表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
廣田探偵事務所の事件簿~寂しがりやな福童子~  作者: 七海飛鳥
寂しがりやな福童子

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

1/12

キーンコーンカーンコーン。

チャイムが鳴り、授業が終わりを告げる。


「起立、礼」

「「「「「ありがとうございました」」」」」

 授業終わりの挨拶をした後、教師は教室から立ち去る。生徒たちは休憩時間で、思い思いの時間を過ごしていた。



 俺――須藤直哉は今まで、普通の人生を送っていた筈が、とある事件をきっかけに、非日常に引き込まれた。

 朝起きた時の窓の外、いつも乗る電車の中、机の中だったり、あるいは教室の天井。ただの道端にも、異形の存在がいる。

 それらは怪異と呼ばれ、人型をしていたり、全くの異形だったり、様々だ。



「なあ須藤、結局心霊探偵ってなにすんだろうな」

「俺が知ってる訳ないだろ」

 俺の席に来た木戸の言葉に、俺は若干呆れつつ返す。


 木戸が言った、心霊探偵とは先日、木戸たちが起こした事件――俺たちの間では、黒水晶事件と呼ばれている――を解決に導いてくれた人物、廣田湊音がやっていることだ。


 湊音は、どこか胡散臭い。湊音がやっていることと言えば、ちょっとした怪異絡みの相談と、普通の探偵のように、不倫調査やペット探しをしているくらいだった。

 その中で、心霊探偵らしいことといえば、ラブホに住み憑く怪異から話を聞いたり、猫の怪異に行方不明の猫探しを手伝ってもらったり。


 この前は、怪異絡みの依頼があったが、結局依頼人が亡くなり、有耶無耶になってしまった。

 俺がしたことと言えば、依頼人の話を聞いただけ。


 助手なんかいらないだろ、と思うくらいには、俺たちは役に立たなかった。



◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「おい須藤、聞きたいことがある!」

 一時間目の授業が終わり、十分休憩。友永と松山は俺の席の周りを取り囲んだ。

 ここに木戸がいないのは、絶賛遅刻中だからだ。


 松山は、俺に突きつけるように言った。


「俺も聞きたいことがあるぞ、友永、松山」

 松山の言葉に、俺は同じように返す。


「なんだよ、一体?」

「まずはお前の話から聞こうか」

 松山が不思議そうな表情をするが、俺はまず松山に話を促した。


「ふふん、聞きたいか?」

「ものすごく聞きたくない」

「いいだろう、いいだろう。喜べ!俺たちはこれから、三馬鹿じゃなくて四馬鹿に――!!」

「殴るぞ貴様」

 俺は握りこぶしを、馬鹿なことを言う松山に見せつけた。


 三馬鹿とは、木戸、友永、松山の総称だ。遅刻や居眠り、赤点それぞれの常習犯だ。

 そんな三馬鹿と一緒にされるなんて、心外だ。



「そのことについて聞きたい。俺が三馬鹿の一員って?」

「なんだ、もう出回っていたのか」

 友永は、少し驚いた様子だが、俺はそれに腹が立って、げしげしと足を踏みつける。

「痛い!痛いから!」と声を上げる友永を、俺は無視する。


「誰がオカルト馬鹿だ!センスないあだ名つけんな!」

「でも、存在がオカルトじゃん」

 事実なので否定できない。怪異にとって、ご馳走らしい俺は、オカルトの域に、一歩足を踏み入れているようなものだ。


 だが、俺がこいつらと同類だと思われるのは癪だった。


「俺は三馬鹿の一員になりたくない!」

「でもさ、俺たちとよく絡んでんじゃん」

「ならこれから絡まない」

 俺は、そう言って友永と松山をしっしっと追い払った。


「そんなこと言うなって!寂しいだろ~?」

「どうせ事務所で会うんだ。高校でまで一緒にいる必要はないだろ。というか、変なあだ名をつけられたくない」

 俺はきっぱりと、(すが)りつこうとする友永と松山に言い切った。


「「ちぇー、ケチー」」

 俺の言葉にむくれながら、友永と松山は案外素直に離れていった。



「はあ」

「最近、仲いいな、三馬鹿と」

 溜息を吐いていたら、前から声がかかる。


 椅子に後ろ向きに座る男子生徒は、佐藤という。俺の前の席で、黒水晶事件が起こる前から、よく話していた相手だ。



「前だって、仲はよかっただろ」

「今ほどではないだろ?」

 俺は、苦い顔をした。佐藤は、そんな俺に楽しそうに笑う。


「な、しかもあいつら、須藤を加えて四馬鹿になる!とか言ってるし。本当になれば?」

 友永と松山がいなくなったからなのか、前々から佐藤と一緒に話していた友人、坂田が茶化すように俺に話しかける。


 坂田は、俺の右隣の男子生徒だ。一見眼鏡をかけて真面目そうだが、頭の中はさほど三馬鹿と変わらない。赤点のいつもギリギリを攻める。


 本人は、スリルがあって楽しいとか言っているが、完全に俺と佐藤への負け惜しみである。


「やめてくれ」

 俺は心外だ、という表情を作りながら、心の底からの本音を言った。そんな俺に、二人はゲラゲラ笑った。


「なんでさ。あいつら、いい奴らだよ?」

「それは知ってる。けど、馬鹿とは誰も言われたくないだろ」

 俺は苦い顔をした。佐藤と坂田は笑いながら、「「確かに」」と言っていた。



「ところで須藤、オカルト馬鹿って何?」

「センスないよなー」と言いつつ、佐藤は聞いた。


「知らん。俺はオカルトなんか信じてない」

 オカルト体験はしたが。何なら今朝も、それっぽいのを見かけたが。それでも、見えてないと言えば、見えてないのだ。



「ならさ、心霊スポット行かね?」

「はあ?」

 佐藤の言葉に、俺は思わず嫌な声を上げた。だが、坂田は佐藤の提案に目を輝かせている。


「いやー、楽しそうなとこみつけちゃってさ。最近暑いだろ?地球温暖化とかで」

「行かない」

 自ら危険なとこには行きたくないし、ああいう体験は三馬鹿が起こしたので十分だ。


「いいだろ?」

「面白そうじゃん」

 二人は乗り気のようだが、俺は全く乗り気じゃない。絶対に行きたくない。


「なあ、どこ?その心霊スポットって」

「それはな――」

「おい、俺は行かないからな!」

 俺は一人だけ、抗議の声を上げた。


「よっしゃ、間に合った!」

 突然教室の戸が、ガラッと開く。

 そこには、木戸がいた。息を切らしているが、その顔は達成感で満ち溢れている。


「木戸、放課後生徒指導室に来なさい」

 そんな木戸に、たった一言、生徒指導の先生である鬼島先生が言った。


「うわあぁぁ!!ど、どうか情けを……!!」

 しかし、そんな木戸の懇願は空しく、 鬼島先生は去っていってしまった。


「あれま、ドンマイ」

 松山は、一気に絶望に叩き落とされた木戸を慰めた。

星、評価、感想お願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