて、俺は立ち上がっていた。
「俺が行きます!」
「……ッ!何言ってるの、坂倉君!
外は危険なのよ!」
「大丈夫です、俺足速いですから。
どこら辺にいるか、心当たりはありますか?」
「……ここに来る前に、中庭に行きたいと言っていたので、おそらくそこに」
悲痛な顔で教えてくれたお母さんに、俺は出来る限りの笑顔で答える。
「わかりました。
じゃ、お母さん、俺が行ってくるんで、ここで待ってて下さい。
必ず連れてきますから」
「待って、坂倉君!!」
呼び止める看護婦さんを振り切り、シェルターを飛び出す。
もう誰も見捨てたくない…!
絶対にイヤだ…!
俺はそんな思考に支配されていた。
絶対に助ける、そう自分に言い聞かせ、俺は地上へ出る。
地上へ出ると、そこにはすでに泥達が集まっていた。
「くっそ、あいつらもう!」
そこから離れるように俺は走りだし、中庭へ向かうと、中央にあの女の子がいた。
よし、あそこなら間に合う…!
中庭には草だけが生え、障害物は何もない。
「おーい、君!」
「う゛ぇ~~~ん゛、おがぁざぁぁぁん゛」
ピンク色のボールを大事そうに抱えながら泣き叫ぶ女の子に、声をかけて近づく。
間に合った…
そう安堵したその時、突如向かい側の扉が勢いよく開く 。
「うわぁぁぁーーー!!」
扉から飛び出してきたのは、一緒に作業をしていたヤンキーとそれを追いかける泥達だった。
何であんなところから…!?
そんな疑問を瞬時に追い払い、女の子のもとへと駆け出す。
「邪魔だ!どけよ!!」
「……ッ!」
あろう事か、ヤンキーは女の子を突き飛ばし、そのまま俺が出てきた扉から院内へと逃げ込んだ。
くっそッッッ…… !!!
近づいてきた泥達と女の子の間に体を滑り込ませ、
女の子を庇うよいにして抱き締める。
くっそッ!
ダメなのかよッ!
女の子一人助けらんないのかよ!
何でだ!?
何で、俺はおっさんのようになれない!?
何で誰も救えないんだよ!!
泥達が迫り来るその時、あの声が自分の中から聞こえてきた。
………チカラガホシイ?
あぁ、欲しい…
………ドウシテホシイノ?
おっさんのように誰かを守りたいッ!
一弥のように誰かを笑顔にしたいッ!
………ソンナニホシイノ?
いいからよこせよ、誰でもいい 、俺に………
こいつらをぶっ飛ばす為の力をッ!!!
「うわぁぁぁぁぁァァァァァッッッ!!!」
泥達が俺を食い殺す直前、俺の中からあの時の蒼い光が漏れだし…
………イイヨ、アゲル
………ダカラヨンデ
………ワタシノナマエ
「蒼華ッ!!!」
ドゴォォォォォォンッッッ!!!
俺がそう叫んだ瞬間、凄まじい音声とともに中庭が蒼い光が満たされる!!
目を開けた先には、俺達を護るように5枚の花弁とあの蒼い珠が、1つ1つ独立する形で浮いていた。
それに触れた1体の泥が、ただの土塊となった。
「こ、これ…!」
………クルヨ
あの声に導かれ、目を向けると、その方向から泥が突撃してくる。
「くんなっ!!」
慌てて手をかざすと、華が動き出す。
そこに泥が激突すると、ドガンという音をあげ、触れていないはずの手に衝撃が走る。
「……ッ!痛ってッ!」
しかも、先ほどとは違い、泥が消えない。
な、なんで…!?
………キミガヨワイカラ
……ッ!
俺の思考を聞いて、あの声が答えてくれた。
その発言に歯噛みをしていると、
今度は右から、泥が土塊を飛ばしてくるのを、
何とか1枚の花弁で受け止める。
やっぱ、いてぇッ…
痛みに耐えながら、声の主に問いかける。
「じゃぁ、どうすればこいつらを倒せるんだッ!!」
………ワタシ二キミヲチョウダイ
「……ッ!」
主の言葉に絶句する。
その間にも、泥達はさまざまな攻撃をしてくる。
すでに限界を感じている俺は、最後に1つだけ伝える。
「あぁ、俺なんかでよければ、全部やる!
だから、お願いだ!!」
………テヲマエニダシテ
声に従い、右手を差し出す。
花弁の1枚が俺の手に寄り添うように触れてきた。
その途端、俺の体が蒼く光、その光が花弁に吸いとられる。
「……くッ!」
体の力が抜けていく。
代わりに、痛みが全身を覆う。
たった数秒の事だが、それは数時間にも感じられた。
その間、残った4枚の花弁が回りを囲い、全ての攻撃を防いでいた。
………アリガトウ、コレヲトッテ
俺から光を蒼い珠が吸いとった花弁と共に俺の前に来る。
蒼い珠を触れた瞬間、花弁が形を変える!
「……ッ!これは……剣かッ!?」
花弁は一本の両刃の剣となった。
剣の回りは蒼い光で覆われており、
柄頭には、あの蒼い珠がくっついている。
………カッテ、ヒロト!
剣から聴こえてきた声は、とても力強いものだった。
俺はその剣を下に構えて、雄叫びをあげながら1体の泥に突っ込む!
「うおぉぉぉぉおおおおッッッ!!!
消え失せろ、泥野郎ッ!!!」
飛びかかりながら剣を振り上げ、
そのまま上から泥を叩き斬る!!
ぎぃヤぁぁァァァあ゛あ゛あ゛………
泥は断末魔をあげ、土塊へと還る。
……次だ!!
間髪いれずに、剣を横に凪ぎ払う!
近づいていた2体を斬り払い、残りのいる方へと走り込む。
残りの何体かが、泥を飛ばして来たが、2つを花弁で受け止め、1つは斬り捨てる。
先程の泥は牽制だったようで、他の泥達が女の子の方へと近づいていく。
……させるかよ!!
すぐさま、方向を変え、女の子の方へ駆け寄る。
そこをすかさず、別の泥達が襲いかかってくる。
「邪魔…、すんなぁぁぁァァッ!!」
そいつらは花弁をつかって近づけさせない!
だが、女の子の所へは、ギリギリ間に合わない!
「俺は、今度こそ、護るんだぁぁァァァ!!」
剣の光がより一層強く輝き出す。
………デキルヨ、サケンデ
その瞬間、心から湧き出る言葉を叫ぶ!!
「蒼閃・横一文字ッ!」
本来なら、届くはずのない場所で剣を横一線に斬りつける!
剣から凝縮された光が斬撃となって翔んでいき、
数体の泥達を消し飛ばした!!
……くそッ!今のでもう体力が…
飛びそうになる意識を、自分の顔を殴ることで、無理矢理繋ぐ。
……まだやるんだ!
そう自身に激を飛ばし、泥に向き直ったが、泥達は動く気配がない。
より一層警戒を高めていると、泥達は出てきた扉から逃げていく。
……やったのか?
しばらく呆然としていると、後ろから女の子が抱きついてきた。
振り返ると、女の子と目が合い…
「助けてくれてありがとう、お兄ちゃん」
満面の笑みで、お礼の言葉をくれた。
その言葉に、俺は涙を流しながら応えた。
「………ありがとう」
そして、俺の意識はそのままを閉じた…。
ここまでお読みいただき誠にありがとうございます。
おかげさまで、ようやく、バトルまでこれました。
ホント、これを普通に書き続ける本職の方々には、尊敬します(^^;)
まぁ、これからも書いていきますんで、よろしくお願いします!
では、また




