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廣田探偵事務所の事件簿~寂しがりやな福童子~  作者: 七海飛鳥
寂しがりやな福童子

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8/12

 とっとっと……。くすくす、くすくす。


「「「ギャアアァァ!!!」」」

「うるさっ」

 俺は思わず、三馬鹿を殴った。頭を押さえて蹲っているが、大げさだ。そこまで強く殴ってない。


 というか、今のは子供が走り回る音と、笑い声か。

 そこまで不気味に感じなかったが、三馬鹿は顔を青くして震えていた。




◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 俺たちは、建物内を探していた。しかし、どこにも怪しい気配はない。

 そこで俺たちは、手分けして探すことにした。


「どこなんだ……?」

「うまそう……」

「!!??」

 突然聞こえた声と禍々しい気配に、俺は勢いよく振り向く。


 そこには、喉が折れそうなほど細く、反対に腹が大きく膨らんだ、ぼさぼさの長い白髪(しらが)の老婆がいた。その老婆は、禍々しい気配を身にまとい、空を飛び、明らかに人ではないことが分かった。

 あまり恐怖の感情はわかなかったが、それでも脳が警報を鳴らす。


「うまそう……。食わせておくれ……。食わせておくれええぇぇえ!!」

「誰だ!!」

 老婆は、俺に噛みつこうとしたのを、俺はとっさに右に避けた。その時、ポッケの中のお守りが熱くなったのを感じた。


「食わせろおおぉぉぉ」

「あ……」

 俺は、恐怖に襲われる。醜く、大きく口を開く老婆。

 黄ばんだ歯が、自分の肌に食い込む想像を、ついしてしまう。


 恐怖でおののいていると、老婆は、俺に襲い掛かってきた。

 その距離、たったの数cm。一体、こんな距離で何ができるのか。

 もう駄目だ。そう思い、俺は目を閉じた。


「ぐおおおぉぉぉ――――…………」

「は?」

 老婆に肩を掴まれたと思った途端、老婆は苦しみながら、禍々しい気配と共に消え去った。


 呆気にとられながらも、俺は周囲を見る。もう、禍々しい気配を感じることはなかった。


 そこに、慌ただしい足音が四つ、近づいてきているのが聞こえた。



「助手!」

「須藤!大丈夫か!?」

 俺がすっかり安心していると、湊音と三馬鹿がこちらへ駆け寄ってくるのが見えた。

 どうやら、禍々しい気配がしたと、急いで駆けつけてみれば、俺と老婆の声を聞きつけたらしい。


「大丈夫……。なあ、あの老婆!」

「ああ、恐らくあれがここに怪異がいない原因だろうな」

「遊園地に老婆って……」

「似合わな……」

 確かに。遊園地に老婆はないわ、老婆は。


 とっとっと……。くすくす、くすくす。


「「「ギャアアァァ!!!」」」

「いい加減慣れろ」

 子供なら、遊園地にいてもおかしくないだろ。俺と湊音は、三馬鹿が再起動するまでしばらく待つことになった。

 


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「あれは、餓鬼(がき)だな」

「餓鬼?」

 三馬鹿が無事再起動し、湊音は老婆の怪異について、説明を始めた。


「ああ。餓鬼は、常に飢えている怪異だ。だから、食欲に意識を乗っ取られ、考えることができない。だから、遊園地には来にくい筈。食えるほどの何かが十分に集まらないからな」

「何かってなんだよ……?」

 湊音の含みのある言葉に、松山が恐怖で顔を歪める。


「本当になんでもだ。ただ、よっぽど強い餓鬼でもないかぎり、生者を食らうことはできないし、食い物以外じゃ、怪異しか食えない。遊園地には、確かに怪異は沢山いるんだが、基本群れてるから、餓鬼は太刀打ちできない」

「じゃあ、なんでここに餓鬼が……?」

 湊音の口ぶりから察すると、多少死亡事故が起きたところで、餓鬼が来るとは思えない。


「誰かが連れてきたんだろうな」

 湊音の言葉は、この場の静寂を支配した。三馬鹿の顔色は、とても青白かった。


「誰かって、まさか子供の……?」

「「「ギャアアアアアァァァ!!!」」」

「何で自分で言って、自分で驚いているんだよ」

 勝手に自滅した三馬鹿に呆れる。どこかで、子供の笑い声がした。

 ほら、怪異に笑われてんぞ。



◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「な、なあ、お、俺さ、地下に向かう階段を見つけたんだよ……」

 木戸が、未だに震えながら階下へと続く階段を指さす。


「ここに地下なんてないぞ……?」

「ヒッ!」

 俺の言葉に、木戸はひどく怯えた。別に、そこまでビビることでもないだろ。実際、過去に戻ってる訳だし。

 ここでは、あり得ないことがあっても、不思議じゃない。


「行ってみるか」

 湊音の言葉に、俺たちは頷いた。

 俺たちは、階段を下りる。足音が、コンクリートの空間に反射する。三階、二階、一階――。


「ある、な……」

 俺たちは、一階に降り立ち、そしてその階段に先があるという事を確認した。そこは、暗くて先が見えず、そして禍々しい気配が漂っていた。


 とっとっと……。くすくす、くすくす。


「「「ギャアアァァ!!!」」」

 本当にいい声出すな……。俺は、もはやそんなことを考えていた。



 俺たちは、誰が言うでもなく、地下への階段を下りた。



◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「な、なあ、なんか、長くね?」

 友永が、不安そうにつぶやく。


 とっとっと……。くすくす、くすくす。


「「「ギャアアァァ!!!」」」

 三馬鹿は、また大袈裟に驚いた。三人で、顔を青くして抱きしめ合ってる。

 怪異含め、お前らワンパターンすぎだろ。


 どう考えても、怪異に遊ばれている。

 こいつら、反応いいからな……。



「空間がねじ曲がってるんだろうな」

 湊音が、周囲を観察しながら、そう答える。三馬鹿の悲鳴は、完全に無視されていた。


「「「空間がねじ曲がる?」」」

「仲いいな、お前ら」

 三馬鹿がハモり、俺は思わずそう言った。



「ほら、黒水晶事件。あれ、現実世界にほとんど影響なかっただろ」

 湊音はそう言うが、校門の鍵が壊れていたり、水晶が割れていたりなど、結構大きい変化があった気がするが。



「確かに、家庭科室にまき散らした塩は、なかったことになってたな!」

 松山の言葉に、木戸と友永は大きく頷いていた。

 確かに、大きくひしゃげた校門も、鍵以外は元通りだった。



「あれは、空間がねじれていたから、起きたことだ。そもそも、ここに本来は空間がないから――」

「ここも、空間のねじれって訳か……」

 俺は、湊音の続きを引き継ぎつつ、コンクリート製の壁を叩いた。確かな質感は、まるでここに実在しているように思える。

 いや、実際実在しているのか。だから湊音は、実在しない筈なのに実在している、空間のねじれ、と称したのだろうし。

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