表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
廣田探偵事務所の事件簿~寂しがりやな福童子~  作者: 七海飛鳥
寂しがりやな福童子

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

2/12

「で、結局逃げてきた、と」

「逃げるでしょ、普通」

 銀に染めた髪に、銀眼のカラーコンタクトのイケメン――湊音は、俺の行動に笑った。


 書斎机でコーヒーを飲む姿が無駄に絵になっているその男に、俺は嫉妬でむっとした。俺はこんなに格好良くコーヒー飲めないんだが。



 俺は結局、放課後まで佐藤と坂田の誘いを拒み続け、それから速攻ここ、廣田探偵事務所に逃げてきていた。

 坂田は常連だが、佐藤は珍しく赤点を取ったらしく、補修行きだ。同じ部活なので、そうでもなかったら逃げられなかった。本当にラッキーだ。



「でも、正解だな。その心霊スポット、本当に出るからな。お前が行くと、下手すりゃ死体が出来上がる」

「そうなんですか……」

 湊音の茶化すような言葉に、俺は何も言い返せなかった。


 佐藤が言った心霊スポットとは、高校から電車で五駅の場所にある、最近工事が中断した、工事現場だ。どうやら、次々と作業員が怪我をするらしい。

 それがあまりにも続き、ついには死者も出てしまったため、工事が中断してしまったのだ。


「確か、あそこは元々遊園地があった場所ですよね?」

「ああ。地鎮祭もやったらしいんだがな、あの様子だと効果なかったようだな」

 そう言って、湊音はスマホを操作した。


「悪霊払いは神社の管轄じゃないからな。そういうのは寺か拝み屋が専門だ」

「じゃあ神社の管轄は何ですか?」

「そりゃ、神に対してが一番だな。寺は死者に対して、拝み屋は呪いに対してが専門だ。他にも、神社は汚れを祓うことが主たることになるし、寺は悪霊や呪いに対して対応する。拝み屋は、呪いをかける方が多いな。解呪もたまにしている奴もいるが――お、あったあった」

 湊音は俺に、スマホの画面を見せたが、そこには遊園地で起きた死亡事故の記事があった。

 しかも物騒なことに、その記事の見出しには、「また死亡事故」とか、「呪われた」とかそういうセンセーショナルな文字が躍っていた。


「うわ……。同じ月で三件目か。営業一時停止。当然だな」

 当時、お茶の間を騒がせていたニュースだ。結局、営業再開した後も、死亡事故が起き、その後オーナーが自殺したのもあって、閉園した。

 それはもう五年前の話になる。


「当時、俺もここに駆り出されたんだけど、結局原因分かんなかったんだよな」

「え……」

「いくら超優秀な俺でも、近づきたくないね。――工事が中断した時に、行って見てきたんだが、怪異がいたな。それも五体くらい」

 五体の怪異。それは、あの遊園地で起きた死亡事故の死者と同じ数だ。


「なるほど……、それは――」

「おかしいと思わないか?」

 痛ましい事件だ。俺は、それに心を痛めていたが、湊音の冷静な声に、一気に現実に引き戻された。


「え?」

「怪異の数が足りない」

「ちょ、こ、怖いこと言わないでくださいよ……」

 怪異の数が足りないって……。まるで、怪異が外に出ているみたいじゃないか……。


 もしかしたら、今日見かけたいくつかの怪異が、それかもしれない。俺は、顔色を青くさせた。


 湊音は、そんな俺を笑いつつ、コーヒーを飲む。


「そうか?調べてみたら、遊園地で死んだのは六人だ。オーナーも入れてな。それに、工事現場でも二件死亡事故が起きている」

「た、確かに……」

 それは数が足りない。でも、こういうこともありうる。


「じょ、成仏した可能性も……」

「それはないな。少なくとも、八人はいる」

「……」

 救いを見出そうとしたが、湊音にバッサリ否定された。

 俺は、完全に黙ってしまった。



◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 事務所でくつろいでいると、戸を叩く音が響いた。


「!!??」

 俺の肩が勢いよく上下する。そんな俺に、湊音は笑っていた。


 先程の話を聞いていたのが尾を引いていた。



――もしかして怪異!?



 昨日、怪異が事務所の戸を叩いたことがあった。それを湊音は、パシリの仕事だ、と言い、友永に開けさせた。


 すると目の前には顔が潰れた男怪異がおり、間近で直視した友永は、無事気絶した。


 その後、事務所に入ってきた男怪異に、俺たちが阿鼻叫喚になっている中、湊音はあえてゆっくり男怪異を退治した。

 事務所の奥へ、湊音は男怪異を誘い込み、そしてわざわざいつも携帯しているお札ではなく、執務机の引き出しを漁った。

 そして見つけたお札を悠々と持ち、男怪異を挑発した。


 ようやく湊音は男怪異を祓ってくれたが、その時の湊音への恨みは、まだ消えない。


 あの男怪異、体の形がおかしかった。関節が反対に曲がっていたり、口が異常に大きかったり……。

 湊音が言うには、俺が拾って来た怪異らしいが。見覚えが一切ない。こんなことが、ずっと続くのか、と思い、げんなりした。



 そんなことを思い出したのだ。俺はそっと湊音の顔をうかがったが、飛び切りいい笑顔を浮かべる。湊音と過ごした時間は短いため、その笑みの意味はわからない。だが、この状況を楽しんでいることだけは分かる。

 なんだか、昨日のことを思い出していらいらしてきたな。



 ドンドンドン!


「ヒッ……」

 勢いが強くなったノックに、俺はすっかり腰が引けたが、仕方ない。俺は、意を決して戸を開けることにした。


 開けると同時に目を閉じる。昨日の友永の件を、俺は忘れていない。


 いきなり怪異とご対面なんか、俺はごめんだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