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食べ物…

「待てよ、一弥!」


虎を倒した俺は、唐突に現れたくせに、すぐに去ろうとしている一弥に声をかける。

聞きたいことはいっぱいあるんだ。


なぜいなくなったのか?

先生はどこへ行ったのか?

今まで何をしていたのか?

そして、公民館で何があったのか…?


だが、立ち止まった一弥を前に、俺は声を出せずにいる。

そんな俺に、一弥のほうから話を切り出してきた。


「それ、そのちっこいのが蒼華だよな」


一弥が指を指して確認してきた。


「あぁ、そうだよ」


俺は少しだけ誇らしげに、蒼を紹介する。

しかし、蒼は一弥の前に出ようとはしない。


「蒼…?」


俺は首をかしげて蒼を見る。

そんな俺を一弥は、冷めた目で見てきた。


「なぁ、優斗。

何でそんなの(・・・・)を友達みたいに扱ってんだよ?」


俺は一弥の言葉の意味が理解できなかった。

呆けた顔のまま、一弥に問い返す。


「どういう…意味だよ?」


一弥は怪訝な顔をしながら、俺の問いに答えた。


「それって道具だろ?」


今度の言葉はわかった。

わかりたくないけれど、わかってしまった。

一弥は蒼は道具だと言ったのだ。

ふと、蒼に視線を向けると、頭を下げて項垂れている。

そんな蒼の姿を目にして、徐々に自分の頭に血が上っていくのを感じた。


「蒼は道具なんかじゃない!

俺と、俺達と一緒に旅をしている仲間だ!」


俺は声を張り上げていた。

俺の言葉を聞いて、蒼が頭を上げて俺の名前呟いた。

俺は大丈夫というように蒼に視線を送る。

ふと、顔を上げると正面には哀れむような目でこちらを見る一弥がいた。

いや、本当に哀れんでいるのだろう。

それは和也が次に発した言葉で理解させられた。


「なぁ、優斗。お前がなんと言おうとそいつは道具だ。

それもただの道具じゃない。

この世界を壊すかもしれないような最悪のな。

そんなもんに感情移入してんなよ」


一弥の言葉は最後のほうは諭すような口調になっていた。

俺はさらに反論しようと思ったが、それよりもその言葉の中に聞き捨てならないものが含まれていて、そちらを先に言及する。


「世界を壊すってどういうことだよ?」


俺の言葉に一弥はやっぱりなという顔した。

少しの間一弥は目を瞑って何かを考える。

そして、2つのことだけを俺に話した。


「それについて、俺からは答えられない。

けど、優斗、お前の家(・・・・)に行けばわかる。

だから、自分の目で見てこいよ」


一弥の言葉に俺は目を見開く。

先ほどまでの一弥に対する怒りを忘れて、俺はまくし立てるように質問した。


「俺の家に何があるって言うんだよ?!

