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おっさん…

泥を消したあと、俺と一弥は校舎を出て学校裏の森へと向かった。


「その怪我、ホントに大丈夫か?」

「だから大丈夫だって」


そう言って、一弥は泥に噛まれた肩を回す。


「こんくらい何でもねぇよ」

「…なら、いいんだけどさ」


俺が見ているところでは、なんでもなさそうにしているが、あの怪我で大丈夫なはずがない。

泥に襲われ、結果的には助かった俺達だが、あの時俺が話に夢中になっていなければ、一弥が怪我をすることはなかったはずだ…。

その罪悪感も相俟って、余計に心配をしてしまう。


「本当にヤバかったら、すぐ言えよ」

「優斗は心配し過ぎなんだよ」


苦笑しながら心配無用と言って、先へ行く一弥のあとをついて行く。


「それにしても、先生達大丈夫かな」

「とりあえず、見つからないように動いてとは伝えたけど…」


あの三人を思い浮かべると、不安が増していく。


「……早く合流しよう」


これ以上、不安を増やしてもどうにもならないと考え、先を急ぐことにした。


(優斗、待った!)


急に一弥が俺の行く手を(さえぎ)り、歩みを止め小声で語りかけてくる。


(あそこの木の影になんかいる)

(……泥、かな?)

(大きさからして、違うと思うけど…俺ちょっと回り込んで、見てくるわ)

(ストップだ、一弥!)


駆け出そうとした一弥の肩を、思わず掴んでしまった。


「いッ!……」

(わ、わり)


すんでのところであげそうになった悲鳴を、一弥は無理矢理飲み込んだ。


(ホントごめん!けど、今回は俺が見てくる。その怪我じゃ走るの辛いだろ)


不満げな一弥を押し留め、影に向かって回り込みながら、近づいていく。


ん、あれって…


「優斗君!無事だったのね!」


そこにいたのは先生だった。


「先生、何でまだこんなところに!?それに向井さんと小林さんはどうしたんですか?」


俺が声をかけると、先生は突然座り込んでしまう。


「せ、先生!」


慌てて駆け寄っていくと先生はか細い声で腰が抜けちゃった…と答えた。

ホッとした俺は先生の姿を見て少しだけ…いや、かなりドキドキしてしまった。


くっ、可愛い…


大人の女性に対しこのコメントは失礼かもしれないとも思ったが、脳内でのものなのでありだ!と、自分の中で結論付ける。

というよりも、黒いタイツを履いて、白衣姿の先生が女の子座りで腰を抜かしている姿はとても可愛いらしいのである。

俺だって、一応男なんだから、そういう風に考えてしまってもしかたがないんだ!

とか、言い訳を考えつつ先生を見続けていると…


「優斗君、あなた結構おませさんですよね?」


という先生の言葉に凍りつく。


「みんなで夕食を作っているときも、向井さんを見続けていましたし…。まぁ、このくらいの年になると自然なことなのかもしれませんが。優斗君、女の子は男性のそういう視線にすごく敏感なんですから、もう少し気を使ってください。そんなことでは、好きな子ができた時に苦労しますよ」


先生からものすごくためになるお小言をいただきました。

これを聞いている間、自然と正座になってしまったのは仕方がないことだと思う。


説教をしている間に先生は立ち上がれるところまで回復したようだ。

先生が立ち上がり茂みの奥を覗くと、人影が近づいてきた。


「一弥君!」

「やっぱ、先生か。優斗、全然呼びに来てくんねぇから、勝手にきちったよ」

「あ、わり」


うん、ごめん。

完全に忘れてた。

ホントごめん。


「か、一弥君!その肩!!」

「大丈夫っすよ。そんなことより先生、女子二人はどうしたんすか?」

「向井さん達はこの先の公民館に避難してるわ。私達も急ぎましょう」


俺達が無事なのを確認した先生から笑みが零れる。

そんな先生を見て、俺と一弥は少し力を抜くことができた。

だが、その瞬間あの()が聞こえてきた。




………ヨケテ!




その声に反応し振り向くと、泥が大口を開けて飛びかかってきた。


「避けろッ!!」


俺の言葉に反応し、一弥は先生を突飛ばし一緒に倒れ込む。

俺は、そいつを避けようと、後ろに下がると、そこに()()はなかった。


「…っ!うわぁぁぁぁ!」


崖から落っこちる俺は、泥が一緒に落ちていることと、一弥達が無事なことが見れた。

一弥が俺の名前を呼んでいることを嬉しく思い、顔がにやけていた。



あぁ、もっとあいつと遊びたかったな…



くっそ、今日一緒にゲーセン行けばよかった…



後悔してもしょうがないか…



まぁ、あいつが無事でよかった…




………そのまま俺の意識は暗闇に落ちていく。





◆◆◆




………オ……テ



………キ……エ………ノ?



………マ……ドカ……



うっすらと、聴こえてくる声は以前聴いたことがあるもだった。

だが、以前はもっと恐怖を感じていた気がする。

でも今は心地好く感じる。


綺麗だ…


そんな風に透き通る声に聴き入っていると、別の声が聞こえてくる。


「………ろ」


うっせぇな、邪魔だよ…


「………ろってんだ!」


あっち行けっつうの…


「いい加減起きろっつってんだ!!」


ッドガッッッ!!

