表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
23/29

誓い…

「それじゃぁ、気をつけてのぅ」


「色々とお世話になりました」


俺達は老人に頭を下げ、その場を出発した。


今回の目的地は、俺の家が住んでいた街にある博物館だ。

ただ、そこに行く道は2つある。


1つ目は山を迂回する道だ。

ただしこちらは、泥と遭遇したときに、逃げ隠れる場所が無いため、ボツとなった。


そうすると、必然的にもう一方の道となる。

もう一方の道とは、川沿いに山を登り、学校を通過する道だ。

もしかしたら、一弥と先生も学校にいるかもしれないという、淡い期待もしている。


というわけで、俺達一同は山道を歩いている。



「またみんなであの村に行けるといいね。

4人で一緒に暮らすのも楽しいかも」


「それは難しいかもね」


奏の発言に、茜が難しい顔をして返す。


「どうして…?」


茜の返答は、奏にとってショックなものだったようだ。

その問いに茜は、神妙な顔で答えた。


「日本は一夫多妻制を認めてないからね」


「はいっ?」


あまりの珍解答に俺はアホな声を漏らす。

奏も目を丸くして足を止めた。


「それに、優斗はタイプじゃないしねぇ。

ここは奏に譲るよう」


茜はニヤリと不敵な笑みを浮かべながら、奏の背中を押す。


「きゃっ!」


「おわッ!」


ドサッ


茜に突き飛ばされた奏が俺に突っ込んできた。

俺は奏を抱き締める形で受け止める。


そして俺は最上の天国(じごく)を垣間見た。


腕や奏に触れている部分から伝わる彼女の体温。

微かに漂ってくる彼女の薫り。

真っ赤になり急激に速まった彼女の鼓動。

極めつけは、慎ましやかでありながら、極上の柔らかさと弾力性をもつ2つの山。


俺は理性が一瞬にして吹き飛ばされそうになるほどの衝撃を受けていた。

これ以上はまずいと、慌てて両手を上にあげる。


「ご、ごめんッ」


赤い顔を隠すためか、奏は俯いたままでいる。

そんな奏を蒼と茜がからかい始めた。


「ご覧になりました、奥さん?

朝からお熱いことで」


そうですねぇ…

お熱いですねぇ…


おばちゃん口調でニヤニヤしながらからかってくる二人に、奏の堪忍袋の緒が切れた。


「もうっ、二人ともっ!」


うわ、逃げろとか言って、走って行く二人(一人は飛んでるけど)を、奏が元気に追いかける。


「お前ら、いい加減にしとかないと後できつくなるぞ」


俺は呆れながら三人の元気な姿を眺める。


それにしても、奏は本当にたくましくなったな…


奏は病院から出てきた時に比べると、とても元気になっていた。

その姿を見ていると、本当に心が満たされる。


本当に良かった…


しみじみとそんなことを思いながら、俺は山道を歩き出す。


たくましくなったって、奏のどこら辺のことを言ってるのかな、旦那さんや…


いつのまにか背後に回っていた蒼が、今度は俺を標的にする。

茜を追いかけていた奏が、足を止めてこちらを恨みがましい目で見てくる。


「ち、違うからっ」


慌てて反論するが、奏はそっぽを向いてしまう。


「……優斗君のばか、知らない」


そのまま歩き出す奏を、今度は俺が追いかける。

蒼と茜は道の先で腹を抱えて笑っていた。


アイツら…


俺は心の中でいつか復讐(しかえし)してやると誓った。



「あっ、あれ」


山を登り始めて、3時間ほどで学校が見えてきた。

奏が嬉しそうに指さしている。


「やっと、戻って来れたね」


奏の言葉に俺と茜は感慨深いものを感じていた。


「そういや、蒼は初めてだっけか」


俺達が蒼の方へ顔を向けると、蒼は首を横に振っていた。


完全目覚めたわけじゃなかったけど、少しだけ覚えてるよ…

優斗の意志が初めて流れて来たときの事…


「……あ…」


蒼に言われて俺は、あの時の事を思い出した。


「そうか、あれも蒼の力だったんだな…。

お礼言うの遅くなったけど、ありがとな」


何故か蒼はなにも言わずにいる。


「………蒼?」


……違う…


蒼の声はどこか、悲壮感を帯びていた。


違うよ、あれは優斗ともう一人の人の力だよ…

私はなにもしてないよ…


「もう一人…?」


蒼の意味深な言葉に、俺は頭を捻っていた。


あの場にいたのは俺と…



「うぎゃぁぁぁあああっっっ……」


俺達が会話に集中していると、校舎の方から男性の悲鳴が聞こえてきた。


「今のって…!?」


「校舎の方だッ!

俺が見てくるから、二人は川沿いの茂みに隠れててくれ!

後、これ頼む!」


「優斗君っ!」


二人に待つよう言い残し、荷物を置いて俺は駆け出した。


「クソッ!木が邪魔だな。

蒼、いつでも行けるようにするぞ」


うん、その方がいい…

確実にいるよ…

人じゃないのが3つ…


蒼が敵の数を精確に感知してくれた。


「いつもより数は少ないけど、紅いやつの件もあるし気は抜かない方がいいな」


だね…


蒼との情報共有を中断し、意識を集中し始める。

そのまま、警戒を怠らずに校舎へと向かった。


「ヒィ、ヒィいいいッッ!!