それに、何でお前はそんなことを知ってるんだよ?!」


俺の質問は半ば叫び声となっていた。

一弥はらしくない思いつめたような声で俺の問いに答えてくれた。


「…お前の親父さんに聞いたんだ」


俺は三度絶句した。

俺が口をあけて呆然としていると、和也はさらに続けた。


「親父さんは家にはいないと思う。

先生と一緒に博物館へ向かったよ。

今起こっていることの原因を探ってくるって…」


「先生って、保健室の先生のことだよな。

なんでッ…?!」


俺の質問に一弥は俯き、首を横に振った。

これ以上は一弥も知らないのかもしれないと感じた。

それはおそらく気のせいではないだろう。

目を閉じていた一弥が不意に笑顔を作った。


「俺さ、まだやらなきゃならないことがあるんだ。

だからさ、また会おうぜ」


そういって、裏山のほうへと歩いていく。

一弥を止めようと、声をかけようとしたとき―


紅い光(・・・)がその場を覆った。


それは、黒いやつが去る時に発したものと酷似していた。

いや、完全に同じだった。


俺はあまりの眩しさに目を瞑る。

しばらくの間、俺だけじゃなく、その場にいた奏と茜も伏せていた。

俺が顔を上げた時、そこに一弥の姿はなかった。


俺は膝を曲げ、その場にへたり込む。

もはや、俺は思考することを放棄していた。

俺の隣へ奏が歩み寄り、何事かを話していたが、それすらも理解できず、

二人がこの場を離れ、あの家族を呼びに行って戻ってくるまでの間、

俺はずっとそのまま座り込んでいた。


▼▼▼


久我君が行ってしまった後、私は座り込む優斗君のところ歩いた。

優斗君はまったく動かずにいる。

それもそうだと思う。

久我君が消えるときに出した紅い光(・・・)

あれは、病院での黒い人が出したもの、さっきまでいた泥の虎がまとっていたものと同じだ。

それを久我君が出した。

その事実に優斗君はどう思ったんだろう。

平気なはずがない。

現に、座り込んだまま動こうとしていないのだから。

私はかける言葉が見つからず、ただ、優斗君のそばで立ち尽くしていた。

そこに、茜ちゃんが声をかけてきた。


「今はそっとしとこう…。

とりあえず、あの家族を呼びに行こうよ」


茜ちゃんの提案に頷き、私は少しだけ逡巡してから、優斗君に少しだけここを離れることを伝える。


「すぐに、戻ってくるからね…」


そんな私の言葉に優斗君は全く反応していない。

とても心配だけれど、茜ちゃんの言うとおり、今はそっとしておくのが一番なのかもしれない。

私はもう一度だけ優斗君を見てから、裏山へと歩き出した。


裏山を下り、あの家族のいるはずの川辺へと進む。

私も茜ちゃんも学校からここまで一言も話していない。

私自身、話をしたい気分ではない。

優斗君のあんな姿を見て、何もしてあげられない、何も言ってあげられない。

そんな無力感に、とても歯痒く思う。

おそらく、茜ちゃんも同じ気持ちなのだろう。

私達は黙々と歩み続けた。


目的地である川辺には誰もいなかった。


「ここ…だよね?」


私は茜ちゃんに同意を求める。

茜ちゃんも変に思ったのか、辺りを見回している。

だけど、やはり何も見つけられず、私達は少しだけ辺りを探った後、優斗君のところへと戻る事にした。

あの家族がここにいなかった事が何を意味しているのか、その時の私達には知るよしもなかった。





森の中で3人の家族が大きな荷物を背負って、山を下っていた。

家族は荷物を運ぶことに慣れていないのか、休み休み進んでいる。

何回目かの休憩の時、ずっと暗い顔をしている娘へ父親と思われる男性が声をかけた。


「まり、いい加減機嫌を治してくれよ」


自分をを宥める父親に対して、少女は聞こえなかったふりをしている。

いや、もしかしたら本当に聞こえていないのかもしれない。

少女にとってはそれほどのショックだったのだ。

自分の両親が盗み(・・)をはたらいたことが。

それも“自分達を助けてくれた相手から”である。

少女は罪悪感に塗り潰されていた。


小さなお人形を肩にのせているお兄ちゃんと優しいお姉ちゃん、それに喧嘩しちゃったお姉ちゃん…

そんなお姉ちゃん達の荷物を勝手に持ってきちゃった…

お姉ちゃん達、絶対困るよね…


(これは余談であるが、少女が蒼を人形だと思っているのは、少女の見ているところでは動かないようにしていためだ)


そんな少女の内心を知ってか知らずか、彼女の両親はすまなそうな顔をしながらも、仕方がないことなのだと口にしていた。

両親は少女を慰めることだけに集中していて、まわりのことに気が回っていなかった。


そんな家族の前に突如一人の少年が現れた。

その少年は今も学校にいるであろう少年たちと同じくらいの年に見える。

少年は数メートル間をあけて立ち止った。

そして、こちらへ向けて一言だけ言葉を発した。


「あんたら、醜いね」


少年の言葉を聞いた少女がふと顔をあげる。

少女が見たのは、緊張の面持ちをした両親と、まるで汚いものを見るような目でこちらを見ている少年の顔だった。

少女は少年に問いかける。


「お兄ちゃん、誰?

