無人がくれた思い 1~2
1前置き
ブィー コロ、コロ、コロコロ
部屋いっぱいに響く、電子音。
スマホの目覚ましが鳴る。
コロロ、コロロロ…(だんだん大きく)
僕は、いつも通り布団の中から頭上に手を伸ばして、携帯電話を手に取る。
止めるボタンへ指を伸ばす。間違えてでもスヌーズを押さないように…
コロ…
アラームが止まった。
「6:00か…」
布団の中でもぞもぞしながら、そっとスマホを横の床に置く。言い忘れていたが、寝ていたのは布団であるため、床が真横なのだ。
今日も昨日、おとといと同じく、寒い。
布団から窓越しに見れる空は、薄暗く輝いていた。
(寒そう…)
僕はそんなことを思いながら、もぞもぞと布団から這い上がり、自分の部屋を出た。
今日は、平日だ。
今日も、学校に行かなくてはならない。
寒い中でも、学校は休みにはならない。
5回登校、からの2回休み。そんな繰り返し記号に従って、今日も過ごしている。
こんな単純な日々の繰り返しが、若いころや なんやらの思い出にはなるはずがない。
そんなこともまた思いながら、朝の”やることリスト”をさっさとかたずけ、さっさと家を出ていった。
その後は、学校で給食を食べるところまできた。
時が起きたのは、5時間目の時のことだった。
2時
理科だった。
オーム、ワット、ボルト、アンペア…
かかかかか…と弾切れを知らない"マシンガンチョーク"のおかげで、僕のノートは1,2分過去を辿っている。
(こんなに早く手を動かしてるのに、なんで黒板に追いつけないんだ?)
などと考えながらも手は決して休めてはいけない。
なぜなら、授業が終わってからも理科室に残って黒板を写していると、先生と二人っきりになって気まずくなるからだ。
(それだけは避けたい…)
と思いながら、次の文字を写すために黒板へ目を向けた時だった。
「パキッ」
チョークが割れた音がした。
(あ、先生チョーク落としたな…)
「……」
だが、僕は少し違和感を覚えた。
いつまでたっても、黒板前の横長テーブルからチョークを拾い上げる先生の頭上が見えないのだ。
僕はあまり喋らないタイプの人間なので、他の人がそれを気にかけるのを待っていた。
…でも、他の人も先生も、皆死んでしまったかのように静かになっていた。
まるでこの理科室にいるのは僕一人だけみたいに…
(…!)
(…まさか毒ガスかなんかがまかれてみんな死んだ!?)(いや、それだったら僕ももう死んでるな…)
そんなことを考えていると冗談でもだんだん怖くなってくる。
「…シーン…」
周りからは物音ひとつすら立たない。
(えっ…?)
僕は、ゆっくりとと隣の席を覗いた。
…!
いない。
そして全体を見渡す。
…誰もいない。
そしていつの間にか銀色の窓のサッシの向こうからは、柔らかいクリーム色の夕日が射していた。




