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疑惑…/葬儀…

前回のあらすじ


女の子二人に遺体を見せたくなかった優斗は、二人を残して公民館の中へと入った。

そこには腐食した多くの遺体が転がっていた。

見るに耐えかねた優斗は、外へ出ようとするが、そこに漆黒の布を被った人物が現れた。

その人物は、この惨劇を一弥がやったと言う。

俺は怒りに身を任せ、無理矢理剣を出し、黒いやつに斬りかかるも、紅い光に阻まれてしまう。

あっさり逃亡を許してしまった俺は、最悪の気分のまま、二人の元へと戻った。

優斗君が公民館から出てきた後、私達の前で倒れた。


優斗君はすごい熱を出していて、譫言(うわごと)で一弥、一弥と口にしていた。


蒼ちゃんがごめん、ごめんって泣きながら寄り添っていた。


茜ちゃんがおじいさんのところへ走って行った。


私は、ただ、苦しそうな優斗君を抱き締める事しかできなかった。


それしか、できなかった…。



今、私達はおじいさんが用意してくれた空き家にいる。

おじいさんを茜ちゃんが連れてきてくれて、ここまで一緒に運んでくれた。


優斗君は布団の中で寝ている。

私はすぐに乾くタオルを、冷たい水で濡らして何度も優斗君の額へ置いた。


優斗君が運ばれてから、ずっと隣にいる。

でも、やっぱり私には何もできない。


優斗君の熱を下げる事も…。


苦痛を、不安を消し去る事も…。


久賀君を連れてきてあげる事も…。


「何で…、私には…、何もできないの…」


それは、私の口から自然と漏れだしていた。


「そんなこと、ないよ」


いつの間にか、私の後ろにいた茜ちゃんが、私に声をかけてくれた。


「……茜ちゃん」


私は自分でも涙が出ていることがわかった。

そんな私を、茜ちゃんが優しく抱き締めてくれた。

私は茜ちゃんの胸元を濡らすことで、自分の気持ちを落ち着けた。


「……ごめんね」


暫くした後、私は茜ちゃんから離れながらそう言った。


「何で奏が謝るのよ。

全く、こんなに奏が心配しているのに。

起きたら罰ゲームね」


そんなことを言ってる茜ちゃんも、優斗君のことをとても心配している。

それは、すごく感じた。


優斗君が倒れた時も、真っ先に行動した。


ここに来た時も、すぐにお湯を沸かすなど、優斗君のために動き続けた。


もしかしたら、茜ちゃんも優斗君のことを…。


私、最低…


私は自分の思考を消し、優斗君の方へ向き直る。


「優斗君、起きるよね…」


「当たり前でしょ。

大丈夫よ、こいつは簡単に死んだりしない」


茜ちゃんの言葉は、まるで自分に言い聞かせているように聞こえた。


「そうだよね、大丈夫だよね」


私達は、一晩中、優斗君に付き添った。



▼▼▼


「ここは…?」


目が覚めた俺が最初に見たのは、古ぼけた木の天井だった。


「……ん」


頭を起こすと、俺の上に女子二人が頭を乗せて、肩を合わせ寄り添いながら眠っている。

その側には、蒼も羽根を休め、目を閉じている。

二人の背中には、毛布がかけられている。


「暫く、そのままにしてやりなさい」


部屋の入り口から、老人が声をかけてきた。


「一晩中、お前さんに付き添っててくれたんじゃ。

それはもう、一生懸命にの」


ほっほっほっと、小さく笑いをあげて老人は部屋を出た。

俺は、改めて3人を見る。


「ありがとうな」


そう言って、俺は3人の頭を撫でる。

撫でられた3人の反応はそれぞれ異なっていた。


奏は嬉しそうな顔になり、見ているこっちもドキドキしてしまった。


茜は最初、ムッとした表情だったが、ツボを押さえて撫でると、満足気な顔をした。


