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廣田探偵事務所の事件簿~寂しがりやな福童子~  作者: 七海飛鳥
寂しがりやな福童子

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6/12

「ここまでいない、というのも不思議な話だ。別に、自己主張はしない訳でもなさそうなのにな」

 湊音が不思議そうに言う。俺は、あまりこういうところの勝手は分からないが、よくあることではないのだろう。



 それに、まだ仮設足場の落下の謎も解けていない。

 湊音が言うには、固定ボルトが外れていたという事は、故意に外された可能性が高い。だが、人がいなかったという事は、怪異の仕業の可能性が高くなる。


 もちろん、ここは死亡事故が起きた工事現場だ。ただの事故の可能性も残るが、その事故だって、怪異の仕業の可能性がある。



「さて、そろそろやるか」

「お、やるのか?」

「お前は連れていけないぞ。――やるか、助手」

「さっきから、本当に何の話をしているんですか?」

 なんでこう、この人たちは人を置いてけぼりで会話するのだろうか。

 もっと、誰にでもわかるように会話してほしい。


 そう思ったが、それは声にならなかった。なぜなら、湊音に抗議する前に、湊音はこちらを振り返ったからだ。


「今日はいいのか?狩衣姿」

「いいのいいの。あれはかなりの大物を祓うときに着るから。いくら動きやすいと言ってもさ、洋服には劣るしな」

 どうやら、高校の時のあれは、かなりの大物だったらしい。それにしては、全く苦戦していなかったように見えたが。


 湊音は、目を閉じ、真剣な表情をした。そして、俺の頭に手を置いた。

 突然なことにびっくりして、俺が固まっている間に、湊音はどこから取り出したのか、鞘から抜いたフルーツナイフで(てのひら)を斬った。


 ぎょっとして俺は湊音をまじまじと眺める。

 湊音は、そんな俺を気にも留めず、とある言葉を唱え始めた。


「遠つ神に()す。

 (めぐり)(まが)(はらいの)(おお)(かみ)御前(みまえ)(もう)す。

 今し此処(ここ)に満ちし(まが)(えにし)、時の流れに(けが)(こも)りぬ。

 その因を解き、()を正し、(さだ)めをもとへと返し給へ。

 (あめ)(いしずえ)(つち)の緒を繋ぎ、巡りの鎖を(しず)め給ふ。

 古の初めより流れし刻を、清き源へと(かえ)し給へ。

 祓へ給ひ清め給ふこと。

 廻禍祓大神の御名(みな)を以て、()(まつ)る。

 時は()ぎ、(まが)は鎮まり、すべては元の(ことわり)へと帰りなん」

「は……?」

 いきなり祝詞を唱え始めた湊音に、俺は呆気にとられた。

 さらに俺が驚いたのは、前は全く意味が解らなかった祝詞が、今ではすべて理解できる。


 だが、不思議と怖くはなかった。なんだか、それが当然のような、そんな気さえしてくる。



 そして、俺は気が付いた。なんだか、力がみなぎってくる。

 周囲が、銀色に光り輝く。(つむじ)風が俺たちの周りに巻き起こる。


「な、なんで……?」

 脚が熱くなっていることに気づいた。その場所は、お守りが入ったポッケだった。中を探ると、お守り――それも中の水晶の欠片が熱くなっていた。


 お守りを持って、俺は茫然としていた。


「助手、行こうか、過去に」

 湊音は、ずっと固まったまま動かない俺に、手を差し出した。


 俺は思わずその手を取ってしまった。


「行ってらっしゃい」

 匠眞は、いつの間にか俺たちの離れた位置にいた。

 笑顔で、手を振っている。俺は、意味がわからない展開が続いていたため、思わず手を振ってしまった。


 その時、何か声が聞こえた気がした。


 どんどん光が強くなる。俺は、あまりの眩しさに、目をつぶった。



◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「……?」

 光が収まった気がして、恐る恐る目を開けてみた。


「ここは……?」

 俺は、周囲を観察する。さっきまでいた、あの工事現場。何も変わらない。

 だが、確実に違うと思ったのは、そこに匠眞がいなかったこと。そして、日が出ていて明るいことだった。


 俺はそれにハッとして、慌てて外を見た。

 外には、誰もいなかった。あれだけあったパトカーが一つもない。野次馬だって、誰も見当たらない。


 しかし、さっきと同じところにあるあのフェンスは、こちら側とあちら側を相変わらず隔てていた。



「過去だ。――うまく行ったな」

 湊音は、満足そうに笑い、腕を組んで何度も頷いていた。


「過去……?」

 タイムスリップしたのだろうか。いや、そんな訳ない。タイムマシンだって開発されていないのに、過去に行ける訳がない。


「一体どういうことです!?」

 訳知り顔な湊音に、俺は詰め寄った。もう、訳が分からなかった。


「説明するから。――三馬鹿も呼んでくれるか?説明するなら、一気に説明した方がいいだろ」

「ああ、分かった……」

 俺は、敬語も忘れ湊音に言われたとおり、三馬鹿を呼ぼうとスマホを取り出す。しかし、圏外になっていて使えない。


「圏外って……!ここ、住宅街のど真ん中だぞ!?」

 俺は、再起動してみたり、機内モードをオンオフしてみたが、一向に変わらない。


「ここ、結界の中だから。外界と内界は隔たれているから、電波も通じない」

「じゃあ、どうやって呼べと!」

 俺は湊音に食って掛かるが、相変わらず湊音は余裕そうだ。少しはその余裕を分けてもらいたい。


「ほら、三馬鹿来い、とか念じたら来るんじゃないか?」

「そんないい加減な……」

 湊音のいい加減な返答に、俺は脱力したが、やってみる他ない。


「ええと?三馬鹿来いー?こんなんで来る訳――」

 俺は、とりあえず念じてみた。

 しかし、こんないい加減で来るのか?と考える間もなく、隣でドサドサドサッという、何か重いものが落ちた音がした。


「は……?」

 思わずそちらを見てみると、そこにはまさかの三馬鹿がいた。


「痛った……!ん?あれ?ここどこ?!」

「本当だ!私は誰!?」

「お前は松山だろ」

「お前誰!?」

 木戸に続く松山の言葉に、思わず突っ込んでしまう。そして、失礼な木戸には拳骨をお見舞いしてやった。

 というか、本当に来たな……。

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