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廣田探偵事務所の事件簿~寂しがりやな福童子~  作者: 七海飛鳥
寂しがりやな福童子

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「また、誰もいなくなっちゃった」

 座敷童の、ぞっとするような、それでいて寂しそうな声。


 その声と同時に、人間がここに入ってきた感覚がした。

 それを、座敷童は感知したのだろう。はっと顔を上げた。


「パシリ!座敷童を止めろ!」

「「「分かりました!!」」」

 湊音は、ハッとして三馬鹿に指示を出す。それと同時に、湊音は懐から、形代が連なったものを取り出す。

 それらは意思を持っているかのように宙を舞う。そして座敷童に巻き付き、きつく締めあげる。


「ぐ……」

 座敷童は、苦しそうにうめく。


「助手!高校生たちを守れ!」

「分かった!」

「いいか、助手!お前は神だ。大体のことは何でもできる!」

「待って!」

 俺がこの空間から出るときに、湊音がそんなことを言った。そして、そんな俺を止めようとする、幼い少女の声。



 俺は、慌ててあの長い階段を駆け上がる。なんだか、とても長く感じる。そう思って、階段の上を見てみると、出口がどんどん遠くなってないか……!?


「行かせはしない……」

 声がした方をみると、そこには座敷童が空を飛んでいた。湊音が持っていた形代がちぎれている辺り、無理矢理拘束から抜け出したんだろう。


 俺のものではない足音が、後ろから聞こえる。


「邪魔をするな!!」

「きゃっ」

 俺は座敷童を押し退けるイメージで、そう叫ぶ。すると、何かが割れるような音がし、いつの間にか俺は一階にいた。


「よし、でた!」

 俺は、すぐさま建物から外に出る。

 ここに肝試しに来ていただろう、渡辺と代々木らしき高校生は、俺が建物から出てきたことに対し、驚いていた。


 俺は、二人に事情を話そうと近づこうとする。

 しかし、二人は警戒しているようで、俺が近づいた分、俺から距離をとる。


「おい、俺は怪しい者じゃ――」


 ガシャン!

 そんな、不毛な争いにしびれを切らし、口を開いたときだった。上で不穏な物音がした。

 俺は、反射的に上を向くと、四階のところから、仮設足場が落ちてくる。

 三馬鹿を体に巻き付けた座敷童は、下にいる俺たちを見て、にたにたと笑っていた。



「「うわあああああぁぁぁぁぁ!!!」」

 二人の叫び声で、俺は駆け出す。だが、間に合わない!!


「止まれええ!!!」

 渡辺と代々木は、腕で自分の頭を庇う。匠眞が言っていたあの怪我は、それが原因でついたのだろう。


 俺は、二人を死なせないために、声を張り上げる。湧き上がる力を、声に込める。


 だが、鉄筋は彼らの姿を、俺の視界から遮った。もうだめだ――。そう思ったが、鉄筋はそこで止まっているようだった。



――ギリギリ間に合った。



 俺は、彼らの頭上すれすれで止まった鉄筋を見て、安堵した。


 彼らは、いつまでも落ちてこない鉄筋を不思議に思い、上を向いた。鉄筋が、目の前で止まっているのを見て、ギョッとしている。


 俺は、二人を連れて、その場から離れた。そのまま、俺はフェンスから出ようとする。ここは危険だ。一刻も早く、二人を座敷童から遠ざけないと。


「結界から出るな!!」

「!!」

 三馬鹿の隣にいた湊音の声が聞こえた。俺は、思わず立ち止まる。


「お前らもこっちに来い!」

「「は、はい!」」

 有無を言わさぬ湊音の声に従い、俺は二人を伴って、建物内に入ることにした。



「お前、まさか須藤直哉か?」

「は?なんで俺の名前知ってるんだ?」

 他クラスだろ?三馬鹿はともかく、なんで俺?


「やっぱり……」

「まじかよ……」

 二人は、何かに絶望したようだが、俺は気にせず湊音と三馬鹿がいる、四階に向かった。


「俺たちでもなんとか拘束できたぜ!」

「須藤、何かやってくれたか?」

「いや?全く?」

 本当に覚えがない。


「須藤がさ、止まれ!!!って叫んだだろ!?その時、座敷童が止まったんだよ」

「あぁ……」

 あれは、鉄筋を止めるためだったが、どうやら渡辺と代々木に危害を加える存在である、座敷童にも有効だったらしい。


「放せ!」

 座敷童はもがくいて脱出を図ろうとするが、うまく行かないらしい。よく見ると、お札が貼ってあった。


「これで、一件落着、なのか?」

「いや、まだだ。今後、絶対にこういう事件が起きないようにしないとな……?」

「ヒッ!」

 座敷童は、湊音の剣幕にカタカタ震えていた。


「お前、寂しいのか?」

 俺は、湊音が言った、座敷童は寂しがりやだ、という事を思い出しながら、座敷童に問うた。

 このままここでずっと一人。それは、寂しがりやらしい座敷童のことを考えると、とても可哀想だ。


 確かに座敷童は人を殺したかもしれない。それは褒められるべきものではない。きちんと罪を償うべきだ。

 ただ、このまま祓うのは違うと思った。



「うん……」

 座敷童は悲しげにうつむいた。俺はそんな座敷童を見て、湊音に提案する。


「なあ、この座敷童、事務所に連れていくのはどうだ?」

「事務所に?まあいいが。うち座敷童いないし。先住との喧嘩の心配もないしな」

 俺の提案を、湊音は了承した。


「さっきから、一体何の話をしてんだ?」

「この子、見えないのか?」

「須藤?お前一体何の話してるんだ?なんか髪染めて、カラコンも付けてるし。頭、おかしくなったのか?」

 どうやら、彼らには座敷童が見えていないらしい。


「いいの……?」

「変に暴走されても困るしな」

「でも、事務所につくと、夜とか一人じゃないか?」

 松山が、そんなことを言った。確かにそうだが、座敷童って、外出れるのか?


「須藤に取り憑けばいい」

「いいの!?」

「何で俺に……」

 俺は渋った。当然だ。怪異に取り憑かれるとか、冗談じゃない。

 だが、座敷童は嬉しそうだ。それこそ、俺が事務所に連れていくと言ったよりも。



「言い出しっぺだろ。それに須藤、座敷童に取り憑かれると、かなりいいこと続きになる」

「よし、いくらでも取り憑け」

「ひどい手の平返しだな……」

 三馬鹿が何か言ったが、気にするか。

 座敷童の幸運で、まずは四馬鹿の汚名を取り除く!!


 湊音は、座敷童に張り付けたお札を取り、座敷童は俺に取り憑いた。

 少し、体が軽くなったような感じがする。


「なんか、体が軽いな」

「元々いい怪異だからな」

 俺が感想を言っていると、周囲が銀の光に包まれた。


「な、なんだ、これ……!」

 周囲が段々と眩しく光り、そして目を開けていられなくなった。

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