蒼には指先で優しく頭を撫でた。

表情に変化は見られなかったが、羽根がピクっとくすぐったそうに震えた。


「3人とも、本当にありがとう」


そう言って、俺はもう一度眠りについた。



次に目を開けた時、俺は自分の目を疑った。


「き…、きゃぁぁぁーーー!!!」


「おふッ」


俺は全力で服を投げつけられた。


「優斗君、こっち見ないで!!」


「は、はい」


いったいどういう状況かというと、奏が着替えをしていたところに、俺が目を覚まし、それを目撃してしまったということだ。


彼女はシャツを脱いでいるところで、上はブラが少しだけ見え、下はそのまま下着のみだったのが目に焼き付いてしまった。


てか、この服、さっきまで奏が着てたものじゃ…


そう思った途端、服の甘い薫りが鼻を刺激する。

服は彼女の熱を仄かに帯びている。

するすると奏の着替える衣擦れの音が聞こえてくる。


病み上がりの心臓がバクバク言っている。

あまりの衝撃に思春期の思考回路はショート寸前まで追い込まれていた。


やーい、優斗のエロー…


蒼の声からは、容易に彼女が白い目をしていることがわかった。


「まッ…、違ッ…!」


俺は再びやらかす。

咄嗟に反論しようと顔を上げたため、奏と目が合う。

幸い彼女は着替えを終えていた。

だが、その顔は耳まで本当に真っ赤で、目には涙が浮かんでいる。


俺達は互いに何も言えぬまま見つめあっていた。

あまりの緊張に、どちらが倒れてもおかしくないと感じたとき、救世主がやって来た。


「……何やってんの、あんた達」


茜が食べ物を持って、部屋にやって来た。


「あ、茜ちゃーん」


うわーんと、奏が茜に抱きついた。


「ちょ、ちょっと、奏。

いったい何なわけ?」


奏を落ち着かせた後、俺達は茶の前行き、食事をとりながらさっき起きた事を説明する。

それを聞いて茜は…


「あっはっはっはっはっ、はー、苦しい」


清々しいくらいの爆笑をした。

奏はまた、顔を赤くして涙目になっている。


「……酷いよ、茜ちゃん」


若干いじけてる。


「ごめん、ごめん。

でも、あんなとこで着替えてた奏も悪いんだよ」


「うぅ~、だって…」


茜はヒィーヒィー言いながら、全く効果のない謝罪をしていた。

奏も消え入りそうな声で、言い訳にならない言い訳をした。

で、俺はというと、何も言えずに縮こまっていた。


優斗はさっきから大人しいね…

奏の体を見て興奮しちゃってるのかな…?


ニヤニヤしたちっこいのが、二人に聞こえるように言いやがった。

奏はますます顔の赤みが増してるし、茜は腹を抱えて、もうだめとか言ってるし…。


奏の体、見かけによらずグラマーだったよねー…


「あ、蒼ちゃん」


耐えられなくなった奏は、反論しようとした。

うん、見事にダメだったけど。


「だよねー、奏って脱ぐとすごい子なんだよね。

こんなに純粋無垢で、お姉さんはこの子の将来が心配です。

あ、優斗が貰ってくれるから大丈夫か~」


「……んなッ!」


「……っ!」


もはや、俺と奏に暴走したお姉さんを止める手立てはなく、この後も、ひたすらこの羞恥プレイに耐え続けた。


食事を終え、完全に拗ねた奏を茜が強制的に風呂に連れていき、交代で俺が風呂に入った後、俺の寝ていた部屋に集まった。


俺はまず、二人にお礼を言う。


「奏、茜、看病してくれてありがとう。

それと…、ごめん」


「私は別に…、優斗君が大丈夫ならそれで…」


「そうね、私も心配なんかしてなかったし」


二人とも素直じゃないが、少しだけ照れてるようだ。

そんな二人にもう一度だけお礼を言った。


「そんなことより、あの中で何があったの?

