胸の高鳴り…
泥達が通り過ぎるのをまった私達は、どうするかを話しあっていた。
「街の人達に知らせに行く?」
「でも、前みたいに信じてくれないかもしれないよ…」
私の否定的な言葉に、茜ちゃんは弱冠顔を曇らせたが、すぐにそれはないと訂正してきた。
「見て、多分すでに何度も襲われてるんだよ」
「……っ!」
さっきまでここにたどり着いた達成感に呑まれていたため、この惨状には気がつかなかった。
家屋は倒壊し、泥が街の至るところに見えた。
「どうしよっか…」
茜ちゃんはそう呟いていたが、それは返答を期待してのものではないと、私は感じた。
諦めにも似たような、そういう雰囲気が茜ちゃんからにじみ出ていた。
「……行こ」
「奏……?」
私は、自分の言葉に自分でも驚いていた。
行くって、あの化け物のいるところに行くっていうの…?
バカじゃないの、私…
私が、自分を罵倒していると、茜ちゃんが私の手を握ってきた。
「うん、行こう」
茜ちゃんは、私の目を真っ直ぐ見つめてそう言った。
その力強い目に従うことにした。
荷物を茂みに隠した私達は、万が一を考え、川の中を泳いで街へ向かった。
濡れた制服が重く、とても進みにくかったが、足がつかないわけではないので、ゆっくりと移動した。
茜ちゃんが、一旦川を上がろうと言ってきたので、同意して、私もそちらへ移動する。
川からあがった茜ちゃんの姿に、思わず息を飲んでしまう。
水で張り付いた制服が、茜ちゃんの細い肢体とまだ発達途中であろう胸を、艶かしく強調していた。
同じ女の子でも、私の起伏の乏しい体型とは違い、とても魅力的に思えた。
私がじっと見とれているのに気づいた茜ちゃんが、突然私の方へ顔を近づけてきて……
べちっ!
私の額にでこぴんをしてきた。
「奏、こんな時になに考えてるの?」
軽い痛みを和らげるために、額に手を当てているところを、茜ちゃんはに叱られた。
じとっとした目を向けられて、恥ずかしさに私は顔を真っ赤にして下を向いてしまう。
「それに、奏の方が私よりよっぽど……」
そう言って、茜ちゃんは何故か顔を赤らめている。
私は何がなんだかわからず、「茜ちゃん……?」と声をかけると、茜ちゃんはすぐに復活した。
「と、とにかく、今は非常事態なんだから、緊張感を持って行動しよう」
まだ赤い顔で言われても、少しも緊張感が出ないのだが、私は素直に頷いた。
ドゴォォォォォォンッッッ!!!
私達が痴態をさらしていると、凄まじい爆音が鳴り響いてきた。
その方向に慌てて目を向けると、そこは病院だった。
「なんだろう、今の音」
「行ってみよ!」
そう言って、駆け出していく茜ちゃんを後ろから追いかける。
病院へたどり着き、開いていた裏口から入った私達は、男の子の叫び声が聞こえてくる方へと向かった。
そこにいたのは、もう会えることはないと思っていた男子生徒だった。
「ねぇ、あれって…!」
茜ちゃんも気づいたらしく、私に同意を求めて来る。
私は茜ちゃんに頷き返し、すぐに彼の方へ視線を戻す。
なに、あれ…!?
彼は彼の背丈に近い剣を持って、空中に浮かぶんでいる、1枚1枚が同じくらいの大きさの花びらのようなものを操って、泥の化け物のと戦っていた。
彼のそばには小さな女の子がいた。
彼はその子を護りながら、必死に剣を振るっている。
「すごい…」
それを口にしたのは、茜ちゃんだったか、私だったかはわからない。
「危ない!!」
泥が女の子に迫っていた。
彼は他の泥に足止めされ、動けずにいた。
間に合わない…!
祈るように目をつむり、私は惨劇から目を背けた。
だが、そうはならなかった。
彼が何事かを叫ぶ。
私が目を開けると、届くはずのないところで剣を横に振り切った彼と、真っ二つになっているいくつかの泥の塊が目に映った。
なに、今の…!?
私は、今日何度目かわからないほどの驚きを感じていた。
彼と向かい合っていた複数の泥達が、彼に恐れをなしたのか去って行く。
化け物を追い払ったの…!?
化け物がいなくなった後、立ち尽くす彼に女の子が抱きついた。
「助けてくれてありがとう、お兄ちゃん」
女の子が満面の笑みで、お礼を言うと、彼は……
「………ありがとう」
とても優しい笑顔で、女の子にお礼を返した。
あれ…
不意に、私はなんだかわからない胸の高鳴りを感じた。
そんな自分に戸惑っていると、彼が倒れた。
私は、自分でも気づかないうちに、彼のところへ駆け出していた。
「奏、待って!」
茜ちゃんが
私を呼び止めていることにも気づかずに…
なんか奏ちゃんすごい書きやすくて、短いですが、区切りよく書けたので、もう1話あげておきます♪
誤字・脱字ありましたら、ご報告下さい。
では(@^^)/~~~