頭に強烈な一撃が入った。


「……ッ!!」


余りの痛みに、飛び起きる。

頭を抱え痛みが薄れるのを待った。

辺りを見渡すと、そこは病院のベッドの上だった。


「目が覚めたなら、さっさと動け!病人でもねぇやつを運んでやるほど、此方には余裕がねぇんだ!」

「……?」


唐突に起こされ、何がなんだかわからなくなっていた。


「泥に食われたくなければ早くしろ!」


その言葉にベッドから飛び出し、おっさんに詰め寄る。


「泥って、1つ目の泥の塊のことですか!?」

「当たり前だろ!だからさっさと来いっつってんだ!!」


おっさんは俺の腕を引っ張って歩き出す。

歩きながらおっさんに質問をする。


「あのここは?」

「あん、県立病院だよ」


なんでそんな遠くに…!?


俺の顔から、疑問を察してくれたおっさんは割と丁寧に教えてくれた。


「お前さん、病院近くの川で流されてたのを見付けたんだよ。3日ほど眠ってたんだぞ。まぁ、病院の先生の話じゃただの過労だって話だから大丈夫だろ?」

「……ッ!!」


あの時何があったのかを思い出した。


そうだ、俺は、あの時崖から落ちた…

けど、あの崖の下は()のはずだ…


落ちきるまえに意識を失った俺は川に落ちたことすら覚えていなかった。


そもそも、県立病院まであそこから村一個挟んでんだぞ、いくらなんでも運良すぎだろ…


浮かび上がり続ける疑問で、俺は混乱していた。

が、これだけは聞かなければならないと、おっさんにもう1つだけ問う。


「一弥…、おれと同じ制服を着た奴が、来ませんでしたか?」

「…知らねぇな。少なくとも、ここには来ていない…、だが…」


おっさんは少しだけ言い淀んだが、言葉を続けた。


「恐らく、ここに来てねぇってことは、もう会えねぇだろうな…。泥はお前さんの通っている学校の方角からやって来て、すでに隣の村まで侵食してきてる…」


俺は言葉が出なくなっていた。

頭が働かない。


一弥が…


そのまま足までも止まり立ち尽くす。

泣き崩れそうになった俺の前におっさんが振り返り…


ッドガッッッッ!!!


さっきよりも強烈な一撃を顔面に叩き込んできた。


「今はてめぇが生き延びることだけ考えやがれ!

さっき俺は会えねぇといったが、それはあくまで俺の予想だ!!

ダメかもと他人から聞いただけで崩れちまうほど大切な奴なら、簡単に諦めてんじゃねぇ!

とにかく今は生き延びて、後で探せばいいだろうが!」


おっさんの言葉が、俺の心に突き刺さる。


「……それと、迂闊なこと言っちまってすまねぇ。後で、もう一度謝る。彼女探すのも手伝うから、今は行くぞ」


おっさんは俺に背を向けて歩き出す。

俺は顔と心の痛みで、ようやく体が動きおっさんの後をついて行く。


「俺が会いたいのは彼女じゃなくてダチですよ。そもそも、彼女なんかいませんし」


まともに女の子と話すのも難しいですし…


と、心の中で付け足す。

少しだけ顔を歪ませながら、おっさんは返事をくれた。


「なら、いっそう頑張って探さねぇとな。女はこれからいくらでも作れるが、親友は一生もんだからな」


くっそ、このおっさんかっけぇな…


俺はおっさんの後を歩く。


歩きながら周りを見ると、他にも避難をしている人が沢山いた。

ふと、さらに疑問が思い浮かぶ。


「なんで俺に構ってくれてるんですか?」


他にも怪我をおった人が大勢いる中、なぜこのおっさんは俺を先に避難させてくれているのだろう?


「…お前さんを川で見つけたのが俺だからだよ。せっかく助けたのに勝手に死なれちゃ寝覚めがわりぃだろ…」

「……ッ!」


若干顔を赤くしながら教えてくれたおっさん。


要は命の恩人じゃねぇか…!

その恩人をおっさん呼ばわりしてしまうとは、今度から旦那とお呼びしよう…


「あ、ありがとうございます」

「はッ、お礼は助かってからにしやがれ」


そうぶっきらぼうに言いはなつ旦那に心から感謝する。



病院の地下へ移動した俺達は大量の人だかりを目にする。


「早く入れろよ!」


「あたしが先よ、ちゃんと並びなさいよ!」


「お、落ち着いてください。一列にお願いします」


人々は押し合い、暴言を吐きながら、我先と奥の部屋へと移動しようとする。


「ここなんなんですか?」

「あぁ、そういや言ってなかったな。ここは地下シェルターだよ。あの泥どもは隙間からは通れるけど、コンクリみたいな壁は通れないからな」


確かに壁はすり抜けてこようとしなかったのを覚えている。


「ちッ、これはやばいかもな」


旦那の予想は最悪の形で的中する。



うぎゃぁぁぁァァァ!!



それを報せるかのように1つの断末魔が鳴り響く。

ここまでお読みいただきありがとうございます!

今回は突然サブタイがあぁいうことになってしまいましたが、ここまでお読み下さった方ならわかっていただけると思います(わかりますよね?w)

おっさんはとくに意識して書いていなかったんですが、書いているうち自分でも気に入ってしまいました(旦那ァ!!)

サブタイを考えようと思い、しっくりくるもんなんだろうと考えた結果がこれです(ドヤァ)♪

ということで今後もよろしくお願いします

<(_ _)>

誤字脱字報告いただけたら感謝です。

では(ε_ε)

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