妄想(イメージ)…
俺は今、屋上にいる。
回りには、向井さんと小林さんに、看護婦さん、医者の四人が俺から少し離れたところに陣取っている。
人は他に誰もいない。
少し緊張していますね、優斗…
「しょうがないだろ。
そういう蒼華だって、緊張して敬語になってるよ」
俺達は会話でこの緊張をどうにか追いやろうとしている。
4人の熱い視線を受け、背中には暑くもないのに汗が伝っているのが分かる。
とって食われる訳ではないので、気楽にやりましょう…
「あ、あぁ」
蒼華の言葉に、何とか相づちを返す俺は、何故こんな状況に追い込まれているのかを思い出していた。
事の起こりは昨日の昼である…。
◆
「そういえば、蒼華ちゃんて、でっかいお花になれるんだよね?」
昼食をとるため、俺と向井さん、小林さん、蒼華は屋上へ集まっていた。
4人で談笑していると、向井さんが唐突にそんな事を尋ねてきた。
うん…
「じゃぁ、今度、もう一度見せてくれる!?」
蒼華の返事に、目を輝かせた向井さんは蒼華にと俺に頼み込んできた。
そんな向井さんを、小林さんが落ち着かせてくれた。
「奏、ストップストップ。
坂倉君も蒼華ちゃんも驚いてるよ」
「あ、ご、ごめんなさい…」
俯いて顔を赤くしている向井さんに、俺は気にしないでと声をかける。
「でも、その花を出す練習はしておいた方がいいんじゃない?
それに、私も見てみたい」
二人に頼まれ、暫し考える。
「別にかまわないんだけど、場所がな。
看護婦さんから他の人には秘密にしなさいって言われてるから、誰もいないところじゃないと」
「なら、私が看護婦さんに掛け合ってくるね」
そう言い残して、小林さんは行ってしまう。
「小林さんって、凄い行動力の持ち主だよね」
うん、凄い…
「茜ちゃんはいつもあんな感じなんだ」
そう言った向井さんは少し誇らしげで、同時に羨ましそうでもあった。
数分して、小林さんが戻ってきた。
「明日のお昼にここを使っていいって。
他の人には明日だけ出入りを控えてもらうから大丈夫って言ってた。
ただ、その代わり看護婦さんと医者も見に来るらしい」
「まぁ、それならいいのかな。
な、蒼華」
うん、別に問題ないね…
向井さんの軽い提案が少しでかくなってる気もするが、練習した方がいいのは確かだから、ありがたく受けた。
こうして、蒼華との練習会が開かれる事が決まった。
◆
俺は回想を絶ちきり、意識を集中力させる。
行くよ、優斗。大切な者を護りたいって意志に意識を集中させて、私の名前を呼んで…
俺は蒼華の言葉通りに意識を集中させる。
護りたい…
向井さんを…
小林さんを…
一弥を…
出会った人達皆を…
俺は…
護りたい…!
「蒼華ッ!!」
ドゴォォォォォォンッッッ!!!
前回と同様、やはりすさまじい音がなり響き、勢いよく砂埃が舞った。
皆、勢いよく咳き込んでいる。
「さ、坂倉君!こうなることが分かっていたなら、先に言ってくれたまえ!!」
医者に怒られた。
砂埃が晴れ、5枚の花弁と、中心に蒼い珠が顕になる。
「こ、これが」
「すっごーい」
「何度見ても凄いよね」
「綺麗ね~」
順に医者、向井さん、小林さん、看護婦さんのコメントだ。
うまくいって、よかった…
だね…
俺は内心失敗したらと、結構ドキドキしていた。
ホッと胸を撫で下ろし、蒼華の姿を見ると、少しだけ、前回と違うことに気づく。
前より蒼い光が弱いような…
それは、前回よりも優斗の意志が弱いからだよ…
蒼華曰く、蒼華を起動させるためのエネルギーは人の 意志力または生命力らしい。
蒼い光はそれが具現化したものだという話だ。
前回の起動時より、うまくイメージ出来てないってことか…
まぁ、ピンチと比べるとさっきの意志は持ちにくいよね…
蒼華が、一応フォローしてくれた。
「とりあえず、動かしてみます」
次に腕を前にだし、花弁を動かす。
本当はイメージだけで問題ないらしいが、まだ俺にはイメージというものが掴みきれていないので、腕でイメージの捕捉をする。
余談だが、蒼華でも動かす事ができるらしいが、そのためには蒼い光を余計に消耗するらしい。
1枚1枚の花弁が俺の回りをゆっくりと舞っている。
それを見た小林さんが、感嘆を洩らす。
「幻想的だね~」
これも、一応成功することができたため、次の実験に移る。
花弁の1枚を剣にする。
前回剣に変えるためには光が足りなかったから、優斗の体力をもらったよ…
「なるほどな」
今回は時間があるので、ゆっくりとイメージして、意志を強める。
「何が一番いいかな?」
何がって、何が…?
俺の質問に、蒼華は質問で返してきた。
「あぁ、ごめん。一番意志を強めやすいイメージって何かなと思って」
あぁ、なるほどね~…
少し考えて蒼華は答える。
ごめん、私じゃわからない…
でも、私が優斗に魅かれた理由の1つは、あなたの意志の力が人よりも大きかったから…
「…そうなんだ」
俺は、なんだか褒められてる気がして、嬉しくなった。
とりあえず、“護りたい”は一旦置いといて、今度は“生きたい”をイメージしてみる。
生き物としての本能ならどうだろう(俺の案)という考えの結果である。
生きたい…
ここにいたい…
生きて…
………
なんと、蒼い光は全く出なかった。
うん、これ無理。
恥ずかしくて、若干死にたくなった。
他にも色々イメージしてみたがどれも剣が出せるほどのイメージは出来なかった。
因みに、イメージランキングは次の通りである。(蒼い光の光量参照)
1位護りたい
2位勝ちたい
3位遊びたい
4位向井さんとお話しがしたい
5位蒼華の羽根を触りたい
(6位以下は割愛)
蒼華には、俺の思考が筒抜けなため、ドン引きされた。
1位と2位は、まだ救いがあると思うが、3位以降は本気で死にたくなった。
俺はどんだけ欲求不満なんだろう…。
そんな妄想(?)で、数十分が過ぎ皆はいつの間にかいなくなっていた。
皆…、ちょっとひどくないかい…?
半泣きになりかけていた俺は、蒼華に慰められながら、その場を後にした。
そして、その翌朝にまた奴らが襲ってきた。
すみません。
あそびました。
つい出来心だったんです。
お許しをw
誤字・脱字報告頂けたら恐縮です。
ではw




