戦争…
「うぅ…、こ、ここは…」
漸く男性が目を覚ました。
「学校の保健室です」
側にいた茜が答えた。
男性はすぐに起き上がる。
「き、君達は一体…」
男性は少し怯えた様子で尋ねてくる。
「俺達は久賀 一弥の友人です」
俺がそう答えると、男性は酷く驚いた。
「か、一弥君の…」
俺は確信した。
やっぱり、この人は一弥のことを知っている…
俺達はやっと一弥に繋がる手掛かりを得る事ができたと。
泥の虎達が去った後、俺は男性を保健室まで運んだ。
そして、いったん裏山を下り、奏と茜をつれてきた。
何事もなく学校にたどり着いた俺達は、直ぐ様保健室へと向かい、男性の状態を確認する。
男性は俺がベッドに横たえた時と、変化はなかった。
ここへ向かう途中、俺から説明を聞いていた奏と茜は、すぐに男性の看病をしてくれた。
その甲斐あってか、男性が目を覚まし、今に至るということである。
「あの…」
俺が声をかけようとしたとき、男性は何かを思い出して問いかけてきた。
「妻と娘は見ませんでしたか!?」
俺は驚いて口を閉じた。
男性の問いに、奏が対応してくれる。
「お二人はどちらにいらっしゃったんですか?」
男性は狼狽した様子で答える。
「い、一番上の階の教室に…。
もし二人を失ったら、私は…、私は…」
奏と茜が二人を慰め、落ち着かせてくれている。
「俺が見てくるから、二人はここにいてくれ。
何か異変を感じたら、すぐに大声で呼べ」
二人の了承を聞き、俺は廊下に出る。
階段をかけ上がり、最上階へと到達する。
蒼、いつも通り警戒よろしくな…
おっけ~、任せて…
蒼は俺の指示に軽いノリで答える。
俺は教室を一つ一つ見て回る。
今のところ、男性の家族は見当たらない。
本当にいるのかな…?
はっ、全てはあの男性の妄想だったと…?
いやいや、そういう事じゃないから…
てか、わかってて言ってるだろ…
俺の思考に蒼がニヤリとした。
今日の蒼は絶好調である。
今日はなんでそんなに…
優斗、彼処…!
俺の問いを遮り、蒼が一番奥の教室を指し示す。
なんか、今日は途中で遮られてばっかだな…
そんなどうでもいいこと考えながら奥の教室を見る。
そこには扉の隙間から少女が頭だけを出して、こちらを覗いていた。
見られたのに気づいた少女は、教室の中へと頭を引っ込めた。
あの子が男性の娘さんかな…?
だと思うよ…
俺と蒼は奥の教室へと歩いていく。
扉のガラスから中を見ると、お母さんと思われる女性が少女を抱きしめて縮こまっている。
俺はゆっくりと扉を開ける。
「……っ!あ、あなたは…!?」
俺に驚いた女性が震えた声を発した。
「安心してください。
俺はあなたの旦那さんに頼まれて来ました」
俺がそう説明すると、女性は血相を変えて近寄ってきた。
「あの人は無事なんですか!?
どこにいるんですか!?」
女性は俺にすがり付き、旦那さんの安否を尋ねてきた。
「落ち着いてください、奥さん。
旦那さんは無事ですから。
怪我もありませんし。
今は学校の保健室で休んでます」
女性は安心した表情になり、床にへたりこむ。
そこに、今まで窓際に縮こまっていた少女が駆け寄ってきた。
「お母さんをいじめるなー」
少女は俺と女性の間に入り、両手を大きく広げて女性を庇っている。
少女の目には若干涙が浮かんでいた。
優斗が女の子虐めてる~、ぷフッ…
蒼は俺の後ろに隠れ、小声で囁いてきた。
俺は笑顔をひきつらせながら、弁解を試みる。
「別にいじめてないよ。
ただ二人を迎えに来ただけだよ」
俺がそう言うと、少女は顔を膨らませて主張してくる。
「ウソつき!
