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「陰キャの私が大変身して卒業式の日に幼馴染に告白する話」  作者: 秘伝悠々


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2/2

アナザーストーリー 〜From Where He Stood〜

こんにちは!秘伝悠々です!

これまでは、自分が物語を楽しむだけでしたが、「自分でも書きたい」「いろんな人に楽しんでもらいたい」と思うようになり、筆をとりました。

見よう見まねで、試行錯誤しながらですが、面白い作品をたくさんお届けできればと思っています!

応援よろしくお願いします!


幼馴染の女の子の、笑った顔が好きだった。

丸顔で、笑うと頬がきゅっとがって、目が細くなる。


彼女とは家が近所で、幼稚園の頃からの付き合いだ。

俺と同じように漫画やアニメが好きで、話が合った。


放課後によく一緒にゲームをした。

ゲームで勝つと「どうだーー!」と嬉しがり、負けると「くやしーー!」と頬を膨らませて拗ねる。

そんな彼女のことが、たまらなく好きだった。




けど、彼女は笑わなくなった。


中学に入学したばかりで、新しい環境にみんなが浮ついていた。

そんな空気にあてられた男子たちが、調子に乗って、彼女と数人の女子に絡んで、からかったのだ。


男子たちが絡んでいるのをみて心配になった俺は、その一団に近付いていったのだが、結果的に俺も交じるような立ち位置になってしまった。


その時、男子の一人が彼女に何か言った。


何を言ったのかははっきり覚えていない。

けど、明らかに彼女の顔が引き(ひきつ)ったのが見えた。


一瞬、彼女が助けを求めるような目で俺を見た気がした。


けど、俺はその時とっさに彼女を(かば)えなかった。

彼女に駆けよって、心配してあげられなかった。


―――そんなことをすれば、今後さんざん冷やかされる。

まだ関係性が何も定まっていない中学一年の教室で、女子を庇うのが何を意味するか。


そんな保身が頭をよぎって、体が固まった。


彼女の目線は気のせいだったかもしれない。

けど、俺の胸には罪悪感が(にじ)んだ。


彼女をからかった奴を殴ればよかったと、何回も思った。

けど、彼女はそういうのを望まないだろうし、何も解決しない。


しばらくは、今までのように遊びに誘うのも(はばか)られた。


こんな俺が、どの顔下げて彼女と仲良くできるというのか。


けど、彼女は明らかに暗くなっていった。

小学生の頃は短かった髪を伸ばして、前髪で顔を隠して、教室ではうつむいてばかりいた。


このままだと、取り返しがつかないかもしれない。

本気でそう思った。


悩んだ末、家で遊ぶときだけは、いつも通りでいようと決めた。

いつも通りゲームをして、いつも通りくだらない話をする。

それが俺にできる、精一杯のことだった。


二人でいるときは、彼女はそこそこ笑ってくれる。

昔みたいに声を出して笑うことは減ったし、笑うときも手や髪で顔を隠すけど、ゲームの勝敗に一喜一憂する素直なところは昔から変わらなかった。


俺は、この触れたら壊れてしまいそうな、脆くて小さな幸せを大切にするしかなかった。

それだけで十分だと自分に言い聞かせた。