こ、こっちへ来るなッ!!」


さらに別の悲鳴が聞こえてきた。


「グラウンドの方だッ!」


俺は全力で校舎を回り、グラウンドへと出る。


「な、なんだこいつら!?」


それは確かに泥だ。

だが、3体とも紅い光を纏っている。

それだけではなく、形状がいつもと異なっていた。


「あれ…、虎か…?」


優斗!あの人が危ないよ…!


蒼が示す方向に男性が倒れている。


「チッ、間に合うかッ!?

行くぞッ!蒼華ッ!!」


ドゴォォォォォォンッッッ!!!


鳴り響く音に驚き、虎達が一斉 にこちらへ向く。


三枚の花弁で虎を撹乱し、一枚を男性の前に飛ばす。

虎達は花弁を警戒し、距離をとっている。


よし、今のうちに…


うん…


この隙をついて、残した一枚の花弁に光を流し込む。

だが、俺が花弁に集中した瞬間、一体の虎がこちらへ襲いかかってきた。


「なッ!!」


俺は慌てて触れていた花弁で防御した。

しかし、虎は花弁に当たる直前に横にそれた。

まるで、俺に剣を使わせまいと、牽制してきたかのようだ。


「まさかこいつら…」


うん、そうみたいだね…


アイツらの行動を見て、蒼も俺と同じ考えのようだ。


あの虎達は知性があるのかもね…

もしかしたら、紅い光が出てるのは皆そうかも…


「そうかもな。

病院でも紅いのはしゃべってたし」


俺は病院での事を思いだし、胸くそ悪い気分になった。

だが、今はそんな場合ではないと思い直し、目の前の敵に集中する。


「厄介だな…」


只でさえ速いのだ。

それに加えて、考える力があるとなると相当に厳しい。


とりあえず、あの人のところに行こうよ…

そうすれば、花弁をフルに使えるようになるし…

それに、4枚で時間を稼げば、剣も出せると思うよ…


蒼の助言に俺は素直に頷く。


「それでいこう。

それにしても、こいつら全く動かないな」


ずっとこっちを窺ってるね…


虎達は微動だにせず、じっとこちらを見続けている。

俺達が会話をしている間も、こちらに襲いかかってくる気配がまるでない。


少し…、変だよね…?


蒼の疑問に頷き返そうとした瞬間…、



ガァァァア゛ア゛ア゛ッッ!!



「……ッ!!」


俺の足元が突如、巨大な虎の口となった。


優斗ッ、横に飛んでッ…!


「……クッ!」


蒼の言葉を聞き、反射的に横っ飛びでその場から逃げ出す。


ガチンッ!


間一髪、閉じた虎の口から逃れられた。

しかし、ピンチは終わっていなかった。


優斗ッ、前ッ…


俺は声に従って前を向く。

そこには2体の虎が向かって来ていた。


「こん…のッ!」


俺は花弁を虎達の方へ飛ばす。

だがそれは、簡単に躱されてしまった。

大口を躱すために飛んでいた俺は、地面に落ちて転げ回る。

次の瞬間…、


ガァア゛ッ!


短く吠えた虎が俺の上に、飛びかかってきた。


優斗ッ!!…


蒼の悲鳴が頭の中で反響する。

俺は必死に避けようとするが、奴らの方が速い。


やられるッ…!


俺がそう思った瞬間、虎達は攻撃を止め地上に降り立った。

そして、辺りを見渡し、何かに警戒している。


グァルルル…


互いに視線を交わし、裏山の方へ向かって唸り声をあげた。

その姿はまるで、何かに怯えているようにも見える。

不意に、唸ることをやめ、もう一度視線を交わしあう。

虎達は裏山とは反対にある正門へと走り去って行った。


「……なん…だったんだ…?」


虎達の気まぐれに助けられたね…


蒼の言葉が突き刺さる。

今回は本当に運良く助かった。

なぜなら、虎達は俺を簡単に殺す事ができたのだから。


「………弱いな、俺は…」


命があっただけでもよしとしようよ…

これから強くなればいいんだから…


蒼の言葉は俺の中に染み渡っていく。


“これから強くなればいい”


その言葉を心に深く刻み、


「あぁ、強くなってやる」


そう自分自身に誓った。


ひとまず、あの人のところに行こうよ…


「あ、忘れてた…」


自分が助かった安堵から、男性の事を完全に忘れていた。

俺は慌てて男性の元へと駆け寄る。


「大丈夫ですか!?」


俺が声をかけると、男性は譫言のように何かを呟いた。


「……かず……や…くん…」


「……ッ!!」


それは、俺が探し求めていた人物の名前であった…。

ここまでお読み頂き、誠にありがとうございます。

おかげさまで、ついに1000pvを超えました。

(イヤッフーーー)

今後もよろしくお願いいたします。


誤字・脱字がありましたら、ご報告頂けると恐縮です。

では、また(@^^)/~~~

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
冒険
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