お母さん、泣いてるもん」
俺が四苦八苦していると、お母さんが苦笑しながら助け船を出してくれた。
「大丈夫よ、まり。
お母さん、力が抜けちゃっただけだから。
守ってくれてありがとうね」
そう言いながら、女性は少女の頭を撫でた。
少女は嬉しいようで、顔を赤らめて女性に抱きついた。
「できれば、夫ところまで連れていって頂きたいのですが…」
女性は落ち着いたようで、凛とした面持ちで懇願してきた。
「最初からそのつもりですので。
こっちです、行きましょう」
俺は女性についてくるように促す。
女性は立ち上がり、少女と手を繋ぐと、ゆっくりと後ろをついてきた。
何事もなく話が進んで良かったね…
女の子にはまだ悪者扱いされてるけど…
蒼の言葉に、チラッと少女を後ろ見すると、女性の後ろに隠れた少女が俺を睨んでいた。
はぁ、勘弁してくれよ…
ぷフッ、人気者は辛いね…
くすくす笑っている蒼の言葉に肩を落とし、保健室を目指した。
俺達が一階に下り、廊下を曲がった瞬間、それは聞こえてきた。
「きゃぁぁぁぁ!」
「奏!お二人はそこの隅に隠れていてください」
親子に指示を出して、俺は駆け出す。
すぐにたどり着いた保健室の扉を、勢いよく開け放った。
「奏ッ!」
そして、俺は驚愕のあまり全身に鳥肌がたった。
「こ、こいつは…」
俺が保健室に入って目にしたのは、部屋の隅に半泣きで固まっている奏と茜、ベッドの上で苦笑いしている男性、最後に部屋の中央で蠢いているそいつ。
「優斗君…」
半泣きのまま奏が俺に助けを求めてきた。
そいつはこちらの様子を伺いながら、頭の触覚を動かしている。
もしこちらが隙を見せれば、黒光りしている羽根を広げ、容赦なく襲いかかってくるだろう。
そう、それは太古の昔から人間と敵対(?)している生物だった。
「G…だと…」
うわ、きもいね…
蒼が心のそこから嫌そうな声を出した。
「は、早くなんとかしてよ!」
茜が目を固く閉じ、奏にすがり付きながら命令してきた。
いつも勝ち気な茜も、Gには弱いらしい。
まぁ、あいつに強い女子なんて、そうそういないよな…
気を取り直し、俺は近くにあった紙を手にとって、筒を作った。
ジリジリと間合いを詰め、筒を構える。
勝負は一瞬だ。
静寂の中、誰もが固唾を飲み込んだ。
……
「ここだッ!!」
Gに向かって勢いよく筒を叩きつける!
バシッ!
だが、あいつは持ち前のすばしっこさを生かし、俺の攻撃を回避する。
「くそッ!」
直ぐ様目でGを捕捉し、奏達とは反対の部屋の隅へと追い込んだ。
タイミングを図り、二度筒を叩きつける!
殺った…!
そう保健室にいた誰もが思った…、
気がした。
その瞬間、驚愕の事態が起こった!
ヤツがその漆黒の羽根を広げ、宙へ飛び立ったのだ!
「うわッ!」
危うく顔面に突撃されそうになるが、ギリギリで回避する。
「「きゃぁぁぁぁっっっ!!!」」
Gはあろうことに、女子二人のところへ突っ込んでいった。
「くっ、間に合わない!」
俺が諦めかけたその時、開いていた窓から乱入者が現れた。
にゃぁっ!
身近く鳴き声をあげた乱入者は、横からGを捕らえた。
そして、それを口に加えたまま、
どうだ、凄いだろ
と、言わんばかりのドヤ顔をしている。
凄まじい展開に、そこにいた誰もがついていけてない。
そして、その猫はゆっくりと保健室を出ていった。
これが第一次G迎撃戦争の結末であった…。
(二次が起こらないことを、俺は心から祈っている)
なぜこれを書いたし…
本当に読者の皆様には申し訳なく思っております。
一言で言うなら、書いてみたくなったから!です。
このテンションになってしまったことを、深くお詫びいたしますw
誤字・脱字報告を頂けると恐縮です。
では、また(@^^)/~~~