*****



高校二年の冬。


隣のクラスのユキちゃんに呼び出されて、告白された。


ユキちゃんは可愛らしい子で、性格もよいと評判だった。

気になっていると言う男子も多い。


けど、「好きです」と言われた瞬間、頭に浮かんだのは別の顔だった。

断ることに迷いはなかった。



いつものように俺の部屋でゲームをしているとき、その話を彼女にした。

彼女はゲームをしながら「ふーーん」と聞き流していた。


彼女は、俺のことを友達だと思っている。


―――正直、わざわざ彼女にこの話をしたのだって、下心があってのことだ。

俺だってモテるんだぞ、と。

ちょっとくらい嫉妬してくれないかな、と。

情けない男だ。


けど、全然どうようしない彼女の態度に、ちょっと悔しくなった。



「気になる人くらいは、いるんだけどな」



つい言ってしまった。

目の前にいるのに。



「えっ、誰?」


「言う訳ないじゃん」


「え~~幼馴染の特権で教えてよ!」



―――幼馴染特権。

その言葉に、ちょっとだけ期待してしまう自分がいる。

君も、俺のこと特別だと思ってくれてるのか―――。



「俺がその子に告白したら教えてやるよ」


「ケチ!」



告白するときは、君に伝えるときだからな。

嘘はついていない。


けど、いつまで経っても告白する覚悟ができなかった。

今の関係を壊すのが怖かった。




それから、彼女が変わり始めた。


家で遊ぶとき、お菓子を食べなくなった。

いつもカバンに入っていたジュースが、水になった。

遊ぶたびに、少しずつ顔が小さくなっていく。


ダイエットを始めたんだな、とすぐにわかった。

けど、理由は聞けなかった。

俺への態度は特に変わらない。


もしかして、「気になる人がいる」と言ったのが裏目に出たんじゃないか。

俺に彼女ができると思って、距離を取ろうとしているんじゃないか。

そんな不安がよぎって、恋愛の話はしなくなった。


それからサッカーの最後の大会があり、引退してすぐ受験勉強に入った。

しばらく彼女と会えない日が続いた。




俺と彼女は、それぞれ違う大学に進学することが決まった。


彼女は偏差値の高い国立大学に受かったらしい。

しばらく会っていなかったからか、最近は彼女のことばかり考えていた。

彼女に会いたかった。


このまま大学に入って垢抜けとかしたら、きっと他の誰かにとられてしまう。

彼女の素材の良さは、俺が一番よく知っている。

想像するだけで、胸が焼けそうで、身を切られるように辛かった。


告白しよう。


母親から彼女の進路を聞いた日の夜、そう決意した。

彼女が大学に入学する前だ。

入学後は、きっと忙しくなってしまうに違いない。


告白して、うまくいったら、たくさん褒めて、自信をつけてもらって、昔みたいに髪をショートにしてほしいと頼もう。


笑った顔を隠さないでほしいと、ずっと言いたかった。



*****



三月。卒業式の前夜、夕飯時。

彼女からDMが届いた。



「明日、式の後に話したいことがあるの。 帰り道の桜のところで待ってて」



胸が高鳴った。破れそうなくらい。


これは―――さすがに、そういうことか?

いや、「実は彼氏ができたからもう遊ばない」とか、そういう宣言をされるのか?