あのお兄ちゃん達の友達なの?」


少女の言葉に少年は年相応の笑顔で返す。


「あぁ、そうだよ。

親友ってやつだ」


少年は少し照れていた。

それは本当にうれしそうな笑顔だ。

少女はその笑顔につられて笑いそうになったが、彼の言葉を思い出して、両親と同じように、いや、それ以上にひきつった顔になった。

彼はあのお兄ちゃん達を親友と言ったのだ。

そして、自分たちが何をしたのかを思い出した。

つい先ほどまでそのことで俯いていたはずが、少年が現れたことですっかり忘れてしまっていた。

少女はそのことに、さらに自己嫌悪に(おちい)った。


「自分たちが何をしたか、ちゃんとわかってるんだな。

そんな小さな子にまで手伝わせやがって」


少年は再び冷たい目に戻っていた。

少女はもう少年の顔をまともに見る事ができなくなっていた。

少年が一歩だけ前に踏み出し、冷たい声色で警告してきた。


「その荷物置いていけ。

そうすれば見逃してやる」


少年の警告に少女はすぐに従った。

他人(ひと)のものを盗むという事に、とても罪悪感を感じていた。

荷物(これ)を返すだけで許してくれるというなら、願ったりといったところだ。

突如、荷物を置いた少女はただならぬ雰囲気に体を震わせた。

その雰囲気の発生源に恐る恐る顔を上げると、そこには今までに見たこともないほど恐ろしい表情をした少年が、自分の背後を睨みつけている。

少女には理解できていないが、この雰囲気は少年の放つ殺気だ。

少女は少年から顔を背けるように振り返った。

そして、その目に写した光景に愕然とする。

自分の両親が荷物を抱え込み、これは渡さないという意思表示をしていたのだ。

他人から盗んだものにも関わらず、これは自分のものだとでも言うように。

少女が立ちすくんでいると、少年がとても鋭い声で問を発した。


「それがお前たちの答えなんだな?」


その問に両親は答えない。

少年はそれを問いに対する肯定と受け取った。


「大人なら、ちゃんと自分の選択には責任を持てよ」


少年はそう言うと同時に右手を前につきだした。

手から紅い光が放たれた瞬間、それは起こった。


「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーー」


突然の悲鳴に少女は振り返る。

そして、目の前で起こっている現実に凍りついた。

紅い光を帯びた木が母親を串刺しにしていたのだ。

びちゃっと、少女の顔に母親の血がかかる。


「ひぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃーーーーーー」


それを見た父親が自分を置いて逃げだしていく。

そんな男の背中に少年は嫌悪感を吐き出す。


「自分の家族も守ろうとしないのか。

どこまでクズなんだ。

お前みたいなやつを逃がしてやるとでも思ってるのかよ?」


その言葉をきっかけに、地面に転がっていた無数の石が、男を目掛けて飛んでいく。

少女の手のひらに収まる程度の小石が次々に男の体突き抜けた。

男はまるで糸が切れた操り人形のように倒れこみ、流れ出る血があたりを赤く染める。


少年の起こした一連の出来事に少女は恐怖で頭が真っ白になり、ただ立ち尽くしていた。

そこに少年が声をかける。


「お前はどうする?」


少女は少年の問の意味がわからなかった。

ゆっくりと少年の方へと顔を向ける。

少年の顔は再び笑顔であった。

今この惨劇を引き起こしたばかりでありながら、まるで何事もなかったかのように笑顔を作っている。

いや、少年にとっては本当に何もなかったのだろう。

そして、笑顔は少年にとってのいつもどおりということなのだ。


少女は混沌の中にいる。

父親の裏切り、両親の死、それは幼い少女にとって世界の終りと言っても過言ではない。

そして、それを作り出した元凶が目の前にいる。

そんな状況で正常に何かを考えることなど、大人にもできないだろう。

恐怖、憎悪、そんな負の感情から逃れるために、少女は心を閉ざした。


