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惨劇…



先生と久我君が街へ行ってから、もうすぐ1時間が経過する。

私と茜ちゃんは川沿いの木陰にしゃがんで隠れ、街へ行った二人からの連絡を待っていた。


「私達も、街へ行ってみる…?」


私は様子見だけでもした方がいいのではないかと提案した。

だが、茜ちゃんは真剣な表情のまま否を返してきた。


「先生は1時間経って連絡がなければ、隣の街へ行けって言ってた。

それって、今公民館の方は危険だってことだよ」


茜ちゃんの言葉を聞いて、私の顔はサッと血の気を失ったのが自分でもわかった。

そんな私の両肩をつかんで、茜ちゃんは笑顔で優しい言葉をかけてくれた。


「先生達ならきっと大丈夫だよ。

だから、もう少しだけ待とう」

「茜ちゃん……」


言葉とは裏腹に、茜ちゃんの手は微かに震えていた。


茜ちゃんだって、怖いんだ…


私はこれ以上茜ちゃんに心配をかけないよう、茜ちゃんの手を握り、ありがとうと返した。



それからさらに数十分後に、先生から電話がかかってきた。

私は慌てて携帯の通話ボタンを押し、電話出る。


『向井さん、待たせてしまってごめんなさい』


先生の謝罪に、私は「大丈夫です」と応え続きを待つ。


『もう化け物は、こちらにはいません。

ですが、あなた達とは一緒に行けません』


先生の悲痛な言葉に、私は涙が出そうになるのを堪えて、先生に理由を問い返した。

暫しの沈黙の後、先生は絞り出すように応えてくれた 。


『………私は、一弥君を追います』

「それって、どういう事ですか?」


反射的にそう言った私に、先生は一言だけ言って通話を切った。


『ごめんなさい…』

「先生!先生!!」


先生を呼んでも、プー、プーという音だけしか聞こえてこない。

唖然としている私に、茜ちゃんが何があったか説明を求めてきた。

先生の言葉を一言一句そのまま伝えると、茜ちゃんは少しだけ考え、次の行動を提案してきた。


「公民館の方へ行ってみない?

先生はこちらにはもう化け物はいないって言ったんだよね?

だったら様子を見に行こうよ」


自分ではどうしていいかわからなかったため、茜ちゃんの提案に従うことにした。


それから、数十分かけて木々の合間を歩き、公民館へと戻った。

公民館へついた私達は、その光景を見て恐怖で絶句してしまった。

そこには、人の死体と泥の塊がごちゃごちゃに落っこっていた。


「………っ!」


私は思わず、茜ちゃんに抱きついた。

茜ちゃんの顔色も悪く、震えながら私を抱き返してきた。

二人とも何も言えぬまま、数分の間、そこに立ち尽くしていた。


「……出よ」


茜ちゃんの言葉で我に返り、私達はその場を後にした。


公民館から離れた後、村の民家の中にいた。

恐らく、家主はあの惨劇の渦中でにいて、もう帰る事がないだろうが、引け目を感じつつもここで休ませてもらうことにしたのだ。

二人とも何も言わぬままかなりの時間が経ったところで、不意に、茜ちゃんが口を開いた。


「……これからどうする?」


茜ちゃんは珍しく弱々しい声で問いかけてきた。

私はとりあえず、先生の言葉を思い出して、それをに従おうと提案してみる。


「隣の街まで行かない?」


私の言葉に茜ちゃんは間を開けて、是を返してくれた。


「歩いて行くなら食糧とか必要だよね」


そう言って、茜ちゃんは家冷蔵庫や台所を物色し始めた。


「か、勝手にいいの?」

「だって、もうこれ、誰も食べないでしょ?

勿体無いじゃん。

それに、私達にはこれが必要だもん」


罪悪感は拭えないが、茜ちゃんの言葉を聞き、私も必要となるであろう物を、家の中を漁って準備する。


私達は数時間かけて荷物を作った後、今日は寝て、明日から隣の街へ向かうことにした。

家にあった布団の中で、私達は互いに身を寄せ合いながら眠りについた。


昼頃に目を覚ました私達は、民家を出発し、一先ず川沿いへ移動した。

昨日の光景が忘れられず、余り寝られなかった私は欠伸をしていた。


「体調平気?」

「うん、大丈夫」


川へたどり着き、茜ちゃんが私を気づかって、言葉をかけてきた。

それに簡単に返して、川沿いに下り始める。


「どれくらいでつくかな?」

「う~ん、数日くらいじゃないかな?」


何気無くした質問に、茜ちゃんが苦笑まじりで返してくれた。


そんなにかかるのかぁ…


そう内心げんなりしていた私だったが、それは大きな間違いだった。


旅なんてしたことのない私達が、大きなリュックサックを背負って歩き続けることの大変さをわかっていなかったのだ。


それに加えて、物音がする(たび)に木陰に隠れていたため、ほとんど進まないのである。

たまに泥の塊が通り去って行くのが見えたが、息を殺し、じっと動かずにいるとそれが私達に気づくことはなかった。



そうして、歩き疲れては休みと繰り返し移動し続け、1週間近くが経ったころ、私達は心身共にすり減っていた。


会話もなく、空気が重いのに耐えられなくなった私は、別段わからないわけでもない道のりを尋ねてみる。


「こっちであってるかな?」

「うん、あってると思うよ」


私の問いに茜ちゃんは素っ気なく答えてくれた。

それ以上に会話は続かず、歩き続けることに疲れていた私は、1週間前のことに思考を持っていき、軽く後悔した。


あんなもの見なきゃよかった…


公民館での光景は、今でも夢に出てくるほどだった。


そんな後悔をしていると、立ち止まった茜ちゃんの背中に衝突する。


「…っ!ご、ごめん」


私の謝罪も聞こえていないようで、ずっと立ち尽くしている。


「茜ちゃん……?」


茜ちゃんの見ている方へ顔を向けると、そこには街があった。


「あっ……」


私は息を飲んで、達成感に浸っていた。

すると、私達の後ろからがさがさと大漁の何かが近づいて来るのを感じて、茜ちゃんと共に、慌てて茂みに隠れた。


大漁の泥達は街へと向かっていった…。

連投2話目です。


誤字・脱字ありましたら、ご報告下さい。

では、また!

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