わからん。

けど、これは期待しても仕方がないだろう。


俺の計画では、明日の卒業式の日のどこかで、「今度、お互いの家じゃなくて外に遊びにいこう」と誘うつもりだった。


付き合いは長いが、俺たちは二人で外に遊びに出たことはなかった。

つまりはデートのお誘いだ。

これでちょっと意識させてから、いい感じのところで告白するしようと考えていた。



ふと、窓ガラスに映った自分が目に入った。

髪が伸びている。

そういえば、最近切っていなかったな。

―――これじゃだめだ。


俺は慌てて行きつけの床屋さんに電話した。

夜七時。

空き枠があることを祈るしかない。

五コールでいつものおっちゃんが出る。



「すみません、今日、今から髪切ってもらえませんか」


「おう! 七時半からなら空いてるぞ。 間に合うか?」



俺は慌てて家を飛び出した。

「もうすぐ夕飯よ!?」という母の声に「帰ったら食べるから!残しといて!」と叫び、走り出す。


床屋につくと、なんとなく事情を察したおっちゃんにニヤニヤされながら、髪を短く切ってもらい、ワックスのつけ方を教わった。


店を出ると、冷たい夜の空気がさっぱりした首元に当たる。

悪くない。




卒業式。

体育館に並べられたパイプ椅子に座りながら、彼女の姿を探す。



―――あれ、見つからない。



いつもの長い黒髪を目印に探しているのに、どこにもいない。

まさか休んだのか。

いや、DMを送ってきたのは彼女だ。休むはずがない。


もう一度、ゆっくり見渡す。



―――いた。



嘘だろ。髪を切っている。

少し茶色がかったショートカット。

前髪の奥に隠れていた顔が、全部見えている。


心臓がうるさい。

式辞が何も頭に入ってこない。


やっぱり可愛い。


俺だけがずっと知ってた。

世界に誇りたいようで、隠したいようで、わからなかった。




校門の前は、卒業生や保護者で溢れかえっていた。

学校名と卒業式の看板の前には列ができている。


俺はサッカー部の連中と集まって写真を撮っていたが、正直笑顔が引きつっている気がする。

この後のことで頭がいっぱいだった。


早く行かなければと思いつつも、なかなか撮影タイムが終わらない。



ようやく撮影に一区切りついたとき、俺はすぐさまその場を去った。

これ以上グダグダしていたら、また別の団体に捕まってしまう。


遅くなってしまったな。

約束の時間を5分ほど過ぎていた。


俺が来ないと思って、彼女が帰ってしまっていたらどうしようと心配だったが、約束した小路に着くと彼女が待っていた。


短くなった髪に慣れないのか、前髪を整えている。



「お待たせ! 待った…?」


「ううん、私も今来たところ」



彼女はそうやって気を遣ってくれる。

普段から優しくはあるのだが、今日はいつもより口調に丸みがある気がする。


「……満開だな」


「……満開だね」


「……お互い、卒業おめでとう」


「……うん、おめでとう」



当たり障りのないことを言う俺が悪いのかもしれないが、気まずい。

オウム返ししかしてこない。


俺と彼女は並木道を歩く。


彼女は何も言い出さない。

話したいことは、そんなに言いにくいことなのだろうか。

もし、万が一、それが告白であれば、気持ちはわかる。


こういうのは待った方がいいのか、俺から切り出した方がよいのか。


けどなんとなく、彼女が何か言いたそうにしている―――気がする。

チラチラ俺の顔を見ては目を背けているからだ。

かわいいな。


最初は待った方が良いと思い、何も言わなかったが、さすがに助け舟を出した方がよいかもしれない。


そう思って、「話したいことってなに?」と言おうとして、息を吸った。

その瞬間―――



「……ずっと前から好きでした付き合ってください!!!」



すごい早口だった。

吸った息が行き場を失う。


彼女は目も合わせずに頭を下げている。



―――ああ、やっぱり。



先を越された。

ちょっと悔しい。自分から言いたかった。

けど、嬉しい。


俺はふいに、彼女の顔が見たくてたまらなくなった。

長い髪で覆われなくなった、彼女の顔を。



「………顔、上げてよ。今日はまだ、一回も目、合ってないでしょ」



ドキドキしながら、やっとのことで絞り出した一言。

ちょっとカッコつけて。



「……お互い、考えることは一緒だな」


「え?……それ、どういう……」


「昨日の夜にあんなDM来たら、そりゃ精一杯の準備するだろ。 けど、俺から言おうと思ってたのに、先に言われちゃったな」


彼女が顔を上げてくれたものの、まだどこか困惑しているようにみえる。

笑っていない。



さては伝わってないな―――?

さっきは少し遠回しに言ってしまったが、それならもうハッキリ伝えるしかない。



「ずっと好きだったよ。俺も。じゃなきゃあんな頻度で遊ばないだろ、サッカー忙しかったのに」


「いや、サッカーバカすぎて友達いないのかと……」



出た。彼女のボケだ。

恥ずかしいときにふざけてごまかすのは昔からだ。



「ちゃんと友達もいるわ!」


「ならいいけど」



ここだ。ちゃんと全部言おう。目を見て。



「小学生のときから好きだった。笑った顔が、たまらなく可愛くて」


「けど中学くらいから、あんまり笑わなくなったよな。 二人のときはそこそこ笑ってくれてたから、関係壊したくなくて言えなかった」


「せっかく可愛いのにずっと髪で顔隠してるから——告白して、もしうまくいったら、自信つけてもらって、昔みたいにショートカットにしてって頼むつもりだったんだよ。それも先越されちゃった」



彼女の表情が変わった。

こわばりが溶けて、目が潤んで、頬がきゅっと上がって―――。


ああ、この顔だ。

ずっと見たかった顔が、ようやく目の前にある。


彼女がちょっと照れ笑いしながら、すこし見上げるように聞いてきた。



「私のショート、どうだ!?」



風が吹いて、彼女の短い髪と桜の花びらが一緒に揺れた。



―――ずるいくらい、かわいい。



たぶん俺は今、すごい情けない顔をしている。


けど、いい。

もう隠さなくていい。

お互いに。




最後まで読んでいただきありがとうございました!




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