しばらくの間、沈黙が場を制した。

そして、少年は少女からの返答を諦め、当初の目的に取り掛かる。

両親だったものの傍に落ちているリュックを拾いあげた。

両手に大きな荷物を持ったまま、振り返り少女に声を掛ける。


「どうせ死ぬだろうけど、もしかしたら生きられるかもしれないな」


少年の言葉は冷たさも暖かさもない無機質なものだ。

だが、その言葉は働かない少女の中に響いている。


「この川に沿って歩いて行けよ。

その先に小さな村があるだろうから。

食べ物も少しだけくれてやる」


そうい言い放つと、少年は少女が運んできたリュックサックから食料をだし、少女の目の前に置いた。

最後のリュックサックを器用に拾い上げると、少女の前から消え去った。

残された少女は食料を拾い上げ、少年の言うとおりに歩き始めた。

その目に一切の光を写さぬままに。





ねぇ、優斗…


蒼が俺を呼んだ。

俺はみんながそっとしておいてくれたおかげで、大分心を落ち着けることができていた。

蒼はそのタイミングを見計らって、声をかけてきたのだろう。

俺は黙って続きを待つことにした。


さっきはありがとう…

私のことで怒ってくれて…


俺は蒼のお礼に後ろめたく感じた。

一弥に蒼を道具扱いされたことで怒りを感じたことは確かだが、親父のことや一弥の起こした事象に気をとられ、完全に忘れていたのだ。

へたり込んでいた俺は、強く拳を握り締め、不甲斐なさと至らなさを噛み締める。

蒼はそんな俺の前に飛び下りて、拳の上に自身の小さな手を置いた。


いいんだよ、優斗…

自分をそんなに責めなくて…

あの人の言葉に本気で怒ってくれただけで、本当に嬉しかったんだから…


蒼には俺の心が筒抜けになっている。

そのため、一切の嘘・偽りは通じない。

それでも、蒼は嬉しいと言ってくれたのだ。

俺はこれ以上蒼に無様な姿を晒すまいと、自分に喝を入れる。

バチィンと、学校に響き渡るほどの音をたてて、俺は自分の頬を叩いた。


優斗…?


蒼は目を丸くして驚いている。


「ごめんな、蒼。

俺もっと強くなるからさ」


俺はそれだけ言って、小さな頭を人差し指で撫でる。

そして、俺を心配してくれた彼女に向けて笑顔を作った。

自分の言動に悔いるものはまだあるが、俺は精一杯の虚勢をはる。

それは蒼の前では意味のないことなのかもしれないが、俺にとっての意地だ。

そんな俺に蒼も笑顔で返してくれた。


うん、期待してる…


それだけで、今の俺には十分だ。

俺は立ち上がって、蒼をいつもの定位置へと(いざな)う。


「二人のところへ行こうか」


うん…


こうして俺は、再び現実へと歩き出した。



蒼から二人があの家族を呼びにいったことを聞いた俺は、ひとまず保健室へと向かった。

あんな醜態をさらしたあとで、少し顔を合わせにくかったため、ちょっとホッとしていた。


「たまには、俺が夕飯の用意するか」


二人に対しての罪滅ぼしではないが、いつもの感謝を込めて、今日は俺が夕飯の用意をすることにした。

だが、辺りを見回しても荷物は見当たらない。


「奏達、荷物どこに置いてたっけ?」


自分の記憶は頼りにならないので、蒼に相談してみる。

しかし、蒼も正確には覚えていなかった。


確か、そっちの隅に置いてあったと思ったけど…


蒼の指し示す方を見るが、そこには何も置かれていない。


おかしいな、確かにそこにあったと思うんだけど…


蒼も首をかしげながら、辺りを飛び回るが、なかなか見つからない。

俺はカーテンで隠れているベッドを廊下側から調べていく。


「やっぱ、ねぇな」


俺はため息をつきながら、次のベッドのに移る。

だが、やはり、そこにも荷物はなかった。


「ほんと、どこいったんだろうな。

奏達がもってったってこともないだろうし」


疑問を口にしながら、最後のベッドへと移動したとき、蒼が突然大声をあげた。

(実際に声が出ているわけではないので、大きく頭に響いているだけだ)


ああああぁぁぁぁぁぁ…!!