また、蒼ちゃん出したみたいだったけど」


茜の疑問に、俺は順を追って説明した。

中で見たもの、現れた黒いやつ、そいつが話した公民館の人達と一弥の繋がり。

拙いながらも、一つ一つ全て話した。

俺が話す間、二人は黙って聞いてくれた。

顔は真剣なものだったが、恐怖からか、奏が茜の服を掴んでいるのが見えた。

その後は、二人の疑問を全て答えた。


「黒い人?は誰だかわかる?」


「いや、声にも心当たりがないし、さっき話した通り、顔は全く見えなかったから」


奏の問いを答え、俺達3人は黒いやつのことを考えたが、結局、現状ではあいつが敵で、泥を作っているまたは干渉しているくらいの事しかわからなかった。


「ただ、あいつが一弥の居所を知っている可能性はある」


俺はそう言ったが、これ以上は憶測にしかならないと、話を中断した。

あいつの居所すらわからないのでは、一弥の居所を聞き出すのは到底不可能なのだから。


話を終え、暫しの沈黙が部屋を満たす。


「これからどうするつもり?」


沈黙を破り、茜が問いかけてきた。

茜の問いに対する答えを、俺はすでに決めていた。


「博物館へ行こうと思う」


俺はその理由を二人に説明する。

泥が現れた最初の日、家の窓から見た光景、博物館の方で燃え盛る炎。

それを聞いて二人は納得してくれた。


「他に宛があるわけじゃないし、それでいいんじゃない?」


「うん、私もそれでいいと思う」


二人は笑って承諾してくれた。


「ただ、その前にやっておきたいことがあるんだ」


それを二人に話すと、二人は快く引き受けてくれた。

ただ…、


「俺一人でいいんだけど」


「私も手伝いたい」


「暇だからね」


全く、人がいいな、二人とも…


二人とも、優斗に似てきたかも…


なんか、俺が悪いみたいに聞こえたが、当然スルーした。

その日はもう暗くなっていたので、作業は翌日から行うことにした。


朝方、朝食をとり終えた俺達は、老人のところへ向かう。

老人に、俺達がやろうとしている事を話すと、すぐにスコップ、マスク、軍手を用意してくれた。


「場所は公民館からすぐ近くにあるからのう。

ただ、本当にお主らだけでやるつもりかね?」


「何日かかるかわかりませんが、やりたいんです。

やらせて下さい」


そう言って、俺達は教えてもらった場所へたどりついた。

俺達がやろうとしていること、それは…、


公民館の遺体の火葬だ。


ただ、そのまま火をつけたのでは、山火事になりかねないので、地面に穴を掘り、そこでまとめて火葬しようというのだ。


勿論、正式なものではないが、あのままの状態を放っておくのは忍びない。

それだけでなく、万が一、一弥があんな事をしたのだとしたら、友達として、少しでも罪滅ぼしがしたいと思ったからだ。


結局は自己欺瞞に過ぎないけどな…


いいんじゃない…?

人間らしくて…


慰めとも言えない言葉を蒼かけてくれた。


火葬場にしようとしているのは水田があった場所だ。

二週間程度、誰にも手入れされなかったことで、荒れてしまった場所だ。

ここなら、最初から地面が窪んでいて、それなりの面積がある。

それでも、あの人数を火葬するにはもう少し掘らなければ、山火事の危険は消えない。


「さぁ、始めるか」


「うん」


「そうね」


俺達は、軍手とマスクを着用し、スコップを手にした。

水田の土は柔らかく、簡単に掘り進めることができた。

昼には、村人が昼食を持って来てくれた。

俺達は適度に休憩を挟みながら、作業を続けた。

だが、かなりの広さなので、やはり1日では終わらなかった。


翌日も、朝から作業を繰り返す。

昨日できたマメや、筋肉痛が残っていたが、それでも作業を繰り返していた。


次の日も、また次の日も俺達はひたすら作業を続けた。


1日目、2日目、奏はやはりすぐにへばっていたが、段々慣れてきたようで、3日目以降は1日もつようになっていた。

茜は意外にも、最初からこなしていた。

何でも、ハードな部活に所属していたらしい。

何をやっていたかは教えてくれなかったけど。


一週間ほど過ぎたとき、やっと穴が完成した。


「「「やっっッッたぁぁァァァ!!」」」


俺達は達成感に満たされながら、揃って万歳をした。


「これでやっと火葬できるな」


「うん、そうだね」


「早くお風呂入りたい」


疲れはてた茜は、地べたに座り込み、風呂を要求してきた。

この一週間で、奏はかなりたくましくなった。


「本当にお主らだけでやりきるとはのう。

これはたまげた」


やって来た老人が、驚きの声をあげていた。


「こちらも、一人一人にシートを被せておいたから、運びやすくはなったと思うぞ」


「ありがとうございます」


ここから先の作業は、二人がどんなに駄々をこねても譲る気はなかった。

それは、公民館から遺体をここまで運んでくるというものだ。

いくらシートが被せてあり、あの姿を見ることがないと言っても、女の子に死体を運ばせたくなかった。

だから、俺は絶対に譲らなかった。


翌日、俺は何度も遺体を台車に乗せて穴へと運んだ。

その姿を二人は遠巻きに眺めていた。

夕方まで俺は1度も休まず、遺体を全て運びきった。


その日の夜葬儀は行われた。


「うむ、それでは始めるか」


老人の一言で、俺達は大穴を埋め尽くすシートに灯油をかけ始める。

礼装をした村人が松明を持ち、並んでいる。


「亡くなった者達に、安らかなる眠りを」


数秒間の黙祷の後、松明を投げ入れる。

瞬く間に炎は広がり、穴を満たす。

風も無いため、炎は真っ直ぐに立ち上ぼり俺達を明るく照らした。

それはまるで、亡くなった人達の魂が、俺達の行く道を照らしてくれているかのようであった。


似たような事を感じているのか、奏と茜も穏やかな顔で炎を見つめている。

奏の瞳には、うっすらと涙が浮かんでいる。

どんなにたくましくなったって、奏は奏だなと俺は一人で笑っていた。


綺麗だね…


俺の思考には気づかず、蒼が炎を見てそう呟いた。


「あぁ、そうだな」


俺は、炎を見続ける蒼にそう返した。


少しの静寂の後、老人が俺達に感謝を述べた。


「ありがとうな。

お前さんらがいてくれなんだら、未だにこいつらを送ってやれんかった。

本当にありがとう」


感謝をくれた老人の目には炎が映り、頬には一筋の涙が伝っていた。


俺はその姿を横目にして、


多くの魂に、冥福を祈った。


それから炎が消えるまでの間、


俺達は静かに魂が逝くのを見届けた…。

初めて、前回のあらすじ書きましたが、案外難しいですね(^_^;)

拙い文章で申し訳ありませんが、よろしくお願いします。


誤字・脱字報告の方、よろしくお願いいたします。

では、また(@^^)/~~~

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