安堵…
俺の通っている学校は、山の中にある 。
グランドはそこそこ広く、学校の裏側は緩やかな傾斜で、校舎からは川が見える。
家からはちょうど博物館と反対の方角で、無意識のうちに博物館を避けた俺は、必然的にここにたどり着いた。
「…学校に明かりがついてる」
さっきの地震や同じように泥から襲われた人が避難して、集まってるのかもと考えた俺は、ある疑問が浮かぶ。
「そういえばここに来るまで、人を見かけてないな…」
ここまでの道に民家はそれなりにあるし、緊急時には避難所となる学校に来るのに、一人も見かけないのは変じゃないか?
考えたところで何がわかる訳でもないので、一先学校に入ることにした。
「もうみんな別の場所に避難してんのかもな」
などと呟いたが、この呟きが間違いであることに、今の俺にはわかるはずもなかった…
学校の昇降口に着いた俺は、先ほどまで安否を気にかけていた人物と出会った。
「…ッ!一弥っ!!」
「よっ、優斗。恥ずかしいからあんま大きな声で呼ぶなよ」
友人と会えたため、嬉しさが込み上げ、大声で名前を呼んでいた。
「わ、わり」
「いや、いいよ。それより早くみんなのところへ…うわぁ、それは先に保健室だな」
苦い顔をした一弥の視線のさきは、俺の足だった。
「……ッ!痛ぁっ!!」
「それに気づかないってどんだけだよ」
先ほどまで靴を履かずに、全力で路上や山道を走っていたため、足は血だらけになっていた。
これに気づかないって…恐ろしい…
ほらと言って、肩を貸してくれた一弥に、気になったことを質問してみる。
「みんなって、他にも誰かいんの?そもそも、何で一弥は学校に?どうして俺が来るってわかったんだ?」
「んないっぺんに聞くなよ、落ち着け」
笑いながら指摘してきた一弥の言葉に、恥ずかしくなって俯きながら謝る。
「わ、わり」
「お前、今日は謝ってばっかだな」
「そういえばそうかも…」
「なっ」
気がつくと、二人とも同じ顔して笑っていた。
一弥によると 、俺と別れたあと、ゲーセンで遊び、家に帰り宿題をやろうとしたところ、学校に忘れたことが判明したらしい。
明日の朝早めにいってやればいっかとか思って、漫画を読んでいたら、お前テスト前だろうと、親に怒られ、学校にとりに来させられたのだとか。
なんとも一弥らしい。
そして、ここに来るまでに先ほどの地震が起こり、避難してきた数人の大人と、残っていた生徒達で一ヶ所に集まっているのだそうだ。
教室から人影が見えたから、出迎えにきたということらしい。
現状までの経緯を聞いてるうちに保健室に到着した。
「あら、どうしたの?」
保健室には、担当の女性教諭が日誌を書いていた。
「こいつの足、手当てしてもらいたいんですけど」
「あらあら、大変ね。こちらへいらっしゃい」
一弥に支えられながら、椅子に腰かけ足を見せる。
「やんちゃなのはいいけど、外で遊ぶなら靴くらい履きなさい」
などと、笑顔で叱る先生に、これまでの出来事を話す。
だが、話を聞き終えた先生からは、頭でも打ったのではないのかと、結構真面目に心配された。
自分でも突拍子もない話だと思う。
本当に頭を打っただけなら、どんなによかったか…
だが、後ろで聞いていた一弥は、俺の話を信じてくれたらしい。
真剣な面持ちで問いかけてくる。
「泥、だっけか?そいつらは何がしたかったんだろうな?」
「わからないけど、俺にとっていいことではないのは確かだと思う」
「そっか、まぁ、お前が無事でよかったよ」
そう言って、笑顔を向けてくる一弥に、心の底から感謝をしていた。
本当にこいつはいい奴だな…
自分でも信じられないような話を、真剣に聞き、無事を喜んでくれる。
本当に俺はいい友達を持った。
治療も終わり、今の話をここに集まった人達に話すため、教室へと移動する事にした。
保健の先生も、心配してついてきてくれるらしい。
そのままだと辛いだろうからと言って、少し大きめの上履きを貸してくれた。
教室へ入ると一斉にこちらへ視線が集まった。
そこにいたのは、大人の男性2名と女性が1名で、生徒が5名だ。