「うぉ、突然どうしたんだよ」


蒼は俺の問いに嬉々として答える。


あそこあそこ…!!


蒼はそう言って、一番奥の窓へと飛んでいった。

そこへ近づくと、ベッドと窓の間の狭い隙間に3つの荷物がまとめて置いてあった。


「なんでこんなとこに?」


とりあえず、荷物を取るために、ベッドの上に乗る。

その時に、正面の窓が少し開いていることに気づく。

それを見て俺は思い出した。


「そういやここ、前に俺が出入りした窓だ」


俺は独り言を呟く。

そして、さっきの疑問に対する答えがそこにあった。

おそらく、この荷物は外から窓を開けて入れられたのだろう。

ということは、これを入れた人物はここの窓が開いていることを、知っていたということだ。

それを知っているのは俺と奏、茜、それと、先生とあと一人。


「一弥…」


俺はその人物の名前を呟いていた。

確証はない。

今の考えは、所詮憶測に過ぎないし、たまたまここが開いていたから、ここから入れたかもしれないのだ。

だけど、なぜか俺は荷物をここに置いたのが一弥であると感じた。


優斗…


蒼が心配そうな顔で俺を見てきた。

考えることに没頭していた俺は、ハッと現実に引き戻された。

そして、蒼に大丈夫と笑いかける。

考えてもわからないことはわからないのだ。

そう思い直し、荷物をとって、夕飯の準備に取り掛かった。


1時間くらい経ったころ、奏達が戻ってきた。


「うわ、なにこれ?」


茜が目を丸くして驚いている。


「茜ちゃん、どうしたの?」


奏が茜の後ろからひょこっと顔を出して、覗いてきた。


「うわぁ、すごい。

これ、どうしたの?」


俺の方を見て、奏も同じように質問してきた。

そこにあるのは、出来たてのシチューとパンだ。

特に、珍しいわけでも、難しい料理でもない。

男の俺でも簡単に作れるものだ。

だが、いつもはプラスチックの皿によそっていたものも、

陶器の皿によそられていると、少しだけ豪華に見える。

俺は家庭科室で調理したあと、そこに置いてあった皿を拝借してきたのだ。


「まぁ、いつも二人に任せっきりだから、たまには俺が作ろうかと…」


気恥かしい思いに、舌を噛まないように顔を背けて、ぶっきらぼうに言う。

それを見た奏と茜は顔を見合わせて、笑いだした。


「な、なんだよ」


二人はひとしきり笑ったあと、俺の方に顔を向けて、お礼を言う。


「ありがとう、優斗君」


「まぁ、食べれそうなものでよかったわ」


茜のはお礼とは違う気がするという突っ込みは、無理やり引っ込めた。

俺は二人の前に移動し、頭を下げる。


「さっきはみっともないとこ見せてごめん」


二人は再び顔を見合わせると、苦笑気味にため息をついた。


「まったく、本当よ。

ああいうのは、これっきりにしてよね」


「私は全く気にしてないよ。

優斗君がいつもどおりになってくれてよかった。

むしろ、私たちのせいで怪我させちゃってごめんね」


奏の言葉に、茜まですまなそうな顔をして俯いた。

それを見た俺は慌ててフォローする。


「いや、あれは俺がちゃんと周りを見れてなかったのがいけないだけだから、

二人は全然悪くないって。

それよりも早く飯食べようぜ。

せっかく作ったからさ」


俺は強引に話を終わらせ、二人を座るように誘導する。

二人はありがとうと、感謝を述べて座った。

まだぎこちなかったけれど、俺たちは楽しく談笑しながら食事を食べた。

自分の作ったものは、いつもなら可もなく不可もなくという味なのだが、みんなが一緒だからだろうか。

今日の料理はとても美味しいと感じることができた。

俺と一緒にいてくれる三人に、俺はこっそりと感謝する…


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