おい、山田。
夏休みも終わりかけの、夕焼けの帰り道だった。
しこたま遊んだ後の心地よいだるさに身を任せながら、ゆらりゆらりと揺れる影法師を踏む。宿題終わってるか?いや、まだまだ、などと軽く喋りつつ、先を行く友の背中の夕日色に目を細める。遠くからひぐらしの声が聞こえてきた気がした。
「なぁ山田、お前どう思う」
「何がだよ」
「人って死んだら一体どうなるんだろう」
何だよ、コイツらしくもない。
黒川はいい奴だけど、はっきりいって馬鹿だ。授業中はやたらと誰かに話しかけて先生に注意されるし、そうでなかったら寝こけている。そこらにいる馬鹿のいい見本だと言ってもいい。
そんな奴が「死んだらどうなるか」なんて真面目に考えている様子が、俺には面白く映った。
「ちゃんと考えろよ山田ぁ。お前もしかして本当はアホか?」
「黙れ黒川。お前に言われてたまるか。
そうだな・・・・・・天国にでも行くんじゃないか?」
「ほ、意外だ。お前からそんな回答を聞くことが出来るとは」
「悪いか」
「別に悪かねぇよ」
まただらだらと歩き始める。
そのうち、歩みはのろくなり、やがて止まった。
「俺はな・・・・・・わからないんだよ」
ぽつり、といった感じで言葉を落とす。
その声音が震えているように思えて、俺は首をかしげた。
「どうしたんだよ」
黒川は答えない。
それどころか、うつむいて自分のつま先ばかり見ている。
-------変だ。
俺は黒川の肩をつかんで、無理矢理自分の方へ向かせた。
「なぁ、お前悩み事でもあんのか?
俺に言ってみろよ」
いつもなら血色のいい顔が、白く紙みたいに生気がない。
唇が、何か言いたげにふるふる震えている。
「おい、山田・・・・・・」
「何だよ」
「お前、確か死んでたよな?」
季節はずれすみません;;
夏が待ち遠しくて・・・・・・