中年の男性が近寄ってきた。
「一弥君、そちらの子は友達かい?」
「うん、優斗っていうんだ」
「どもっす」
おじさんは俺を見て、今町がどうなっているか聞いてきた。
「電話もラジオも繋がらないんだ。何か知ってることを教えてくれないかい?」
「あ、えっと、信じてもらえるかわからないんですけど…」
そう言って、先ほど保健室でした話を聞かせた。
博物館の方で火事があったみたいだのところまでは、みんな真剣に聞いてくれていたが、泥のところからは微妙に怒った顔をしている。
「優斗君、今は冗談をいっている場合じゃないんだよ」
「そうね、本当のことだけを話してくれないかしら?」
おじさんとさっきまでは静かにしていた40くらいのおばさんが優しく叱ってくる。
「いや、本当なんですよっ!」
「優斗はこんな嘘つくような奴じゃないっす」
信じてもらおうと必死の俺を、一弥が援護してくれる。
「だってなぁ、一弥君…」
「泥に目や耳って、そんなもん出て来るわけないだろ」
呆れた目で見てくるおじさん、大学生くらいの人に頭から否定される。
「まぁ、この子達の話が本当かどうかはわかりませんが、一先用心のため、今晩は動かない方がいいでしょう。博物館で火事ということでしたが、いくら離れてるとはいえ、サイレンが全く聞こえないのもおかしいですから」
今まで、口を閉ざしていた保健室の先生は1つの案提示する。
「はっ、それなら火事ってこともそいつの妄想だろ。こんなところで過ごすなんてごめんだね。俺は帰る」
「待ちたまえ、北原君!」
そう言って、おじさんに北原と呼ばれた男性は教室を出ていった。
「あ、あの。私も帰っていいですか?家も近いし、あの人についていけば大丈夫ですよね」
一人の生徒がそう言って立ち上がると、成り行きを見届けていた生徒達とおばさんが口々に帰ると言って、おじさんや保健室の先生の言葉を聞かずに行ってしまった。
残ったのは、おじさんと保健室の先生、俺と一弥に女子が二人だ。
「二人は帰らないの?」
一弥の質問にポニーテールの子が不安な面持ちで答えた。
「う~ん、終電早いから帰れないんだよね 。だからとりあえず残るよ」
「私は…、暗いのダメ…」
もう一人の女の子はポニーテールの子にすがり付いていて、顔はよく見えないが綺麗な長い髪をしている。
よっぽど今の状況が怖いんだろうな、消え入りそうな声で答えてくれた。
その子の言葉に僅かばかり、沈黙が生まれた。
……
グゥーー~~…
唐突に聞こえた音の発生源に目を向けると、一弥が死にそうな顔で腹を抱えていた。
「腹へった。もう限界…」
その言葉を聞いて、俺を筆頭に皆笑いだしていた。
髪の長い子も少しだけ笑顔を見せてくれた。
か、可愛い…
などと場違いなことを考えていると、保健室の先生からあらあらと言わんばかりの目を向けられた。
慌てて目を反らし、そっぽを向く。
「では、少し遅いですが、家庭科室でなにか簡単なものを作りましょうか。皆さん、お手伝いいただけますか?」
保健室の先生の言葉に皆同意して、教室をあとにした。
女子生徒二人がエプロンをして料理をする姿に、俺と一弥は皿を運びながらチラチラと見てしまっていたが、先生にばれ、めっと口の形だけで怒られた。
夕飯を美味しくいただいた俺たちは、保健室にあるベッドを先生と女子が使い、応接室のソファーを俺と一弥が使って寝ることになった。おじさんは見張りのためと、箒をもって応接室の入り口で寝るらしい。
一体何を見張るやら…
そんなこんなで、眠りについた俺たちは1つの叫び声で、目を覚ました…
毎度毎度聞き飽きたと思いますが、お読みいただき誠にありがとうございます<(_ _)>
今回は自分の未熟さから、長めのものとなってしまいました(^^;
とりあえず、こんだけやってまだ展開が進まないなどという阿呆極まれりな感じで、誠に申し訳ありません<(_ _;)>
精進しますんで、見捨てないでやってください!(切実)
誤字・脱字の報告をいただければ恐縮です。
では、また(^ω^)ノシ




