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廣田探偵事務所の事件簿~寂しがりやな福童子~  作者: 七海飛鳥
寂しがりやな福童子

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4/12

 湊音は、布袋を開けて中を俺に見せる。それは、何か透明の欠片だった。


「これ、見覚えあるだろ?」

「そ、それ、なんでここに……?」

 それは、俺が通う高校にあった、“入っちゃいけない場所”。そこの教室の中にあった水晶。それの欠片だ。


「お守り。やっぱわかるんだな、これ」

 笑いながらその欠片を眺める湊音。元々呪いに使われていた、物騒なものを、お守りにするなんて、湊音の正気が知れなかった。


 そして、どこかでこんな気配を、感じたことがあった。一体どこで感じたっけ……?


「お守り……?」

「そうそう。ほら、お前が助手になったばっかの時、自分が殺した職場の先輩に、取り憑かれてたOLいただろ?これ、その時のお守り。中覗いてみろ」

 そう言って、湊音は持っていた布袋とは別の、俺に奇妙なほど白いあのお守りを渡した。しかし、前とは違って、どこか神聖な気配が漂っていた。


 俺はそれを恐る恐る受け取り、それを開ける。中には、同じように、水晶の欠片があった。


「持っとけ、それ」

「これを持った結果、あのOLは死にましたが」

「別にこのお守りの所為じゃないだろ。ただの自殺だ、自殺。人を自殺に追い込んだことを苦にした自殺」

 確かに、証拠はない。このお守りの所為だという証拠は。

 でも、持っていた人が、死んだことがある。俺はそれが怖かった。


 それに湊音、あの時意味深なこと言ってたしな。呪物とか言われても、普通に納得する。


 だが、湊音はお守りを受け取ってくれないので、俺は仕方なく、お守りをズボンのポッケの中に入れた。


「ああ、あれか。先月の投身自殺。湊音のところに来ていたのか」

「といっても、祓いたくなかったから祓わなかった。仮に夢に化けて出たとしても、結局決断したのは本人でしょ」

 そう言う湊音の横顔は、冷たかった。俺は、薄情だと思い、顔をしかめる。


「薄情だと思うか?」

「ええ、まあ……」

 俺は、普段より鋭い口調で語る湊音に、本心を見抜かれた、と思った。それで、少し気まずくなった。

 俺はなんだかんだ、湊音は優しい人物だと思っていたのだ。



「全部を盲目的に祓ってたら、いくら超優秀な俺でも、身が持たないからな」

 湊音は、ただ前を見てそれだけ呟いた。


 その後、誰も言葉を口にしなかった。



◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 車内の空気が重いまま、俺たちは工事現場に到着した。鉄の仮設足場が組まれており、ビルが建ちかけていた。

 普段は、閑静な住宅街の一角なのだろう。しかし、何台か止まっているパトカーの赤色灯が辺りを赤く照らし、野次馬がざわざわと集まって騒がしくなっていた。


 工事現場は、別に日が当たらない訳でもないのに、じめじめとした空気が漂っていた。

 何かがいる。それが、肌で感じられるほどの、陰鬱な空気に沈んでいた。


 KEEP OUTの黄色いテープで、衝撃的な現場を見ようとする野次馬たちがせき止められている。それがまた、一種の結界のようで、どこか現実感がなかった。

 制服を着た警察官が通せんぼする隙間から、工事現場に立っている、あのフェンスが覗いていた。


 一瞬俺は、血の強いにおいを感じ、誘われるまま上を見上げてしまった。

 建設途中のビルは、四階まで建物らしい形があるが、それ以上は骨組みだけだ。


「!?あ、あれ!」

 窓に、人型の怪異がいた。四階の窓から、俺たちを見下ろしている。

 俺は、それに驚いて湊音の腕を引っ張った。


「落ち着け。あれはただの怪異だ」

 落ち着かせ方が違う、と思った。


 しかし湊音に言われ、ゆっくり冷静に見てみると、そいつは怒り狂っている訳でも、恨めしそうな表情を浮かべている訳でもなかった。なぜなら、その怪異には、顔がなかったからだ。

 血まみれの怪異。だが、若い男だっただろうことは、なんとなく予想がついた。


 ただ、そこにいる。

 けれど思った以上に怖くなかったのは、高校に現れた怪異の方が、よっぽど恐ろしかったからだと思う。


「相手が怪異なら、何とかなるだろ。ほら、怖がってないでさっさと行くぞ」

「あ、ちょ、待ってくださいよ!」

 俺は、急いで湊音の後をついて行った。



◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「一ノ瀬さん、お疲れ様です」

「お疲れ様です。――現場はこちらですか?」

「はい。――ところでその方々は……」

「民間の協力者です。俺の許可で入っています」

 俺は、制服姿の警官に緊張しながら会釈した。

 湊音は軽く会釈しただけで、かなり慣れていたようだった。


 今まで、依頼でも警察と会ったことがなかった。だから、物凄く緊張する。それに、刑事ドラマのように、あの規制線の奥に行けることに、ちょっとわくわくしていたりもした。


 制服姿の警官が、風に揺れていた黄色のテープを持ち上げて、俺たちを入れてくれた。

 野次馬たちは、そんな俺たちを見て、何を思ったのか、更にざわめきだした。


 俺が高校の制服を着ているから、それに驚いたのだろう。

 それに湊音。どう考えても警察じゃない。一般人にしか見えない俺たちが、事故現場に入っていくのを見て、衝撃を感じたのだろう。

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