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廣田探偵事務所の事件簿~寂しがりやな福童子~  作者: 七海飛鳥
寂しがりやな福童子

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11/12

拾壱

「終わった……」

 俺はホッとして、座り込んだ。


 目を開けると、そこには匠眞がいた。


 俺たちは無事、現在に戻ったらしい。


「お、帰ってきた。こんな感じなんだな。お疲れ様」

「え?誰?」

 松山が匠眞の存在に気づき、目を白黒させていた。


「あ、そうか。三馬鹿は過去に戻ってから連れてきたんだったか」

「「「そうだぜ!!!」」」

 三馬鹿がまたハモったところで、外でどよめきが起きた。


 俺たちは窓に駆け寄り、外を見てみると、死んだ筈の高校生たちが生き返った!という声が聞こえた。

 どうやら、うまく行ったようだ。


「ところで、その増えてる三人は?」

「俺のパシリ。木戸、友永、松山」

「ああ、君らが……」

 匠眞は三馬鹿に気の毒そうな表情をしたが、三馬鹿は気づかなかったらしい。



「そういえば、あの長谷川って刑事はこういうの、あまり信じなさそうだったような……」

 俺は、来た時のあの、訝しげな視線を思い出し、気分が悪くなった。


「ああ、あれ?単純にあの人、黒髪以外が嫌いなだけだよ」

「え?」

「昔ながらの人だから、髪染めてる人は不良とか思っているらしい。湊音も直哉も、髪の色黒じゃないからな。髪染めてる、とか思って、毛嫌いしてるのかもな」

 むしろ、人一倍怪異とかそういうの、信じてるよあの人、と言う匠眞に、俺はかなり驚いた。


 確かにその後、ここに来た筈のない三馬鹿に驚いていたが、おおむね好意的だった。怪異の存在に疑問視していたら、こうはならないだろう。


 その長谷川の話によると、渡辺と代々木は、警察に厳重注意を受けた後、家に帰されるようだ。


 そのうちここは、更地になるらしい。確かにここは危険だしな。いっそ、何もない方がいいのかもしれない。

 元凶である座敷童がいなくなったとて、他の怪異が入り込んで悪さをする可能性がある。


「あ、元に戻ってる!」

 木戸の言葉に、湊音は俺に鏡をくれる。鏡面を覗くと、そこには黒髪に戻った俺がいた。なんだかそれに、ひどく安心した。


 座敷童は、そんな俺に驚き、興味深そうに俺の髪をいじっていた。

 足が宙に浮いていることを除けば、とても子供らしい反応だった。


「あれはどうするんです?」

 俺は、周囲の反応に戸惑う渡辺と代々木を指差した。


「警察の預かりになるね。一応、不法侵入だから」

「あ、確かに」

 警察の匠眞の言葉に、俺は納得した。死んでも、罪は消えないもんな。


「おい、帰るぞ。送っていってやる」

 湊音は、そう言って車へと向かう。匠眞は、そんな湊音に呆れていた。


「お前がどうやって送るんだよ。ペーパーのゴールドの癖に」

「お前が運転するんだろ」

「へいへい」

 かくして俺たちは、座敷童と一緒に、帰路についた。



◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 翌日、あの死ぬ筈だった渡辺と代々木が、うちのクラスに来た。どうやら、礼を言いに来たらしい。


「ありがとな!あの時死にかけたの、助けてくれて!」

「お前は命の恩人だ!」

「言い過ぎだって……」

 実際、こいつらは一回死んでいるし。死んだ人は生き返らない。

 だから、湊音は彼らに、臨死体験をして気絶した、と伝えた。だから、俺は彼らにとってただの銀髪の人だ。


 座敷童が見えてなかった、という事は、そういう世界に縁ができなかった、という事だと、湊音は言っていた。



 俺たちは、地元のワイドショーに出ていたらしく、家に帰ってから母さんにこっぴどく叱られた。事故現場に入るなんて!と。

 俺はそれを、甘んじて受け入れた。かなり心配をかけたらしいし。


 途中、銀髪になったことを突っ込まれたが、光の反射とかなんとか言って、誤魔化した。



 渡辺と代々木の声に、クラスメイト達は色めきだった。


「なあ、確か須藤って、昨日テレビ出てたよな!」

「うん、びっくりした」

 そんな声を右から左に聞き流す。俺は、何も聞こえてない。


「それにしても、きちんと戻したんだな、髪と眼の色」

 渡辺が、俺の頭を見ながら言う。確かに俺の頭は黒い。


 だが、それは黒髪のかつらだ。それと黒眼のカラコンも付けている。


 どうやら俺は、結界内だと神となり、髪と眼の色が変わってしまうのだ。

 特に、俺が神になった場所である高校や、俺を祀っている神棚がある事務所だと、近づくだけで色が変わる。


 生きにくいったらありゃしない。


 だが、昨日までそんなことはなかった。

 だから、抜け目ない湊音が、事前に俺の黒髪そっくりのかつらを用意してくれていてよかった。

 こいつが俺のことを神にしたがな。


「戻したというか、なんかいつの間にか変わってたというか……」

「今の方がいいと思うぞ!切に……切にな!」

「じゃ、これからホームルーム始まるから!」

「待て、一体何のフォローだ!?」

 俺の声も空しく、渡辺と代々木は言い逃げしていった。



 訳も分からず俺は、自分の席に戻ると、そこにはにやにや笑っている、佐藤と坂田がいた。


「よっ、テレビデビューおめ」

「昨日行かなくてよかったわ」

「それは俺への当てつけか?」

 俺は、佐藤と坂田を睨んだ。


 二人はそう言ったものの、三馬鹿が回避した赤点補修を、急に水曜にやることになってしまい、佐藤と坂田はそれに巻き込まれた。

 坂田はともかく、佐藤は普段赤点を取らないから、不思議だったが、もしかしたら俺が何かしたのかもしれない。


「「まさか~」」

 佐藤と坂田は、気持ち悪い声を出した。



「あ、そう言えば、三馬鹿は、四馬鹿とか騒がなくなったな」

「ああ、そうだな」

 結局、いい感じのが思いつかなかったのか、周囲から一刀両断されたのか。

 座敷童パワーのお陰なのかもしれない。


 だが、ずっとニヤついている佐藤と坂田がうざい。

 本気で殴ろうかと迷っていると、チャイムが鳴った。


「ホームルームするぞー、席につけー」

 担任の言葉に、クラスメイト達は返事をしつつ、席に移動した。



 何だかんだ、一番日常が落ち着く。人の命を救うなんて事態、もう巻き込まれたくないと、切に願った。



「まず、須藤。お前、各務先生が感激してたぞ。あの三馬鹿が、全員赤点回避ってな」

「そうですか」

 担任の言い回しが不穏だ。


「そこでだ。生徒指導の鬼島先生とも話し合った結果、お前を三馬鹿の世話係に任命する!」

「お断りします」

「出来高で、内申点が上がるぞ」

 これは、断れないやつだ。


「はあ、わかりましたよ……」

「「「なんでそんなに嫌そうなんだよ」」」

「お、そうかそうか、それはよかった」

 担任は、嬉しそうに笑った。

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